聴いてみた 第111回 ローリング・ストーンズ その12
2014年最初の聴いてみたシリーズ、万年初心者人生最大の懸案学習課題であるローリング・ストーンズを持って来ました。
最高傑作とも言われる名盤「Exile On Main Street」、邦題はご存じ「メイン・ストリートのならず者」。
年末に渋谷のレコファンで地味に購入。
これまで購入したストーンズのアルバムは全てウォークマンに入れてあり、折りにふれて聴くようにはしているのだが、ストーンズ初心者から脱却できた感はいっこうに感じない。
加齢により感性や記憶力が降下・硬化してることもあるけど、もう少し進歩があってもよさそうなものである。
本年はより一層の飛躍を目指し、心してストーンズ道に精進しなければならない。
といった地方の予備校のかけ声みたいな心境で聴いてみることにしました。(偽装)
聴く前に制作過程をおさらい。
「Exile On Main Street」は72年の作品。
発表順序としては「Sticky Fingers」の次で、「Goats Head Soup(山羊の頭のスープ)」の前となる。
曲の大半はその「Sticky Fingers」と「Let It Bleed」用にストックされていたもので、録音は主にフランスにあったキースの別荘で行われたそうだ。
なおビリー・プレストン、アル・パーキンス、ビル・プラマー、グラム・パーソンズなどのゲスト陣は、その後のハリウッドでのミックス録音に参加している。
都会の喧噪を離れ順調に進むセッション・・のはずが、リーダーのミック・ジャガーは新婚のためレコーディングをしょっちゅう抜け出して、パリにいた新妻のもとに行っており、仕方なく?キースが中心となって制作を続けたとのこと。
従ってこのアルバムは骨格をキースが作り、ミックが仕上げるという、その後の二人の共同作業の手法がほぼ確立された重要なポイントにもなっているようだ。
プロデューサーのジミー・ミラーは「このアルバムは完全にキース主導のものと言える」と発言している。
なるほど・・・
発売当時はLP2枚組だったので、18曲も収録されている。
アルバムとしてはイギリスでもアメリカでもトップを取ったが、シングルとしてバンドを代表する大ヒット曲を収録しているわけではない、という作品。
長いアルバムはやや苦手なのだが、果たして自分は最後まで楽しく鑑賞することができるでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1.Rocks Off
にぎやかなロックで幕開け。
ホーンが鳴り続ける、どこかジャズっぽい曲だ。
2.Rip This Joint
さらに加速したロカビリー。
ここでもサックスやトロンボーンが使われていて騒々しいが、楽しくていいと思う。
3.Shake Your Hips
少し雰囲気が変わってブルース調のサウンド。
これはスリム・ハーポという人のカバー曲だそうだ。
4.Casino Boogie
間延びした感じのブルース。
バックボーカルはキースだが、非常に甲高い声で歌うので、最初に聴いた時は女性ボーカルかと思ったくらいだ。
ミックとのコーラスも正直あまり合ってないように思えるが、そんなのを気にしていたらストーンズは聴けないんだよね。
この曲ではキースがベースも担当しているとのこと。
5.Tumbling Dice(ダイスをころがせ)
この曲はベスト盤で聴いており、わりと好きなほうである。
命令調である邦題から来るイメージよりもずっと明るく壮大なサウンドだと思う。
キースのギターが全体をがっちりホールド。
今回調べていて初めて知ったのだが、リンダ・ロンシュタットがカバーしてるそうだ。
6.Sweet Virginia
B面のオープニングはカントリーテイストなアコギとハーモニカで始まる。
誰かのカバーなのかとも思ったが、グリマーの二人の作品。
サウンドはスイートなバージニア?なのだが、歌詞には「オレは靴の中にクスリを隠してる」などといった部分もあり、けっこうハードな内容らしい。
7.Torn and Frayed
これもアコースティックギターやバンジョーっぽい音がするカントリーな曲。
ただキーボードとバックコーラスがわりと厚く盛られていて、80年代を予感させる輝いた音になっている。
単なる田舎風楽曲に収まっていないのがすごいところだ。
ストーンズらしくはないが、いい曲だと思う。
8.Sweet Black Angel(黒いエンジェル)
連続してアコギが活躍する曲。
マリンバなどいろいろな楽器の音がする。
黒人解放活動家のアンジェラ・デイヴィスという人のことを歌った曲だそうだ。
9.Loving Cup
