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聴いてない 第170回 アメリカ

国の名を名乗る大胆なバンドはいくつかあるが、その中でも最大級な感じのアメリカ。
もちろん全く聴いてません。
「名前のない馬」がヒットしたという史実は知っているが、曲そのものは一度も聴いたことがない。
いつも思うことですけど、こういう名前を付けるのに合衆国政府に許可とかいらないんでしょうか。
考えてみれば自分は国名バンドにはうとい。
ジャパンU.K.イングランドもあまり聴いてないのだった。
ところでロシアとかブラジルとかインドって名のバンドは存在するのだろうか?

Googleで「アメリカ」と検索すると、当然だが鬼のようにいろんなサイトにヒットしてしまうので、「アメリカ バンド」と入れて検索。
得られたアメリカの歴史は以下のような内容であった。

名前はアメリカだが、結成はイギリス。
ジェリー・ベックリー、デューイ・バネル、ダン・ピークの3人により1968年ロンドンで結成。
ジェリーとダンはアメリカ人だが、デューイはイギリス人でイギリス生まれ、アメリカのカリフォルニア育ち。
3人とも父親が在英米軍人という共通点を持ち、同じアメリカンスクールで学んだ同士というメンバー構成。

デビューは71年。
アコースティックギターにハーモニー重視のコーラスという、ウエストコースト・サウンドとブリティッシュ・トラッドフォークの融合みたいな音楽性を持つ。
そのサウンドからCS&Nと比較されることも多い。
12弦ギターを多用し、後のバーズやイーグルスにも影響を与えたとされる。

72年には「名前のない馬」が大ヒット。
日本ではその後この曲を超えるヒットはなかったが、アルバムは2006年頃までベスト盤も含めてコンスタントに発表している。
なおダン・ピークは77年にバンドを脱退し、2011年に亡くなっている。

以上がかき集めた情報だが、どれも1ミクロンも知らない。(V.J.調)
特にウエストコーストや英国トラッドフォークが苦手とかそういう意識はないんだが、苦手以前によく知らないジャンルなのだ。
バーズもCS&Nも全然聴いてないし。
ハードロックやプログレやテクノとは対極に位置する音楽、なんて表現がネットであちこちに見つかる。

80年代に伝染病みたいにエアチェックしまくっていた自分だが、当時FMでアメリカの曲を聴いたことは一度もない。
少なくとも「サンスイ・ベストリクエスト」ではオンエアされてなかったと思うよ。
ただしバンド名はなぜか知っていた。
80年に発表されたアルバム「Alibi」のジャケットを覚えている。
山並みを背景に赤ん坊の顔が横になった、どこかシュールな絵だが、このイメージから勝手にプログレみたいな音楽だと思っていた。
ちなみにこの「Alibi」にはスティーブ・ルカサーやティモシー・シュミットやJ.D.サウザーが参加しているそうだ。

「名前のない馬」は最初はオランダでヒットし、その後イギリスとアメリカでもヒット。
日本でも少し遅れはしたがさわやかなサウンドが受けてやっぱり大ヒットしたそうだが、歌詞を見るとあんまし楽しそうな話ではない。
名前のない馬で砂漠を旅して、9日目には海に変わったので馬を手放したよ、という、いまいちよくわからない内容なんだが、人間の手による愛情の感じられない都市化を批判するような表現もあり、メッセージ性の強い曲でもあるらしい。

そんな郷愁のアメリカ。
失礼ながら日本ではもう忘れ去られた人たちなのかと思ったが、今年の夏に行われるビーチ・ボーイズの来日公演にゲストとして参加するそうだ。
ビーチ・ボーイズは今年結成50周年を記念して23年ぶりに新しいアルバムをリリース。
ブライアン・ウィルソンがビーチ・ボーイズとして来日するのは33年ぶりとのこと。
ファンの層が共通してるのかどうかはわからないけど、アメリカも来るそうです。

