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聴いてない 第198回 シーナ・イーストン

先日国民投票により連合王国からの分離独立が回避されたスコットランド。
そのスコットランド出身で美貌の女性シンガーといえば、この人をおいて他にないシーナ・イーストン。
いえ、他にスコットランド出身の女性歌手を知らないだけですけど。

80年代の幕開けと同時に登場した人なので、全く聴いてないわけではないが、自分としては好んで追っていたという位置づけではない。
柏村武昭や小林克也が紹介するのを従順に受け入れていただけである。(失礼)
ヒット曲は多いので、聴いた曲を積み上げるとそれなりの数になりそうだ。
全部書き出してみるとこうなる。

・Modern Girl
・Morning Train (9 to 5:9時から5時まで)
・A Little Tenderness
・For Your Eyes Only
・Just Another Broken Heart(涙のブロークンハート)
・Machinery
・It's Christmas All Over the World(世界中のクリスマス)
・Telefone
・Almost Over You(悲しみ色に染めて)
・Strut
・Sugar Walls
・Magic Of Love
・So Far So Good

思ったより多いぞ。
かき集めるとベスト盤1枚くらいはできそうなレベル。
デビューアルバムもいちおう貸しレコード屋で借りて聴いたことはあるので、聴いてない度は4。
80年代後半以降は全然聴いていない。

80年代女性シンガー戦いのワンダーランドを生き抜いてきたシーナ・イーストンだが、同時期に活躍したオリビア・ニュートンジョンリンダ・ロンシュタットシンディ・ローパーやマドンナといったハデな人たちに比べると、やはり日本のリスナーから見ても少し後ろに回っていたような印象だった気がする。
ついでに自分の興味対象は上記のいずれの方々でもなく、デボラ・ハリーに向かっていたのでした。

スコットランド出身という肩書きはなんとなく知ってはいたけど、それ以上の細かなプロフィールは押さえていなかった。
ということでシーナ・イーストンに関するスコットランド・ヤードばりの内偵を開始。

本名シーナ・シャリー・オール。
1959年4月にスコットランドは造船の街グラスゴー郊外に生まれる。
バーブラ・ストライサンドにあこがれたシーナは、グラスゴーの王立スコットランド音楽演劇学校に入学。
20歳の時に最初の結婚をし、この時の相手の姓であるイーストンを今でも芸名としている。
(旦那のイーストンさんとはすぐ離婚したらしい)

80年に「Modern Girl」でデビュー。
BBCの音楽ドキュメンタリー番組でデビューまでの過程が放送され、人気が沸騰。
セカンドシングル「Morning Train」は全英3位・全米1位を記録した。
81年には映画「007/ユア・アイズ・オンリー」のテーマ曲として「For Your Eyes Only」を発表。
デビュー間もない女性シンガーが、歴史ある名画シリーズで主題歌を歌うという快挙を成し遂げる。

その後本格的に全米市場を主戦場とすべく、ダンス&ファンク路線に方向性を定め、「Strut」「Sugar Walls」などをヒットさせる。
プリンスから曲を提供されたり、ケニー・ロジャースとデュエットしたり、スペイン語で歌うなど、アメリカのマーケットを意識した活動が続く。

しかし80年代後半からは本国イギリスでの実績は下降し始めてしまった。
88年頃まではアメリカでの売上げは好調だったものの、イギリスと同様に厳しい展開に陥る。
90年代以降、今度は日本をターゲットにしてはみたが、それほどの数字は残せていない。

その後はCDやテレビといったメディア路線からは一歩引いた形となり、主にラスベガスなどでのディナーショーで歌うというステージ重視の歌手になっているそうだ。
今年の6月には日本にもやってきて東京や大阪で歌ったとのこと。

確かに80年代半ばまでは、ノエビア化粧品のCMに使われたり、焼酎のCMに本人が登場したりと、日本でもメディア露出は多かった人である。
自分は前述のとおり夢中になったというわけではなく、あの甲高い声はやや苦手な感じもしていたのだが、「A Little Tenderness」「It's Christmas All Over the World」「Almost Over You」なんかはいい曲だと思う。
なお「It's Christmas All Over the World」はニュー・エディションのカバーだそうです。

日本ではこの人とシーラ・Eが混同されることが多かったようである。
同じプリンス・ファミリーで名前の音が似ているからという情けない理由からだと思うが、雑誌で顔写真と名前が整合しなかったこともよくあったらしい。
「夜のヒットスタジオ」にシーラ・Eが出演した際、司会の吉村真理が「この人がシーラ・イーストンさんでぇーす」と大声で紹介してしまい、日本中の洋楽少年少女が一斉に脱力したという事件も起きた。
この番組は海外アーチストを出演させる時は基本的にクチパクで、楽器にさわる前に音が出てしまったり、フェードアウトする音にどう対応していいものやら困惑しスタジオを見回すボーカルの表情がイタかったりで、当時の洋楽好きなナウいヤングからの評判は良くなかったはずである。
シーナも「夜のヒットスタジオ」出演経験があり、新曲「Telefone」を歌った(合わせた?)そうです。
この曲、スペルが「Telephone」でないのはなぜ?

