読んでみた 第44回 文藝別冊「レッド・ツェッペリン」
最近ジミー・ペイジ周辺の学習に意外とまじめに取り組んでいるSYUNJIといいます。
まあ学習と言ってもヤードバーズを聴いたり「炎帝」というレア盤を掘り起こしたりしてるだけですけど。
そんなペイジ検定必勝合格強化合宿中のある日、とある書物が視界に入ってきました。
それが文藝別冊「レッド・ツェッペリン」。
河出書房新社の「KAWADE夢ムック」というシリーズなのだが、これまでにクイーンやジョン・レノンやポール・マッカートニーなどが出版されており、その最新刊である。
昨年「祭典の日」が公開されたこともあり、ペイジ周辺は相変わらずいろいろ騒がしいようだ。
そんなタイミングでの出版に、版元のしたたかな戦略を感じる。(知ったかぶり)
これまでツェッペリンに関する書籍や雑誌はいくつか読んだことがある。
もちろんどれも非常に面白くてためになる?本だったのですが、ロック・ミュージシャンに対する自分の最大の興味が「争い」「モメ事」「暴力」「いたずら」などの分野に向けられており、その範囲においてはパープル・ファミリーが圧倒的に他のミュージシャンやバンドをリードしているのだ。
ツェッペリンもモメ事や争いや蛮行と無縁な品行方正公務員バンドでなかったはずだが、そういう話は思ったほど東洋の小国には伝わってきていないように思う。
少なくとも書籍でもネットでも、そうしたモメ事レビューが多いのはやっぱりパープル(とそのファミリー)。
偏見だけど、ツェッペリンのファンは純粋に彼らの楽曲や創造性やデータやアイテムなんかを楽しむという傾向が強く、争いやらモメ事やらそういう下品な話題にあまりふれたくない意識があるんじゃないだろうか。(何言ってんだか)
というかミュージシャンの最大の興味ポイントをモメ事に置いてる自分が一番邪道なんだとはわかってますけど・・・
渋谷陽一がペイジの暴力沙汰を面白おかしく活字にしたりラジオで話したりする、ということもあまり想像できないし、実際そんなになかったんじゃないかと思う。
今回この本にはそんな彼らの闇の部分にも踏み込んだ記述があることを期待して読んでみました。
・・・・・読んでみた。
版元は河出書房新社、判型はA5、200ページ、1260円。
目次はこんな感じ。
■ジミー・ペイジの証言1
「ツェッペリン再結成の葛藤と決意」
■ジミー・ペイジの証言2
「ツェッペリン・サウンドを育んだレコード・コレクション」
■ツェッペリンのロック革命
・対談/伊藤政則×大貫憲章
「唯一無二」の理由 伝説の正体 ? ツェッペリンは、なぜ特別か
・インタビュー1
山本恭司 ZEPマジックの正体 バンドが現出するマジック
・インタビュー2
土屋昌巳 バンドの音を死守 プレイヤーの熱情とプロデューサーの制御
・インタビュー3
折田育造 レッド・ツェッペリン、日本上陸 レコード・リリース時の裏側と初来日時の噂の真相を語る
■ヒストリー
・レッド・ツェッペリン奇跡の足跡 高見展
■ロック史のなかのレッド・ツェッペリン
・セッション時代の全貌 小松崎健郎
・ツェッペリンとビートルズ 矢吹渉
・ツェッペリンとストーンズ 寺田正典
・ツェッペリンとジェフ・ベック・グループ 赤岩和美
・ツェッペリンとディープ・パープル 大鷹俊一
・ツェッペリンとブラック・サバス 平野和祥
■全アルバム徹底ガイド
・オリジナル・アルバム
・ベスト・アルバム
・ライブ・アルバム
・DVD
・ソロ作品
なお表紙はツェッペリン本といいながらやっぱりペイジ&プラント。
なんかちょっと宝塚っぽい絵だ。
チープ・トリックみたいなロコツな格差はないものの、ビジュアル的に考えると編集サイドとしてもやはりこの二人で行きましょうとなるんだろうね。
なお表4(裏表紙)は4人のいまいち地味な集合写真です。
中身のほうだが率直に言うと、ツェッペリンと言うテーマで編集するとこうなります、という基本的な方針からは特にはずれていない。
インタビューあり対談ありアルバムレビューありという構成は、この手の音楽情報書籍ではむしろ定番である。
なのでその中から自分がこれまで知らなかった話にいちいち驚いたり感動したり、というのが一般的な運用と思われる。(まわりくどい)
で、記事の中で突出して面白かったのは折田育造氏のインタビューである。
この人はレコード会社でツェッペリンを担当していて、来日公演の際に彼らに同行していた経歴を持つ。
なのでツェッペリンの音楽ではなく主に来日時の素行について語っているのだが、やっぱりいろいろな蛮行で苦労させられたようだ。