というわけで、アメリカ。
聴くとしたら当然まずはデビューアルバム「America」で「名前のない馬」から入るということになるのだろう。
アルバムはたくさんあるようですが、デビューアルバムも含め、おすすめの作品があれば教えていただければと思います。

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聴いてみた 第94回 ローリング・ストーンズ その7

今回聴いてみたのはストーンズ学習指導要領の必修科目、「Get Yer Ya-Ya's Out!」。
本国発売としては初めての公式ライブ盤である。
実はライブ盤ということもあまりよくわからないまま、三軒茶屋で中古CD428円を購入。
CDはオリジナル音源のデジタルリマスター盤と書いてあるけど、大丈夫か?この値段。

Getyaeryayasout

事前のリサーチによるアルバム情報は以下のとおり。
このアルバムは70年の作品。
60年代末期にはストーンズのライブを収録したかなり出来のいい海賊盤が人気を呼んでおり、頭を痛めたレコード会社側が対抗企画として打ち出したのが公式ライブ盤だった。
収録曲は主にあのビリー・グラハムやボブ・バックランドでおなじみの、ニューヨーク・マジソンスクエアガーデンでの69年11月の公演を中心としており、1曲だけ別の場所で演奏されたものが入っている。
なおこの公演から10日も経たないうちに、あのオルタモントの悲劇が発生している。

「Get Yer Ya-Ya's Out!」という変なタイトルは、ブラインド・ボーイ・フラーというブルース・ミュージシャンの「Get Your Yas Yas Out」という曲から取られたものとのこと。
意味はあんましよくわかりませんけど、どうも「ケツ出せや!」というようなことらしい。
パクリってことですかね?

スタジオ盤の学習も大して進んでいないのに、もうライブ盤なんか聴いちゃって大丈夫なのかと不安になったが、「じゃあ、いつやるか?今でしょう!!」などと大手予備校のCMのごとく「ライブを聴かずしてストーンズを語るなかれ」という増税法案可決に基づき、離党覚悟で青票を投じることにしたのだった。(意味不明)
果たして80年代洋楽ゆとり世代のあたしは、ストーンズのグルーヴ感についていけるでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1.Jumpin' Jack Flash
説明不要の代表的な曲だが、実はオリジナルスタジオ盤未収録だということを今回初めて知った。
聴いてきた中では好きな曲である。
オープニングから贅沢な展開だ。
タイトルの意味は諸説あるが、「稲妻野郎」「あやつり人形」などと訳されるようだ。
最後の「It's a gas , gas , gas」とは「そいつは冗談冗談」という意味とのこと。

2. Carol
この曲は初めて聴いた。
チャック・ベリーのカバー曲。
間奏のギターリフがホットでいい感じだ。

3. Stray Cat Blues
辛口のブルース。
思ったより聴きやすく、悪くない。

4. Love in Vain
この曲だけ会場が違い、ボルチモアとなっている。
ロバート・ジョンソンのカバー。
右のアコースティックがキース、左でうなるギターがミック・テイラーだそうだが、ミック・テイラーの存在感が非常に大きい。

5. Midnight Rambler
規則正しいリズムとメロディで進行。
ミックのハーモニカが味わい深い。
途中で一度演奏が終わりかけ、スローな進行になり、ライブでよくある掛け合いの展開になる。
ネットで調べた話だが、この掛け合いの間に日本人と思われる男の観客の叫び声が入っている。
5分40秒あたりで「カッコイイー!!」と聞こえるそうだが、注意して聴くと確かにそれっぽい声は入っていた。
曲の終わった後には女性の観客の「Keith!Paint It Black、Paint It Black(キース、『黒くぬれ』やってよ!)」という声が聞こえたような気がしましたが・・・

6. Sympathy for the Devil
有名な「悪魔を憐れむ歌」。
実はこれも初めて聴いた。(ド素人)
タイトルからもっと恐ろしいサウンドをイメージしていたが、モータウンのようなリズムに乗ったノリのいいロックである。
「ケネディを殺した」という歌詞があり、いろいろ問題となって後に変えさせられる騒動にもなったそうだが、このライブではミックは元の歌詞のまま歌っている。
それがゆえにミックのボーカルにはアフレコ疑惑もあるそうだ。

