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読んでみた 第45回 文藝別冊「ディープ・パープル」

「日本人はすぐにパープルツェッペリンを比較しすぎだ!」という批判はごもっともだと感じているSYUNJIといいます。
そうだよなぁ、どっちも素晴らしいバンドであり音楽性も違うし比較にムリがあるよなぁ。
でもやっぱ比較するのが楽しいんだよ、このふたつのバンド。
そんな濁った感性で読んでみたのが、文藝別冊「ディープ・パープル」。
昨年出版した「レッド・ツェッペリン」に味をしめた版元が、自分のような比較したがりリスナーをターゲットに出版したとしか思えない一冊です。

Purple

そんな比較大好き中年の自分だが、こうして音楽以外の情報にふれる場合、個人的には両者の総合エンターテイメント性には大きな差があると確信している。
端的に言って、パープル(とそのファミリー)はやたらモメるけど、ツェッペリンはあんましモメない。
モメ話が大好きなあたしとしては、どうしてもパープルに肩入れしたくなるのである。

なので元祖モメバンドのパープルについて、こうして良質なテキストにたどり着けるというのはありがたい話だ。
ディアゴスティーニで「月刊パープル」なんてパートワークが出版されたら毎号揃えるよ。

正式な書名は「KAWADE夢ムック[永久保存版 総特集]文藝別冊『ディープ・パープル~ハードロックの伝道者、紫煙の旅路』」。(長い)
版元は河出書房新社、発行は2014年3月30日、226ページ。
定価は1200円だが、東京国際ブックフェアに出展していた河出書房のブースで割引購入。
果たして全編モメ事だらけの幸せな福音書なのでしょうか。

・・・・・読んでみた。

目次はこんな感じ。

【独占インタヴュー】
・イアン・ギラン
「ジョンはディープ・パープルの父親だったんだ」  
・キース・エマーソン
「ディープ・パープルはクラシックとロックを融合し、ロックを〝洗練〟させたんだ」
 
【ロング・インタヴュー】伊藤政則が語る、ディープ・パープル受容史  
 
【エッセイ】 奥田英朗 リッチーが「ガラクタ」と言った『嵐の使者』を聴き直す 
 
【テーマ論考】
・独裁者 「白い羊の群れ」を去った「一匹の黒い羊」 増田勇一 
・多様性 本質的に持っていたデパート的な体質 大鷹俊一
・初期作品 SHADES OF DEEP PURPLE ―紫の世界― 大貫憲章
・武道館 紫の伝説の〝暗部の生き証人〟として  和久井光司 
・歌詞 ギランの下ネタは何を“掘った”のか 山崎智之 
・オーケストラ ブリティッシュ・ロックとオーケストラの関係について 
          ―対極にありながらも最も相性のいい2つの音楽的形態― 岩本晃市郎 
・鍵盤 キーボード・ロック ―ジョン・ロードの場合― 巽孝之 
・プロデューサー 「専制政治」と「共和制」 御法川裕三 
・ブラック企業 ディープ・パープルはブラック企業か? 常見陽平 
 
【人物論】
ジョン・ロード論 クラシック的なものとロック的なもの 小沼純一 
リッチー・ブラックモア論 ガールフレンドから読み解くブラックモア史 御法川裕三
 
【インタヴュー】
・熊谷達也 あの熱視線を浴びていたら、小説を書こうと思わなかったかもしれない 
・適菜収 D層の研究?   
 
【論考・歴史と現在】
・現メンバーは〝選ばれし人材〟か 御法川裕三
・THE HISTORY OF DEEP PURPLE 舩曳将仁 
 
【関連アルバムセレクト30】
・メンバー絡みで特に聴いておくべき10枚
・〝パープル的〟を語るために欠かせない70年・80年代の10枚 
・時代を貫通するパープルの遺伝子、90年代以降の10枚 
  