切り取って紹介すると誤解を招くとは思うが、折田氏によればペイジは「意地悪でオフステージはデタラメ」でボンゾは「人間的にはいいんだけど行いが最悪」、ジョーンジーも「一見いい人ぶってるけどクセ悪い」そうだ。
でもプラントのことは「大スターの雰囲気がある」という評価。
まあ4人とも素行においては全然まともじゃなく「聞きしにまさるひどさ」だったらしい。
いい話ですねぇ。
特にペイジは女グセが良くなく、京都の街を夜クルマで走っている時に、道行く女性を見て「あの女連れてこい」と命令したり、寝台車で逃げ出したグルーピーを追っかけて夜中にあちこちの寝台のカーテンをめくっては「どこに行った?」と探したりといったナイスなエピソードがたくさん出てくる。
コンサートの最中にボンゾとプラントがけんかになり、アンコールを待つ間ジョーンジーだけがステージに残ってキーボードでつなぎ、再び登場した時は二人のどっちかが流血していた、なんて話も書いてある。
この手のプロレスチックな話題はパープルではしょっちゅう聞くのだが、やはりツェッペリンにもあったんですね。
でもこの本でそういったファンクな話が書いてあるのはここだけ。
そういう意味でもやはりパープルとは音楽性も方向性も素行も違うバンドなのだ。
好みは別として、この本は基本的にはツェッペリンの真面目な学習教材的建て付けになっている。
ペイジのインタビューはどちらも貴重なものだとは思うが、ペイジの好きなレコードコレクション紹介については、自分のような素人は1枚も聴いてないので、共感できるものは何もないのが残念。
というかこのコレクション全部聴いてる人なんているのかなぁ?
お約束な企画ではあるが、他のバンドとの対比や関連を採り上げたコーナーも読み応えがある。
ジェフ・ベックとの関係やパープルとの対比については他の本でも読んだことがあったが、ビートルズやストーンズやサバスとの関係については、それほど語られてこなかったのではないだろうか?
ビートルズとの関連性については、ポール・マッカートニーがペイジをかなり意識していたという有名な話があるが、一方でペイジはジョン・レノンに一度も会えなかったことを非常に悔やんでいたそうである。
ディープ・パープルとの対比については、この手の論評だと書き手の好みが記事内容に強く投影されすぎてしまうことが多いのだが、この本では比較的冷静に両者を分析している。
どちらがいいとか好きとかではなく、志向や方向性の違いを語る内容となっているので、若干物足りなさは感じるが、秀逸な構成だと思う。
さて自分はツェッペリンについては完全後追い世代なのだが、後期におけるプラントの声のヘタリは未だに残念に感じている。
前期の力強い声のまま、後期の名曲を歌ってもらったらもっと良かったのに・・といつも思うのだが、賛同してくれる方はあまりいない。
しかも。
ツェッペリン関連の本を読んでいても、後期におけるプラントの変声についてふれている文章には滅多に出会わない。
この本も例外ではなく、どの記事でもそんな話題はいっさい出てこない。
今さら採り上げたところでどうにかなるような話でもないし、そもそもそんなことにこだわって聴くヤツが浅はかだということだろうか・・・
というわけで、ページ数はやや少なく物足りなさはありますが、全体としては非常に楽しめる内容で良かったです。
ペイジは巻頭のインタビューでもジョーンジーやジェイソンとの共同作業で新曲も作ったことを明かしているので、その発表も楽しみに待ちたいと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
この本ですが、高いので節約しておりました。内容を
紹介していただいて、何よりです。
>>そういう話は思ったほど東洋の小国には伝わってきていないように思う
蛮行は腐るほどあると思うのですが、SYUNJIさんの鋭い洞察のとおり、、
ZEPの音楽にひたるのにはムダな要素であり、ファンとしては
目を背けたいのですよ(^^;。
さて、非常に豪華な執筆陣ですが、気になったのがこの人、
>>・ツェッペリンとストーンズ 寺田正典
レコード・コレクターズ誌の前編集長です。この人こそ、レココレ誌
でネタもないのに年2回もストーンズ特集をするようになった元凶
です(いいすぎか)。今回の記事の内容も、ZEP本でありながら、
強引にストーンズ賛歌に持って行っているのが容易に想像できます。
>>ペイジは巻頭のインタビューでもジョーンジーやジェイソンとの共同作業で新曲
