聴いてみた 第125回 イーグルス その3
謎の音楽集団イーグルス。
なぜか昔聴いたことがあったのか思い出せないという珍しい事態に発展。
底知れぬ恐れを抱いたあたしは、疑惑のアルバム3枚を確認するはめになりました。
しかし「On The Border」「One Of These Nights(呪われた夜)」はいずれも聴いた記憶なし。
となると残るはこの1枚しかありません。
「Desperado」、邦題「ならず者」。
聴く前にアルバム概要をライブドアニュースのようにざっくり言うと的に学習。
「ならず者」は1973年の作品、全米最高順位は意外に売れず41位。
西部開拓時代のならず者集団「ドゥーリンとダルトン一味」をテーマにしたコンセプトアルバム。
ジャクソン・ブラウンやJ.D.サウザーの名前もクレジットされており、裏ジャケットにはこの二人も登場している。
デビューアルバムで成功をおさめたイーグルスだが、2枚目の重圧はやはりあったようだ。
バンドはそこをコンセプトアルバムという手段で切り抜けようとした。
当時としてはまだ珍しかったプロモ・ビデオを、西部劇のセットを使って撮影という凝ったこともしていたそうだ。
これらの試みはすぐにファンに支持されたとは言い難く、アルバムのセールスとしてはやはり厳しい結果に終わっている。
ただし後年タイトル曲が多くのアーチストによってカバーされ、それに伴って長い時間をかけて評価を高めていった。
プロデューサーはデビューアルバムと同じくグリン・ジョーンズ。
ツェッペリンのエンジニアとしても有名だが、グリン起用の理由として、ドン・ヘンリーがジョン・ボーナムのファンだったということもあったらしい。
ドンはグリンに自分のドラムをボンゾの音のように録音できないか相談したこともあったそうです。
自分にとってはイーグルス最後の疑惑のアルバム。
果たして自分は「ならず者」を聴いたことがあったのでしょうか。(どうでもいい)
・・・・・聴いてみた。
1. Doolin-dalton
アルバムは日本の70年代フォークみたいなもの悲しいハーモニカとギターで始まる。
というか日本の70年代フォークはこの曲あたりに相当影響を受けていたのだろう。
まずはテーマである「ドゥーリンとダルトン」というギャング集団のトップ二人を紹介する内容。
ドン・ヘンリー、グレン・フライ、ジャクソン・ブラウン、J.D.サウザーの四人による共作。
2. Twenty-one
バンジョーが鳴り続けるウェスタンの定番みたいな曲。
開拓時代のアウトロー、ビリー・ザ・キッドを歌ったバーニーの作品。
もともとイーグルスはこういう路線が得意なバンドのはずで、バーニーもこのノリで続けたかったのではないかと思われる。
3. Out Of Control
一転グレンの好きな荒っぽいロック。
悪くないが、アルバム全体のイメージには少し合っていないような気もする。
明るい曲調だがかなり騒々しく、エンディングはどのパートも結構好き勝手でライブっぽい雰囲気。
4. Tequila Sunrise
この曲はベスト盤で聴いており、信頼と安心の一曲。
ほのぼのイーグルスの真骨頂なサウンドは、グレンとドンの共作。
このグレンの「押し」と「引き」のボーカルバランスはバンドの多面性を形作った重要なファクターであるとつくづく思う。
なお「Tequila Sunrise」とはメキシコのカクテルの名前だそうだが、この曲がヒットする前からミック・ジャガーお気に入りのカクテルとして有名ではあったらしい。
