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聴いてみた 第122回 イーグルス その2

昨日の夕飯ももう思い出せないSYUNJIといいます。
日常でもこんな有様なので、いったい自分はイーグルスのどのアルバムを聴いていたのだろうかということが未だに不明。
あまりにも間抜けな話だが、長い年月の間に「Desparado(ならず者)」「On The Border」「One Of These Nights(呪われた夜)」のどれを聴いたのか完全に忘れてしまったのだった。
で、昨年「On The Border」は聴いていなかったことを確認。
今日は「呪われた夜」を確認してみることにした。
聴く前から不安のかたまりである。

One_of_these_nights

「呪われた夜」は1975年発表。
グループ最初の全米1位を獲得したアルバムである。
原題は「One Of These Nights」。
ネットでレビューなどをいろいろ見たが、「一番好きなアルバム」「最高傑作」という声もあり、高く評価する人は多いようだ。
イーグルスと言えば「Hotel California」・・というのは素人のステレオタイプな見方なのだろうか。

またバーニー・レドン参加の最後のアルバムでもある。
バーニーはカントリーテイストなサウンドこそがグループの魅力であると感じており、ドン・フェルダー加入後のロックに傾倒し始めたバンドの方向性には反対の姿勢だったようだ。
しかし「呪われた夜」はドン・フェルダーのギターをより前面に押し出し、バーニーの主張はあまり受け入れられなかったらしい。
不満がたまったバーニーはグレン・フライのアタマにビールをかけてバンドを脱退というインディーズ団体みたいな事件が勃発。
そもそもイーグルス結成当時グレンとドン・ヘンリーは無名に近かったが、バーニーはすでにいくつかのブループで実績を積んでの参加だった。
後輩芸人と思っていたグレンとドンがバンド運営を進めることが、バーニーは面白くなかったのだと思われる。

・・・といった輝かしいモメ事の概要を調べても、もちろん聴いたことがあったかどうかは判明しない。
果たして自分は昨日の夕飯がなんだったのか記憶を呼び覚ますことができるのでしょうか。(関係ない)

・・・・・聴いてみた。

1.One Of These Nights(呪われた夜)
タイトル・ソングである「呪われた夜」はベスト盤で聴いている。
ただしタイトルを見てすぐにメロディが脳内再生できる状態ではなく、聴いてみて「ああこの曲か」と思い出すレベル。
名曲に対する扱いがあまりにも雑で申し訳ないが、イーグルスの曲の中では特に好みではない。

2.Too Many Hands
ランディの作でボーカルもランディだが、あまり楽しそうな曲ではない。
後半でグレンとドン・フェルダーがギターを掛け合うのが聴きどころだそうだが、少しとっつきにくい印象。

3.Holywood Waltz
西海岸ほのぼの路線の典型みたいなサウンド。
ドン・ヘンリーの憂いに満ちたボーカル、美しいコーラス、カントリー風の調べ、タイトルどおりのワルツ。
でも作ったのはバーニーだそうだ。
こういう曲は安心して聴ける。

4.Journey Of The Sorcerer(魔術師の旅)
LPではA面ラスト、バンジョーをギターのように使った不思議なインスト。
ストリングスも導入していながら暗いメロディがどうも違和感。
構成も少し複雑でプログレっぽい香りもする。
試みとして面白いとは思うけど、やはりバンジョーは楽しいカントリーソングでこそ生きる楽器なのでは・・という先入観のためか、いまいちなじめない。

5.Lyin' Eyes(いつわりの瞳)
再びほのぼのイーグルスで一安心。
これもベスト盤で聴いている。
グレン・フライの曲はどちらかと言えばロックのほうが好みではあるが、この曲はいいと思う。
メロディはおだやかだが歌詞は愛のない結婚生活を語る厳しい内容らしい。
レゲエ調のリズムにカントリーなサウンドを乗せるというお得意の建て付けがやっぱり秀逸。

6.Take It To The Limit
ランディ作の名曲で、これもベスト盤で聴いている。
個人的にはこの曲がアルバム中最大の目玉だと思う。
イーグルスの全曲の中でもベスト5には入る。
グレンやドン・ヘンリーの作品ともひと味違う壮大なメロディ。

