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聴いてみた 第105回 ローリング・ストーンズ その11

とうとうアルバム鑑賞枚数も二桁めに突入したストーンズ
しかし何枚聴いても「いやあオレも詳しくなったもんだ」感がやって来ず、相変わらず資産運用を外資系証券会社のチャラい担当者に任せっぱなしのヘタクソ素人投資家みたいな感覚で聴いている。(伝わらない)
それほど好みの音楽とも言えないこともだいたいわかってしまったんだが、意外にもまだ学習意欲は衰えないようだ。
自分にこんな向学心や向上心が残っていたとは驚きである。
そういう意欲はもう少し若い頃にお勉強やお仕事に向けて欲しかったとおじさんは思うなぁ。(腕組み)
でもいったい自分はストーンズに何を求めているのだろうか。(知らねーよ)

そんなデタラメなストーンズ株式投資必勝セミナーで見つけた次の講義は「It's Only Rock'n Roll」。
74年の作品で、ミック・テイラーが在籍した最後のアルバムである。
順序で言うと「山羊の頭のスープ」の次で、「ブラック・アンド・ブルー」の前となる。

Itsonlyrocknroll

バンドの状況は決していいとは言えず、プロデューサーのジミー・ミラーは解雇され、キースは麻薬から抜け出せず、ミック・テイラーはバンド内の自分の立ち位置を決めかねていた、そんな状態だったらしい。
まああまりマトモな状況が多くない人たちであるような気もするが、60年代にすでに人気と音楽性を確立させたストーンズは、多様化が進む70年代の音楽界に対して、暗中模索で試行錯誤な感じだったようだ。
そこで出したひとつの結論が、「It's Only Rock'n Roll」だった。

方向性としてはタイトルどおりロック色を前面に出した直球な内容で、また「It's Only Rock'n Roll」という題名は、フェイセズのドラマーのケニー・ジョーンズとミック・ジャガーの口論から生まれたという話。
ミックにしてみれば「うるせえなケニー!いいんだよオレはこういうの好きなの!」ってなところだったんでしょうか。

自分としてはどっちかっつうとブルースやソウル路線よりはロックで押してくれたほうがありがたいストーンズ。
果たしてあたしはグリマー・ツインズのロック路線に投資して日経平均株価を超える運用をすることができるのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.If You Can't Rock Me
スタートはいかにもストーンズらしいサウンド。
ハデな曲だが、思いの外ベースラインが目立つ。
あまりハモっていないボーカルやノリの部分が、後のエアロスミスなどに受け継がれている気がする。

2.Ain't Too Proud To Beg
引き続きノリのいい曲。
これもベースの音がよく聞こえる。
途中のギターはカキカキしてやや濁った音だが、全体としてはピアノがある分サウンドが締まった感じがする。

3.It's Only Rock'n Roll(But I Like It)
アルバムタイトルにもなっている名曲。
ベスト盤ですでに聴いていたので、あまり発見はないが、ガヤっぽいノリは好みかと言われると相変わらず微妙。
だいぶ慣れてきましたけど。
アルバムのほとんどの曲がジャガー&リチャードの作品となっているが、この曲は作詞がミック・ジャガーで作曲はロン・ウッドだそうだ。
元はロンのソロ作品用セッションでミックとロンが共作したもので、ドラムはケニー・ジョーンズ。
チャーリー・ワッツとビル・ワイマンは参加していない。
えっそうなの?
権利関係でロンともめたりしなかったんだろうか?

4.Till The Next Goodbye
一転アコースティックなカントリー調のバラード。
実はミック・ジャガーはバラードになると全然歌うまくないんだけど、こういう展開の演出がやはり効くよなぁ。
この曲はラストでも良かったと思う。

5.Time Waits For No One
悲しい調べだがあちこちに80年代を予感させるような華やかな装飾がある。
猥雑で野蛮なストーンズのイメージとはやや異なる。
後半はボーカルが途絶えジャズのような展開。
長く鳴り続ける南国っぽいミック・テイラーのギター。

6.Luxury(快楽の奴隷)
これもどこかストーンズらしくないような不思議な曲。
雰囲気は前の曲に近く、これもなんとなく80年代を思わせる。
キースのレゲエ志向が反映された曲のようだが、発表当時は新境地と評価されたらしい。
歌詞は邦題のイメージとは異なり、家族や会社のために働くヤケクソかつ誇り高き男の歌である。
日本のサラリーマンの大半が共感するところだろう。

7.Dance Little Sister
この曲もベスト盤で聴いている。
教科書どおりのストーンズ楽曲。
ドラムがバラエティに富んだ拍でかなりいい。

8.If You Really Want To Be My Friend
壮大なバラードが再び登場。
ピアノとオルガンの異なるキーボードサウンドで広がりを持たせ、コーラスとの掛け合いもソウルやゴスペルのようで立体的な構成になっている。
うーん・・これもラストに持ってきてもいい曲だ。

