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聴いてみた 第95回 ローリング・ストーンズ その8

いよいよ始まりました、アスリートたちの熱い闘いのワンダーランド、競技の大海原への臨時民族大移動、巨大なる運動大会山脈、ロンドンオリンピック。(大半パクリ)
日本の選手の活躍が期待されますが、アスリートたちとは体力的・人格的にも対極に位置するあたしは、開会式のもようを夏バテ治療で訪れた病院の待合室のテレビで見ていました・・・・
話にならない!オフコース!(意味不明)

そんなキレ気味の真夏の70年代王道ストーンズ人気講座、今日はモンスリー師匠のおすすめで「Some Girls(邦題:女たち)」を聴いてみました。

Somegirls

「Some Girls」は78年の作品。
時代背景としてはパンクとディスコが音楽界を席巻しており、旧世代にあたるストーンズにもパンク勢力からの圧力が増していた中でのアルバム制作となった。
確かにパンクにもディスコサウンドにも影響された楽曲はあるが、決してそれらの音楽性に飲み込まれることなく、いずれもストーンズとしての最適解を提示した形になっていて、作品とともにその姿勢も評価されているそうだ。
収録の10曲全てが一度はライブで演奏されており、メンバー自身も気に入っているアルバムとのこと。

しかしバンドは決して安泰ではなく、前年にはキースがカナダで麻薬所持で逮捕され(トロント事件と呼ぶそうだ)、ヘロイン中毒は相当深刻なものがあった。
あまり表沙汰になっていないようだが、アルバム録音の頃にはチャーリーもヘロインに手を出していたらしい。
しかもスタジオでヘロインやりすぎで眠りこけているチャーリーに、「ヘロインはもっとオトナになってからにしたほうがいいぜ」と諭したのはキースなんだそうで。
キースの説教が効いたのか、チャーリーはこれを機会にヘロインをやめることに成功したらしい。

参加ミュージシャンが最も少ないアルバムであり、長年ストーンズのレコーディングに参加してきたイアン・スチュアートもほとんど出番はなかったらしい。
よりピュアなストーンズの楽曲を鑑賞するには最適なアルバムということだろう。
果たしてあたしは治療が必要なくらいのストーンズ中毒患者になることができるんでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Miss You
この曲はさすがに有名なので知っていた。
どうでもいい話だが、その昔Windows3.1のマシンを初めて会社で導入した時、この曲のイントロをサンプリングしてwavファイルを作り、起動時の音に設定したことがある。

2. When The Whip Comes Down
騒々しいストーンズならではの楽曲だが、ベースラインに意外に特徴があり、ザ・フーみたいに聞こえる部分もある。
この曲の間奏はかなりカッコイイ。

3. Just My Imagination (Running Away With Me)
ミドルテンポのわりと明るいナンバー。
これはカバーで、オリジナルはテンプテーションズだそうだ。

4. Some Girls
タイトルナンバーだが、まともに聴くのは初めてである。
怠惰に歌うミックと、意外に明るい旋律と、女性蔑視の歌詞が複雑に絡み合う、不思議な曲だ。
サビの部分はやたらとどの楽器も鋭く響いて大変騒々しい。

5. Lies
リズム・メロディ・ボーカルの全てが猥雑でストーンズそのものという感じ。
終始騒々しく、一切の休みも空白もない。
ノリは楽しいが、ずうっとこの調子だと疲れるだろうなぁ。

6. Far Away Eyes
一転ゆったりしたリズムにカントリー調のギターがびよ~んと鳴る。
この構成はなかなかいい。
ミックはあまりメロディに合わせず、街頭演説か台本読みのように呼びかけスタイルで歌う。

7. Respectable
疾走感に満ちた王道ロック。
エンディングのチャーリーのドラムがかっこいい。

8. Before They Make Me Run
この曲はキースのボーカル。
ミックの声にやや飽きたところに、絶妙の配置で収録されている。
キースの声にもそれなりに慣れてきたせいか、曲に合った感じがする。

9. Beast Of Burden
シングルカットもされた曲だが、聴くのはやはり初めてだ。
どこか憂いのあるサウンドで、ミックが高いキーで歌う。

10. Shattered
ラストは少し微妙な感じの低いロック。
ミックがラップのように歌い、コーラスもかなりワルな調子で、間奏では手拍子が当然のように入る。
そのわりにリズムはわりと単純で、テクノっぽい雰囲気もある。
80年代のおとずれを予感するような、変わった曲だ。