7.Visions
ミドル・テンポでギター中心のサウンド。
ボーカルはほとんどコーラスになっているが、メインで歌っているのはドン・フェルダー。
他のどの曲とも雰囲気が違う。

8.After The Thrill Is Gone
一転スローなバラード。
この曲もベスト盤IIで聴いている。
二人のドンの共作で、ボーカルはヘンリー。

9.I Wish You Peace(安らぎによせて)
ラストはゆったりとしたバラード。
バーニーとパティ・デイビスの共作とのことだが、パティとは誰?・・と思ったら、レーガン大統領の娘だそうだ。
バーニーはメンバーの反対を押し切ってこの曲をアルバムに収録させたが、それがメンバーとの間に溝を作ることになってしまったらしい。

ということでこのアルバムも聴いていなかったことが判明。
知っている曲は全てベスト盤で仕入れたものである。

全体的な感想としては、やや複雑な印象である。
通しで聴いてみて「いやー良かったなぁ」という素直な肯定感情が出てこない。
悪くはないんだが、繰り返し聴こうという意欲はさほどない。
もちろん「Holywood Waltz」「Lyin' Eyes」「Take It To The Limit」など名曲もあるが、「On The Border」よりもさらに難しい感じだ。
イーグルスのどのアルバムにも感じる、好みのレベルが曲単位で極端に違うという状態がここでも起こる。

前回の記事でも書いたが、自分にとってイーグルスは未だに不思議で謎の多い音楽なのだ。
知らない曲にふれると「こんなバンドだったっけ?」と思うことが多いのである。
比較は無意味だが、ストーンズについては知らない曲にふれると「おお、こんな曲もあるんだ!」といった発見感に満たされるのだが、どういうわけかイーグルスにはそこまでの盛り上がりを感じない。

このアルバムの次が鬼盤と言われる「Hotel California」である。(言われてない)
しかしあの鬼盤についても自分の感想は似たようなもので、タイトル曲こそ素晴らしい名曲だとは感じるが、かえってアルバム全体の印象はかすんでしまい、評価はよくわからなくなっている。
なので、という説明に何の説得力もないけど、ここまで聴いてきたアルバムの中では「The Long Run」が一番よい、という評価になっている。
結局それは今回「呪われた夜」を聴いてみても変わらなかった。

さて。
解散前のスタジオ盤で残る未聴疑惑アルバムは「ならず者」だけになった。
昔聴いたことがあった可能性も残ってはいるが、おそらくもう記憶も戻らないので初めて聴くのと同じだろう。
全盤制覇の野望など全くなかったのだが、これはやはり聴いて確かめるしかない。
近日中に、「ならず者」を聴いてみようと思います。

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聴いてみた 第121回 シンディ・ローパー

先日ガラにもなく唐突にアラン・トゥーサンなんか見に行ってしまったあたし。
調子に乗ってアラン・トゥーサン学習も少しだけ兼ねてシンディ・ローパーを聴くことにしました。

Memphisblues

聴いてみたのは2011年発表の「Memphis Blues」。
B.B.キング、ジョニー・ラング、アラン・トゥーサン、アン・ピーブルズ、チャーリー・マスルホワイトといったビッグネームたちを従えてメンフィスで録音した、魂のブルース・カバー集である。
以前からモンスリー師匠のおすすめでもあったため、今回教育的指導をふまえて聴くことにした。

自分が聴いたのは輸入盤だが、日本盤にはボーナストラックが2曲追加されている。
参加ミュージシャンの中で一人若いのがジョニー・ラングという人。
1981年生まれでシンディとは親子ほども年が違うようだが、ブルースの天才少年と称された歌い手だそうだ。

シンディ・ローパーもベスト盤しか聴いてない(しかも記事にしたのが10年前)という荒涼たる有様な自分だが、さらにブルースを選択するという大胆な展開。
仮免も取ってないのにプレミアなハーレーを先に買ってしまったようなものだろうか。
果たして自分はシンディの運転するハーレーで振り落とされずメンフィスのブルースについていけるのでしょうか。

