聴いてみた 第94回 ローリング・ストーンズ その7
今回聴いてみたのはストーンズ学習指導要領の必修科目、「Get Yer Ya-Ya's Out!」。
本国発売としては初めての公式ライブ盤である。
実はライブ盤ということもあまりよくわからないまま、三軒茶屋で中古CD428円を購入。
CDはオリジナル音源のデジタルリマスター盤と書いてあるけど、大丈夫か?この値段。
事前のリサーチによるアルバム情報は以下のとおり。
このアルバムは70年の作品。
60年代末期にはストーンズのライブを収録したかなり出来のいい海賊盤が人気を呼んでおり、頭を痛めたレコード会社側が対抗企画として打ち出したのが公式ライブ盤だった。
収録曲は主にあのビリー・グラハムやボブ・バックランドでおなじみの、ニューヨーク・マジソンスクエアガーデンでの69年11月の公演を中心としており、1曲だけ別の場所で演奏されたものが入っている。
なおこの公演から10日も経たないうちに、あのオルタモントの悲劇が発生している。
「Get Yer Ya-Ya's Out!」という変なタイトルは、ブラインド・ボーイ・フラーというブルース・ミュージシャンの「Get Your Yas Yas Out」という曲から取られたものとのこと。
意味はあんましよくわかりませんけど、どうも「ケツ出せや!」というようなことらしい。
パクリってことですかね?
スタジオ盤の学習も大して進んでいないのに、もうライブ盤なんか聴いちゃって大丈夫なのかと不安になったが、「じゃあ、いつやるか?今でしょう!!」などと大手予備校のCMのごとく「ライブを聴かずしてストーンズを語るなかれ」という増税法案可決に基づき、離党覚悟で青票を投じることにしたのだった。(意味不明)
果たして80年代洋楽ゆとり世代のあたしは、ストーンズのグルーヴ感についていけるでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1.Jumpin' Jack Flash
説明不要の代表的な曲だが、実はオリジナルスタジオ盤未収録だということを今回初めて知った。
聴いてきた中では好きな曲である。
オープニングから贅沢な展開だ。
タイトルの意味は諸説あるが、「稲妻野郎」「あやつり人形」などと訳されるようだ。
最後の「It's a gas , gas , gas」とは「そいつは冗談冗談」という意味とのこと。
2. Carol
この曲は初めて聴いた。
チャック・ベリーのカバー曲。
間奏のギターリフがホットでいい感じだ。
3. Stray Cat Blues
辛口のブルース。
思ったより聴きやすく、悪くない。
4. Love in Vain
この曲だけ会場が違い、ボルチモアとなっている。
ロバート・ジョンソンのカバー。
右のアコースティックがキース、左でうなるギターがミック・テイラーだそうだが、ミック・テイラーの存在感が非常に大きい。
5. Midnight Rambler
規則正しいリズムとメロディで進行。
ミックのハーモニカが味わい深い。
途中で一度演奏が終わりかけ、スローな進行になり、ライブでよくある掛け合いの展開になる。
ネットで調べた話だが、この掛け合いの間に日本人と思われる男の観客の叫び声が入っている。
5分40秒あたりで「カッコイイー!!」と聞こえるそうだが、注意して聴くと確かにそれっぽい声は入っていた。
曲の終わった後には女性の観客の「Keith!Paint It Black、Paint It Black(キース、『黒くぬれ』やってよ!)」という声が聞こえたような気がしましたが・・・
6. Sympathy for the Devil
有名な「悪魔を憐れむ歌」。
実はこれも初めて聴いた。(ド素人)
タイトルからもっと恐ろしいサウンドをイメージしていたが、モータウンのようなリズムに乗ったノリのいいロックである。
「ケネディを殺した」という歌詞があり、いろいろ問題となって後に変えさせられる騒動にもなったそうだが、このライブではミックは元の歌詞のまま歌っている。
それがゆえにミックのボーカルにはアフレコ疑惑もあるそうだ。
7. Live With Me