ピアノとギターがシンプルに奏でられるイントロ。
しかしサウンドは結構多彩な展開で、奥行きのある壮大な楽曲となっていく。
なんとなくこれがエンディングでもいいんじゃないかとも思う。
ピアノはニッキー・ホプキンスが弾いている。
10.Happy
この曲もベスト盤で聴いている。
シンプルだが明るくて聴きやすい曲だ。
キースのボーカルにも慣れたのか、初めはミックが歌えばいいのにとも思ったけど、これはやはりキースの曲だね。
やっとわかってきました。
終盤ではいつの間にかミックが前に出て歌っている。
11.Turd on the Run
「Rip This Joint」のリズムと「Shake Your Hips」のサウンドを混ぜたような曲。
比較的単純な造りだが、ミックの絶叫がアクセントだ。
12.Ventilator Blues
やや重たい粘着系のブルース。
どちらかというと苦手な音がする。
この曲は作者としてジャガー&リチャーズに加えてミック・テイラーの名がある。
ストーンズとしては珍しいケースだそうだ。
13.I Just Want to See His Face(彼に会いたい)
前の曲にかぶさるように始まる、少し怪しい旋律。
低く響くドラムとパーカッション、ゴスペルのような女性コーラス。
音としてはあまり楽しくない。
14.Let It Loose
これも根底にはゴスペルのような基盤を持つ、雰囲気のある楽曲である。
美しいサウンドと叙情的な展開なのだが、そこに粗野で野蛮なミックのボーカルがセットされ、不思議な情景を作り出している。
素晴らしいバラードだ。
15.All Down the Line
前の曲にうっとりしているといきなり逆襲を食らうのがストーンズである。
一転、ギターのカッティングが非常にいい本領発揮の疾走ロックンロール。
ミックの猥雑なボーカルも、こういう曲に乗っかってこそであろう。
こういうほうが自分みたいな素人にはわかりやすくて良い。
16.Stop Breaking Down
ロバート・ジョンソンのカバー。
どこかで聴いたことがあるような気がする。
好みの音ではないんだが、それぞれのパートの主張しあいはなかなか聴き応えがある。
17.Shine a Light(ライトを照らせ)
再びゴスペル調のドラマチックなバラード。
この曲はベースラインがよく聞こえる。
ミックはやっぱりぶっきらぼうに歌うが、楽器やコーラスとは意外に調和している。
というかようやくミックのボーカルに自分が慣れてきたと言うことだろうか。
ラストはあっさり終わってしまい、物足りない。
ピアノとオルガンはビリー・プレストンが弾いているそうだ。
18.Soul Survivor
アルバムの最後はリズミカルでウキウキするような曲が来た。
ただミックはわりと抑えた感じで歌っている。
「Shine a Light」がラストでも良かったような気もするが・・
聴き終えた。
さすがに2枚組なのでやや長いが、それほど疲労感や苦痛は感じない。
LPだと1~5がA面、6~9がB面、10~14がC面、15~18がD面になる。
大ざっぱな雰囲気としてはA面が疾走感に満ちた古き良きロック、B面はややアコースティックに流れたカントリー調、バラエティに富んだ雑多なブルースのC面と続き、D面では再びロックに戻る、という展開のようだ。
それぞれの面に知っている曲があるので、個人的には飽きの来ない構成となっているのがありがたい。
好みで言えば「Rip This Joint」「Tumbling Dice」「Sweet Virginia」「Torn and Frayed」「Sweet Black Angel」「Happy」「Let It Loose」といった曲になる。
どうやらロック・カントリー・ゴスペル基調の曲が自分には合うらしく、そうした曲がほどよく散りばめられているので聴きやすい。
ネットで調べていくと、このアルバムをストーンズの最高傑作とたたえる人が結構多い。
人気があることはなんとなく知っていたが、少しだけ理解できたような気がした。
粗暴でファンクなストーンズが好きな人にはやや弱い印象なのかもしれないが、このアルバムは深いと思う。
音響自体はなんだか曇っていてモノラルっぽい音だが、楽曲の精度や完成度は非常に高いと感じる。
この点についてはミック・テイラーの存在を理由にあげる人は多いようだ。
ミック・テイラーの技術の高さがアルバム全体をホールドしている、という評価は自分のような素人でも納得できる。
訳詞を読むと、全体的に退廃屈折鬱屈した若者の叫びが中心であり、サウンドとは対照的な感じだ。