7. Live With Me
これもノリのいいロック。
左右のギターが思ったほど合っていないように聞こえるが、楽曲としてはむしろ臨場感に満ちている。

8. Little Queenie
これもチャック・ベリーのカバー。
ピアノの音が右のギターとからんでものすごいグルーヴ感。
中盤からエンディングにかけてベースがどんどん音を上げてきて、ラストは全員の最大の音を出して終わるというわかりやすい構成だが、まさに王道である。

9. Honky Tonk Women
これはスタジオ盤未収録だが、アルバム「Let It Bleed」の「Country Honk」として聴いていた曲。
実はそれほど好みではない。
ただしライブならではの魅力はよくわかる。
ラストのイアンのピアノをびろろろろんと流すところなんかはカッコイイ。
買ったCDが悪いのか、もともとそういう音源なのか、次の曲とのつなぎの部分にバチバチと雑音が混じっている。

10. Street Fighting Man
これも実はまともに聴くのは初めてである。
リズムは「Jumpin' Jack Flash」と似ているが、旋律に半音上がるような流れが多く使われていて、少しひねった不思議なメロディだ。
他の曲よりもベースの音が大きく聞こえる。
コンサートとしてのエンディング曲だったかどうかわからないが、非常にあっさりと終了。
もう少し叫ぶ観客とか挨拶するミックとか、ライブの完了感を残してほしかったなぁ。

さて聴き終えた。
さすがはストーンズ、ライブのノリがずかずかと伝わる名盤である。
・・・などとまずはド素人な感想を抱いたのだが、実はこのアルバム、ライブのまんまの音ではなく、ミックのボーカルやコーラスを後からスタジオ録りしているらしいことが、あちこちのサイトに書いてある。
みなさんよく知ってますねぇ。
まあ自分みたいなA級永久初心者にはそんなところは聴きわけられないし、ミック・ジャガーってヒトはスタジオでもどこでもライブっぽい歌い方だと思ってるので、正直どっちでもいいと思いました。
なお他のアーチストも含めてライブ盤てのはそういうもんだと思うが、ボーカルだけでなくギターやピアノの音もいろいろ調整はされているらしい。

とりあえず苦手なサウンドや不可解な曲というのが全くなかったので、これは自分としては大きな前進である。
ノリは激しいストーンズだが、どの曲も比較的シンプルに演奏を極めているし、現場ではきっともっと激しい観客との掛け合いやパフォーマンス、または逆のグダグダした展開なんかもあったかもしれないけど、ムダな叫びとか長すぎるソロとかは収録されておらず、純粋に楽曲を聴いていける名盤だと思う。
公式ライブ盤としてのプライドが感じられる編集ではないだろうか。(知ったかぶり)

タイトル以上によくわからないのがジャケット。
今まであまり注意して見たことがなかったが、画面右でギター二丁を手にグリコジャンプをしているのはチャーリー・ワッツである。
チャーリーのポーズにいろいろ注文を付けたのはミックなんだそうだ。
他のメンバーはおらず、横に太鼓を背負ったロバがいる。
どう評価したもんかというアートなのだが、チャーリー自身このジャケットが後世まで残ることについてどう思ってんのか聞いてみたいところだ。
まあ中身同様楽しそうでいいとは思いますが・・・

というわけで、「Get Yer Ya-Ya's Out!」。
これも良かったです。
自分のような三流をどんどん受け入れてくれる、そんなミック・ジャガーの懐の広さを感じます。(なに言ってんだ)
次は70年代の作品をもう少し勉強してみようと思っています。

