聴いてみた 第91回 ローリング・ストーンズ その5
前回60年代のアルバム「12×5」を聴いてけっこう気をよくしたあたし。
調子に乗ってさらにストーンズ教室中級コースを受けることにしました。
今度は70年代の作品「山羊の頭のスープ」(紙ジャケット盤)をチョイス。
大阪でモンスリー師匠に案内されて立ち寄った中古CD店で見つけ、オーバースロー気味に購入。
ただしそれほど深い意味はない選択で、たまたまつかんだ程度の話です。
「山羊の頭のスープ」は73年発表。
録音はジャマイカで行われ、全10曲ともジャガー&リチャーズの作詞作曲。
(ただしキースのほうはクレジットでは当時の名乗りのとおり「K.Richard」表記となっている)
メンバーはこの二人と、チャーリー・ワッツ、ビル・ワイマン、ミック・テイラーの5人。
ブライアン・ジョーンズはすでに故人となっており、ロン・ウッドはまだいない。
ビリー・プレストン、ニッキー・ホプキンス、イアン・スチュアートが参加。
ビリー・プレストンといえば末期ビートルズのレコーディングにも参加して、「Get Back」の間奏で軽快なピアノを弾き、屋上ライブの映像にも登場しているミュージシャンである。
またイアン・スチュアートはもともとストーンズの結成当時からピアノを担当していた人物だが、プロデューサーから「顔がバンドの雰囲気に合ってない」という気の毒な理由でオリジナルメンバーとなり得なかった。
イアンの画像をネットで見てみたが、まあ確かにザキヤマと安岡力也を混ぜたような面相ではある・・
さて、ネットでいろいろこの「山羊の頭のスープ」の評論を読んだが、ミック・テイラーのパフォーマンスが非常に重要という点では多くのファンの意見が一致するようだ。
「ミック・テイラーがいたからこそストーンズがおかしな方向に進まずに済んだ」といった評価もあり、彼の貢献はこのアルバムにとどまらず、バンドの歴史を確実に支えてきたことは間違いないようである。
ということでミック・テイラーのプレイに着目(着耳?)して聴いてみる。
果たしてあたしは、無事に山羊の頭のスープを飲み干すことができるでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1, Dancing With Mr. D.
どこか粘着系のメロディでスタート。
リズムが思ったより取りづらく、ついていくのが難しい。(ド素人)
ミスターDとはドラキュラ伯爵のことだそうだ。
この調子で続くとなると先行き不安な気がする。
2, 100 Years Ago
比較的おだやかなイントロ。
中盤で雰囲気が大きく変わり、ゆったりしたバラードになったかと思うと再び激しいミックのシャウト。
これもどうも難しいなぁ。
3, Coming Down Again
今度こそゆったりしたバラード。
この曲はキースのボーカル。
表現力ではやはりミックよりもインパクトには欠けるが、こういう曲ならむしろキースの声のほうが合っている。
間奏ではサックスやキーボードの音が聞こえ、壮大なイメージだ。
6分くらいあり、歌詞も同じフレーズの繰り返しが多いので長く感じるかと思ったが、意外にそうでもない。
4, Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)
この曲はベスト盤で聴いている。
自分もどうやらミックの声に徐々に慣れつつあるようで、初めて聴いた頃よりもいいと感じる。
ギターはミック・テイラーで、キースはこの曲ではベース担当とのこと。
歌詞はニューヨークの警察官による誤射殺人や退廃した若者たちを採り上げた社会派な内容。
5, Angie
これもベスト盤で聴いた名曲。
前の曲との対比でよりいっそうはかなく感じる。
古くからのファンの間では賛否両論だそうだが、やはり後世に残る名曲ではないだろうか。
自分のような初心者にとっては、こうして安心して聴ける曲があったほうがありがたい。
6, Silver Train
LPだとここからB面。
楽しそうなサウンドがタイトルにマッチしている。
中盤からエンディングまでミックはシャウトしっぱなし。
びよよよーんとはじけた演出を盛り立てるギターがいい。
7, Hide Your Love
若干ゆるめの宴会調リズムだが、ピアノとギターの主張が強く、なんとなくジャズっぽい曲だ。