さて聴き終えた。
ネットでの評判はかなり高く、「捨て曲がない」という評価があちこちに書いてある。
全部が好みに合致しているわけではないが、この評価はなんとなく理解できる。
変な曲・ダメな曲と感じるのは確かにない。
「こうすればちゃんと売れる」というのをわかっていて作っているような、自信に満ちたアルバムという印象である。

楽曲としても高い水準にあり、猥雑な中にも調和のとれた秀逸な構成の曲がたくさんある。
明るい旋律の曲が比較的多いのも聴きやすい点だと思う。
野蛮で粗野なストーンズが好みのファンからすると、サウンドは少し上品に感じるかもしれない・・などと思いました。

ここまで聴いてきたどのアルバムとも違う雰囲気。
具体的にどこが違うのかうまく説明できませんけど、ワイルドで辛辣でガサツなストーンズがやや抑えられ、より楽しくポップな印象が少し強い気がします。
バンドとして危機的状況にありながら、これだけの水準を維持できるのは、今さらだがさすがストーンズだと思う。

ジャケットはタイトルどおり女の顔ハメの部分にメンバーが写っているという、悪ふざけな絵になっている。
「CDになって魅力が半減」という評価があるようだが、LPだと確かにもっと気持ち悪いだろうなぁ。

というわけで、「Some Girls」。
これもかなり良かったです。
自分もだいぶストーンズの雰囲気やサウンドに慣れてきたので、次はいよいよ「メインストリートのならず者」「スティッキー・フィンガーズ」「ブラック・アンド・ブルー」あたりをねらってみようかと思います。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
私も、友人のおかげで聞くことができました。

「女たち」はかねてから名盤とは聞いていましたが、
60年代~70年代前半の名盤に勝るとも劣らぬでき映え。
特にミック・ジャガーのボーカルに圧倒されます。
2曲目ストーンズならではのロックンロールでうれしい。
4曲目のタイトル曲は、これまたストーンズらしい
ルーズなノリ。ツインギターのよさも存分に出ています。
6曲目のカントリー、たまにこういう曲が出てきますが、いいですね~。
7曲目はチャーリー・ワッツのドラムがスピード感を
演出していますね、素晴らしい! 9曲目「ビースト・
オブ・バーデン」、やはり名曲ですなあ。ミックの
ボーカルの泣き具合が絶妙です。

ちなみに、アルバム制作の背景はSYUNJIさんの記事で
初めて知りました。

>>「メインストリートのならず者」
>>「スティッキー・フィンガーズ」
>>「ブラック・アンド・ブルー」

ストーンズをきちんと聞いていない私ですが、「ステッキー」
が一番おすすめ、次が「ブラック」です。
「ならず者」ですが、名盤中の名盤だそすが、
私には敷居が高すぎましたです(^^;)。

投稿: モンスリー | 2012.07.29 21:15

モンスリーさん、今回もお世話になりました。
実はこのアルバム、存在は知ってましたが、これほど評価が高いとは思ってませんでした。
ジャケットもなんだか変だし、インパクトもそんなにないですよね。
でも聴いてみて評価の高さに納得した感じです。

>6曲目のカントリー、たまにこういう曲が出てきますが、いいですね~。
>曲目はチャーリー・ワッツのドラムがスピード感を演出していますね、素晴らしい! 

