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聴いてみた 第115回 ローリング・ストーンズ その13

先日ミック・テイラーを伴って楽しい来日公演を果たしたストーンズ。(表現が安い)
わたしのストーンズ学習もすこぶる順調に進んでいます。
なあんて書いてはみたものの、実はウソばっかで順調という意識は相変わらずない。
今ストーンズ検定を受けたら間違いなく落ちるはずである。
そんな勉強不足のさなか、今回は60年代の作品にアプローチ。
1966年の作品「Aftermath」を聴いてみました。

Aftermath

「Aftermath」は全曲ジャガー&リチャードのオリジナルで、これはストーンズのアルバムとして初めてのことであった。
しかし。
このアルバム、本国イギリス盤とアメリカ盤があり、曲数や順序に違いがある。
イギリス盤は14曲あったが、アメリカでは多すぎると判断され、4曲削られて「黒くぬれ」を加えられた11曲で発売された。
で、今回自分が買ったCDの収録曲はアメリカ盤のものである。
中古CD店の閉店セールで何も知らずに買ったのだが、アメリカ盤なのに「ワタクシはAftermathを聴いたんですのよ」と町内に回覧板で伝えてしまってよいもんだろうか?
「イギリス盤聴いてから言えやボケどついたろかこのサル」と近所から苦情が来たらどうしよう・・・
そんな不安の渦巻く年度末、とにかく増税前に聴いてみることにした。

なお「Aftermath」とは「余波」と訳されるらしい。
実際発売当時は日本では「余波」という邦題がついていたそうだ。
果たしてあたしはストーンズ来日旋風の余波を受けて舟もろとも大破するのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Paint It Black(黒くぬれ)
誰もが知ってる有名すぎる曲のはずだが、実はあんましきちんと聴いたことがなかった。
こんな曲だったっけ?
「んばんばんばんば」というスカっぽいビートにブライアン・ジョーンズが奏でるシタールの不思議な音。
後半からは右奥から改造バイクのような音がぶんぶんとうなる。
正直ヘンな曲だが、この路線は嫌いではない。
聴いてて思いだしたのだが、昔観た映画「ヒポクラテスたち」で、主人公役の古尾谷雅人が、アタマがおかしくなって自分の白衣をマジックで真っ黒に塗りつぶすシーンがあったが、この時口ずさんでいたのが「黒くぬれ」だった。

2. Stupid Girl
はねるリズム、ゆがんだキーボード。
途中の乾いたドラムやかきむしるギターはどこかヤードバーズのような曲。

3. Lady Jane
美しいアコギの音色で始まる名曲。
なんだかサイモン&ガーファンクルみたいな雰囲気だが、ミックの微妙なボーカルも思ったよりアコギにマッチしている。
これはいい曲だ。

4. Under My Thumb
この曲もタイトルはよく目にしていたが、まともに聴くのは初めてだ。
ロックンロールでもバラードでもない、微妙なサウンドとリズムだが、これは悪くない。

5. Doncha Bother Me(邪魔をするなよ)
わかりやすいリズム&ブルース。
歌詞に「オレのアイラインの描き方には著作権がある」といった部分があり、読んでて笑ってしまった。

6. Think
これも比較的わかりやすいサウンド。
左側に乾いたギター、右側にブルージーなギターという配置で構成されている。

7. Flight 505
雰囲気は前の曲と似たような感じ。
ミックのダレた適当なボーカルはまだどこか抑えた印象。

8. High And Dry
カントリー調のテンポのいい曲。
ここでもミックはわりと大人しく歌うが、けっこう楽しく聴ける。

9. It’s Not Easy
少しチカラが入ってきたロックナンバー。
ようやく本領発揮といった感じのミックのボーカル。

10. I Am Waiting
ストーンズにしてはおだやかで不思議なメロディとコーラスのバラード。
どこかポール・マッカートニーが作りそうな曲だが、そこは決してビートルズのような緻密なサウンドに仕上げないのがストーンズ。
面白い曲だ。

11. Going Home
ラストは再びリズム&ブルース。
それほど盛り上がることもなく進行して終わるのかな・・?と思っていたら、中盤から少し様子が変わって来る。
ミックがどんどん粗野になり、同じようなリズムでそれぞれのパートが延々と続く。
この展開はちょっとドアーズを思わせるが、実験的でサイケやプログレのような感じにも思える。
11分もあってやや飽きが来る。

