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聴いてみた 第117回 ローリング・ストーンズ その14

実は先週原因不明の大下痢を発症し、会社も休んだ上に次の日から予定していた旅行も全てキャンセルしていたSYUNJIといいます。
朝ふつうに起きて会社に行くつもりが、突然20分おきくらいの下痢となり、旅行どころか電車に乗って会社に行くことすら不可能になりました。
まあ会社に行く前に発症したのがせめてもの救い。
電車の中で発症してしまったら、おそらく社会復帰さえも困難な中年になっていたことでしょう。

ということで病み上がりのさなか今日聴いたのは、イーグルスとはおそらく交流は全然なかったであろうストーンズ
ストーンズ予備校の一般教養必修教科である、70年代最後の未聴盤「Sticky Fingers」。
いえ、ホントにイーグルスと交流がなかったかどうか調べてはいませんけど・・・
ふつうストーンズを学習するにあたっては、このあたりから始めるもんだとは思っていたんだが、いろいろあって結局かなり後のほうの鑑賞となりました。

Sticky_fingers

「Sticky Fingers」は71年発表。
スタジオ盤としては「Let It Bleed」の次で、「Exile on Main Street」の前になる。
この頃のストーンズはブルースやカントリーなど様々な要素を採り入れつつ、それを自らのオリジナリティに満ちた音楽に昇華させ、ストーンズの楽曲として確立させてきた時期と言われる。
大ヒット曲を連発しながら、アルバムでは多面性を開花させ、セールス的にも成功していた、という状況。

自らのレーベル「ローリング・ストーンズ・レコード」を設立し、そこからこのアルバムは発表された。
ミック・テイラーも本格的に参加し、メンバー全員のテンションや自信が楽曲に表現されているとのこと。
果たしてあたしはこれで無事に不服申し立ても受理されてストーンズ論文発表の名誉も回復できるのでしょうか。(意味不明)

・・・・・聴いてみた。

1. Brown Sugar
今さら説明不要なストーンズを代表するナンバーでスタート。
よく聴いてみるとサウンドはシンプルで、そんなに厚みのある音ではない。
若い頃はもっと騒々しい印象だったが、今聴くとそれほどでもないのは、多少ストーンズに慣れたということだろうか。
高校生の頃、ユウコという後輩の女の子が熱烈なストーンズファンで、いろいろ熱く語ってくれたのだが、残念ながら当時自分にはストーンズ体験がほとんどなく、ユウコの熱い想いを全然理解してあげられなかった。
そんなユウコが一番気に入っていたのが、他ならぬこの「Brown Sugar」であった。
すまなかったなぁユウコ。
どこかで会えたら、今ならオレも少しストーンズわかるようになってきたから、また語ってくれよ。
・・・といったセンチメンタルな気持ちにさせる名曲。(何言ってんだか)

2. Sway
ゆったりしたリズムながらハードなサウンドが非常にシブイ。
ストーンズにしては珍しい感じの太いベースラインとリズムギターに、ミック・テイラーのノリのいいギターがからむ。
これはいい曲である。
エンディングの長いギターを聴いて、エアロスミスの「Amazing」という曲を思い出した。

3. Wild Horses
この曲はベスト盤で聴いている。
カントリー調のおだやかな進行、アコースティックとエレキ、ミックのボーカルとコーラスの、ややはずした感のある程良い調和が見事である。
これまで聴いてきたストーンズの曲の中でも、好みのランキングでは10位以内に入る。
何度聴いても飽きることがない。

4. Can't You Hear Me Knocking
これも「Sway」同様くもったベースに、がなるギターがマッチした鋭いサウンドだ。
ミックもギターに負けずシャウトで応戦。
・・・なんだが、後半はボーカルが引っ込んでジャズの即興みたいな展開に。
この構成はちょっと残念だなぁ。

5. You Gotta Move
スライドギターにミックの歌がねちっこくからむ、少しヘンな曲。
うちにやって来る浄土真宗の坊さんに、こんな声でお経を読む人がいるなぁ。(どうでもいい)
アルバムの中でこれだけがカバーだそうだ。
フレッド・マクダウェルというブルースミュージシャンのカバーとのことだが、この路線はなんとなく耳になじまず苦手。