このあたりの中盤の緩急の構成がいいですよね。

>「ステッキー」が一番おすすめ、次が「ブラック」です。

なるほど。
というかこれらを聴かずにストーンズをいろいろ語るのもまだ早いですよね・・
なるべく早く聴こうと思います。

投稿: SYUNJI | 2012.07.29 21:51

このアルバムはリアルタイムで買ったことを得意げに話すぷく先輩といいます(自分で言うな!)

オフ会がいつ行われるのか、ルドフィーとsyunjiさんが隠れて逢瀬を重ねていないか心配で。。。。。はっ!このアルバムの内容に何も触れていない!(お約束)

投稿: ぷくちゃん | 2012.07.30 09:20

ぷく先輩、コメントありがとうございます。
リアルタイム購入とは意外な経歴・・

最近のあたしはオフ会どころか生きるのに精一杯な有様です。
7月はまともな体調の日が1日もありませんでした・・・
はっ!このアルバムの内容に何も触れていない!(お約束重ね)

投稿: SYUNJI | 2012.08.04 16:39

オジキ
オツトメご苦労様です。
一週遅れの参内お許し下さいませ

さて、サムガ
個人的には、デェキレェなMiss Youのせいで損してるアルバムのような…

オジキの感想
ここまで聴いてきたどのアルバムとも違う雰囲気。
具体的にどこが違うのかうまく説明できませんけど、ワイルドで辛辣でガサツなストーンズがやや抑えられ、より楽しくポップな印象が少し強い気がします。

なるほど…
ちょっと意味が違うかもしれませんが、今までのアルバムがUKのバンドだったのが、なんとなく、USの(NYの)バンド。ぽくなったってのがそんな印象と重なるのでしょうか…

最後のシャッタードなどは、NYの都市生活者の苦悩みたいな歌です。
その分、英国的な要素が後退しているのかなぁ
なんて思います。

僕は、リスペクタブルからの流れが最高に好きな1枚です☆

オフ会、あっしも呼んで下さいませ<(_ _)>

投稿: V.J. | 2012.08.05 18:57

V.J.若、コメント感謝です。

>個人的には、デェキレェなMiss Youのせいで損してるアルバムのような…

あー若はこの曲は好みじゃないんですね。
あたしも好みかと問われるとそうでもないんですけど・・

>今までのアルバムがUKのバンドだったのが、なんとなく、USの(NYの)バンド。ぽくなったってのがそんな印象と重なるのでしょうか…

あまりうまく説明できないんですけど、なんとなくそんな感じですね。
それほど大して聴いてきたわけじゃないんですが、今まで聴いたアルバムとは少し違う印象です。

>僕は、リスペクタブルからの流れが最高に好きな1枚です☆

B面のほうがノリがいいですね。
あとメリハリがあっていい感じだと思います。

投稿: SYUNJI | 2012.08.05 22:02

こんにちは、JTです。

古い記事にコメントで申し訳ありません。

私もコレ、リアルタイムに聞きました。
ストーンズ聞き始めの頃だったというのも関係しているかもしれませんが、とても好きなアルバムです。

当時UHF局(死語かな)で見た、「ライズ」のプロモビデオが「すんげーかっこいい!!」と思いました。ただスタジオであてぶりしてるだけなのですが、紙の壁を破るシーンが印象に残っています。

アナログ時代の1アルバム10曲45分前後っていうのはいいですね。集中できるし。
今は15曲前後入ってるアルバムが多いですが印象が散漫になることが多いです。

投稿: JT | 2012.08.14 11:19

JTさん、コメントありがとうございます。

>私もコレ、リアルタイムに聞きました。
>ストーンズ聞き始めの頃だったというのも関係しているかもしれませんが、とても好きなアルバムです。

おお、そうでしたか。
78年だと自分はまだビートルズを聴き始めたばかりでした・・

>アナログ時代の1アルバム10曲45分前後っていうのはいいですね。集中できるし。

確かにそうですね。
慣れもあるんでしょうけど、1枚1時間もあるアルバムだと「長い」というイメージがどうしても浮かんでしまいますね。

投稿: SYUNJI | 2012.08.14 21:56

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