これもノリのいいロック。
左右のギターが思ったほど合っていないように聞こえるが、楽曲としてはむしろ臨場感に満ちている。
8. Little Queenie
これもチャック・ベリーのカバー。
ピアノの音が右のギターとからんでものすごいグルーヴ感。
中盤からエンディングにかけてベースがどんどん音を上げてきて、ラストは全員の最大の音を出して終わるというわかりやすい構成だが、まさに王道である。
9. Honky Tonk Women
これはスタジオ盤未収録だが、アルバム「Let It Bleed」の「Country Honk」として聴いていた曲。
実はそれほど好みではない。
ただしライブならではの魅力はよくわかる。
ラストのイアンのピアノをびろろろろんと流すところなんかはカッコイイ。
買ったCDが悪いのか、もともとそういう音源なのか、次の曲とのつなぎの部分にバチバチと雑音が混じっている。
10. Street Fighting Man
これも実はまともに聴くのは初めてである。
リズムは「Jumpin' Jack Flash」と似ているが、旋律に半音上がるような流れが多く使われていて、少しひねった不思議なメロディだ。
他の曲よりもベースの音が大きく聞こえる。
コンサートとしてのエンディング曲だったかどうかわからないが、非常にあっさりと終了。
もう少し叫ぶ観客とか挨拶するミックとか、ライブの完了感を残してほしかったなぁ。
さて聴き終えた。
さすがはストーンズ、ライブのノリがずかずかと伝わる名盤である。
・・・などとまずはド素人な感想を抱いたのだが、実はこのアルバム、ライブのまんまの音ではなく、ミックのボーカルやコーラスを後からスタジオ録りしているらしいことが、あちこちのサイトに書いてある。
みなさんよく知ってますねぇ。
まあ自分みたいなA級永久初心者にはそんなところは聴きわけられないし、ミック・ジャガーってヒトはスタジオでもどこでもライブっぽい歌い方だと思ってるので、正直どっちでもいいと思いました。
なお他のアーチストも含めてライブ盤てのはそういうもんだと思うが、ボーカルだけでなくギターやピアノの音もいろいろ調整はされているらしい。
とりあえず苦手なサウンドや不可解な曲というのが全くなかったので、これは自分としては大きな前進である。
ノリは激しいストーンズだが、どの曲も比較的シンプルに演奏を極めているし、現場ではきっともっと激しい観客との掛け合いやパフォーマンス、または逆のグダグダした展開なんかもあったかもしれないけど、ムダな叫びとか長すぎるソロとかは収録されておらず、純粋に楽曲を聴いていける名盤だと思う。
公式ライブ盤としてのプライドが感じられる編集ではないだろうか。(知ったかぶり)
タイトル以上によくわからないのがジャケット。
今まであまり注意して見たことがなかったが、画面右でギター二丁を手にグリコジャンプをしているのはチャーリー・ワッツである。
チャーリーのポーズにいろいろ注文を付けたのはミックなんだそうだ。
他のメンバーはおらず、横に太鼓を背負ったロバがいる。
どう評価したもんかというアートなのだが、チャーリー自身このジャケットが後世まで残ることについてどう思ってんのか聞いてみたいところだ。
まあ中身同様楽しそうでいいとは思いますが・・・
というわけで、「Get Yer Ya-Ya's Out!」。
これも良かったです。
自分のような三流をどんどん受け入れてくれる、そんなミック・ジャガーの懐の広さを感じます。(なに言ってんだ)
次は70年代の作品をもう少し勉強してみようと思っています。
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コメント
オジキ、連投すみません。
僕は、StonesのLive盤は腐る程出ていますが、このアルバムが永遠に一番スキです!
つーか、このアルバムに、僕の好きなStonesのほぼ全てがいるのです♪
原曲に比べ、思いっきりテンポを落とした引きずる様なヨコノリのグルーブ。
徹底的に猥雑なMICKのVo.
バンドの緩急をカッティング一つでコントロールするKeithのG.(ランブラーとか聴いてください!)