個人的にはこの人はバラードでこそ輝くシンガーではないかと思っていたので、ダンスやファンクに傾倒したスタジオ盤を聴くよりは、バラード集みたいな企画盤でもあったらいいのにと考えたりする。
まあシーナ・イーストンに限らず、聴かず嫌いなだけかもしれませんが・・
「そう言わずにファンクなアルバムも聴けよ」といったご意見などございますでしょうか?

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聴いてない 第197回 エニグマ

今日採り上げるエニグマ、少なくともロックやメタルとは全く違うジャンルのはずである。
プログレが若干近いような気もするが、ヒーリングとかグレゴリオ聖歌といったキーワードで紹介される音楽である。
そもそも自分はヒーリングなミュージックをたしなむガラではないですが・・・

エニグマ、実は2曲ほど聴いている。
聴いたのはNOW2という名のオムニバスCDに入っていた「Return To Innocence」。
エニグマの代表曲であり、日本でも知っている人は多いと思われる。
もう1曲「Beyond The Invisible」も聴いたことがあり、聴いてない度は3。

さてエニグマ。
ヘンな名前だが活動も実績もかなり変わっていて、ナゾの多い不思議な団体のようだ。
エニグマという言葉も「謎」という意味があるとのこと。
中心人物はマイケル・クレトゥという人だが、エニグマはバンドというよりはプロジェクトユニットのようなゆるやかな集団で、様々な人たちが参加してきたらしい。
というわけで、謎のエニグマを秘密裏にネットで調査。

マイケル・クレトゥはルーマニア出身で、もともとはクラシックのピアニストを目指していた。
70年代後半頃から西ドイツでスタジオ・ミュージシャンやアレンジャーを始め、ヒューバート・カーやマイク・オールドフィールドのアルバムのプロデュースを手がける。
90年に元アラベスクのサンドラ・アン・ラウアーとともにエニグマとして「Sadeness PartⅠ」を発表。
この時点ではエニグマの正体は明らかにされておらず、その後も謎の音楽集団としてアルバム「MCMXCa.D.(サッドネス:永遠の謎)」や「The Cross of Changes」をリリースした。

「The Cross of Changes」のライナーで参加メンバーが明らかになり、エニグマはようやく正体を現す。
その後は数年おきにアルバムを発表。
マイケル・クレトゥが中心であることは変わらず、アルバムごとに参加メンバーは異なるが、参加人数は減少傾向にあるようだ。
1枚のアルバムにかける制作期間が2年から4年と長く、またエニグマとしてライブは行ったことがない。
「イメージを大切にしたい」との理由からだそうだが、スタジオで作った楽曲の再現が大変だからということもあるらしい。
果てしなくインドアなユニットである。

で、自分が聴いた「Return To Innocence」という曲については、権利関係をめぐるトラブルがあったことでも有名である。
このことは2曲しか聴いてない自分でもうっすらと知ってはいた。
ネットで調べると、細部には違いも見られるが、このトラブルについての記述はすぐに多数見つかる。

大まかに言うと以下のような経緯のようだ。

台湾先住民アミ族のディーファン(日本統治時代の名前は郭英男)という人が歌う民族音楽が、主にヨーロッパの音楽専門家の間で評判となり、氏は1988年にはフランスで公演も行った。
このディーファン氏の歌を、フランスの教育省が氏に無断で録音。
(実際に録音したのはテレビ局・大学教授など諸説あり)
教育省はその音源を使って台湾原住民民謡CDを発行したが、ライナー等にディーファン氏らに関する記載は一切なし。
さらに教育省は音源をこれまた無断でEMIに売却。
エニグマはEMIから許諾を受け、権利関係はクリアなものだと認識して「Return To Innocence」に音源(ディーファン氏の歌う「老人飲酒歌」)を使用。
「Return To Innocence」はアトランタ・オリンピックのプロモーションにも使われ、世界中でヒットした。

