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聴いてみた 第112回 エイジア

年末に渋谷のレコファンでストーンズの「メイン・ストリートのならず者」とともに2枚ほどCDを購入したのだが、そのうちの1枚はエイジアの「Aqua」である。
年末の忙しいさなかに日本全国でこんなアルバムを買ってたのは自分だけだ。
調べてないけど、たぶん当たりだろう。
そのくらいプログレファンにとってもどうでもいい盤のような気がする。

そもそもエイジア、登場した時からプログレファンからは評判が悪かったはずで、そのバンドの歴史の中でもさらに売れてなく注目もされてなかったジョン・ペイン期の最初のアルバムがこれ。
メンバーは以下の方々です。

ジェフリー・ダウンズ(K)
ジョン・ペイン(Vo・B)
カール・パーマー(D)
アル・ピトレリ(G)
スティーブ・ハウ(G)

スティーブ・ハウは全曲参加ではなく、ギターを弾いているのは半分くらいらしい。
そのほか参加しているミュージシャンは以下の人々。
サイモン・フィリップス
アンソニー・グリン
スコット・ゴーハム
マット・ジョンソン

なんだかゲストのほうが豪華なようにも思えるが、こんなすごい人たちが作ったアルバムなのである。
新加入したアル・ピトレリという人は後にメガデスにも加入したメタルっぽいギタリストとのことだ。

Aqua

「Aqua」は92年発表。
バンドは発足当時からあんまし安定した状態が長くなかったが、このアルバム制作前にジョン・ウェットンは落ち込み続けるセールスを気に病んで脱退。(解雇?)
3作目でスティーブ・ハウに代わってギターを弾いていたマンディ・メイヤーもバンドを去った。
90年代に入り、「Then & Now」という半ベスト盤を出したり、モスクワでのライブ盤を発表するなど、解散なのかどうかもよくわからないけどとりあえずアルバムでーす皆さん買ってね状態が続く。
しかしバンドは解散せず、ジェフリー・ダウンズとカール・パーマーはバンド存続のため様々な道を模索し、ジョン・ペイン(元ELO)とアル・ピトレリが加入。
盟友スティーブ・ハウの助けも借りながら新生エイジアとして活動を再開。

なんだかんだ言ってエイジアの屋号はOB含めみんな好きなんだろうなぁ。
こうしてジェフの粘りで作成された執念のアルバムが「Aqua」である。
果たしてあたしは執念の屋号に共感することができるでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.Aqua Part 1
2.Who Will Stop The Rain?
3.Back In Town
4.Love Under Fire
5.Someday
6.Little Rich Boy
7.The Voice Of Reason
8.Lay Down Your Arms
9.Crime Of The Heart
10.A Far Cry
11.Don't Call Me
12.Heaven On Earth
13.Aqua Part 2

うーん・・
うーん・・・
噂どおりだが、それまでのウェットン期3作とは相当違うサウンドである。

楽曲は全般的にテンポが遅く、やや暗く陰のある曲が多い。
メロディは奥行きがあってテクニカルで美しいのだが、楽しそうな雰囲気はあまりなく、またプログレのような難解な音も全然ない。
メタルバンドが時々やるバラードが延々続くような印象である。
ジャンルとしてどれに該当するのか判断しづらいと思う。
プログレでもハードロックでもメタルでもない、迷った音楽だ。

ジョン・ペインは歌唱力そのものはジョン・ウェットンよりうまいとは思うが、思ったほど感動がない。
声や歌い方はいろいろな人に似ているが、まず思い浮かんだのはジョン・パーだ。
あ、知らない?「セント・エルモス・ファイアー」とか歌った人。
あとはジョー・リン・ターナーやトミー・ショウやジャック・ブレイズやスティーブ・ルカサーにも少し近いものを感じる。
少し固い乾いた感じの、やや線の細いハードロックなボーカルである。
ジョン・ウェットンのようなもったりぐったりした曇ったモチ肌ボーカルではない。
まあ自分はエイジアのもったりウェットンボーカルが好きなんですけど。

気になるのはジョン・ペインのシャウトである。
ジョン・ウェットンは一切やらなかったハードロック系シャウトが、わりとあちこちに出てくる。
これはどうも今ひとつさえないし、楽曲の緻密さともマッチしていない。

また聴いてて感じたのだが、ウェットン期に比べてリズムがゆっくりしている曲が多い。
ウェットン期のヒット曲「Heat Of The Moment」「Don't Cry」「Go」にある、80年代のポッピーでキャッチーなリズムがないのだ。

時代背景としてはメタルがグランジに粉砕された頃なので、プログレも含めて70年代80年代の遺産で音楽活動を続けようと思っていた人たちはみんな困惑していたような状況だったと思う。
ジェネシスはそれなりに売れていたような気がするが、イエスやエイジアは方向性が定まらず離合集散していたんじゃなかったっけ。
クリムゾンELPはほとんど活動できていなかったような気がする。
違いましたっけ?ぷく先輩。

なので悪くはないんだが、聴いてて華がなく退屈だ。
「Love Under Fire」は作者にグレッグ・レイクもクレジットされている曲だが、バンドを大きく盛り立てるものにはなっていない。
壮大でドラマチックな路線をねらったのかもしれないが、それだとジョン・ペインのボーカルは合わない。
渋谷陽一はウェットン期のエイジアをずうっと批判し続けていたが、このアルバムはどう評価してたんだろうか?

