« 行ってみた 第36回 二条城・京都御苑・平安神宮 | トップページ | 行ってみた 第37回 潮来・鹿島・佐原 »

やってない 第23回 村上春樹を読む

聴いてない・見ていない・やってないといった実体験の乏しさを世界に捧ぐ愚かなBLOGを長く続けているが、今回はその未体験告白の中でも現代社会に生きる一人の日本人として最大級に罪深いレベルではないかとおびえている。
自分は村上春樹の著作を読む、ということを全然していない。(場内騒然)

村上春樹については、ここでいちいち薄い略歴紹介をするなど不要だろう。
今の日本において、また世界においても、最も版元と取次と書店と読者を動かすチカラを持っている作家である。
今年も新作の小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が発売され、各地の書店でタワー積みしたり徹夜で並んで買う人がいたり中学生が本買ったあとで不良に狩られたり、というすごいことが起こっている。(適当)
発売後7日で100万部突破?
いいなぁ文藝春秋。(ド本音)

そんな村上春樹の著作について、自分は今まで全然読んでいないのだった。
「少し読んでみたけどちょっとオレには合わなかったな」というレベルではない。
今の日本にそんなダラでタワケではんかくさいヤツがいるのか・・と新鮮に驚いている方も多いとは思うが、事実なので仕方がない。

直球で言うと「興味がない」ということになる。
誰でも「存在は当然知っているが全く興味がない」という分野はあるだろう。
自分の場合、村上春樹の小説もそういう位置にあるだけの話だ。

当然「なぜ読まない?」という疑問が生じるところだが、基本的に自分は小説全般を読まない変わり者なのである。
なので村上春樹に限らず、村上龍も夏目漱石も長塚正も北方謙三もモブ・ノリオも高見広春も松本伊代も全っ然読んでいないのだった。
「それにしたって村上春樹くらいはふつう読むやろ」となるだろうが、そこまでには全く至っていないし、意欲も情動もなぜか起こらない。

小説全般が苦手な理由として、根本的に飽きっぽいというのがある。
長編小説は読んでいる途中でいつも投げ出したくなるし、束を見た時点で「ムリだ・・」と思ってしまう。
またこれはおそらく伝わらないとは思うが、読んだ後に「腑に落ちない」感覚にさせられるのがイヤだ、という子供っぽい理由もある。
小説なんてものは全てに解があるわけではもちろんないのだが、読み終えた時にどこか「置いていかれた」感が残るのが嫌いなのである。
楽しみ方が根本的に間違っているとは思うけど。

従って読む本のジャンルは必然的にエッセイやルポなどノンフィクションに偏る。
小説なんて年に1作読むかどうか程度だ。
こんな恥ずべき日本の珍中年も実在するのです。

村上春樹について言えば、妻はそのほとんどの著作を読んでいる(と思う)。
家にも村上本はたくさんあるし、「1Q84」なんかは発売と同時にAmazonに注文したりしていた。
「ハルキスト」と呼んでいいのかどうかは不明だが、ファンであることは確かだ。
自分もその気になればすぐにでも村上春樹作品にふれることが可能な環境に生きてはいる。
「もったいない・・バカじゃないの?」ってところだとは思うけど、家にある村上本そのものを手に取ったことも全然ない。

こんな自分だが、村上春樹の著作を読んだことが(ほんの少しだが)ある。
ひとつは「アンダーグラウンド」だ。
これは小説ではなく、地下鉄サリン事件の被害者への取材を記録したノンフィクションである。
村上春樹の作品の中で、これだけ読んでいないという人もいるのではないだろうか。
筆者自身の強い主張やワイドショー的なアオリなどはなく、多くの被害者の証言をシンプルに記述してあり、それがゆえに非常に臨場感のある内容だ。
実は読んだのは数年前である。
これも村上春樹だからというよりは、地下鉄サリン事件のルポルタージュとして興味があったから書店で探してみたのだった。
ちなみにオウム関連ルポとしては森達也の「A」「A2」が有名だが、「アンダーグラウンド」もこれらの森作品と並ぶ秀作だと思う。