楽しい印象はないが、楽曲のまとまりはタイトなものがある。
「セッション風」という評価があるようだが、まさしくその通りだと思う。
8, Winter
奥行きが深く、映画のエンディングのような広がりのある音がする。
雰囲気は「Coming Down Again」にも似ている。
ストリングスも使った高級感漂う一曲。
9, Can You Hear the Music
民族楽器のような変わった音で始まる。
一瞬プログレのような難解さを思わせるが、根幹には「Winter」同様壮大なバラードがあるようだ。
いろいろな楽器の音がして悪くはないが、ちょっと雑然とした感じ。
タイトルコールも繰り返しが長く、ラストも少し中途半端な印象。
10, Star Star
最後はノリのいいロックを持ってきている。
グルーピーのことを歌った、ストーンズお得意のお下品な歌。
もともと「Starfucker」という曲名だったが、レコード会社の意向で変更になったそうだ。
リードの派手なギターサウンドもいいが、左でずっとリズムを刻むギターがこの曲のキモだと感じる。
のちの80年代洋楽にも通じるお手本のような構成はさすがストーンズである。
ライナーには「ジョーン・ジェットがカバーしている」と書いてある。
曲単位では多少好みに合わないところもあるが、全体を通じてはそれほど拒絶感はなく、安心して楽しめるアルバムであると感じる。
タイトルやジャケットの気味悪さから、もっとキツイ音楽を想像していたのだが、ロックからバラードまで取りそろえたバラエティパックな内容だ。
すでにA面B面の文化はCDにはないんだが、それぞれのラストにちゃんと目玉な曲をセットしている企画は秀逸だと思う。
楽曲としては「Doo Doo Doo Doo Doo」「Angie」「Silver Train」「Star Star」が好みだ。
初心者なんでおそらくベタでダサいチョイスかもしれないが、このあたりからどんどんストーンズに入っていけたらいいと勝手に思っている。
ストーンズの経歴的には「メインストリートのならず者」と「イッツ・オンリー・ロックンロール」の間にあたる作品である。
それぞれの音楽性はけっこう違いがあるようだが、なんとなく傑作の2枚にはさまれた佳作というイメージがある。
「山羊の頭のスープ」はファンの間での人気度としては中くらいに位置するのだろうか?
なお曲名や歌詞に山羊だのスープだのといった言葉はいっさい出てこないんだけど、なんで山羊の頭のスープなんだろう?
ジャケットはスープ漬けのようになったメンバーの顔写真で、黄色っぽいビニール?越しに見える半笑いのミックがとても不気味。
CD買ってみて初めて知ったのだが、タイトルどおりのヤギの頭のスープの写真が中に入っている。
これも相当に気持ち悪い。
というかもはや食い物には見えず、ヤギが温泉につかって「あーあったけえ」とうなってるような絵になっている。
こういうアートはビートルズはついにやらなかった領域だ。
実際にヤギの頭のスープを飲んだことはないけど、まあ間違いなくマズイんだろう。
ということで、「山羊の頭のスープ」。
今回も出だしは少々不安でしたが、全体としてはかなりよかったです。
このトシになってようやくストーンズが聴けるようになったのは誠に喜ばしい限り。
次回はもう少し時代を下ってみたいと思います。
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コメント
SYUNJIさんこんばんは。
>CD買ってみて初めて知ったのだが、タイトルどおりのヤギの頭のスープの写真が中に入っている。
まだ私が小学生の頃にロック好きの遠縁の兄ちゃんが
このポスターを部屋の壁に貼っていました・・・
衝撃的なポスターでしたので二度とその部屋には行きませんでした・・・(笑)
ミック・テイラーはギタリストとしては結構好きです。
でも個性的な集団のストーンズでは埋もれてしまった感もある・・・個人的な意見です。
「山羊の頭のスープ」ですが聴かない部類かなぁー
「アンジー」ぐらいですかねぇー、ごめんなさい・・・
私のお薦めは「アンダーカバー」と「スティール・ホイールズ」ですね。
投稿: ボレロ | 2012.05.12 23:27
こんばんは、JTです。
>「山羊の頭のスープ」はファンの間での人気度としては中くらいに位置するのだろうか?