6. Bitch
これもベスト盤で聴いている。
ストーンズの持つ一番基本的なイメージをふつうに体現したらこうなるという曲。
左側のギターがミック・テイラーだと思うが、よく聴くとスゴイ音を出している。

7. I Got The Blues
これもタイトルどおりどっぷりのブルースなのだが、明るい旋律が多少聴きやすく感じる。

8. Sister Morphine
かきならしアコギにミックが捨てバチな声でストリートミュージシャンのように歌う。
中盤から右側のエレキギターが主張を強め、やや曲調が厳しくなる。
深みのある味わい。
ギターで、ライ・クーダーが参加し、作詞でマリアンヌ・フェイスフルが協力したとのこと。

9. Dead Flowers
これもギターがぽよーんとしたカントリーなサウンドだが、ミックの低めな歌い方もカントリー歌手のようだ。
砂漠に止まったアメ車のカーラジオなんかが似合いそうな曲。

10. Moonlight Mile
ゆったりと流れる壮大なリズムにアジアっぽいメロディ。
ストーンズらしくない変わった曲。
映画のエンディングのように終了。
この曲をラストに持ってきたのは見事である。

さて聴き終えた。
簡単に言うとカッコイイ曲が多い。
ノリのいいロックだったり、聴かせるバラードだったり、ストーンズの持つワイルドさとナイーブさ、ポップとブルースとカントリーという多面性が、絶妙のバランスで続々と登場する名盤である。

ネットで調べるとやはりミック・テイラーのギターサウンドを評価する意見が数多く見つかる。
またゲストに迎えたライ・クーダーの評判も高いようだ。

おそらくもっと若い頃にここからストーンズを聴き始めていたら、もっとストーンズが好きな人間になっていただろうと思う。
ストーンズのアルバムは自分にとって非常に序列が付けにくいのだが、聴いてきた中では上位に位置すると言って間違いはないだろう。
実際「Beggars Banquet」「Let It Bleed」「Sticky Fingers」「Exile on Main Street」と名盤が続いた時期を、最絶頂期と評する人は多いようで、この4作は自分でもいいアルバムだと感じている。

意欲的なサウンド構成である一方、歌詞には絶望や死や混沌といった暗い内容を歌ったものが多いそうだ。
もともとそんなに脳天気な歌ばかりではないのがストーンズなんだろうが、バンド創始者であるブライアンの死やオルタモントの悲劇など、あってほしくなかったけどどうしようもなかった悲しい出来事が、この頃の曲に投影されていると分析する人もいる。
訳詞を読むだけではそこまでわからないが、当時の英米の若者の心をゆさぶる作品だったことは間違いない。

ジャケットは20世紀最大の名作とも言える、有名なジッパージャケット。
デザインはアンディ・ウォーホル。
CDになってアートとしての価値はほとんどなくなってしまったが、楽曲のレベルとジャケットの芸術性が相乗効果を生みだしていると思う。
70年代のLP盤はこういうところも楽しかった、という典型である。

というわけで、「Sticky Fingers」。
これは良かったです。
ストーンズの名盤という意味でも、また20世紀のロック・ミュージックとしての楽しさとしても、非常に聴きごたえのあるアルバムだと思います。
いちおう目標としていたアルバムはこれで聴き終えたことになりますが、この先もう少し60年代や80年代以降の作品などもかじってみたいと考えております。

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コメント

こんにちは、JTです。

「Sticky Fingers」、前2作と比べると目の前が広がるというか、カラッとした印象があります。ミック・テイラーの影響かな。でもどちらかというと、どんよりとした前2作の方が好きだったりします(笑)。

>ジャケットは20世紀最大の名作とも言える、有名なジッパージャケット。

こういった変形ジャケットって、ジャケット作る費用も通常版より若干かかると思いますが、ストーンズ側が負担してたのですかね。

そういえばこのジッパーを下げて中を覗くと、パンツの写真が印刷されていて凝っていました。

投稿: JT | 2014.05.12 06:51

JTさん、こんばんは。

>「Sticky Fingers」、前2作と比べると目の前が広がるというか、カラッとした印象があります。

そうですね、自分みたいな素人でもわかりやすいサウンドが多いと感じます。

>こういった変形ジャケットって、ジャケット作る費用も通常版より若干かかると思いますが、ストーンズ側が負担してたのですかね。

負担はレコード会社ですかね?
物理的な制作原価もウォーホルのギャラもかなりかかったんじゃないかと思いますが・・
並べて立てておくと隣のレコードが傷むという弊害もあったらしいですけど。

>そういえばこのジッパーを下げて中を覗くと、パンツの写真が印刷されていて凝っていました。

パンツの中身が印刷されてなくてよかったスね・・

投稿: SYUNJI | 2014.05.12 21:51

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