テイラー一世一代の素晴らしすぎるソロ(悪魔を憐れむ歌の後半のソロです♪)
>曲の終わった後には女性の観客の「Keith!Paint It Black、Paint It Black(キース、『黒くぬれ』やってよ!)」という声が聞こえたような気がしましたが・・・
>ライブのまんまの音ではなく、ミックのボーカルやコーラスを後からスタジオ録りしているらしい
このウン10年後に、Flashpointと言うLiveを出すんですけど、こん時のPaint it, Blackの掛け声をLIVEの歓声に被せて、Paint it, Blackをやる。って素敵な編集をしています♪
>分40秒あたりで「カッコイイー!!」と聞こえるそうだが、注意して聴くと確かにそれっぽい声は入っていた。
これは、日本のStones、村八分のVo.チャーボーと言う人の声とゆわれています。
やっぱ、Stonesの醍醐味はLiveですので、やはりこの後は、Ladies and Gentleman(DVD)を観て頂いた後、Love You Live~Still Lifeを聴いて欲しいと思います。Stonesがステージの場でどう変わって行ったかが良く分かるかと♪
ちなみに、それ以降のLIVE盤は聴く必要はありません(苦笑)
投稿: V.J. | 2012.06.24 22:14
V.J.若、熱烈コメント感謝です。
>僕は、StonesのLive盤は腐る程出ていますが、このアルバムが永遠に一番スキです!
うわ、そうだったんスか。
なんかとてーも軽ーい感想で申し訳ない・・
そんなにスゴイアルバムだったんですね・・
>テイラー一世一代の素晴らしすぎるソロ(悪魔を憐れむ歌の後半のソロです♪)
これは確かに良かったです。
ネットでも非常に高い評価が多い曲ですね。
>これは、日本のStones、村八分のVo.チャーボーと言う人の声とゆわれています。
へぇーすごいな、叫んだ人の身元まで一応判明してるんだ・・
聴いた限りでは「そう言われればそう聞こえなくもないかな」くらいに感じたんですけど、やっぱ「カッコイイー!」と叫んでるんですね。
投稿: SYUNJI | 2012.06.24 23:38
SYUNJIさんこんにちは。
これってLIVEだったんですね、初めて知りました。
勿論、未聴です・・・
実は人生初めてのコンサートはストーンズです。
90年TOKYODOMEでした。
やっぱりラストの「Jumpin' Jack Flash」は燃えたなぁ~最高でした。
V・Jさん、Love You Live~Still Lifeって言うのは流石、先輩の意見ですね。
Still Lifeは是非、映像作品もお薦めです。
私としてはこれほどかっこいいストーンズは見たことないです・・・題名ど忘れしちゃいましたけど・・・
しかしSYUNJIさんはこれからストーンズの魅力を体感出来るなんて、ある意味幸せですねぇ~。
このアルバムは是非、聴いてみます。
投稿: ボレロ | 2012.06.26 12:01
本当にこのロックンロールジジー達は古稀を過ぎても飛んで跳ねて本当に元気で頭が下がります・幾多の歴史を重ね、ロックンロールの王道を半世紀も走り続けてきた偉大なるローリングストーンズ。7年の短期間で激しい音楽変遷を繰り返してきたビートルズに対し、50年間もR&Bをベースとした姿勢を変えないストーンズ。もう何も言うことはありません!80歳になっても頑張れ~!
(PS)ストーンズの記事はコチラに公開してございますのでよろしければ御覧ください。
↓
http://rolingwest.exblog.jp/tags/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%88%E5%88%A5%E3%83%BB%E5%90%8D%E7%9B%A4%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC/
投稿: ローリングウエスト | 2012.06.29 21:50
ボレロさん、コメントありがとうございます。
>これってLIVEだったんですね、初めて知りました。
実は自分も同じでした。
CDみたらジャケットに「in concert」って書いてあったのに・・
>実は人生初めてのコンサートはストーンズです。
>90年TOKYODOMEでした。
そうでしたか!
それからもう20年以上経つんですね。
当時会社の上司はかなり重要な会議をすっぽかしてライブ見に行ってましたが・・
>しかしSYUNJIさんはこれからストーンズの魅力を体感出来るなんて、ある意味幸せですねぇ~。
うーん、幸せっつうかおめでたいっつうか、いねーよこんなヤツっつうか・・・
この歳になってこういう展開になるとは思いませんでしたけど。
Love You Live~Still Lifeも近いうちにトライしてみようと思います。
投稿: SYUNJI | 2012.06.30 00:21
ローリングウエストさん、コメントありがとうございます。
なんとかストーンズの補習を中年になってから受けている状態です。
>7年の短期間で激しい音楽変遷を繰り返してきたビートルズに対し、50年間もR&Bをベースとした姿勢を変えないストーンズ。
考えてみればこれだけ歴史の違うバンドを比較するってのもかなりムリがある話ですね。
BLOG拝見しました。
すごい情報量&コメント数ですね。
これはもう個人BLOGというより、情報アーカイブですね!