・・・・聴いてみた。

1. I'm Just Your Fool (feat. Charlie Musselwhite)
2. Shattered Dreams (feat. Allen Toussaint)
3. Early in the Morning (feat. Allen Toussaint & B.B. King)
4. Romance in the Dark
5. How Blue Can You Get (feat. Jonny Lang)
6. Down Don t Bother Me (feat. Charlie Musselwhite)
7. Don't Cry No More
8. Rollin and Tumblin (feat. Kenny Brown and Ann Peebles)
9. Down So Low
10. Mother Earth (feat. Allen Toussaint)
11. Cross Roads (feat. Jonny Lang)

うーん・・・・
当然だが全編ブルースである。
シンディならではの部分もあるが、80年代にはじけて世界中を席巻したシンディではなく、「ブルースも歌える器用な大人のシンディ」がいる。
メンフィスという場所、参加している豪華メンバー、スタンダードなブルースナンバーといった、これ以上ない素晴らしい条件の中でいきいきと歌うシンディ。

「Early in the Morning」はアラン・トゥーサンとB.B.キングが参加しているゴージャスな曲。
軽快で楽しそうなリズムがいい雰囲気である。
他にもアラン・トゥーサンがピアノを弾いている曲がいくつかあるが、ついこないだアラン・トゥーサンを知ったばかりなので、音だけで「おおおこれぞまさにアランのピアノ!」・・・などとわかるはずもない。
「このピアノはキース・エマーソンだ」とぷく先輩に言われても「へぇーそうなんスか・・」と言うと思う。
いずれにしても楽器の音やブルースのリズムにシンディのボーカルは負けていない。
「Don't Cry No More」などはなかなかいいと思う。

ただし。
ブルースもシンディも聴き慣れていない自分には、この組み合わせが心にしみる・・というレベルには、申し訳ないが全然達していない。
ブルースと言えばもっと野太く濁った酒焼け気味の声の人がうなったりするもんだという浅はかな先入観があるので、シンディの声は少し薄い気がするのだ。
ブルースナンバーなのでそもそも必要がないということなのだろうが、80年代にあったシンディの目いっぱい張り上げる歌い方は、このアルバムにはない。

だいたい自分という人間はどっぷりのブルースは実は苦手である。
ブルースなくしてロックが語れるはずもないけど、それぞれの時代に若者がブルースを様々な形で昇華したのがロックであり、その解釈や表現の工夫やアレンジや転換のしかたや調和にこそ自分はひかれるのだろう。
ロック・ミュージックの源流原型であるブルースを「そのまま聴く」ことには慣れていないのである。

具体的に言うと、このアルバムにロバート・ジョンソンの「Cross Roads」があるが、ご存じのとおりクリームでも有名な曲である。
しかしシンディの歌う「Cross Roads」はクリームのそれとは全く別の音楽だ。
クリームの「Cross Roads」はすでに原曲からもかなり離れたところにあると思われるが、あの3人の「誰も裏をやっていない」ガチなド突き合いこそがロックとしての「Cross Roads」であり、そこに自分は魅力を感じるのである。
(クリームも含め、クラプトンの曲で一番好きなのがこれ。)

なので、どこかに80年代のシンディがいないか探すような聴き方自体が決定的に誤っていると思う。
今の自分には「メンフィスでブルースを歌うシンディ」を、酒でも飲みながらゆったり鑑賞するというようなマネはとてもできない。
端的に言って「難しい音楽」である、というのが正直なところだ。
繰り返し聴けばメンフィス・ブルースの味わいを少しは理解できるようになるのだろうか。
今のところ予感は全くないが・・・

ちなみにアルバム発表後、日本(名古屋・東京・大阪)でのツアーが組まれたのだが、直前に東日本大震災が発生。
しかし震災当日に来日したシンディは、被害の惨状を知り、歌で日本の客を勇気づけることを決意。
ツアーは予定どおり行われたそうだ。

というわけで、シンディ・ローパー。
やはり厳しい結果となりました。
アラン・トゥーサンの学習も兼ねるなどとデカイことをほざいたわりに、何もできずに終わった感じがします。
やはりシンディの学習であれば、自分の場合80年代のアルバムから積み上げていったほうが良さそうです。

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