ジャケットはそれまでの路線を継承した感じの美しい絵だが、デザインはロジャー・ディーンではなくロドニー・マシューズという人によるものだそうだ。
タイトルは4作目もAで始まりAで終わる言葉を使っている。

ということで店構えはほとんど変えなかったエイジアだが、従業員と販売商品は大幅に入れ替えてしまったようである。
エイジアだと思って聴くからがっかりするのであって、ふつうの洋楽ですよと店員に言われて試しに聴いてみたらそんなに悪くもないですけどという感想になったりするんだろうか。
いずれにしても、70年代のプログレな音も80年代のチャラい音もしない、マジメな教材みたいな音楽だ。

その後のエイジアは21世紀に入って同窓会バンドという地位を確立し、イエスやELPやクリムゾンといったそれぞれの出身母校バンドの名曲に80年代のエイジアの曲も混ぜて演奏しては拍手を浴びるスタイルを取っている。
これは悪くないと思う。
というか、70年代80年代に活躍した洋楽ミュージシャンは大半がこんなことになっているのだ。

ちなみにウェットン期の3作はどれも好きだが、世間の評判はファーストが一番良くて、後は順を追ってどんどん悪くなった、というのが一般的な解釈のようだ。
渋谷陽一は全部ダメという評価だったけど。
自分の評価はかなり違っていて、一番良いのが2作目「Alpha」、次が3作目の「Astra」である。
エイジアのみならず、80年代に聴いたアルバムの中でも「Alpha」の出来は突出して素晴らしいと思っている。

というわけで、エイジアの「Aqua」。
残念ながら予想どおり難しい結果となりました。
ペイン期のアルバムは他にもあるのですが、試してみようという意欲はもうありません。
このアルバムもおそらく手放すことになると思います。

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コメント

お疲れ様です、ルドルフです。
相変わらず勉強熱心なご様子で安心しました(←適当)

エイジアの「アクア」、私もどんなものかは気になっていましたが、これで手に取ることはなくなったと思います。やっぱ、ダメダメなアルバムなんすね。
元ELOのジョン・ペイン? そんな人いましたっけ・・・

投稿: ルドルフ | 2014.01.19 15:32

おっと、ルドっちもこのアルバムは聴いてなかったのね。
まあ自分の感想はあんましアテになりませんので、一度お試しください。
がっかりすると思うけど・・

>元ELOのジョン・ペイン? そんな人いましたっけ・・・

厳密に言うと「ELO Part2」のメンバーだそうです。
いわゆるジェフ・リンのELOではなく、別のメンバーがジェフ抜きで結成したELOにジョン・ペインがいたという話。
ジョン・ペインとジェフ・リンは活動を共にしたことはないらしいです。

投稿: SYUNJI | 2014.01.20 23:12

SYUNJIさん、こんばんは。
この時期のエイジアですが、以前にも書きましたがブートまがい
の準公式ライブ盤をきいてがっかりしたことがあります。
ベスト盤的選曲、ライブ盤、しかもハウ参加(実際はゲストだった)
につられて購入しました。

紹介されている「アクア」ですが、名前すら知りませんでした。

>>楽曲は全般的にテンポが遅く、やや暗く陰のある曲が多い。

といっても「プログレ」ではないのですね。何となく、
拝見しているだけで微妙です。この時期、イエスは昔の
スタイルにもどりつつありましたし、フロイドもギルモア
の考えるフロイドスタイルで、クリムゾンは「プログレ」
と呼ばれるのを嫌っていましたが、それでも95年に出た
新譜はプログレです。
エイジアの「アクア」、もう思い切って1st~2ndの音や、
メンバーそれぞれが在籍していたプログレの再生産を
思い切ってやったほうがよかったかもしれませんね。

投稿: モンスリー | 2014.01.21 22:25

モンスリーさん、こんばんは。

>この時期のエイジアですが、以前にも書きましたがブートまがいの準公式ライブ盤をきいてがっかりしたことがあります。

ああーそうでしたか・・
自分も以前エイジアのモスクワライブのブート盤を買い、全編水中のような音で非常にがっかりしたことがあります。

>といっても「プログレ」ではないのですね。

そうですね、これだけは間違いないでしょう。
エイジアだと知らずに聞かされたら、アメリカのロックバンドだと思っても不思議ではない音です。

>メンバーそれぞれが在籍していたプログレの再生産を思い切ってやったほうがよかったかもしれませんね。

今のエイジアはそれに近いスタイルですね。
懐メロでファンも喜んでお金がもらえるならいいんじゃないかと思います。
ジェフリー・ダウンズは最近はイエスに加入してるそうですけど・・