このアルバムも奥が深い。
単なる古き良きロックンロールではなく、様々な工夫や試みがあり、ストーンズがリズム&ブルースを基調に自分たちの世界や音楽観を作り上げる途上にあったことがうかがえるような気がする。
楽器の音は当然60年代のものだが、楽曲や歌はその枠からあちこちはみ出ており、不思議な完成度になっている。
未だにストーンズのなんたるかを全然わかってない自分としては、今さらだけど大きな発見である。
70年代の粗野で野蛮なストーンズの前には、こんな芸術的作品もあったんですね。
アルバムを聴く度に痛感するストーンズの多面性だが、この「Aftermath」にもそれは強く感じる。

作詞作曲はミックとキースだが、楽曲の仕上げにはブライアン・ジョーンズの様々な試みが加えられているそうだ。
この頃すでにメンバーの間では浮いた存在になりつつあったらしいが、高い演奏技術を持っていたブライアンは、このアルバムでもまだその才能を発揮している。

で、作品にはブライアンの功績が大きく残ることになったが、制作過程においては一層分業が進み、「みんなで仲良く曲作り」といった状況からはほど遠く、ブライアンはミックとキースが作った曲にいろいろな楽器で音を重ねる作業を、一人で寂しく行っていたらしい。
こういう状態がこの後どんどん加速して、ブライアンは精神的に追い詰められ、薬物に依存しグループを脱退しプールの底に沈む、という展開だそうです。
うーん・・・なんか知れば知るほどかわいそうなブライアン。

「Aftermath」について調べていくと、あちこちのサイトやBLOGに書かれているのが「1966年の作品である」という点。
この年にはビートルズの「Revolver」、ディランの「Blonde On Blonde」、ビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」といった後世に残る名盤が発表されている。
当時の英米気鋭のミュージシャン達が、それまでの音楽概念の枠を超えた作品を出し始めた象徴的な年であり、ストーンズもその波に乗った「Aftermath」という名作を世の中に送り出した、という説明。
なるほどなぁ。
これで自分もここにあげられた各作品とも聴いたことになるが、みんな「何かをやろうとしていた」感覚だけは感じ取ることができる気がする。

さて「Aftermath」のジャケットだが、これもイギリス盤とアメリカ盤では全然違う。
メンバー写真という点では共通しているが、イギリス盤は紫っぽい色と黒の二色刷り?だが、アメリカ盤はブレた感じのカラー写真である。
どちらかと言えばイギリス盤のほうが怪しい雰囲気で好みだ。

ということで、「Aftermath」。
これは非常によかったです。
個人的な感想としては、「Going Home」以外はどの曲も聴きやすくいいと思うし、これまで聴いてきたストーンズのアルバムの中でも、好みの点から言うとかなり上位に位置する感じ。
次回こそは70年代スタジオ盤で唯一聴いていない「Sticky Fingers」に挑戦しようと思います。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
私はUKバージョンを所有しております。友人が「初期の
ストーンズではおすすめ」ということで挑戦してみました。
おっしゃるとおり、USとUKで収録曲が異なり、
たとえばUKでは「黒くぬれ」がありません。

>>楽曲や歌はその枠からあちこちはみ出ており、不思議な完成度になっている。
>>70年代の粗野で野蛮なストーンズの前には、こんな芸術的作品もあったんですね

同感です。UKの冒頭3曲は「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」
のノリを期待しますと肩すかしを食らいます。たとえば、ギターより
シタールを前面に出したり、粘っこくなくカラリとしたアコースティック
ブルースがあったり、様々な音楽を取り込もうという
方向性を感じます。「ミス・ユー」でディスコを取り入れる柔軟な
姿勢はもう始まっていたのですね。
ロック色、典型的なストーンズ色は薄いかもしれませんが、私も
気に入っております。付け加えると、ジャガーのワルな魅力や
ワッツのドラムのかっこよさが、ストーンズらしさをもたらして
いますね。

