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聴いてみた 第104回 ローリング・ストーンズ その10

中高年ストーンズ自動車教習所検定落ちまくりで自分より若い教官から「才能なし免許とるなんぞやめてまえやボケ」とののしられて縁石にタイヤこすってまた教官から舌打ちされている・・・ような感じのあたし。(長い)
知らない間にストーンズのアルバム学科教習も10枚目となってしまった。
ふつう世間では「同じアーチストのアルバムを10枚も聴いている」のは、「ファンやマニアと呼ばれる人間のする行為」となるはずだが、自分の場合ストーンズに対するアプローチは未だに初心者感覚でしかない。
「聴いてきた」つもりのポリスやボストンなんてアルバムは5枚しか出していないのに、倍の枚数を聴いてみたストーンズについてはまだ路上教習にすら出ていないのが実情である。

そんなわけで一日も早くストーンズ修了検定を受けて路上に出たいと画策したあたしが今回選択したのは、1968年発表の「Beggars Banquet」。
昨年末に近所のレコファンで購入しておいたものだ。

Beggars

このアルバムはブライアン・ジョーンズが参加した最後の作品でもある。
厳密にはその後の「Let It Bleed」にも参加はしてるそうだが、ギターを弾くブライアンはこのアルバムまでとなっている。
麻薬で相当弱っていてメンバーとも音楽的な対立があらわになってきたブライアン。
ミックとキースにとっても鬱陶しい存在となっており、レコーディングのためスタジオ入りして「さてオレは何をしたらいいかな?」とたずねるブライアンに、ミックは「オレにはわからない」と答えたそうだ。

発表の翌年6月にブライアンはバンドを脱退。
そして7月には自宅のプールの底に沈んでいる。
うーん・・・かわいそうなブライアン。
真実は当然ひとつなはずだが、ブライアンの死についてはその100倍くらい真実ではない話が出回っているんじゃないかと思う。

さて音楽性としては、前作「Their Satanic Majesties Request(サタニック・マジェスティーズ)」でサイケ方面に傾きすぎた方向性を、本来目指していたリズム&ブルースなほうへ戻したものとされている。
プロデューサーにジミー・ミラーを起用したのも、その決意の表れだそうだ。
「Their Satanic Majesties Request」はまだ聴いていないのだが、今回の「Beggars Banquet」のほうが聴きやすいということだろうか。
果たしてあたしはこのアルバムでは無事に縁石にも乗り上げず坂道発進も半クラッチ(死語?)で切り抜けることができるでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Sympathy for the Devil(悪魔を憐れむ歌)
民族音楽っぽいパーカッションにピアノで始まる不思議な調べ。
同じサウンドが延々続き、そういやギターが出てこないなと思ったところで切り裂くようなギターの音が登場。
終盤は甲高いボーカルと鋭いギターの掛け合い。
どこかツェッペリンの「You Shook Me」を思い起こす。
歌詞は誇大妄想のカタマリのような内容で、ミックがオルタモントでこの曲の前に「この曲をやるといつも何かが起こる」と発言し、そのあと悲劇が実際に起こった・・という、良くない伝説がついてまわることになった。

2. No Expectations
一転してアコースティックなバラード。
ここでにゅいーんという音を出しているのはブライアンのスライドギターだそうだ。
これがストーンズにおけるブライアンのまともな最後の仕事というのが一般的な評価らしい。
ゆったり流れるベース、時々聞こえるピアノとの一体感が非常にいい。

3. Dear Doctor
これもカントリーな雰囲気のアコースティックナンバー。
この曲ではブライアンはハーモニカを吹いているとのこと。
楽器の音はいい感じだが、コーラスはいまいち調和がとれておらずガヤ系な曲。

4. Parachute Woman
ここに来て少し苦手なブルース調の曲が登場。
「パラシュートみたいにオレの上に降ってこいよ」と女性に訴えるストーンズならではのワイセツな歌らしい。

5. Jigsaw Puzzle
序盤はわりとおとなしいサウンドながら、中盤から徐々に盛り上がる力強いロック。
再びブライアンのスライドが聴けるのだが、キモはむしろベースラインにあるように思う。
気のせいかミックの声が他の曲と少し違って聞こえるなぁ。