そうですね、このアルバムそんなに聞き込んでないですね。なんだか「ぼんやりしている」感じがしていました。
>楽曲としては「Doo Doo Doo Doo Doo」「Angie」「Silver Train」「Star Star」が好みだ。
私も「Doo Doo Doo Doo Doo」「Star Star」が好みですね。
>こういうアートはビートルズはついにやらなかった領域だ。
ああ、そうですね。思い当たるのは、すぐ回収されたアメリカ盤「Yesterday And Today」(ブッチャーカヴァー)ぐらいですかね。あれはアルバムの曲数少なくしたり、入れ替えたりするキャピトルへの「いやがらせ」でしたが。
>ストーンズの経歴的には「メインストリートのならず者」と「イッツ・オンリー・ロックンロール」の間にあたる作品である。
私のおすすめは「イッツ・オンリー・ロックンロール」ですかね。この近辺のアルバムでは。次回は是非!
投稿: JT | 2012.05.13 00:28
私の数少ない、ストーンズの聴いたことがあるアルバムの1枚です。私はかなり好印象。最初に聴いたストーンズのアルバムが「エモーショナル・レスキュー」だったせいか?(笑)
人気度としては中? へー、これで中なのか。てことは前後は相当いいんですね。聴いてみたくなった。
あ、私もDoo Doo Doo~、Angieあたりがお気に入りでやんす。
投稿: ルドルフ | 2012.05.13 07:48
ボレロさん、コメントありがとうございます。
>衝撃的なポスターでしたので二度とその部屋には行きませんでした・・・(笑)
そうでしたか・・確かに小学生が喜ぶ絵ではないですよね。
>ミック・テイラーはギタリストとしては結構好きです。
>でも個性的な集団のストーンズでは埋もれてしまった感もある・・・個人的な意見です。
なるほど・・
やはりジャガー&リチャーズが相手では仕方がないように思いますね。
>私のお薦めは「アンダーカバー」と「スティール・ホイールズ」ですね。
どちらも80年代の作品なのが少し意外な感じですが、当然聴いてませんので、機会があれば聴いてみます。
「アンダーカバー」には知ってる曲が全くないなぁ・・なんでだろう?
投稿: SYUNJI | 2012.05.13 18:26
JTさん、コメントありがとうございます。
>そうですね、このアルバムそんなに聞き込んでないですね。なんだか「ぼんやりしている」感じがしていました。
やはりそうでしたか。
ネットでも前後の2枚は評価がかなり高い印象でしたが、「山羊」は「悪くない」「個人的には好き」といった表現での評論が目立っていた気がします。
>思い当たるのは、すぐ回収されたアメリカ盤「Yesterday And Today」(ブッチャーカヴァー)ぐらいですかね。
自分もビートルズのブッチャーカバーは思い浮かびましたが、標準的な公式アルバム周辺でのアートワークにはあまりどぎついものはなかったと思っています。
ジョン・レノンがもう少し長く存命だったら、ソロ作品でなんか仕掛けていたかもしれないですね。
>私のおすすめは「イッツ・オンリー・ロックンロール」ですかね。
やはりそうですか。
このアルバムはミック・テイラー参加の最後の作品ですよね。
よりロック色の濃い内容と聞いていますので、もしかすると自分には合うかもしれないです。
投稿: SYUNJI | 2012.05.13 18:39
ルドフィー、意外なコメント感謝です。
>私の数少ない、ストーンズの聴いたことがあるアルバムの1枚です。
へぇーそうだったんスか。
確かに今までルドっちが酒を片手にストーンズを語る場面はあんましなかったような・・
あ、「エモーショナル」はシングルだけ聴いてますが、なんだかちょっと変わった曲ですよね。
今でも聴くと「なんじゃこりゃ?」と思いますが・・
>あ、私もDoo Doo Doo~、Angieあたりがお気に入りでやんす。
おお、そうでしたか、心の友よ!(しつこい)
中華街(っていつよ?)ではスティーブ・ペリーとミック・テイラーについて語り合いましょう!
投稿: SYUNJI | 2012.05.13 18:48
オジキ
お伺いするのが遅れて申し訳ございません...