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見ていない 第33回 兼高かおる世界の旅

日本初のLCCのPeachで国内を旅してみたい引きこもり旅芸人のSYUNJIです。
もう長いこと海外旅行してませんが、Peachのような日本のLCCで韓国や台湾に行けるなら行ってみてもいいかなとぼんやり考えたりしています。
そのうち世の中がもっと雑になってくると、屋根のない飛行機とか全員つり革立ち乗りとか、アナーキーな鬼安LCCなんてのが出てきそうな気もしますが。

さて日本の元祖旅行番組である「兼高かおる世界の旅」。
実は一度も見たことがありません。
番組名くらいは知っているけど、意識して放送を見たことは一度もない。

この番組は「兼高かおる世界飛び歩き」として1959年12月TBS系列で放送開始。
1960年6月から3ヶ月中断の後、9月から「兼高かおる世界の旅」として再開した。
以来30年間放送され、回数は1586回。
開始当初は日曜午前だったり月曜深夜の放送だったが、62年以降は基本的に日曜朝の番組として定着。
完全カラー放送は67年からである。
放送は90年に終了したが、2007年からCSでデジタルリマスターによる再放送もしており、またTBSオンデマンドで配信もしているそうだ。
なので今から見ようとすることはわりと簡単かもしれない。

番組は長いことパンアメリカン航空の協賛で作られていた。
パンナムが倒産した後はスカンジナビア航空に変わったそうだ。
構成としては、セレブ系ジャーナリストの兼高かおるが外国を旅する映像を流し、それに本人とTBSアナウンサーである芥川隆行がナレーションやトークをかぶせる、といったものだったらしい。
訪れた国は150以上というから、一度も紹介されなかった国のほうがきっと少ないだろう。
北朝鮮はあったのかな?
ちなみにさすがに南極はないやろと思ったら、驚いたことに南極も何度か放送されているとのこと。

終了となった理由はやはり視聴率低下だそうだ。
長いこと日曜朝9時の始まりだったのを8時からに変更したら、とたんに視聴率が下がってしまったらしい。
が、これだけの長寿番組であれば放送終了は相当話題になったんじゃないかと思うが、全然記憶にない。
視聴率が下がったのは、おそらく多くの日本人にとって海外旅行が身近になったことも要因だと思う。
テレビで兼高かおるの説明映像を見るよりも、自分で見に行ったほうが早いという時代が来た、ということだろう。

見ていなかった理由は特にない。
生まれる前からの番組なので、親が見る習慣を持っていなかったと思われるが、その理由もはっきりしない。
90年まで放送してたんだから、自分の意志で見ることも可能だったはずだが、結局そうしたことをしないまま放送は終了。
終了当時のこの時間帯はまだ寝ていたんじゃないかと思う。
裏番組が何だったのかもよくわからないが、そもそも日曜朝に家族でテレビを見ていたかどうかさえ記憶にない。

母親は今も旅が好きで国内を徘徊することが多いが、海外旅行の経験は全くない。
父親は生前仕事で国内外を移動することが多く、特にデンマークにはよく出かけていたが、旅行として海外に出たことはなかったと思う。

冒頭に書いたとおり、自分はもう長いこと海外に行っていないが、これまで訪れた国は以下である。
西ドイツ・オーストリア・スイス・イタリア・バチカン・フランス・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド・香港・カナダ。
国の数は父親より多いと思うが、滞在時間は全部合わせても1ヶ月半くらいしかなく、どれもあちこち見て回る落ち着きのないツアーばかりだ。
いずれにせよ程度の差はあれど、家族全員が比較的旅が好きなほうの部類だったわりに、なぜか「兼高かおる世界の旅」は誰も見ていなかったのだった。

旅番組ってのはけっこう微妙で、見ておもしろいと感じる要素は自分にもよくわからないほど多様性がある。
行きたいと思っていた場所が紹介されると「ああ行ってみたいなぁ」と思うはずだが、番組の構成や出演者の善し悪しによって急激に行く気が失せてしまう、ということも充分あり得るのだ。
全然行く気のなかった場所がたまたま番組で紹介されて、突然行く気が涌いてきて翌月行ってしまった、ということもあった。
(この時行ったのは安芸の宮島だ。)