6. Street Fighting Man
全体としてはストーンズといったらこれでしょう的な曲なのだが、よく聴くとところどころシタールみたいな音もするし、奥の深いサウンドだ。
これは聴いていて楽しい。

7. Prodigal Son(放蕩むすこ)
この曲だけロバート・ウィルキンスという牧師をしていた人の作品。
低い単調なボーカルにカントリー風かきならしギター。
ライ・クーダーが参加している。

8. Stray Cat Blues
騒々しいギターにどばどばドラム、ぼんぼんベースにねばねばボーカル。
どっちかっつうとこれのほうがストーンズそのものな楽曲だと思う。
メンバー全員が役目を最大限に果たすとこうなる、という見本のような音だ。
好みかと言われると微妙だが、悪くはない。

9. Factory Girl
どこか南米の民族音楽みたいな不思議な曲。
それぞれの楽器とボーカルに主張がありすぎて調和がとれていないが、これがストーンズの持ち味でもあると思って聴くといい音に聞こえるから不思議だ。
ようやく少しストーンズのサウンドに慣れたということだろうか?
歌詞は工場勤めの女を待つチンピラ風な男の心情を歌っていて、楽曲の雰囲気とはややズレているように思う。

10. Salt Of The Earth(地の塩)
アコースティックギターから始まり、ピアノやドラム、女性コーラス隊も加わってどんどん壮大に広がっていくドラマチックなラストナンバー。
ストーンズのアルバムの最後には意外にこのパターンが多いような気がする。

聴いてみて感じるのは、アコースティックで臨場感のある「近い」音が多いことだ。
「Let It Bleed」にも雰囲気は似ている気がするが、「Beggars Banquet」はカントリー色よりもブルース色のほうが濃い。
あまり広くもないライブハウスで、それほど上品でもない客を前に、シンプルだが力強く演奏し歌い、迫力ある楽曲で客を黙らせ、最後に大喝采を受ける・・というようなドラマのようなアルバムである。
今まで聴いてきたどのアルバムとも違うが、聴きやすさの順位としては最上位にあると言っていいと思う。

このアルバムを聴くまでは、ミックの野蛮で猥雑な叫びとキースのヤケクソなカッティングに黒っぽいリズムこそが彼らの本質であって、それを受け入れることがストーンズ鑑賞者の義務みたいに思っていた。
今もその点はそれほど変わっていないのだが、自分が思っていたよりもずうっと多面的なバンド、それもストーンズなのだ。
なんだかゴタクを並べてしまったが、このアルバムは繰り返し聴きたくなると素直に思う。
ネットで調べてみても、このアルバムを高く評価する人は多いように感じた。
ブライアン・ジョーンズのチカラの衰えは、少なくともこのアルバム制作においてマイナスに作用することはなかったようだ。

ジャケットはトイレの落書きというお下品なもので、メンバーの姿はどこにもないのだが、アートとしてはわりといいと思う。
ジャケットとサウンドが全然マッチしていないのも投げやりでいいよね。

というわけで、「Beggars Banquet」。
かなり良かったです。
時系列としては相変わらずバラバラな聴き方ですが、10枚目にこれを選んで良かったのかもしれません。
今度はもう少しブライアン・ジョーンズの活躍していた時代の作品を勉強してみようと考えています。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
夏が近くなるとストーンズ熱が異常に高ぶるボレロです。

さて、この作品ですが持っていないので「悪魔を憐れむ歌」以外はあまりピンと来ないのですが、記事でみると
「ストリートファイティングマン」や「地の塩」などは
聴き処のようですね。そして聴きやすさでは最上位とあるのでボーナス入ったら買ってみようと思います(貧乏?)