暗い話をロックやカントリーやゴスペルで昇華して歌うというアートな姿勢も含めて、当時の若者に支持されたのだろう。
まあそもそもロック自体がそういう音楽のはずなので、その意味では極めて王道な正統派スタイルである。
ジャケットはモノクロの様々な写真がコラージュされたものだが、これはスイス人写真家ロバート・フランクの撮ったアメリカの日常写真だそうだ。
左上のボールを3つ口の中に入れた黒人の写真だけが強烈な印象で、このアルバムのジャケットといえばこれしか思い浮かばない。
正直、アートとしてあまり好みではなく、見ていても良いとは感じない。
なおストーンズのメンバーは裏面で同じようにモノクロ写真で登場しているが、ミックやキースの表情が生き生きとしており、こっちが表で良かったんじゃないかとも思う。。
というわけで、ようやく聴けた「メイン・ストリートのならず者」。
これはかなり良かったです。
これまで聴いた中で一番、と言い切れる状態ではありませんけど、やはり名盤の評価にはうなずけるものがありました。
次回はもうひとつ残っている名盤「Sticky Fingers」を聴いてみたいと思っています。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
これはCD持っています。凄くいい作品だと思います。
「Rocks Off」のなんとも力が程よく抜けた軽快なロックナンバーから始まり、キースの「Happy」もかっこいい!!
「Tumbling Dice」も流石、ストーンズって思います。
まぁ絶対的にストーンズっていう作品ではありませんが
代表作であることには変わりありませんね。
私の基準は「スティール・ホイールズ」前後からが趣味趣向としては好みです。
投稿: ボレロ | 2014.01.16 00:03
SYUNJIさん、こんばんは。
ストーンズのみならずロックを代表する名盤「メインストリート
のならず者」、私もストーンズのスタジオ作品としては早い時期に
聞きました。
しかし、すぐに挫折しました。1曲目「ロックスオフ」のロック感
を期待して聞いておりますと、完全に裏切られるからです。
ものすごく濃厚なストーンズの世界がLP2枚分続きます。
ですので、長い間敬遠しておりました。
その後、「ベガーズバンケット」などストーンズのルーツが
よく出た作品を聞くなどして、徐々にまた「ならず者」も聞く
ようになりました。ストーンズの良さがわかってきた、など
とは口が裂けても言えませんが、たとえば中盤に出てくる
カントリーをストーンズ風に解釈した曲は、「いいなあ」
と思えるようになりました。今回も改めて聞き直しましたが、
「深い」と本当に思います。
ロックの名盤で避けては通れない「ならず者」、
敷居は高くしかし何度も挑戦すべし、と思います。
投稿: モンスリー | 2014.01.16 22:16
ボレロさん、こんばんは。
>「Rocks Off」のなんとも力が程よく抜けた軽快なロックナンバーから始まり、キースの「Happy」もかっこいい!!
>「Tumbling Dice」も流石、ストーンズって思います。
これはその通りですね。
こういう点がまずこのアルバムの評点を底上げしていると感じます。
あとはカントリーやゴスペル調の曲にも光るものがありますね。
>私の基準は「スティール・ホイールズ」前後からが趣味趣向としては好みです。
このアルバムは聴いてませんが、この頃のシングルはリアルタイムで聴いてます。
「Rock And A Hard Place」は結構好きですね。
投稿: SYUNJI | 2014.01.16 23:07
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
>1曲目「ロックスオフ」のロック感を期待して聞いておりますと、完全に裏切られるからです。
あーなるほど・・
確かに最初のロックがそのまま延長という展開ではないですね。
ただ自分の感覚では、中盤のカントリーやゴスペルも悪くなかったので、裏切られ感は特になかったです。
>ロックの名盤で避けては通れない「ならず者」、敷居は高くしかし何度も挑戦すべし、と思います。
すごい格言だなぁ・・
自分の場合、これってストーンズだけじゃなくベックやディランやプログレなんかも全部当てはまるような気がします。
でも「ならず者」、意外と抵抗なく聴けて良かったです。
投稿: SYUNJI | 2014.01.16 23:12
ストーンズアルバムって殆ど持ってないんですよね。これもリアルタイムでシングルのダイスをころがせとハッピーは聞きましたけどね。。でもこれってローリングストーン誌が選ぶベスト500の7位ですよね。名盤。。聞いてみるかな?