これは楽しみ! しかし裏を返せばまたペイジ商法にだまされる
という側面もあるわけで、買ってしまうだろうなあ(^^;;;)。
投稿: モンスリー | 2013.10.14 18:47
モンスリーさん、コメントありがとうございます。
ただこんな駄文ではこの本の良さは何も伝わらないですが・・
>ZEPの音楽にひたるのにはムダな要素であり、ファンとしては目を背けたいのですよ(^^;。
やはりそうですか。
なんとなくそんな気はしてたんですけど・・
ということは、ファンの方にとってはこの記事は不要な部分なのかもしれない・・
>レコード・コレクターズ誌の前編集長です。
あ、そうだったんですね。
この本ではそれほどストーンズ賛歌といった感じの内容ではなかったように思いました。
投稿: SYUNJI | 2013.10.14 21:10
こんばんは、JTです。
>ポール・マッカートニーがペイジをかなり意識していたという有名な話があるが、
あら、そうでしたか。確かに「ロック・ショウ」の歌詞に「ハリウッドボウルのジミー・ペイジ」という一節がありますね。
>後期におけるプラントの変声についてふれている文章には滅多に出会わない。
私もSYUNJIさん以外あまり目にしませんねぇ。みなさんプラントのヴォーカルよりも、ペイジやボンゾのプレイばかりに耳が行っているのではないでしょうか。このあたりの世間の評価もプラントが再結成に積極的でない理由の一つではないかと。
>ジョーンジーやジェイソンとの共同作業で新曲
日の目をみる可能性は低いと思いますねぇ、私も聴いてみたいですが。
投稿: JT | 2013.10.15 00:19
JTさん、こんばんは。
>確かに「ロック・ショウ」の歌詞に「ハリウッドボウルのジミー・ペイジ」という一節がありますね。
おっしゃるとおり、この本には歌詞にペイジの名を入れた話も書いてあります。
またポールはツェッペリンのコンサートでのレーザー光線やスモークといった派手な演出に驚いたそうで、後のウィングスのステージでも参考にしていたようです。
>みなさんプラントのヴォーカルよりも、ペイジやボンゾのプレイばかりに耳が行っているのではないでしょうか。
うーん・・・やっぱそういうもんですんかね?
そりゃペイジやボンゾのプレイで持ってるツェッペリンでしょうけど、「Royal Orleans」とか「Darlene」なんかのプラントの声って、みなさん気にならないですか?(しつこい)
>日の目をみる可能性は低いと思いますねぇ、私も聴いてみたいですが。
そうかもしれないですね。
出る出るとあおっておきながら結局なかった話になるような予感もします・・
投稿: SYUNJI | 2013.10.15 21:28
男組の所でカキコした者です。ついでに色々見て面白いw
声ですかね。まあ、人間の老化の一番初めが声からというくらいで、合理的に発声しかつ管理もしっかりしているクラシック歌手でも逃げられないですから、ましてライブで歌いまくっては自堕落と荒淫に明け暮れたら、そら速攻衰えますわw
声にはその人なりの一番いい音域があって、高い声が出る人ほど調子に乗って無理をしてしまいがちのようです。プラントの場合も、無理があったんでしょうか。全盛期が短かったんで。更に高いギランがプラントよりはかなり長く命脈を保ったのと比べても、そういう感じがします。なので、同時期に再結成したイーグルスがその後大儲けしてるのと比べても、やっぱ無理だよねと、昔の連れ達とは言っています。イーグルスは、来日時に行きましたが、全く衰えなく美しいファルセットを聞かせてくれました。フェルダーがいない理由は後に彼の伝記で知りましたが。
投稿: ワレサ | 2013.11.04 21:50
ワレサさん、こちらにもコメントありがとうございます。
>プラントの場合も、無理があったんでしょうか。全盛期が短かったんで。
まあそうですね。
冷静に考えたら、あんな歌い方では長持ちするほうがおかしいんですけど、順番にアルバム聴いて「聖なる館」であまりのヘタリようにガッカリしたんですけどね。
>更に高いギランがプラントよりはかなり長く命脈を保ったのと比べても、そういう感じがします。
言われてみればそのとおりですね。
ギランは80年代の再結成時でもそれなりに歌えてましたし。
パープルのアルバムを聴いていてガッカリしたのは、ずっと後のジョー・リン・ターナーでした。
そう考えればイーグルスはツェッペリンやパープルよりもずっと商売上手なバンドなのかも・・?
投稿: SYUNJI | 2013.11.06 23:45