ディーファン氏は著作権侵害であるとエニグマやEMIを相手に訴訟を起こす。
その後和解が成立し、EMIからディーファン氏にはダブルプラチナムが贈られることとなる。
ディーファン氏はあらためて民族音楽を歌ったCDを発表し、世界にアミ族の音楽を広めるという長年の夢を実現した。
なおディーファン氏は2002年に亡くなっている。

ネットでは「エニグマ側にはディーファン氏の曲や歌声を勝手に使ったという意識はなかったと思う」といった記述が多い。
エニグマはEMIから許諾を受けて使ったのだから、EMIとフランス教育省の管理に落ち度があったことになる。
しかし、「知らなかったので許される」ということではないのが、著作権や芸術産業の難しいところだ。
まあ和解が成立してディーファン氏も自らの民族音楽CDを発表できたので、結果としてはよかったのではないだろうか。
見方はいろいろだと思うし、自分も別にエニグマを擁護する立場にはないのだが、おそらくエニグマ騒動がなければ、ディーファン氏の民族音楽を世界へ発信するという夢の実現については、もっとハードルが高かったはずである。

いずれにしても「Return To Innocence」、楽曲そのものに罪はなく、味わい深くいい曲だとは思う。
「老人飲酒歌」には歌詞がないので、民族音楽としてどんな意味が込められているのかは不明だが、ヒーリングというカテゴリーにあって何ら違和感はない。

聴いていたもう1曲の「Beyond The Invisible」はもっと悲しげなサウンドで、歌詞も抽象的で深いイメージである。
どちらの曲も好みかと問われると難しいが、悪くはない。
アルバムまるごと聴いていたら14分過ぎあたりで寝るような予感はしますけど。

ということで、謎の音楽集団エニグマ。
アルバムはベスト盤を含めて9枚発表されている。
たぶんベスト盤を聴いたら他のアルバムは聴かないような気がするので、聴くとしたら「Return To Innocence」収録の「Cross of Changes」が王道だとは思いますが、他のアルバムでおすすめはありますでしょうか?

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聴いてない 第196回 ストライパー

流浪のメタルシリーズ、今回は満を持しての登場、ストライパー。
みなさんはご存じでしょうか?

ネットでストライパーを調べると必ず出てくるのが「クリスチャン・メタル」という表現。
こういうジャンルがアメリカでは確立されているのかよく知らないのだが、やってる音楽はメタルなんだけどメンバーは敬虔なキリスト教徒で歌詞も神様を讃える内容という、極東の三流リスナーな自分にとっては異色のバンドという印象である。

日本でもヒット実績はあるようで、こんな自分でも1曲だけ聴いている。
88年頃の「Always There For You」というMTVで拾った曲なんだが、もうクリスチャン・メタルというイメージ全開のショートケーキにアラザンと角砂糖をトッピングして練乳かけたようなクソキラキラなサウンドで、実はわりと好きである。
しかし他の曲やアルバムを聴くまでには至らず、聴いてない度は2。

バンドのことはクリスチャンなメタルという薄皮な部分しか知らないので、彼らの歴史をおごそかに学習。

ストライパーは兄ロバート・弟マイケルのスウィート兄弟と、オズ・フォックスを中心にカリフォルニアにて結成され、ティモシー・ゲインズを加えてストライパーとして84年にデビュー。
バンド名は、聖書のイザヤ書53章5の文中の「stripe」という単語に由来。
stripeは「傷」と訳されるようです。
なお基本コスチュームは黄色と黒のストライプというリゲインなスタイルで、日本のファンからは工事中とか阪神とか言われているらしい。
なおスウィート兄弟のパートは、兄がドラムで弟がギターというヴァン・ヘイレンと同じ組み合わせ。

85年のアルバム「Soldiers Under Command」が50万枚以上の売上げを記録する。
さらに86年のアルバム「To Hell With The Devil」がプラチナムディスクを獲得した。
この時点でクリスチャン・メタルバンドとしての地位を確立したと言われる。
欧米だと教会で歌うミュージシャンは結構いるとは思うが、ロックやメタルというジャンルで信徒から支持されるというのはやはり珍しいケースではないだろうか。そうでもないのかな?