高校生の頃見たテレビ番組で今も強く印象に残っているのは、アジアからヨーロッパを目指すバスツアーの紹介の特番だった。
決して楽しそうな話ではなく、むしろ多国籍な乗客の中で争いが発生したり犯罪者と疑われて強制下車する客が出るなど、けっこうハードな内容だったと思う。
厳密には旅番組というより社会派ドキュメンタリーみたいなものだったかもしれないが、こういう番組は記憶に残っているのだ。

というわけで、何が言いたいのかよくわからなくなってますけど、「兼高かおる世界の旅」。
みなさんはご覧になってましたでしょうか?
記憶に残っている放送などありましたら教えていただけたらと思います。

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聴いてみた 第93回 レインボー その7

ここんとこベックストーンズを精力的に聴くようにしてましたが、さすがにムリしてるところもあって少々疲れ気味。
そこで肉体疲労時の栄養補給バンドとして名高いレインボーを聴くことにしました。
レインボーの音はやはりどこか不思議に落ち着くというか、あたしにとっては心のふるさとミュージックとして効果を発揮するのです。

そのレインボー、ようやく最後のスタジオ盤までたどりついた。
83年のアルバム、「ストリート・オブ・ドリームス」。
同名のシングルも収録されているが、原題は「Bent Out Of Shape」。
厳密にいうと再結成パープルの後にリッチー御大はブラックモアズ・レインボーを結成しているが、メンバーは全く違うし、セールス的にはサッパリだったので、ファンの間でもレインボーの歴史はこの「Bent Out Of Shape」で終わりとする、というのが暗黙の了解事項だ。

Streetofdreams

メンバーは世界の御大リッチー・ブラックモア、ベース兼プロデューサーの好々爺ロジャー・グローバー、鍵盤の正社員デビッド・ローゼンタール、ふつうの顔面ドラマーのチャック・バーギ、そして北キツネ系哀願ボイスボーカリストのジョー・リン・ターナーである。
前作でドラムを叩いていた大顔面ドラマーのボブ・ロンディネリが「バンドに合わない」というリッチーの裁きによりクビになり、チャックが登場している。
ちなみにデビッド・ローゼンタールとチャック・バーギの二人は、レインボー解散後はそろってビリー・ジョエルのツアーサポートメンバーも務めていて、2008年の日本公演にも同行しているそうだ。

そもそもジョー時代の3枚のアルバムは、80年代アメリカ市場向けの左ハンドル的チャラいサウンドのため、日本での評判は良くないとされている。
しかもこのアルバム発表のあと、ご存じのとおりリッチーがパープル再結成のため株式会社レインボーをたたんでしまい、そっちの話のおかげでこのアルバムの評価もろともふっとんでしまったという不運な作品でもある。
もっとも自分はそんな世間の評価なんか全く気にしてないので、今回も聴く前の不安は一切ない。
果たしてあたしは左ハンドルなレインボーのサウンドを堪能できるでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Stranded
評判どおりフォリナーっぽい神経質サウンドでスタート。
ボーカルがルー・グラムに替わったとしても何の違和感もないだろうという曲。

2. Can't Let You Go
イントロはELPのようなパイプオルガン。
雰囲気はわりと初期の中世様式美楽曲に近く、ジョーも心なしかロニーのように吠える部分がある。
間奏でのリッチーのギターは驚くほど短いし、エンディングもわりと淡泊にフェードアウト。

3. Fool For The Night
これぞ80年代アメリカのふつうのロック。
嫌いな路線ではないけど、あーあーこんな音なら何もレインボーでなくたってなぁ・・という感じ。
御大のギターは意外にキーが低く、ますますレインボーの特徴が霞んでいる。

4. Fire Dance
疾走感に満ちたレインボー本領発揮の名曲。
ノリは「Kill The King」と同じで、ジョーはどう考えてもロニーの歌い方を意識してるとしか思えない。
つうかこれロニーが歌ってたらきっと後世に残る名曲だったんじゃないの?
でもジョーもこんな曲をここまで歌えるとは思わなかった。

