聴いてみた 第102回 ソウル・アサイラム
今回採り上げるのはソウル・アサイラムの95年のアルバム「Let Your Dim Light Shine」。
みなさんはこのバンド、ご存じでしょうか?
このバンドを知ったのは「Runaway Train」という曲のプロモ・ビデオをMTVで見たのがきっかけである。
曲自体はそれほどインパクトは強くなかったが、映像は衝撃的な内容だった。
全米で行方不明になった子供達の写真が次々に映し出され、曲が終わった後には「もしこの子供達を見たら、またはあなた自身がこの子供だった場合は、この電話番号に電話してください」と呼びかけるというものだ。
実際に数人の子供がこのビデオを見た人からの通報で発見に至ったらしい。
ソウル・アサイラムは「聴いてない」シリーズでは記事にしていない。
どうでもいい規程ではあるが、「オリジナルスタジオ盤を2枚以上聴いた」ことが自分なりの「聴いている」とする条件である。
この条件だと実はソウル・アサイラムは聴いていることになってしまう。
今日採り上げる「Let Your Dim Light Shine」の他に、「Runaway Train」が収録された「Grave Dancers Union」も持っているのだ。
「Runaway Train」を聴いて興味がわいたので、その後立て続けに上記2枚のCDを買ってみたのである。
ただし。
持っているだけで聴きこんだりしたわけではなく、印象に残る曲は残念ながらやっぱりシングルでヒットした「Runaway Train」「Misery」くらいである。
というかなぜか2枚ともほぼ放置に近い扱いだった。
いずれも中古で買ったんだが、数回聴いただけでどうもいまいちなじめず、それっきりで10年以上が経過したという状態。
売り飛ばす候補に何度もノミネートしていたのだが、結局「Grave Dancers Union」も「Let Your Dim Light Shine」もまだ手元にある。
再聴のきっかけは特に明確なものはないが、ウォークマンを買って容量に余裕ができたことは理由としてある。
今部屋でCDから直に地味に音楽を聴くということを全くしないので、ウォークマンに入れれば聴くようになるだろうと小学生のような理屈を考えただけである。
あまりにも失礼な扱いで申し訳ないが、このタイミングであらためて聴いてみることにした。
・・・・・聴いてみた。
1. Misery
2. Shut Down
3. To My Own Devices
4. Hopes Up
5. Promises Broken
6. Bittersweetheart
7. String Of Pearls
8. Crawl
9. Caged Rat
10. Eyes Of A Child
11. Just Like Anyone
12. Tell Me When
13. Nothing To Write Home About
14. I Did My Best
今さらだが、14曲も収録されていることにちょっと驚く。
事情としては前作が大ヒットしたため、バンドもレコード会社も相当気合いを入れて予算もかけて作った、ということのようだ。
制作にあたっては40曲以上も用意していて、それを14曲にまとめたのがこのアルバムとのこと。
時期的にグランジ・オルタナの台頭と重なる頃に活躍していたので、彼らも同じくくりに扱われることが多いようだが、実際には80年代半ばから活動してきたロックバンドであり、グランジとは違うそうだ。
ただしネットで調べてみると「オルタナ」とするサイトもあれば「オルタナではない」と否定する記述も見つかるので、このあたりの明確な定義はしづらいような感じである。
そもそもグランジとオルタナの違いもちゃんと説明できないし。
でも自分も長いことソウル・アサイラムをグランジだと勝手に思っていた。
彼らを「グランジな人々」だと思った根拠になったのが「Crawl」「Caged Rat」「Nothing To Write Home About」などの曲だ。
基本的に重く暗く、特に「Caged Rat」は展開がわりと大胆で、絶叫調に歌う様はニルヴァーナを思わせるところもあり、実はこのあたりが今ひとつなじめなかった原因でもある。
このアルバムに関して言えば、楽曲としてはどうやら3つくらいのパターンがあるようだ。
素朴な色合いを帯びたアメリカン・ロック、そしてパンクっぽい音、さらにバラード。
今聴き直してみると確かにパンクやグランジっぽいサウンドもあるにはあるけど、フォークやインディーズみたいな雰囲気のほうが強く、思ったほどヒネリもゆがみもない、ストレートな楽曲ばかりだ。
楽器の音もギター中心で、キーボードやストリングスやサックスといったサポートもほとんどなく、エレクトリカルなアレンジもたぶん全然ない。
ライブみたいなスタジオ盤である。
「Misery」は珠玉のバラードである。
アルバムがこんな曲から始まるというのはロックバンドとしてはかなりの変化球だとは思うが、個人的には「Runaway Train」よりもいいと思う。
歌詞も絶望的な内容ではあるが伝わるものがあるし、ゆったりとしたリズムやギターに乗せたデイブ・パーナーのびりびりした声が雰囲気を作っている。
この人は声もきれいとは言い難く、歌もそんなに上手ではない気がするが、そこもむしろ魅力のひとつなのだろう。
その他に同じようなバラード路線は「Eyes Of A Child」「I Did My Best」などがある。
ただ「Misery」を超えるような作品ではない。
「Misery」が突出して素晴らしいバラードなわりに、「Caged Rat」がかなりパンクで少し変わっている。
偉そうに評論すれば「ちょっと雑然としていてまとまりがない」ということになる。
放置してしまったのは、おそらく「Misery」と「Caged Rat」の落差についていけなかったためと思われる。
ソウル・アサイラムは「Runaway Train」のビデオでもわかるとおり、純朴で真面目な社会派ロックバンドなのだが、このアルバムではやはり90年代特有の少し陰のあるサウンドとなっている。
80年代のチャラいミーハーな音と映像に漬かってきた煮くずれゆでガエルな自分にとっては、なじむまでに少々時間を要するバンドだったようだ。
でも今回あらためて何度も聴いてみたが、売り飛ばさなくて良かったとも思う。
全部の曲を受け入れられたわけでもないが、こんなアルバムだったんだ・・という発見はあったと感じる。
というわけで、ソウル・アサイラム。
そう簡単にはいかないレベルの高さはあるものの、悪くはなかったです。
「Misery」は何度聴いても素晴らしい曲だとあらためて感じました。
もう1枚の「Grave Dancers Union」も近いウチに再履修しようと思います。
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