もうひとつは「やがて悲しき外国語」というエッセイである。
これも2年くらい前に読んだのだが、正直あまり印象には残っていない。

小説を含む文化芸術全般は、親しむに越したことはないが、もちろん義務ではない。
自分という人間は、どうやらノンフィクションの臨場感に強く興味を抱く傾向にあるようだ。
これもまた伝わらないとは思うんだが、臨場感ある表現にふれた時には、座っている座布団の四隅を持ち上げられて移動させられるような、カラダが持っていかれるような浮遊感にも似た感覚があるのだ。
この感覚が、小説というファンタジックな分野においてはなかなか得ることがない。
というより、浮遊感を伴う小説にまだ出会っていないのだろう。

村上春樹作品には、小説以外にもエッセイや紀行や写真集などもあるようだ。
いきなり自分にとってハードルの高い小説に挑む(大げさ)よりも、こうしたノンフィクションから作品になじんでいくという手段がいいのかもしれない。

というわけで、村上春樹。
質問自体が脱力なことだと思いますけど、みなさんはどれくらい読まれていますでしょうか?
また自分と同じように読んでいない方はおられるでしょうか?

| |

« 行ってみた 第36回 二条城・京都御苑・平安神宮 | トップページ | 行ってみた 第37回 潮来・鹿島・佐原 »

コメント

こんにちは。
村上春樹、ほとんど読んでますが
とくに初期の作品が好きで、
いまでも「1973年のピンボール」と「中国行きのスローボート」だけは
ときどき読み返したりしてます。
実を言うと「ノルウェイの森」あたりから
ちょっとのめり込みきれないものを感じています。
「1Q84」は読んだけど、新作はまだ読んでません。

そこへいくとエッセイは比較的気楽に読めていいですね。
ギリシャ、イタリアなどの滞在記「遠い太鼓」や、
無人島訪問、さぬきうどん巡りなどの体験記「辺境・近境」
など、軽妙な文章で面白かったです。

投稿: 木曽のあばら屋 | 2013.05.06 23:49

SYUNJIさん、こんばんは。

村上春樹・・・いいですよ!!私は一年前から読み始めました。
極端なハルキストではありませんので、流行を追うよりも
自分に興味ある題材や短編を読んでます。

「1973年のピンボール」いいです!!!
なんとな~く喪失感がふわっ~って感じです(笑)

でも初期の作品は読者の感性問われそうで
合う合わないが激しいかも・・・

実は私もノンフェクション系が好きです。


投稿: ボレロ | 2013.05.07 20:36

木曽のあばら屋さん、コメントありがとうございます。
やはりほとんど読まれてますか・・そうでしょうね・・

>実を言うと「ノルウェイの森」あたりから
ちょっとのめり込みきれないものを感じています。

そうでしたか。
むしろ人気がさらに高まってきたあたりの作品ですよね。

>そこへいくとエッセイは比較的気楽に読めていいですね。

全然知らなかったんですけど、エッセイもかなり出てるんですね。
特に旅行記ものは自分にも読めそうな気がします。
まずはそっちの方面からトライしようかと思います。

投稿: SYUNJI | 2013.05.08 21:50

ボレロさん、コメント感謝です。

>村上春樹・・・いいですよ!!私は一年前から読み始めました。

あれ、わりと最近ですね?
そういえば妻はいつから読んでいたのか全然知らない・・

>極端なハルキストではありませんので、流行を追うよりも自分に興味ある題材や短編を読んでます。

よく考えたらそれでいいはずですよね。
飛ぶように売れているから読まねばならない、という話でもないですし。

>「1973年のピンボール」いいです!!!

そうですか、この作品も評価が高いですね。
たぶん家にあると思いますんで、探してみます。

投稿: SYUNJI | 2013.05.08 22:39

先日、はじめて本屋で「色彩・・」を購入したぷくちゃんといいます。
いやらしいんだけど、知性でいやらしいのを隠す、まるで自分みたいでびっくりしました(自分で言うな)
ソフトなエロ小説ですよ、エロ。

投稿: ぷくちゃん | 2013.05.11 15:26

村上春樹さん、特に興味があるわけではありませんが、『ノルウェーの森』は買いました。
「ビートルズの曲名がタイトルの小説だなんて。きゃー♪」と手に取ったのですが、ビックリする程内容を覚えてません。全部読んだ事は間違いないのですが。
ビートルズとはあまり関係なかったような気がします。