クリスチャンだけどメタルなのでやはりメンバーチェンジはあるようで、86年くらいでティモシーは脱退。
ただレコーディングには参加しないけどツアーにはついてくるという、ややゆるい離脱だったらしい。
88年には4枚目のアルバム「In God We Trust」 を発表。
このアルバムに自分が聴いた大ヒット曲「Always There For You」が収録されている。
ただしファンからはサウンドが大衆的すぎるという評価を受けたそうだ。

さてストライパー、以降の展開は非常に興味深い。
90年にバンド史上最大の問題作とされる「Against The Law」をリリース。
直訳すれば「法に触れる」という題名。
ここで神を讃える歌詞もばっさりやめて、サウンドも重く激しく暗いものに一変。
しかもプロデューサーはモトリー・クルーを手がけた実績を持つトム・ワーマンである。
クリスチャンでレアなメタルからふつうのメタルへと大きく方向転換したのだ。
なぜ?

で、予想どおりクリスチャンなバンドのストライパーを支持していた人たちからはものすごい反発。
マスコミからも「神を利用していただけのふつうのメタルなバンド」などと叩かれたらしい。
その後レコード会社も倒産し、92年頃バンドは消滅する。

メンバーはそれぞれ他のバンドやソロで活動していたが、2000年にめでたく再結成。
ただオリジナルメンバー全員が参加したわけではなく、またマイケル・スウィートは2008年にはボストンに加入しながらストライパーも兼業というフレキシブルな活動が続く。
2010年頃ようやくベースのティモシーがバンドに復帰し、翌年には「The Covering」という直球なカバーアルバムを発表。
このカバー集がなんというか高校生の学園祭のノリのような選曲で、サバススコーピオンズオジー・オズボーンやらカンサスやらヴァン・ヘイレン、果てはパープルの「高速道路の星」とツェッペリンの「移民の歌」を詰め込むというベタな構成。
ジャケットも漫画アクション連載の不良学園漫画(ねえよそんなジャンル)みたいな絵が素敵。
・・・現在もストライパーは存続で、神賛美路線も健在とのこと。

やはりいまいちよくわかんないのは90年に大幅な路線変更を試みた点である。
理由はいろいろあるんだろうが、全米のクリスチャンから支持されて教会で演奏したら信徒から寄付までされるというバンドなので、いきなりただのメタルに変身したらそりゃ怒られるよなぁ。

自分は1曲しか聴いてないけど、クリスチャンなメタルという情報はどこかで仕入れて知っていた。
ただしウィキペディアに書いてある「ステージ上から聖書を投げるといったライブパフォーマンスで有名」というのは知らなかった。
聖書投げたらあかんやろ。
いや、聖書に限らないが。
自分はいちおう出版社の人間なので、書物を投げたり踏んだりという行為はどうしても受け入れがたいのである。
自分が知っていたのは「ライブ終了後、会場出口でメンバーが客に聖書を配る」という、もう少しおだやかな話であった。
でも「聖書を投げる」話はあちこちのサイトやBLOGで見つかるので、やはり投げていたのだろう。
投げたらあかんやろ。

敬虔なキリスト教徒のバンドのはずが、マイケルの「ベッドでグルーピーに聖書の教えを話している」などといった発言もあり、神をも恐れぬ?サバスやオジーやジューダスをカバーしたり、思ったよりも俗っぽい方々のようです。
こういうバンドが日本ではどれくらい人気だったのか全然わからないが、ふつうのメタルよりはきっと聴きやすいのではないかと想像している。
実際「Always There For You」はサウンド面での拒絶感は全くなかった。
マイケル・スウィートの甲高いビブラートのボーカルも嫌いではない。
なので問題作「Against The Law」以外のアルバムならどれも案外聴けるのではないかと甘いことを考えている。
カバー集である「The Covering」なんかも面白そうだよね。

ということで、ストライパー。
日本での評価はこれまたほとんどわかりませんが、おすすめのアルバムや思い出の曲などありましたら教えていただければと思います。

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聴いてみた 第118回 U2 その2

今日聴いてみたのはU2。
全曲無料ダウンロードの「Songs Of Innocence」である。
勝手にスマホにダウンロードされてしかも消去できず(その後Appleが消去方法を公開)、若い人たちから不評を買ったという、あの話題先行の問題作だ。

Songs_of_innocence

自分も今年からiPhoneユーザーなので、iTuneで入手してみました。
ただし自分はiPhoneでは音楽を聴く設定にしていないので、ダウンロードした先はPCである。