「ダーティ・ワーク」がやはり採り上げられていないのが、80年代ゆとり世代の自分としてはやや寂しいですが・・(←最近聴いたばかりのくせに)
今後ともよろしくご指導ください。
投稿: SYUNJI | 2012.06.30 09:17
こんばんは、JTです。
V.J.さんも指摘されていましたが、「山羊」→「ダーティ」と進んで、次は何を聞かれるのかちょっと危惧していました。私もこのライブ盤、好きですね。
高三の時、友人からアナログ盤(当時はそれしかねーよ)を借りて聞きました。「悪魔を憐れむ歌」のギターソロ、前半がキースで後半がミック・テイラーだと彼から聞かされました。確かに69年当時としてはミック・テイラーのソロはすごく華麗かつ流暢ですね。(キースはキースで味がありますが)。
オルタモントの、その瞬間に「悪魔を~」を演奏していたわけではありませんが、その後ロン・ウッドが加入するまで「悪魔を~」をライブで演奏しなくなったそうです。やっぱり気にしていたのでしょうかねぇ....。
投稿: JT | 2012.07.03 00:27
JTさん、コメントありがとうございます。
>「山羊」→「ダーティ」と進んで、次は何を聞かれるのかちょっと危惧していました。
やはりそうでしたか・・
何も考えてませんでしたが、ふつうやらない鑑賞順序だったようで・・
>確かに69年当時としてはミック・テイラーのソロはすごく華麗かつ流暢ですね。
確かにそうですね。
この頃キースはミック・テイラーの存在をどう思っていたのか知りたいところです。
>その後ロン・ウッドが加入するまで「悪魔を~」をライブで演奏しなくなったそうです。
なるほど・・
でもオルタモントの映像を見れば、曲の選択以前に会場がとにかく大混乱していたことはよくわかりますね。
投稿: SYUNJI | 2012.07.04 23:14
SYUNJIさん、こんばんは。
御無沙汰している間にストーンズのエントリーが3つも!
クラプトンは「ブルースの求道者」と呼ばれますが、
SYUNJIさんはさながら、敬虔なストーンズの求道者
ですね。
さて、私はこのアルバムを妻の友人に聞かせてもらい
ました。早速本日聞き直しましたが、公式盤ながら
ブートチックな音質が60年代後半の熱気をリアルに
伝えています。
演奏もロックの原点を見るかのようです。無駄なものが
一切ありません。
他の方もかかれていますが、私もこのアルバムでは
典型的なロックンロール以外に、「ダルな」演奏が
印象的です。たとえば「Midnight Rambler」の中間部
や「Honky Tonk Women」。私はどちらかと言えば
タイトな演奏が好きですが、ストーンズの横綱相撲
には圧倒されます。
最後の「Street Fighting Man」もいいですね!
確か原曲はアコースティックギターが主体だったと
思いますが(間違っていたら済みません)、このライブ
ではエレキでグイグイと迫ってきます。ワッツのドラム
もエンディングを飾るにふさわしい迫力です。
投稿: モンスリー | 2012.07.09 21:36
モンスリーさん、お待ちしておりました。
敬虔なストーンズの求道者のSYUNJIといいます。(つけあがり)
>公式盤ながらブートチックな音質が60年代後半の熱気をリアルに伝えています。
なんかそんな感じですよね。
いろいろ後から手入れされているらしいんですけど、その割には昔のFM番組でテープに丸録りしたライブみたいな音がしました。(気のせい?)
>「ダルな」演奏が印象的です。
>たとえば「Midnight Rambler」の中間部や「Honky Tonk Women」。
確かに。
ライブでの緩急も全て魅力的なものに受け取られるところは、ストーンズならではの評価だと思います。
つくづくド素人感想ですんませんけど、スゴイ人たちだなぁと思います。
投稿: SYUNJI | 2012.07.10 22:17