「悪魔を憐れむ歌」は題名だけだとブルースの印象ですが
もっとプリミティブなサンバや呪術的な民族音楽のリズムなのでストーンズとしては非常に面白い曲だと思います。
そう考えるとストーンズは音楽性の幅が広いですね。

ブライアンの死因は伝記映画が出ていますのでそれを観るとXXXだったらしいです・・・(すいません題名忘れました)

6月頃からは「リトルT&A」や「スタートミーアップ」をガンガン車の中で聴くボレロでした(久々のコメントで支離滅裂でした・・・)


投稿: ボレロ | 2013.03.05 00:03

ボレロさん、コメントありがとうございます。

>もっとプリミティブなサンバや呪術的な民族音楽のリズムなのでストーンズとしては非常に面白い曲だと思います。

確かにそうですね。
「何かが起こる」という恐ろしげな伝説のイメージとは少しギャップがあるように感じます。
何度聴いても不思議な曲ですね。

ブライアンの死因については、これまで何度も他殺説が浮上したそうですね。
2010年には警察も再捜査はしないと決定したようで、関係者も亡くなってきているので永遠にナゾのままとなりそうですが・・

投稿: SYUNJI | 2013.03.06 23:17

こんばんは、JTです。

「Beggars Banquet」、気に入ってもらえたようですね。

アナログ盤のライナーノート(再発版)には、「悪魔を憐れむ歌」のギターソロがクラプトンではないかとの噂が発売当時あった、との記述がありました。う~ん、ちがうだろ。当時のクラプトンならもっと流暢に弾かんか?、と思ってました。

あとこの曲のレコーディングシーンが断片的ですがゴダールの「ワン・プラス・ワン」という映画で見ることができます。アレンジの変遷がわかってなかなか面白いのです。最終テイクでもブライアンはアコギ弾いてるのですが、映画のなかですら全く彼のギターは聞こえません。

実は彼のギターだけ故意に録音されてないんじゃないか、と邪推してます。

投稿: JT | 2013.03.07 00:56

オジキ
ストーンズ自動車教習所の教官させて頂いてるV.J.と申します。
Little T&Aの教習生を待ちわびながら、MONKEY MANを今日も乗せて…思った以上につまらないので終了。

>自分が思っていたよりもずうっと多面的なバンド、それもストーンズなのだ。
なんだかゴタクを並べてしまったが、このアルバムは繰り返し聴きたくなると素直に思う。

はい!
合格!!
もうね、僕は、セックス、ドラッグ&ロケンロー、いぇーいとかゆってるSTONESファンとか好きじゃないんです(笑)

IORRのイメージが強いのもわかるんですけどね…

もっともっと、したたかで、器用で、時代の上澄みを掬い上げるのが上手いバンドかと(おぃおぃ、Stonesファンにぶっとばされるぞ)


ブルーズ回帰アルバムのように思っていましたが、この時期、LONDONではBLUES ROCKが華やかな時期。
まぁ、当時のはやりをうまく取り入れつつ、そこから一歩進んだSympathyとかも取り組んでるトコが良いのかなぁ~。と

未だに、賞味期限が切れないのは、evergreenなブルーズを下敷きにしているからかなぁ。などと思います

投稿: V.J. | 2013.03.07 21:21

JTさん、コメントありがとうございます。

>アナログ盤のライナーノート(再発版)には、「悪魔を憐れむ歌」のギターソロがクラプトンではないかとの噂が発売当時あった、との記述がありました。

へぇーそうなんですか?
まあもちろん自分には「これはクラプトンのギターに違いない!」などとわかるはずもありませんが・・
クラプトンはストーンズ加入を夢見ていたそうですけど、ストーンズ側はどう思ってたんですかね?