9.Short And Curlies
コミカルではねるようなテンポのいい曲だが、意外にいろいろな音がする。
後のクイーンを思わせるような、ゴージャスなイメージだ。

10.Fingerprint File
ラストはディスコくさいダンサボーなリズムに、ギターがキツくカッティングしてくるかっこいいサウンド。
エンディングは徐々に楽器が鳴りやんでいき、ベースラインに短いシャウトで終わる。
このベースはミック・テイラーが弾いているとのこと。

いろいろな曲があるが、どれも楽曲として完成度が高く、聴き応えのあるアルバムである。
それに大きく貢献しているのがミック・テイラーの存在である、というのが定説。
残念ながらミック・テイラーはこのアルバムを最後にストーンズをやめてしまう。
貢献度のわりに世間のテイラーに対する評価の低さや、グループ内での意見の通りにくさなんかが積み重なっての脱退行動らしい。
ただし解雇や決裂といった深刻な分離ではなく、脱退後もキースやストーンズの活動にはテイラーも協力的だったらしい。
ジャック・ブルースと行動を共にするための脱退という話もあったようだが、新バンド結成などには至っていない。

「Time Waits For No One」については曲のほとんどをミック・テイラーが作ったのだが、クレジットはされていない。
やはりミック・ジャガーとキース・リチャーズという特殊な人たちといっしょにやっていくには、相当過酷なハードルがたくさんあったのだろうか。
年齢もミック・テイラーはグリマーの2人より5歳くらい年下だし、後輩芸人としてのストレスも多かったに違いない・・・(知り合いかよ)
テイラーさんの本音のところはどうなのか聞いてみたいですけど。

前述のとおりこの後バンドのメンバーとして参加するロン・ウッドとの交流も、このアルバムを作る過程ですでに始まっている。
ロンのソロアルバムにキースやミック・テイラーが参加したり、ロンが作り始めた曲がいつの間にかストーンズのアルバムに収録されたりという感じで、徐々につながりは強固なものになっていったようだ。
でもロン・ウッドとしては、自分が作った曲がいつの間にかストーンズのアルバムタイトルにもなるような扱いで取り込まれたことについては、どういう心境だったのだろうか?

いずれにしてもサウンドはソリッドで締まった雰囲気があり、飽きの来ない構成になっていると思う。
トータルなインパクトはそれほど強くない気もするが、全体としては聴きやすく悪くない。
他のアルバムと具体的にどう違うのか的確に言えないのだが、「山羊の頭のスープ」「Black And Blue」よりも好みには合っている。
好みのレベルとしては前回聴いた「Beggars Banquet」と同じくらいだ。
うまく表現できないが、こういった実直にロックするストーンズはわりと素直に聴けるようだ。

ジャケットはCDだと少しわかりにくいが、メンバーが劇場の階段を下りてきて、周りの古代のような装いの人たちが大喝采・・という、宗教画風イラスト。
最近の携帯電話のCMみたいな絵だが、ストーンズにしては珍しいタイプのジャケットではないだろうか。

というわけで、「It's Only Rock'n Roll」。
まだどのアルバムも特徴を把握できたわけではありませんけど、ここまで聴いたストーンズのアルバムの中ではかなり良かったと思います。
全盤制覇などといった野望も特にありませんが、残っている未聴盤のうち「Sticky Fingers」「メイン・ストリートのならず者」は聴いておきたいと考えています。

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コメント

こんばんは、JTです。

このアルバム最初に聴いた時、音がモコモコしている、というのが第一印象です。おまけにライブ盤『ラブ・ユー・ライブ』の「It's Only Rock'n Roll」を先に聴いていたせいかスタジオバージョンは「もっさり」感たっぷり聴こえました。

でこのアルバム嫌いかというと、とっても好きなんですね(笑)。『ブラック・アンド・ブルー』とも違ったバラエティ感のせいでしょうか。


>貢献度のわりに世間のテイラーに対する評価の低さや、グループ内での意見の通りにくさなんかが積み重なっての脱退行動

ロン・ウッドは加入までのキャリアでヒット曲やソロアルバムなんか作っている余裕からか、ストーンズではそんなに前に出なくてもいいもんねー、というのがあったのでしょうね。一方ミック・テイラーは...。

あとロンに比べると『真面目な』人だったんでしょうねぇ。

>アルバム全曲がジャガー&リチャードの作品となっている

「Ain't Too Proud To Beg」は確かテンプテーションズのカヴァーだったと思いますよん。

投稿: JT | 2013.06.04 00:56

オジキ
半ば苦行のようなSTONES修行お疲れ様です。
修行するぞ修行するぞ修行するぞ修行するぞ。
Exile On~とSticky~を敢えて外して修行に臨み続ける姿に涙が止まりません。