AppleとU2が突然始めたアルバムまるごと無料ダウンロード。
音楽の提供のしかたが変わることはみんなわかっていただろうが、U2がこういう形でしかけてくるとは誰も予想していなかったとは思う。
Appleのティム・クックは「史上最大規模のアルバムリリース」と宣言し、ターゲットは世界中で5億人とも言われる。
iPhone6もそうだけど、中身よりはまず知ってもらうというAppleの戦略にU2が乗っかった形ということだろうか。
ちなみにボノは音楽の無料配信にはやっぱ反対の姿勢なんだそうで、今回のことは「我々がタダで配っているわけではなく、Appleがやってること」と話しているらしい。
U2だから無料も可能だったと思うし、同じように無料配信で後に続くアーチストなんてなかなかいないのでは?
まあ自分も無料だから今回ダウンロードしたんであって、ふつうに2400円になりますなどといった設定だったら静観していたはずだけど。
今も毎日テレビCMが流れているが、CDは10月下旬に発売されるので、それまで無料ダウンロードは可能のようだ。

ボノによれば「U2のアルバムにしては珍しく歌詞的に作品に一体感がある」とのこと。
果たして自分もその一体感をつかむことはできるのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.The Miracle (of Joey Ramone)
2.Every Breaking Wave
3.California (There is no End to Love)
4.Song for Someone
5.Iris (Hold Me Close)
6.Volcano
7.Raised By Wolves
8.Cedarwood Road
9.Sleep Like a Baby Tonight
10.This is Where You Can Reach Me Now
11.The Troubles

全体的に曇り空のようなサウンドが多い。
明るく楽しい曲や激しいロックはそれほどなく、U2らしい、彼らの得意なスピードで進行する曲が続く。
全て新曲だが、ファンの人から「これ昔のアルバムにあったよ。よく聴いたなぁ」などと言われたら「へぇーそうなんですか」と信じてしまうような、そんな印象。
自分の好きなU2のサウンドやリズムとも微妙に違う。
前回聴いた「How to Dismantle an Atomic Bomb」のようなはじけた部分がほしいと思う。

歌っている内容はやはり重いものが多いようだ。
たとえば「Iris」はボノが子供の頃に亡くなった母親について歌った曲、「Raised by Wolves」はアイルランドの自動車爆破事件を歌ったものだそうだ。(訳詞を読んでもあんましわからないけど)
まさにU2本領発揮の名曲であろうが、80年代の彼らだったらもっとものすごくインパクトのあるサウンドまで持ってきていたのではないかと思うのだ。
「New Year's Day」「Sunday Bloody Sunday」などのように。
そうはなっていないところが、いわゆる「円熟」ということなのかもしれないが・・・

U2はメンバーを変えていないのにサウンドはかなり変化してきたという不思議なバンドだ。
自分もその変化についていけた時とダメだった時がはっきりしていて、各アルバムの評価も明確に差が出る。
前作「No Line on the Horizon」は聴いていないので、今回の変化度合いはわからないのだが、自分の知っているU2から大幅に変わったという印象はない。
変化を期待していたわけではないのだが、このアルバムはなんというか「B面特集」みたいな雰囲気だと思う。
悪くないが、それほどインパクトのある曲もない。

ネットでは今のところマスコミも業界側もリスナーも、やはり無料ダウンロードという話題が先行しているようだ。
リスナーの「楽曲については新鮮味に欠ける」「有料で買って聴いたら不満」といった感想も散見され、共感するものもある。
たとえばもし2015年にU2が日本にやってきて、東京ドームや武道館で公演する場合、このアルバムの中でイントロが鳴りだしたら会場が大きく盛り上がるような曲ってあるだろうか?
今回のアルバムについての評価は正直そんなところだ。

ただ、どの曲もやはりU2のものであり、「なんだこれ」と思うような痛い作品がないのはさすがだと思う。
もしも自分がもっと若い年齢で聴くことができたら、おそらく評価はもう少し違っていたはずである。
ボノもエッジも自分も同じだけトシをとったのだ。(知り合いかよ)

パッケージになっていないので、ジャケットと言っていいのか不明だが、ダウンロードされるデータに付いてきた絵は、白地に「U2」という文字と、「LP」という手書きの文字があるだけの状態。
CDで発売される時には違ったデザイン(ラリーが息子を抱きしめている写真)になるようだ。

というわけで、「Songs Of Innocence」。
話題の新譜を聴けたことはよかったです。(タダだし・・)
しかしながら楽曲についてはやや厳しい評価となりました。(浅いけど)
そもそも自分は新譜をほとんど買わない貧困リスナーなので、今回のダウンロードも、かつて「マイ・サウンド・グラフィティ」で全曲オンエアをまるごとエアチェックした感覚とほぼ同じ。
仮にショップで何曲か試聴したとしたら、おそらくCDは買わないだろう・・と思います。
みなさまの感想もぜひお聞かせください。

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