STONESファンの間じゃ…これは、中と言うよか下の上位かも…
やっぱり、焦点がぼやけたアルバムなんですよね…
オンナコドモ受けの例の1曲がジャマだし、HeartbreakerとStarfuckerはなんか、狙った様なあざとさがちょっと…
みたいな感じです。
テイラー期ですとやっぱ、ならずものってトコに落ち着いちゃうんですけど、一応オフィシャル。ダウンロードONLY販売の、73年のヨーロッパツアー音源のライブが発売になっています。(The Brussels Affair)http://www.stonesarchive.com/bootlegs/1973-the-brussels-affair-bootleg/
これが、STONESの全盛期の音だと思います。
もしも宜しければ一度、聴いて頂きたいです。
ビートルズが手に入れる事ができなくて、Stonesだけが手に入れられたものが分かるかと思います♪
投稿: V.J. | 2012.05.27 22:33
V.J.若、お待ちしておりました。
>STONESファンの間じゃ…これは、中と言うよか下の上位かも…
げぇーそうだったんスか?
まあファンの評価と自分の好みは合致しないことばかりですが・・
アルバムとしては前回聴いた「12×5」のほうが楽しめた感じはしました。(時代が全然違うけど)
>オンナコドモ受けの例の1曲がジャマだし、HeartbreakerとStarfuckerはなんか、狙った様なあざとさがちょっと…
うーん・・初心者のあたしにとってはどれも好みの曲でしたけど、この評価もわかるような気もしますね。
>ビートルズが手に入れる事ができなくて、Stonesだけが手に入れられたものが分かるかと思います♪
なるほど・・さすが若、鋭い表現ですね。
まだ慣れない音も多いストーンズですが、もう少し学習を続けようと思いますんで、ご指導よろしくお願いします。
投稿: SYUNJI | 2012.05.28 23:04
SYUNJIさん、こんばんは。
私もこのアルバムを聞きました。
今まで聞かなかったのは、知っている曲がないということと、なんとなく
ジャケットが地味だと思ったことがその理由です。
しかし、「ストーンズはアルバムごとに大きな変化はないが(逆に、着実に深化する)、
必ず一定水準以上のものを発表する」ということがわかりました。とても
よいアルバムです。もっと早く聞いておけばよかったと思います。
2曲目「100 Years Ago」での、奏者はわかり
ませんが、ファンキーなクラビネットと、後半で飛び出すチャーリー・ワッツの
力強いドラムと、ジャガーの迫力あるシャウトがいいですね。そして
これも奏者がわかりませんが、ギターソロも素晴らしいです。
4曲目「Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker)」は、わかりやすいロック
であることもあって、一番の気に入りになりました。スリリングなツインギター、
効果的に鳴り響くホーンセクションなどなど、全てよいです。
6曲目「Silver Train」は、多分ミック・テイラーのスライドギターや、
ホンキートンクなピアノがアメリカ南部の雰囲気を醸し出しています。8曲目「Winter」
では、ジャガーが情熱的に歌う美しいバラード。厚みのあるストリングスの演奏に、
サイドギターのカッティングを合わせているところが素晴らしいです。
10曲目「Star Star」は、わかりやすいロックンロール。「なぜ最後にこれを?」
とも思いますが、好きなんでしょうねえ。
投稿: モンスリー | 2021.04.04 11:28
モンスリーさん、ここにもコメント感謝です・・が、記事書いたの9年も前だったんスね・・
実はこれまで聴いてきたストーンズのアルバムの中ではなぜかあまり高順位に上がってこない作品です。
明確な理由はないけど、他にもっといいアルバムがあるからという感じですが。
>2曲目「100 Years Ago」での、奏者はわかり
ませんが、ファンキーなクラビネットと、後半で飛び出すチャーリー・ワッツの力強いドラムと、ジャガーの迫力あるシャウトがいいですね。
この曲は自分もわりと好きです。
調べたらクラビネットはビリー・プレストン、ギターはミック・テイラーだそうです。
>4曲目「Doo Doo Doo Doo Doo(Heartbreaker)」は、わかりやすいロックであることもあって、一番の気に入りになりました。
自分もこの下品で怪しい音が好きですね。
最近ではメンバーも加齢のせいかあまりこの曲をライブではやらないそうですが。
この曲でもビリー・プレストンがクラビネットとエレピアノを弾いてるそうです。
「Silver Train」「Winter」「Star Star」と曲単位で聴いていくと悪くないですね。
どうやら再学習が必要なようです。
投稿: SYUNJI | 2021.04.05 21:36