5. Anybody There
もの悲しいキーボードとリッチーのむせぶギターがからむインスト。
レインボーはたまにインストがあるが、この雰囲気は結構めずらしい。
ラストは賛美歌のような旋律で終わる。

6. Desperate Heart
「Stone Cold」を少し力強くしたようなナンバーである。
ここでもジョーの歌い手としての力量が最大限に発揮されており、名門バンドのボーカルを務めるプライドが感じられるようだ。

7. Street Of Dreams
アルバム中、リアルタイムで聴いていたのはこの曲だけ。
楽曲にそれほど凝った演出などはないが、ジョーの情けなく哀れなボーカルが最も光る名曲である。
このヒトはやはり低い声で吠えるより、高いキーでサビを歌うほうがいいとつくづく思う。
ただリッチーのギターワークが思ったほど頭に残らない・・・
なおヨーロッパの「ファイナル・カウントダウン」はどこかこの曲に似ていると思う。

8. Drinking With The Devil
第3期で顕著になってきたアメーリカンなロケンローサウンドそのもの。
安いLAメタルみたいでファンクなんだが、むしろこの曲のリッチーが一番はじけていて良い。
ジョーも器用に歌いこなしてるけど、これはやっさんが歌ったほうがおもしろかったかもね。

9. Snowman
再びインスト。
「どんぱぱぱ・どんぱぱぱ」と重たく繰り返されるリズムにキーボードとフルートのような調べ。
そこにリッチーの粘るギターが登場する。

10. Make Your Move
ラストはハイスピードの80年代ポッピーなロック。
ジョーはわりと軽めにのびのび歌っていて、リッチーのギターもナイト・レンジャーみたいに聞こえる。
もちろんこのノリは好きだが、一方で「いやーすいませんレインボーも来るところまで来てしまいまして・・」となぜか頭を下げたくなる妙な感覚。
しかもエンディングの処理がけっこう雑で、せっかくリッチーのギターがぱりぱり鳴ってるのにすうっとフェードアウト。
平日昼間に聴くCM手前のAMラジオ番組のようで、これはもう少し丁寧に作って欲しかったなぁ。

さて、これでレインボーのスタジオ盤は全て聴き終えた。
このアルバムには思ったよりいろいろな曲がある。
第1期のような中世様式美メロディもあれば、インストありフォリナーありナイト・レンジャーあり。
日本での評判は良くないという話だが、自分としては充分楽しめる内容だ。
大半の曲はリッチーとジョーの作品であり、たまにデビッド・ローゼンタールやロジャー爺さんの名前がクレジットされている。

通して聴いてみて感じるのは、このアルバムでジョー・リン・ターナーの歌い手としての才能が最高地点に達していることだ。
この数年後にパープルに加入した時にはすでにジョーの声ははっきりとヘタリが来ており、ボーカリストとしての頂点がレインボー末期にあったことがよくわかる。
吠えるおっさんロニー・ジェイムス・ディオや、叫ぶやっさんグラハム・ボネットという人間ばなれしてる二人のボーカリストに比べ、どうしても見劣り聴き劣りしてしまうジョーだが、レインボーのラストアルバムにおいて、器用に各曲を歌いこなしている。
もともと線の細い哀れな声が魅力なんだが、「Can't Let You Go」「Desperate Heart」のような重厚な曲も、「Drinking With The Devil」「Make Your Move」といったチャラい80年代ポップも、違和感なく聴けるのは素晴らしいと思う。

一方でリッチーのギターは案外抑えめで、ソロもなんとなく短い気がする。
第1期でのキーボードやドラムとのバトルもあまりなく、パートに関してはメンバーの一人としての存在感しか感じない。
これは比較的第3期のアルバムに共通しており、方向性としてリッチーはこれをよしとしたのだろう。
それでも作品のクオリティは非常に高い。
第3期の3枚の中ではこの「Bent Out Of Shape」を最も高く評価したい。