投稿: マルチオーディオ | 2014.01.17 13:23
オジキ
断然、STONESのNo.1のアルバムですね。
個人的には、Beggers,BleedとこれがTOP3です。
一曲一曲丁寧な解説をして頂いていますが、このアルバムに関しては、曲単位で切り出してどうこうと言うものではない気がしています。
途中、オジキが言及しておりました、ABCDそれぞれ4面で割と似たタイプの音でまとめられており、レコード面毎の音に身を任せるのが◎かと。
なので、Exile~はCDになって感じ方の変わってしまったアルバムの様な気がします。
C面(2枚目)のずぶずぶ湿度が高くカビ臭い地下室の息苦しい密室感が、D面でスコーンと突き抜ける解放感!この対比は今聴いてもやっぱり素晴らしいなぁ。と思います。
凄くラフに作られているようで、その実、かなり綿密に曲順含め計算されている彼らのしたたかさ。を感じるアルバムです。
まさに、パブリックイメージとしてのキースがその実、かなりちゃんとしている人(笑)であるみたいな…
やっぱり、すごく好きです。このアルバム☆
投稿: V.J. | 2014.01.17 18:56
マルチオーディオさん、コメントありがとうございます。
>ストーンズアルバムって殆ど持ってないんですよね。
あれ、そうだったんですか?
きっとたくさんお持ちだと思ってましたが、意外ですね。
>でもこれってローリングストーン誌が選ぶベスト500の7位ですよね。
そのようですね。
ストーンズとしてはこれが最上位で、次が32位の「Let It Bleed」、57位「Beggars Banquet」だそうですけど、この3枚は自分にとっても良かったアルバムです。
投稿: SYUNJI | 2014.01.18 22:12
V.J.若、毎度ご指導感謝です。
>断然、STONESのNo.1のアルバムですね。
>個人的には、Beggers,BleedとこれがTOP3です。
おお、やはりそういう評価!
自分も今んとこほぼ同じです。
たまに「女たち」もいいなぁなんて思ったりします。
>途中、オジキが言及しておりました、ABCDそれぞれ4面で割と似たタイプの音でまとめられており、レコード面毎の音に身を任せるのが◎かと。
これはその通りだと思います。
いちおう聴く前にLPでの構成を学習しておいたので、聴く時は各面の特徴を意識してみました。
その各面の対比というか転換の感じがいいですよねぇ。
>まさに、パブリックイメージとしてのキースがその実、かなりちゃんとしている人(笑)であるみたいな…
思ったよりマジメでやる時はやるのがキース、ってことですかね。
こういう話も含めて、やはり深いアルバムだと思いました。
次は「Sticky Fingers」を聴くつもりですけど、もう少し60年代も聴いたほうがいいかな?
投稿: SYUNJI | 2014.01.18 22:36
オジキ
>次は「Sticky Fingers」を聴くつもりですけど、もう少し60年代も聴いたほうがいいかな?
個人的には60'sダイスキですが、一般的に言ってみてもSTONESの音楽的ピークはM.テイラーが在籍していた時期だと思いますので、スティッキーをまだお聴きになっていないのであれば是非聴いてみてください♪ 感想楽しみにしております☆
投稿: V.J. | 2014.01.19 08:49
V.J.若、再びのコメント感謝です。
>個人的には60'sダイスキですが、一般的に言ってみてもSTONESの音楽的ピークはM.テイラーが在籍していた時期だと思います
やはりそうですか。
「Aftermath」「Between The Buttons」あたりはちょっと興味がありますが、まずは先に「Sticky Fingers」ですかね。
ストーンズ学習もまだまだ先が長い・・
投稿: SYUNJI | 2014.01.19 09:53