【徹底解題レビュー】

内外の関係者インタビューや有識者の評論があり、メンバー考察、アルバムレビューと続くスキのない構成である。
当たり前だが全編モメ事話ではない。
ツェッペリンもそうだったが、わりとマジメにパープルという音楽集団を語る王道な編集だ。
アルバムレビューにも相当チカラが入っているし、ギランのインタビューも読み応えがある。
アオリが「独占インタビュー」ってのがダサすぎなんだが、編集側もわかっていてそう書いているのだろう。(本当か?)
さらにもうひとつのインタビュー記事はキース・エマーソンという意外な人選。
内容はキース独自のパープル論やジョン・ロード考察なのだが、実直な音楽論に終始している。

読んでいくとやっぱりあちこちにパープルとツェッペリンを対比させたり比較したりする表現が見つかる。
日本ではもう書き手も読者もリスナーも、ツェッペリンなしではパープルを分析できないのだ。
前回読んだツェッペリン本には、パープルの名前はそれほどには出てこなかったことからも、「パープルなしでも企画できるツェッペリン本」「ツェッペリンなしでは企画が通らないパープル本」という図式が版元側にほぼできあがっていることがわかる。

作家であり音楽活動も行う熊谷達也は、日本のCMで使われるのはツェッペリンよりもパープルのほうが圧倒的に多い点について、「どこか15秒を抜き出しても魅力が伝わるのがパープル、一曲通して聴いてこそ魅力が伝わるのがツェッペリン」と説いている。
実際にはCMにツェッペリンが使われにくいのはペイジが権利関係にうるさいなど他の理由もあるとは思うが、この解説は秀逸だと思う。
言われてみればその通り、の典型。

パープル特集本なので、音楽以外の話題で文章を建てているページも多い。
これはやはりツェッペリンよりもその傾向は強くなる。
良い悪いは別として、パープルってのはそういう見方もされる宿命のバンドだし、それが楽しくてこういう本を作ったり読んだりするんだよね。

しかしだ。
じゃあそういう音楽外ページはどの文章も爆笑なのかと言えば、正直そうでもない。
自分の趣味が極端にトラブルバトル因縁恩讐系に傾いているのがいけないのは承知の上で言うと、思ったより物足りない文章が多い。

「ディープ・パープルはブラック企業か?」なんてタイトルだけで大笑いしそうな感じだが、全体の1/3くらいはブラック企業の定義みたいなことが書いてあって、肝心のパープルにおけるブラック企業的考察は、これまで様々なメディアで語られてきた内容からはみ出すものではないと思った。

適菜収のインタビュー「D層の研究?」も、聞き手との話がいまひとつかみ合っておらず、さらに適菜収も「何も上から目線で『パープルなんてくだらない』と言いたいわけではない」などと言ってしまっていて、まさに語るに落ちた感じ。
しかも「パープルの本に載るなら少しはほめておかないと」などなぜか上からの発言もあり、この人やっぱりホントはあんましパープル好きじゃないんだろうな・・と思う。

「ロックを語る」という行為は、プロアマ問わず楽しいものだ。
そもそも自分自身が10年以上もBLOGでロックを(聴いてないけど)延々語るという馬鹿な行為を続けているくらいなので、プロのライターからすればそれはそれはチカラの入る仕事だろう。
中でもパープルは突出して「語りやすい」バンドである。
音楽や楽曲以外に、メンバーのキャラクターや伝説、バンドの抗争歴史などに「語りたくなる」エピソードが多いからだ。
なのでこの本もそれぞれの書き手がそれぞれの視点でやはり「語って」いる。

ただし、その語りが三流読み手である自分の感覚にスイングするかどうかは、読んでみないとわからない。
内容的にはとても興味深いものでも、「語り」のスタンスや切り口や文体や誤字など、いまいちのめりこめない要素があると、評価としては厳しいものになる。
自分はパープルも大して聴いてなかったくせにそういう点に過剰反応する面倒な読者なのである。

それでもこの本には今まで知らなかったパープル知識がそこかしこに登場していて、ためになる。
詳細はぜひ本書をお読みいただきたいのだが、たとえばキンクスの「You Really Got Me」の録音にはジョン・ロードも参加していたなど、オールドなパープルファンにとっては鉄板な話かもしれないが、自分は初めて知ったのだった。
なお「You Really Got Me」の録音にはペイジも参加したという話もあるらしいが、ペイジは否定してるそうです。