>実は彼のギターだけ故意に録音されてないんじゃないか、と邪推してます。

うーん・・そうですか。
つくづく気の毒なブライアン。
やはりもう少しブライアンが活躍してた頃のストーンズを聴かねばなりませんね。

投稿: SYUNJI | 2013.03.09 09:44

V.J.教官、今日もよろしくお願いします。
修了検定不合格10回目です。

>もっともっと、したたかで、器用で、時代の上澄みを掬い上げるのが上手いバンドかと

いやーこれもなんとなくわかる気がしますよ。
今さらですけど自分には「へぇーこんな曲もあるんだ・・」という発見の連続ですし。

>未だに、賞味期限が切れないのは、evergreenなブルーズを下敷きにしているからかなぁ。などと思います

そうかもしれないですね。
まあもちろん今も現役ではあるんですが、こうして古い作品を聴いても全く問題ないというのは、根底にあるブルースが大きな要因なんでしょうね。
・・・つうことで、今日のところは検定合格?
いやあありがとうございます、教官!

全然関係ないですけど、その昔教習所に通っていたとき、修了検定の車庫入れ中に、外にいてバックオーライと誘導していた教官を結構な勢いでひいてしまったおばさんがいました・・
救急車も来て教習所内が騒然としたことを思い出しました。

投稿: SYUNJI | 2013.03.09 09:57

SYUNJIさん、こんにちは。
「ベガーズ・バンケット」ですが、私も聞きやすい
アルバムだと思います。アコースティック・ブルース
路線ですが、聞きやすい。ですが、「ブラウン・シュガー」
のような強烈な「つかみ」がないところは、少し上級者向け
のような気もします。
聞きやすく、それでいて上級者向け。ストーンズらしい
作品だと思います。

つかみが足りないと書いたものの、名曲「悪魔を哀れむ歌」
に始まって、「ストリート・ファイティング・マン」の
アコースティック楽器が生み出すリズム感、「ファクトリー・
ガール」の不思議なカントリー路線(?)など、山場は至る所に
ありますね。久しぶりに聞き直しましたが「ジグソーパズル」
の正調ロック路線に「おお!」とうなりましたです。

投稿: モンスリー | 2013.03.09 14:51

モンスリーさん、こんばんは。

>「ブラウン・シュガー」のような強烈な「つかみ」がないところは、少し上級者向けのような気もします。

おお、ということはいよいよあたくしもストーンズ上級者の仲間入りを・・
いや、そんなことはもちろんありません。
むしろこの路線は初心者にも十分聴けるように思いましたが・・

>名曲「悪魔を哀れむ歌」に始まって、「ストリート・ファイティング・マン」のアコースティック楽器が生み出すリズム感、「ファクトリー・ガール」の不思議なカントリー路線(?)など、山場は至る所にありますね。

同感です。
なんというか非常にいい感じに構成されたコンサートを再現してるような、バランスとまとまりに富んだアルバムじゃないかと思いましたね。
ホントに今さらですけど、もっと若い時に聴いておけば良かったなぁ・・

投稿: SYUNJI | 2013.03.09 21:55

こんばんは、お邪魔します。実は、ワタクシ、このアルバムに最近親近感を感じております。
悪魔を憐れむ歌の歌詞を真剣に読んだからであります。恥ずかしながら、最近になってこのアルバムの良さに
気付いたという訳です。

投稿: jamken | 2013.03.16 20:07

jamkenさん、コメントありがとうございます。
jamkenさんの記事も読みました。

歌詞の意味するところはミック本人にしかわからないとは思いますが、自分がCDの訳詞を読んで感じたイメージは2つあります。
1つは誇大妄想で狂信的で挑発的なイメージ、もう1つは人類が持つ悪の心や愚かな争いに絶望しかけていることを、悪魔という言葉を使って訴えるというものでした。

当時のミックやバンドの状況、また世相や時代背景なども合わせて考えると、いろいろな解釈ができそうですが、コアな部分にはやはり強い「信仰」があるのではないかと思います。

投稿: SYUNJI | 2013.03.17 18:22

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