それから○年、
「ボウイの曲名がタイトルの小説だなんて。きゃー♪」と再び関心を持ったのが『1984年』……だと思ったら『1Q84』でした。
ボウイの『1984』はジョージ・オーウェルの『1984年』をモチーフにしているそうですが、村上春樹さんも『1984年』の影響を受けているらしいですね。
いや~、『1984年』はホント衝撃的な小説でした。
『ノルウェーの森』の事はまるで覚えてない記憶力のない私ですが、『1984年』を読んだ時のショックは忘れられません。
『1Q84』は特別好きなわけではありませんが、読み出したら先が気になって、やめられない止まらないという作品でした。

あとはジャズについてのエッセイを読んだような記憶があります。
というわけで、やっぱり音楽ファンな私でした。

多崎つくるさんは、多分音楽とは関係ないですよね?
というわけで、全く食指が動きません(爆)。

投稿: YAGI節 | 2013.05.11 17:43

「ノルウェー」じゃなくて「ノルウェイ」ですね。失礼しましたぁ

投稿: YAGI節 | 2013.05.11 17:51

色彩先輩、コメント感謝です・・・が、「はじめて」ってことは、他の村上作品は読んでないってことスか?

>いやらしいんだけど、知性でいやらしいのを隠す、まるで自分みたいでびっくりしました(自分で言うな)

なるほど・・ぷく先輩のような小説・・
よくわかるたとえですね。
もう読まなくてもだいたい中身がわかりました。(大ウソ)

投稿: SYUNJI | 2013.05.11 20:45

YAGI節さん、コメントありがとうございます。

>ビートルズとはあまり関係なかったような気がします。

そうらしいですね。
主人公が曲を聴くシーンはあるそうですけど。
読んでないんでよく知らないのですが・・

>『1Q84』は特別好きなわけではありませんが、読み出したら先が気になって、やめられない止まらないという作品でした。

そうですか・・
家にあるんですけど、束が厚い上に3巻もある時点で全然読む気が起きません・・

>あとはジャズについてのエッセイを読んだような記憶があります。

ジャズ関連の本はいくつかあるみたいですね。
ちなみにウィキペディアでは「レディオヘッド、オアシス、ベックなどの現代ロックを聴き、最近ではコールドプレイやゴリラズ、スガシカオのファンを公言している。」とあります。
であれば、自分としては村上春樹のオアシス評やベック評を読んでみたいですね。

投稿: SYUNJI | 2013.05.11 21:13

SYUNJIさん、大変ご無沙汰しておりました。

学生時代に初期の作品をけっこう読み、とりあえず「羊をめぐる冒険」は好きでしたが、その後はなんか読んでも印象に残らなくなってしまいました。「ノルウェイの森」も読んだけど、「むう…」という感じでしたし。

ただ、言われているとおり、ルポやエッセイ集には、かなり面白いものが多いですね。

どなたかも書かれていましたが「遠い太鼓」。これは何度読み返してもおもしろい。「ノルウェイ…」や「ダンスダンスダンス」を執筆するときに旅したヨーロッパ各地の紀行文なんですが、ランチアを借りてドライブするもトラブルの連続で進退きわまる…といったくだりは、この人もフツーの人なんだな〜といった感じが垣間見えて、かなり楽しめます。かなり厚い本ですが、あっというまです。

よろしければ、ぜひ。

投稿: 富美男 | 2013.05.15 20:18

富美男さん、ごぶさたしております。
ご指導ありがとうございます。

>学生時代に初期の作品をけっこう読み、とりあえず「羊をめぐる冒険」は好きでしたが、その後はなんか読んでも印象に残らなくなってしまいました。

そうですか・・
当然ですけど、やはり作品に対する感じ方は人それぞれですね。

>どなたかも書かれていましたが「遠い太鼓」。これは何度読み返してもおもしろい。

ふつうのエッセイよりは紀行文のほうが面白そうですね。
でもこのタイトルに見覚えがないなぁ・・
家にあったかどうかもわかりませんが、探してみます。

投稿: SYUNJI | 2013.05.15 23:08

はじめまして。
今まで「聴いてない」シリーズが好きで、こっそり読ませていただいていました。

村上春樹・・・読んでません。
はるか昔、友人に勧められてパッと開いた1ページで「無理!」と感じて以来、なんとも苦手です。
小説は好きでいつも何かしら読んでますが、この方の日本語の言い回しがどうしても苦手で。このままじゃ日本人としてちょっと恥ずかしいかも、と英訳本を試そうとしたり、『遠い太鼓』を買って読み始めたりしましたが、乗り越えられませんでした。
今では新作についてのニュースでお顔を拝見するのもツライ、というほとんどトラウマのような状態です。