投稿: モンスリー | 2014.03.16 17:46

モンスリーさん、コメント感謝です。
UK盤をお持ちでしたか!さすがです。(よくわかんないけど)

>ギターよりシタールを前面に出したり、粘っこくなくカラリとしたアコースティックブルースがあったり、様々な音楽を取り込もうという方向性を感じます。

そう思いますね。
どうも自分は「ストーンズという粗野なバンド」というステレオタイプな見方に長いこととらわれすぎていたようです。
マスコミが悪いんだよなぁ。(←人のせい)
確かにワイルドな部分もあるけど、それ以上に多面的で実験好きなバンドですね。(表現が雑ですけど)

>付け加えると、ジャガーのワルな魅力やワッツのドラムのかっこよさが、ストーンズらしさをもたらしていますね。

そうですねぇ、どのアルバムでもミックやチャーリーはかっこいいとは思いますが、でも同じようなアルバムもあまりないんですよね。
やはり奥が深いです。

投稿: SYUNJI | 2014.03.16 22:32

オジキ
楽しい来日公演。と言ってしまえない様な様々な事が起きた来日公演でした。
ちなみに全公演参戦してきました。

奔放なロケンローと言うパブリックイメージはいったいどこから来たのでしょうかね?
サティスファクション
ジャンピング・ジャック・フラッシュ
ブラウン・シュガー
このあたりなのでしょうかね。

お聴きになられていましたか申し訳ありませんが失念してしまいましたが、ろけんろーでも無いSTONESもたくさんあります。

良い悪い
好き嫌いは別にして、そうした顔を。と言うのであれば、やはりアフターマスに続く、ビトィーン・ザ・バトンズ、ゼア・サタニック・マジェスティーズ・リクエスト、そして、ベガーズ・バンケット、(可能であればロックンロール・サーカスまで)を続けて聴いて欲しいです。

・ブライアンを中心としたドラッグ禍によるライブ活動からの離脱
・R&B、R&R、Bluesといった本人達のルーツから離れ、世間のトレンド(Swinging London~サイケデリック)とドップリ格闘した時期(ブライアンのシタール等装飾的楽器が全面の時期とも)、ブルーズへの回帰、ライブの場所への回帰を目指し、ブライアンをクビにする。

この流れを順を追って聴く事で、ストーンズが自分達のルーツから離れ、自分達を見失い、そして見つめ直し、乗り越えて行く。

このプロセスがあったが故に、今の彼等がいるのだと思っています。と言う意味において、アフターマスはとても重要なアルバムなのではないか。などと思います。

投稿: V.J. | 2014.03.18 21:10

V.J.若、コメント感謝です。
若の参戦レポ拝見しました。
キースの調子があんまし良くなかった日もあったみたいですね。

>奔放なロケンローと言うパブリックイメージはいったいどこから来たのでしょうかね?

ご指定の3曲や、オルタモントや、ジャック・ダニエルで入れ歯洗ってたとか全身の血を入れ替えたとか、そういう伝説も含めて、ですかね?

>やはりアフターマスに続く、ビトィーン・ザ・バトンズ、ゼア・サタニック・マジェスティーズ・リクエスト、そして、ベガーズ・バンケット、(可能であればロックンロール・サーカスまで)を続けて聴いて欲しいです。

やはりそうですか・・
まだベガーズ・バンケットしか聴いてません・・
「Out Of Our Heads」「Flowers」あたりも興味はあるんですけど。

>と言う意味において、アフターマスはとても重要なアルバムなのではないか。などと思います。

深い・・さすが若の分析。
その時代ごとのトレンドやうねりに影響はされつつも、ブルーズへの回帰・ライブへの回帰を根底に持っていたからこそ、50年もバンドが続いたんでしょうね。
「Aftermath」、このタイミングで聴けてよかったです。

投稿: SYUNJI | 2014.03.18 23:21

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