表紙は「In Rock」のジャケ絵を持ってきていて、これもパープル本の必須条件である「特有のダサさ」をがっちり備えたやっぱりな装丁。
表2(表紙の裏側)は現在のメンバー写真、表3(裏表紙の裏側)はステージに立つリッチーのシルエットである。
で、ここもやっぱり紫の1色刷りという避けようのない直球定型。
さらに目次までもが紫1色刷りでステキ。
編集側も読者も何も考えなくてもいい世界だと思います。

今さらだが、ツェッペリンはもうないが、パープルはまだある。
しかも現ギタリストのスティーブ・モーズが加入して20年以上経っており、在籍期間はリッチーよりもずっと長くなっている。
当然スティーブ加入後のパープルは全く別のバンドになっているのだろうが、この本でもネットでも、スティーブ・モーズの評価はかなり高い。
もちろんリッチーやジョンあってのパープルではあろうが、スティーブのパープルでのプレイも一度聴いておく必要がありそうだ。

ということで、文藝別冊「ディープ・パープル」。
失礼ながら期待が大きすぎてやや物足りなかったという感想になりました。
まあいい加減プロレス雑誌と同じ感覚でパープル本を読もうとする姿勢は改めたほうがいいのかもしれません。
と言いながらおそらく今後も、パープルのモメ事を求めてさまよい歩く自分の根性は治らないと思います。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
最近また「読むロック」に回帰しています。理由はツェッペリンリマスター
など過去の名盤再発に合わせてレココレ特集が増えたりムック本が出たり
して、つい買ってしまうからです。

文藝別冊のロック特集本は充実していますね。パープルですが目次を見ているだけ
でも
いろいろと考えて楽しいです。
キース・エマーソンにパープルを語らせるというのは、初の試みでは
ないでしょうか。他の記事では、

山崎智之氏や岩本晃市郎氏はオーソドックスながらも読みたいと思います
し、「オヤジロックバンド」小説もある熊谷達也氏のインタビューも
魅力的です。
一方で、大貫憲章氏や伊藤政則氏はハードロック評ではかかせない
ながらもややマンネリ感あり、和久井光司氏は多分自分語りに終始か。
まあ、いずれにしても豪華な執筆陣だと思います。

>>マジメにパープルという音楽集団を語る王道な編集だ。

やっぱりツェッペリンに比べるとドラッグ癖もなさそうでバンド自体も
メンバーの入れ替えを除けばまじめ、日本のファンもパープルを極めてまじめ
に聞いていますので、奇をてらった編集より、こういう方が「見飽きたよ」
と思いつつ、ファンは買ってしまうと思います。

・・・・できれば最近他の企画でよく見る「意外な有名人がパープルファンだった」
みたいな特集がほしいところです。

投稿: モンスリー | 2014.11.17 21:08

モンスリーさん、こんばんは。

>最近また「読むロック」に回帰しています。

自分も似たような感じです。
もうロックはCDも本もおっさんしか買わないジャンルなんでしょうか・・

>キース・エマーソンにパープルを語らせるというのは、初の試みではないでしょうか。

そんな気がしますね。
これまで読んできたパープル関連記事や書籍で、キース・エマーソンの名前を見たことがなかったと思います。

>一方で、大貫憲章氏や伊藤政則氏はハードロック評ではかかせないながらもややマンネリ感あり

さすが、鋭いです。
政則氏は若い頃のパープルのライブの思い出を楽しそうに語る定番なインタビューです。

>奇をてらった編集より、こういう方が「見飽きたよ」と思いつつ、ファンは買ってしまうと思います。

そうですねぇ、読者のほうも「知ってる話がどれだけ載ってるか」を確認するために読んだりもするんでしょうね。
安心の編集というか・・・

>できれば最近他の企画でよく見る「意外な有名人がパープルファンだった」みたいな特集がほしいところです。

これいい企画ですね。
キムタクが実はパープルファンだった、なんて書いてあると楽しそうだし。
いや、単にタマホームつながりで思いついただけですけど・・・

投稿: SYUNJI | 2014.11.18 22:56

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