5. Desperado
タイトル曲「ならず者」。
誰もが知っているイーグルス初期の名曲・・というのは間違ってないのだが、実はシングルカットされてはいないのだった。
知らなかった・・・
映画のラストに流れる主題歌のような、壮大で哀愁に満ち満ちた名曲。
歌詞はならず者に更生をうながす内容なのだが、訳詞を読んでもいまいち意味がよくわからない。
グレン・フライも「ここでいうならず者はむしろオレたち自身のことだったのかも」などと発言しており、ますますよくわからない。
再結成で発表したアルバム「Hell Freezes Over」では、ライブのラストにこの曲を持ってくるというベタすぎる演出があった。
6. Certain Kind Of Fool
ランディの少し雰囲気が違う作品。
この曲ではギターを弾いているのはグレンだそうだ。
ドゥーリン=ダルトン軍団の活動が徐々に行き詰まっていく様を歌った内容となっている。
7. Doolin-dalton (Instr.)
マンドリンとバンジョーとギターが重なる短めのインスト。
3人で演奏してるのかと思ったら、全部バーニーによる多重録音とのこと。
8. Outlaw Man
ブルージーな辛口のサウンドにグレンのボーカル。
グレンの曲にしては暗いような・・こういうのってむしろドン・ヘンリーが作りそうな曲じゃないの?と思ったら、これはデヴィッド・ブルーという人の作品だそうだ。
9. Saturday Night
おだやかなギターにドンの落ち着いたボーカル、コーラス。
この曲もマンドリンが聞こえる。
当時のメンバー全員の共作だが、長いバンドの歴史の中では「全員の共作」は唯一この曲だけ。
ビートルズもクイーンもそうだが、バンドの中にソングライターがたくさんいても「全員の共作」は非常に少なくなるものらしい。
10. Bitter Creek
同じくおだやかなギターに絶妙のコーラス・・なのだが曲調はかなりシリアスでもの悲しい。
終盤に一瞬盛り上がるアコースティックギターが印象的。
11. Doolin-dalton/Desperado (Reprise)
1曲目と5曲目の一部を組み合わせて歌う。
メロディは全く同じではなく、エンディングは少し変調した音で「Desperado」を繰り返す。
雰囲気のある終わり方だが、個人的には違和感のほうが残る。
聴き終えた。
結局このアルバムも「ああ昔聴いたんはこれだったんや」ということにはならなかった。
たぶん聴いたことを忘れたのだ。
「ならず者」「呪われた夜」「On The Border」のどれかを聴いていたはずなのに、どれも記憶には全然残っていなかった。
あまりにも偏差値の低い話で申し訳ないが、かすかにジャケットに見覚えがある「ならず者」を、聴いておきながらすっかり忘れたものと思われる。
アルバム全体としては、比較的曲ごとの個性がはっきりしていると感じた。
「Tequila Sunrise」「Desperado」は何度聴いても名曲である。
「Desperado」はその後リンダ・ロンシュタットやカーペンターズ、日本では平井堅や鬼束ちひろがカバーしたことも名曲の証となっている。
ネットの情報で、聴く前からコンセプト・アルバムであることはいちおうわかっていた。
ビル・ドゥーリンとビル・ダルトンという19世紀末に実在した無法集団の双頭を主人公にした物語を、各曲で綴るという内容。
ドゥーリン=ダルトン集団は時代に逆行したダサい連中であり、イーグルス自身も70年代の混沌の中で時代から取り残される恐れと闘いながら、ドゥーリン=ダルトンと自分達の姿に通じるものを感じていた。
・・・というのが一般的な考察のようなのだが、このあたりは感覚的にはほとんどわからない。
そもそもドゥーリン=ダルトンについての基礎的イメージがないし、時代背景も極東の小市民には理解しづらい。
「ならず者」という訳は秀逸だと思うが、コンセプトそのものを理解したわけではないので、必然的にメロディや楽曲に偏って評価せざるを得なくなる。
まあそんなの洋楽全般に言えるんですけど、「ならず者」のなんたるかをちゃんとわかって聴けたわけではない、という状態です。
どこかで今一度ドゥーリン=ダルトンについての学習が必要であろう。
それにしても当時の日本のレコード会社が「チンピラ」「不良」「やくざ者」「ワル」「番長」などとズレた邦題を付けなくてホントよかったスね。
これでいちおうデビューから80年の解散までの全てのアルバムは聴き終えたことになる。
ただし達成感はやはりない。
全部聴いてみても「The Long Run」が一番良いという評価は変わらないし、新たな発見や高揚感も特にない、という身も蓋もない感想になる。
なにしろ相手は天下のイーグルス。
世界中で最も売れたウルトラバンドであり、アルバムはどれも名盤でシングルも名曲ぞろい。
その上メンバー間の仲もいい感じ?に悪く、モメ事も多いというお買い得な人たちなのだが、なぜか意欲的に取り組もうという気が長いこと起こらなかったのだ。
今回は半ば義務的に聴いてみたのだが、鑑賞前後で取り立てて感情的に変化はなかった。
繰り返しになるが、おそらく自分にとってはイーグルスは「たまに聴きたくなる音楽」であって「好きな音楽」とは少し違うようである。
ということで、「ならず者」。
全盤制覇はしたものの、いまいち座りの悪い結末となりました。
このクソ暑い中いったい何をやっているのやら・・・(今さら)
まあ数回聴いた程度では何もわかりませんので、各アルバムをもう少し聴きこんでみようかと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
私も「ならず者」を聞き直してみました。
日本におけるイーグルスのイメージは「ホテ・カル」(曲)に代表され
ます。次点で「ならず者」(曲)でしょうか。
「ホテ・カル」(曲)は5thアルバムの雰囲気をほぼ再現できると思います。
一方、「ならず者」(曲)は2ndアルバムを代表しているかといえ
ば、改めて聞き直して「そうでもない」という感想を持ちました。
というわけで、全体的にカントリータッチですが、なかなかに幅広い
音楽性がある、と感じました。
カントリー=バーニー・レドンになりますが、やはりフライの名曲
「テキーラ・サンライズ」や、アルバムの中では異質なフライの
ハード路線の曲が耳に残ります。ここからアルバムとして際立って
くるのが、「ならず者」(曲)や、レドンやマイズナーのカントリー曲
のように思います。カントリー路線をコンセプトアルバム
風に仕上げたメンバーの力量が、初期3作の中からずば抜けて評価が
高くなった理由だと思います。
ところで、今回のSYUNJIさんの解説のおかげで、今まで知らなかった
ことがたくさんわかりました。特にヘンリーがジョン・ボーナムの
ドラムが好きだったいうのは驚きです。やっぱり彼らはブリティッシュ
指向だったのですねえ。。。
投稿: モンスリー | 2015.08.17 21:47
モンスリーさん、こんばんは。
>全体的にカントリータッチですが、なかなかに幅広い音楽性がある、と感じました。
これは同感ですね。
カントリーの印象が強いですが、ハードロックありバラードありの多面的な内容だと思います。
>ここからアルバムとして際立ってくるのが、「ならず者」(曲)や、レドンやマイズナーのカントリー曲のように思います。
なるほど・・
イーグルスがこのままカントリーに強いバンドとして継続していたらどうなっていたんだろう・・と考えることがありますが、その場合はたぶん「ホテル・カリフォルニア」は生まれなかったんでしょうね。
>特にヘンリーがジョン・ボーナムのドラムが好きだったいうのは驚きです。
自分も今回調べてみて初めて知りました。
なんか結構意外な話ですね。
その後のイーグルスやドン・ヘンリーの活動を見ても、あまりボンゾには結びつきませんが・・
ファンの間ではよく知られた話なんでしょうかね?
投稿: SYUNJI | 2015.08.18 22:24