投稿: ミムラ | 2013.05.29 09:03

ミムラさん、初めまして。
こんな低レベルな聴いてない自慢BLOGにコメントありがとうございます。

>村上春樹・・・読んでません。
>はるか昔、友人に勧められてパッと開いた1ページで「無理!」と感じて以来、なんとも苦手です。

そうですか・・
でもいますよね、「この人の文章苦手だなぁ」って思わせる人。
理由はよくわからないことも多いですけど。

>今では新作についてのニュースでお顔を拝見するのもツライ、というほとんどトラウマのような状態です。

うーん、そうなんですか。
思うに村上春樹ってなかなかテレビに登場しないので、小説の人気の高さに反して我々読者がその姿に慣れにくいってのもあるんじゃないでしょうかね?
初めはいまいち気に入らなかったタレントが、テレビでよく見かけるうちになんとなく好きになる、ということがありますけど、その逆パターンではないかと・・
何のフォローにもなってませんが・・

投稿: SYUNJI | 2013.05.30 22:37

すごく久しぶりです。たまになんとなく覗いてはいましたが、いつもいつも面白く拝見していました。現在、自分はマルチオーディオなんてものどこいったのかって状態で、CDはすべてNASサーバーにコピーってCD入れと庫にしまったCDは納戸に保管。せっかくサーバー化したのにあんまり音楽聞かない状態です。長距離通勤なので、前はよく携帯で音楽きいてましたが、今はもっぱら小説よんでます。図書館にはいつも予約が5冊以上ってとこです。
さて、村上春樹。「風の歌を聴け」群像の新人賞。このころ各雑誌の新人賞を漁って読んでいたので、もちろん初版本保有です。しかし、「1973年のピンボール」そして「羊をめぐる冒険」を読んだ時、何だよ前の2冊はなんだったんだ!羊・・を理解するためだけに存在するのか??ぐらい3部作といわれながらまえ2冊は退屈。羊だけがおもしろい!村上さん自身が未熟ともいってる2作は海外ででていないらしい!以降、初版本はおろか、「ノルウェー・・」にいたっては文庫になってから読んだ。[1Q84」は職場の後輩が借してくれたから読んだ。ただし、翻訳ものは購入してよんでいる。「ライ麦畑でつかまえて」は読みやすくはなっているが、やはり理解できない。デカプリオ主演で話題になっている「グレートギャッツビー」はおもしろかった。「ロング・グッドバイ」は記憶にないが読んだ。「アンダーグラウンド」は自分も好きです。久しぶりなのに長くなってすいません。おまけにとりとめなくてすいません!できたらまたちょくちょくおじゃましたいです。名前はかえたいけど・・・

投稿: マルチオーディオ | 2013.06.10 15:56

マルチオーディオさん、お久しぶりです。
何年ぶりでしょうかね?
お元気でしたか?
BLOGを始めた頃、毎回コメントをいただきましたね。

>「1973年のピンボール」そして「羊をめぐる冒険」を読んだ時、何だよ前の2冊はなんだったんだ!羊・・を理解するためだけに存在するのか??ぐらい3部作といわれながらまえ2冊は退屈。羊だけがおもしろい!

あれっ、そうなんですか?
当たり前ですけど、みなさんの評価もそれぞれですね。
「羊をめぐる冒険」はたぶん家にあると思いますが・・・

>「アンダーグラウンド」は自分も好きです。

これ小説じゃないんで、ハルキストと言われる方々の評価はどうなのかわかりませんが、すごいチカラを持ったルポだとは思いますね。
それにしてもマルチオーディオさん、村上作品たくさん読んでますね。

>できたらまたちょくちょくおじゃましたいです。

ぜひお願いします!
久しぶりにコメントいただけてうれしいです。
あと半年でこのBLOGも丸10年です・・
10年間何の進歩もないBLOGですが、またいろいろご指導いただけたらありがたいです。

投稿: SYUNJI | 2013.06.10 22:04

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: やってない 第23回 村上春樹を読む:

« 行ってみた 第36回 二条城・京都御苑・平安神宮 | トップページ | 行ってみた 第37回 潮来・鹿島・佐原 »