さて、パープルよりはマシだけどそれほどイイとも思えないレインボーのアルバムジャケット。
このアルバムも女性がびろーんとゆがんだ壁の穴?から姿を現すという、怖くないオカルト映画のパンフみたいな絵なんだけど、微妙すぎて評価のしようもない。
裏ジャケットではその女性の足が長く伸びてゆがんでねじれていて、でもそれが何か?という感じ。
パープルのようなおポンチな絵ではないのでツッコミにくいし、「アイ・サレンダー」のようなステキなアートとも言い難い。
デザインはヒプノシスだそうですけど。

というわけで、レインボー最後の作品「Bent Out Of Shape」。
これは良かったです。
パープル再結成の話題にばかり注意が行ってしまい、当時きちんと聴いてなかったのは悔やまれるところです。
そのパープルもまだ聴き残してるアルバムがありますんで、もう少し補習しておこうと思います。

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聴いてみた 第92回 ローリング・ストーンズ その6

中年になってから合宿免許みたいに急いでストーンズ学習してる状態ですが、今日は80年代の問題作「ダーティ・ワーク」を聴いてみました。

「ダーティ・ワーク」は86年の作品。
ファンの間では常識のようだが、ミックとキースの仲が最も悪い時に作られ、キース主導で進められたアルバムとされる。
このアルバム作成の前後にミックはソロアルバム作成も行っており、バンド活動を軽んじたミックの考えや態度にキースがキレた、という図式らしい。
ストーンズとしては異例だそうだが、ロン・ウッドがクレジットに名を連ねた曲もいくつか存在する。
また後年明らかになった話だがチャーリー・ワッツは当時アル中で治療が必要な状態にあり、メンバーそれぞれが一致団結とはほど遠い中で作られたという因縁のアルバムである。
プロデューサーは80年代の洋楽界には欠かせない存在であるスティーブ・リリーホワイト。

Dirtywork

自分は当時、このアルバム(確かまだLPだった)を吉祥寺にあった友人のアパートで一度だけ聴いたことがあった。
今回26年ぶりに聴くことになったのだが、CDは三軒茶屋で中古購入。
特にキズや傷みがあったわけでもないのに、値段は驚きの500円。
この中古市場における500円という値段が、なんとなく世間での人気を表しているのではないかとぼんやり思った。

安心材料としては、リアルタイムで聴いていた「One Hit」「Harlem Shuffle」が収録されていることだ。
特に「One Hit」はストーンズの曲の中で一番好きだ。
まあこんな感想自体がすでにド素人なんだが、とにかく聴いてみることにした。

・・・・・聴いてみた。

1. One Hit (To The Body)
ギターのじゃらーんとした粗野なサウンド、ミックの終始不機嫌なボーカル、ヤケクソなドラム。
70年代の音を継承しつつ、80年代のチャラい音もまざっていい感じである。
後から知ったのだが、ギターでジミー・ペイジが参加しているそうだ。
なお当時FMでエアチェックしたのはロング・バージョンだったようで、イントロの本編までの長さやアウトロがアルバム・バージョンよりも長い。

2. Fight
1曲目よりもさらにテンションの上がったロックナンバー。
やはりストーンズではこういうノリが自分は好きである。

3. Harlem Shuffle
これも当時FMでエアチェックしたヒット曲。
ただ好みかというとやや微妙。
オリジナルではなくカバーだそうだ。
訳詞を見たけど、そもそも「ハーレム・シャッフル」の意味が不明。
「そうだ、いいぞ、ハーレム・シャッフルをやってくれ」って、全然訳になってないんですけど。

4. Hold Back
再びばしばしと叩きつけるドラムに重いギター、吠えるミック。
ただボーカルがない部分だけ聴くと、どこかアメリカのメタルバンドっぽい音がする。
歌詞は命令形が多く若干説教くさいが、「人生を大切にしろ」「大胆になれ」といった相反する指示が繰り返される。
「Hold Back」を「おさえろ」って訳しているけど、合ってるのか?