Time Waits~は確かにM.テイラーの置き土産ですが、彼の貢献が評価され、こんな曲が増えたらと考えると、辞めて頂いて正解だったかと(これのギターソロは凄まじく良いですよ♪)

このアルバムはIORRと言う勇ましいタイトルの割にチャカポコした大したことの無い曲で肩すかしを食うかもしれませんが…

If You Really Want To Be My Friend
Fingerprint File

この2曲を聴くためだけに存在するアルバムと言っても良いかと思っています。

If You Really~は、昔のR&B SOULではなく、この時期最先端のSOULへの接近と言う意味でも重要な1曲。オトコ声のコーラスは後のFool to Cryとかの習作ぽいですが、こちらのほうが曲としても断然好きです☆

Fingerprint FileはStones史上最も黒く、ヌメヌメとしたグルーヴに身を預け、蹂躙されつくしてください。

B&Bはブラックミュージックへの接近がtoo muchですし、以降はディスコの4つ打ちに毒された軽いFunkですから、この時期にしか味わえないStones流のコクみたいなものを感じて欲しいです。
そういう意味で、もうテイラーぢゃムリ。って限界も露呈してしまったアルバムかなぁ。と

投稿: V.J. | 2013.06.04 19:36

JTさん、こんばんは。

>このアルバム最初に聴いた時、音がモコモコしている、というのが第一印象です。

モコモコですか・・・
もともと普段から耳は良くないんであまり感じませんでしたが・・

>でこのアルバム嫌いかというと、とっても好きなんですね(笑)。『ブラック・アンド・ブルー』とも違ったバラエティ感のせいでしょうか。

そうですか。
自分はまだ「とっても好き」まで到達してませんが、「ブラック・アンド・ブルー」との違いはわかりますね。

>「Ain't Too Proud To Beg」は確かテンプテーションズのカヴァーだったと思いますよん。

ああっ!!
しまった・・その通りでした。すいません・・
ぷく先輩に叱責される前にこっそり直しておきます・・

投稿: SYUNJI | 2013.06.04 23:09

V.J.若、ご指導感謝です。
あまり自覚のないまま修行っぽいアルバムを聴いてます。
使うPCはもちろんマハーポーシャ・・・

>彼の貢献が評価され、こんな曲が増えたらと考えると、辞めて頂いて正解だったかと

うーん、そうですか・・
もしミック・テイラー在籍のままストーンズが80年代に突入していたら、どんなことになってたんでしょうね?

>If You Really Want To Be My Friend
>Fingerprint File
>この2曲を聴くためだけに存在するアルバムと言っても良いかと思っています。

なるほど。
タイトル曲ばかり目立つような感じですが、言われてみると確かにこの2曲は突出していい曲ですね。

>この時期にしか味わえないStones流のコクみたいなものを感じて欲しいです。

深い・・・
でもそのコクは自分にとっては受け入れやすい可能性は大いにありますね。
そこまで感じとれるかどうかわかりませんが、引き続き空中浮遊目指して修行して参ります。

投稿: SYUNJI | 2013.06.04 23:27

覚えていていただいて光栄です。さて、ストーンズについて自分も熱心なファンではありません。数枚アルバムをもってはいますが、どちらかというとリマスターのベスト盤を聴くことが多いです。最近みたTV番組でいっていたが、80年代キースとミックの冷戦。パンクの台頭。新興バンドから旧世代の商業ロックといわれはじめていたらしい。そんななか彼らはベテランだからできるエンターテイメント性と巨費を投じたツアーを展開していく。そして「刺青あり」「StillLife」と当時売れっ子のエンジニア ボブ・クリアマウンテンを起用して70年代ステータスを保ちながらサウンドを80年代につくりかえ、蘇っていったそうだ。それにしてもIt's Only Rock'n Rollってロン・ウッドの作曲だったとわ。

投稿: マルチオーディオ | 2013.06.11 16:16

マルチオーディオさん、コメントありがとうございます。
またよろしくお願いします。

>80年代キースとミックの冷戦。パンクの台頭。新興バンドから旧世代の商業ロックといわれはじめていたらしい。

>当時売れっ子のエンジニア ボブ・クリアマウンテンを起用して70年代ステータスを保ちながらサウンドを80年代につくりかえ、蘇っていったそうだ。

そのようですね。
ストーンズのすごいところは80年代の音も採り入れつつ、独自のスタイルも作ってきたことにあると思います。
高度な判断だったと思いますが、70年代のままでは退廃し、80年代そのものの音ではきっと飽きられていたんでしょうね。
ただ80年代のストーンズの作品は、ファンの間でも評価はかなり割れるんじゃないかと感じましたが・・

投稿: SYUNJI | 2013.06.11 23:15

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