投稿: SYUNJI | 2014.01.22 22:41

SYUNJIさん、お昼にこんにちは。
私もエイジアにはかなりの思い入れがあります。
なんせリアルタイムでの視聴バンドですので初期3枚は完璧ですね。
でも現在持っているCDはファーストのみ・・・
この記事を読んでセカンドとサードを近く大人買いします(笑)
買ったら記事にしてみます。
あと、趣味じゃないかも知れませんが・・・
キンクリの「RED」なんてどうでしょうか?
あれはジョン・ウェットンの歌唱力が最大限に出ている作品だと思うのですが・・・

投稿: ボレロ | 2014.01.23 11:46

ボレロさん、こんばんは。

>なんせリアルタイムでの視聴バンドですので初期3枚は完璧ですね。

そうでしたか!
自分と同じですね。
CDはセカンドしか持ってませんけど・・

>キンクリの「RED」なんてどうでしょうか?

えーと、かなり前ですけど「RED」は聴いています。
ただ「RED」に限らず、クリムゾンのジョン・ウェットンのボーカルはあまりなじめないんですよ。
というか、エイジアのボーカルと同じ人だとは未だに思えないんです。
U.K.もそうでしたが・・・
自分はおそらく「産業ロックの楽曲に乗っかったジョン・ウェットンの歌」が好きなんだと思います。

投稿: SYUNJI | 2014.01.24 22:59

初めまして
かなりペインエイジアに思い入れのある人間なので一言
このアルバムはその中で最低の出来でいきなり大外れ引きましたね
AriaとAura以外は初めに聞いちゃダメってくらい癖が強かったり不出来だったりします

投稿: akakad | 2014.11.18 20:33

akakadさん、初めまして。
こんな三流BLOGにコメントありがとうございます。

>このアルバムはその中で最低の出来でいきなり大外れ引きましたね

えええ~?そうなんですか?
しまった・・・
この盤だけでペイン期を評価しないほうがいいということですかね・・
ご指導ありがとうございました。
他のアルバムも機会があれば聴いてみようと思います。

投稿: SYUNJI | 2014.11.18 23:03

SYUNJIさん、こんばんは。
私も「アクア」を聞くことができました!

SYUNJIさんは総括として次のような感想をアップされていましたが、
>>楽曲は全般的にテンポが遅く、やや暗く陰のある曲が多い。

私は割と産業ロックに近い、と思いました。ギターとシンセの
バランスが80年代産業かなと思った次第です。決して悪くは
ありません。
しかしファンの方には申し訳ないですが、やはりボーカルが弱い
ように思います。大味といいますか・・・・改めてコメントを拝見して
「えっ、元ELO!?」と驚きました。

エイジアと言えば、80年代前半にキャッチーなロック路線で
初心者の私を魅了し、その後プログレを聞いて「オールスター
バンドだったのか!」と驚く、1粒で2度おいしいバンドです。
「アクア」、エイジアの名前をあえてつけずとも独自路線で
やっていってもよかったのではないかと思う一方、果たして90年代
前半に、産業路線(あくまでも私の感想)が通用したのか、やはり
「エイジア」の名前が必要か・・・・などと、スーパーバンドのヒット後
の身の振り方などなどにも思いをはせましたです。

投稿: モンスリー | 2014.12.10 21:49

モンスリーさん、こんばんは。
「Aqua」、聴かれましたか!

>私は割と産業ロックに近い、と思いました。ギターとシンセのバランスが80年代産業かなと思った次第です。
>決して悪くはありません。

そうですか・・
楽器のバランスは確かに80年代っぽいですが、自分の好きな(=陽一の嫌う)産業ロックはもう少し華やかなイメージですね。

>しかしファンの方には申し訳ないですが、やはりボーカルが弱いように思います。大味といいますか・・・・

そうなんだよなぁ・・決してヘタなボーカルではないと思うけど、エイジアの楽曲にマッチしていないような・・
じゃあジョン・ウェットンには華があるのかという議論もありそうですけど、聴き比べると自分は思っていた以上にジョンの声が好きだったようです。

>などと、スーパーバンドのヒット後の身の振り方などなどにも思いをはせましたです。

21世紀の今でもエイジアの屋号はやはりみんな好きみたいですね。
この「Aqua」も別のバンド名義で出していたら、売り上げはもっとキツい結果になっていたのでは・・と勝手な想像をしてますが・・

投稿: SYUNJI | 2014.12.10 23:39

このアルバムの次に出た「天空のアリア」は良いですよ。
捨て曲なしの名盤だと思います。

ジョンペインのボーカルはマグナムのボブカトレイに近い感じで悪くないとは思うのですが、いかんせんエイジアにはあまり合いませんね。

投稿: | 2015.02.10 22:26

コメントありがとうございます。

>このアルバムの次に出た「天空のアリア」は良いですよ。
>捨て曲なしの名盤だと思います。

いやーやはりそうですか。
「Aqua」がかなり厳しかったんで、以降のエイジアには急速に興味がなくなってたんですが・・
機会があれば「Aria」で再チャレンジしようかと思います。

投稿: SYUNJI | 2015.02.11 18:46

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