5. Too Rude
これも彼らのオリジナルではなくカバー。
レゲエのリズムに乗せて遠くからエコーをかけて歌う不思議な曲。

6. Winning Ugly
いかにも80年代な音だなぁ。
リズムの取り方とかバックコーラスとか、ストーンズでなくても聴けるサウンドに、ミックが無理矢理ボーカルを乗せている感じ。

7. Back To Zero
前の曲よりもさらにチャラい。
全体的にマイケル・ジャクソンみたいな造りなんだが、ミックの叫びでかろうじてストーンズであることを保っているという印象。

8. Dirty Work
再び「One Hit」路線に戻る。
「One Hit」もそうだが、この曲もミックとキースに加えてロン・ウッドがクレジットに記載されている。
ということは、このノリはロン・ウッドの意向が働いているものなのか?

9. Had It With You
60年代のロカビリーみたいなリズムに、まさしくダーティでワルなミックの声が響く。
中盤でテンポがぐっと落ちる部分があるが、ここでのミックがすんげえ適当。
音もリズムもどうでもいいって感じでダラダラ歌い、再び元のスピードに戻る。
なおこの曲にはベースがないそうだ。
ビル・ワイマンは不参加?

10. Sleep Tonight
最後はキースのボーカルによる壮大なバラード。
このヒトは歌はうまいとは思わないけど、こういう曲をやらせるとビシっとはまるところはさすがだとあらためて思う。
海に落ちる夕日なんか見ながら聴くと最高だね。

全体として感じるのは、やはり80年代っぽいサウンドを採り入れているところだ。
コアなところにはもちろんストーンズならではの黒いリズムがあるのだが、他のアーチストでも聴けそうな音はそこかしこにころがってるという気がした。
なので自分のような80年代ミーハー中年リスナーにとっては、非常に聴きやすいアルバムである。
「One Hit」が一番好きだと宣言してきたが、これは全く揺るがない。

ただし。
60年代・70年代からのファンからはいまいち評判が悪いというのもわかる気がする。
どこかムリして80年代の音を追いかけたようにも思えるし、楽曲の雰囲気に構わず、ミックのシャウトはとにかくどれも傍若無人で尊大なので、作り込みとしてはやや中途半端なイメージもある。
2002年のベスト盤「フォーティ・リックス」には、「ダーティ・ワーク」からは1曲も収録されていないそうである。
なので感覚的にはジェフ・ベックの「フラッシュ」とかエイジアを聴いた時の喜びと後ろめたさに近い。
「80年代の恍惚と不安、二つ我にあり」である。(なんだそれ)

ジャケットにはドギツイ色の服に身を包んだメンバーが、バラバラな格好とイラついた表情で写っている。
なんか昔のベネトンの広告みたいなアートだが、このジャケットも嫌いではない。
ここでもキースが中心に位置しており、キース主導の作品であることを見事に表している・・・なんて評価が多いそうだが、どこまで本当なのかはわからない。
なお原語の歌詞カードは全部手書きで、裏にはヘタウマ(死語)な漫画がついている。

あくまで素人の憶測でしかないんだが、不仲の話もキース主導という設定も、もしかして全部ストーンズ側の演出だったりするんじゃないだろうか?
チャーリーのアル中状態や、ミックのソロ活動の谷間といった、事務所的にはやや不利な状況の中、一定のセールスを確保するためには、「不仲」「解散の危機」「キース主導」などといった話題づくりが必要とミックは考えた・・・なんて話だったんじゃないでしょうか?
何の根拠もありませんが、そんなことを思ったりしました。

というわけで、「ダーティ・ワーク」。
個人的にはかなり良かったです。
少なくとも自分にとっては、同じ80年代の「刺青の男」よりもはるかに聴きやすいアルバムだと確信しました。
ただこれがストーンズ本来の魅力だというわけでもないと思いますので、次は再び70年代の名盤に戻って学習を続けていこうと考えております。

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