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聴いてみた 第90回 ジャーニー

今日はジャーニーを聴いてみた。
予定には特になかったのだが、たまたまお茶の水に出かけ、1000円カットで散髪しようと思ったら1万円札しかなく、両替の代わりに何か買うか・・・と思ってたら目に止まったのが中古CD店。
店内は異様に狭く汚く雑然としていたのだが、ひるまずに進入。
棚に入りきらないCDが積み重ねてあるんだけど、そのわりに「動かさないでください」などと書いた紙が貼ってあってなんでやねん状態なのだが、そこをかまわず掘り起こして買ってみたのが、ジャーニーのデビューアルバム「宇宙への旅立ち」である。

Journey

よく知られているとおり、ジャーニーがビッグなバンドになったのは、スティーブ・ペリーの加入とともにポップ路線に転向してからである。
転向後のジャーニーはわりと聴いているほうで、今手元にはベスト盤CDしかないが、「Departure」「Escape」「Frontiers」はレンタルでレコードを聴いており、「Raised On Radio」はほぼ全曲をFMで聴いている。

これまでBLOGで何度か公表してきたわりにあまり賛同してくれる人はいなかったんだけど、あたしはスティーヴ・ペリーというボーカリストはかなり高く評価している。
ソロアルバムも1枚聴いているし、90年代初めくらいまではシングルもいくつかエアチェックしていた。
ジャーニー在籍中は安定した力強さを保ち、聴いてる範囲ではライブでも声がヘタったりはずしたりといったミスがない優れた歌い手だ。
哀愁漂うバラードやブルース調の曲で力を発揮するタイプだと思う。
キーが高い人なんだが声はツヤがない。
歌い方や声においては似てる人があまり見あたらない、思ったよりも珍しいボーカリストである。
ただしビジュアル的には厳しい評価が多く、ヅラをかぶった萩原流行のようなご面相は、ミュージックライフでは「みみずく」と呼ばれていた。

ジャーニーはサンタナの血をひく若きギタリストのニール・ショーンと、キーボードのグレッグ・ローリーが中心となって結成された。
結成当初は各パートの技術を追求する技巧派ハード・プログレ・バンドとして3枚のアルバムを発表するが、セールスとしては成功したとは言えず、4枚目のアルバムからスティーヴ・ペリーが加入し、バンド内に産業ロック革命が起こる・・・というのがジャーニー・ストーリー。

さて「宇宙への旅立ち」。
原題はバンド名まんまなので、これはいい邦題だ。
本作はみみずく不在の、ニールとグレッグの若き胎動を集めた技術志向なアルバムである。
果たしてあたしはみみずくの案内なしで無事に宇宙に旅立つことができるでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Of a Lifetime 時の彼方へ
もの悲しい旋律でスタート。
サウンドはそれなりに激しい盛り上がりがあるが、難解という感じはしない。
80年代のジャーニーにもありそうな音で、どこかブラッド・デルプの抜けた後のボストンにも似ている。

2. In the Morning Day 朝はブルーさ
題名はブルーだがサウンドはむしろ1曲目よりも明るい。
後半で長い時間をかけてキーボードとギターが主張する。

3. Kohoutek コホーテク
重くどんよりと進行するインスト・ナンバー。
映画のオープニングのような雰囲気だ。
途中でリズムが早くなり、緊張感が増す。
ニール・ショーンのギターはややメタルっぽい印象。
再びどんよりしたリズムに戻り、暗いまま終了。
この曲がもっともプログレである。
コホーテクって彗星の名前だよね?

4. To Play Some Music 君にイカした音楽を!
なんとなく中途半端に明るい曲。
ポップに徹しきれていない感じで、ボーカルがどうもインパクトが弱い。
70年代そのものな邦題が脱力でナイスである。

5. Topaz トパーズ
これもインスト。
静かなギターに奥行きのあるキーボード。
・・・と思ったら途中からかなり激しい音とリズムが交錯。
ジャズっぽい進行で、パート同士のぶつかり合いはクリームを思わせる。
終盤はゆっくりした流れに戻り、今ひとつ散漫な曲である。

6. In My Lonely Feeling/Conversations 悲しい気分で/会話
今度はわりとわかりやすいブルース調の曲で、ピンク・フロイドのような音がする。
ボーカルもあるが、歌のない部分がかなり長く、そのままエンディング。

7. Mystery Mountain 神秘の山
やや神経質で難しい曲だ。
音階の並べ方にあえて半音ずらしたようなところが多発していて、ひとことで言うと「変な音」。
それでも各パートの水準は高く、技術志向な曲である。

うーん・・・
聴いていて楽しくなるとかワクワクする音楽とは違う。
ニールとグレッグのプレイはこの時点でもすでに非凡なものであることはよくわかる。
楽器ごとのテクニックの評価を軸に聴くとか、バンドの歴史をひととおり学習するなど、目的意識を持った人向けのような感じの楽曲だと思う。

クリムゾンイエスのような難解で理工系なプログレではないが、後の産業ロック炸裂なジャーニーとも違う、全く別のサウンドである。
このあたりはネットでの評価とも合致するところだ。
安っぽい言葉で表現すれば「玄人受けする音」なのだろう。
なので正直自分の好みからはほど遠く、エイジアを期待してU.K.を聴いた時の感覚と同じである。
憶測でしかないが、おそらく初期のスティクスを聴いても同じ目に遭うような予感がする。

アルバムジャケットも初期の3作は転換後に比べて地味だ。
今回聴いた「宇宙への旅立ち」はメンバーが空中に浮遊する絵で、タイトルに整合していて悪くはないが、やはり「Evolution」「Escape」などのアートスタイルに比べるとインパクトは弱い。

80年代は良くも悪くも洋楽全体がチャラい方向に流れた時代であり、イエスもジェネシスレインボーもアメリカのマーケットを意識して楽曲を組み立てたという不思議な状態だった。
セールスの額面は別として、ジャーニーは77年のスティーブ・ペリー加入後からはっきりと産業ロック転換を果たしており、そういう意味では先駆け的な存在でもある。

ただしジャーニーは産業ロック転換には大成功したが、プロモ・ビデオ製作には全然力を入れていない。
そもそもメンバーのファッションセンスがかなりアレなことは否めないが、それは置いておくとしても基本的にスタジオ録音された楽曲音声に合わせて野外でクチパクで歌いながら地味に移動する・・という程度の映像だった。
このあたり80年代のアーチストは、プロモ・ビデオについては徹底的に凝るタイプか、全く頓着しないかのどっちかだったように思う。
前者代表はもちろんマイケル・ジャクソンであり、カーズカルチャー・クラブやデュランもそうだろう。
後者代表がジャーニーやヴァン・ヘイレンである。

ということで、ジャーニーのデビューアルバム。
唐突に聴いてみましたが、やはり80年代のジャーニーの魅力には遠く及ばないというのが正直な感想です。
この路線であればスティーブ・ペリー加入前の残る2枚はもう聴かないでもいいかなと勝手に考えております。
スティーブ加入後の「Infinity」「Evolution」「Dream After Dream」も実は聴いていないので、次に聴くのはこの中から選ぶつもりです。

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コメント

ルドフィーです。

> あたしはスティーヴ・ペリーというボーカリストはかなり高く評価している。

同意。これはライブ映像なんかを観ても明らか。声量はあるし、歌も上手い。てか、スタジオ録音と変わらないクオリティ。ま、好き嫌いはおいといて。

> 「Infinity」「Evolution」「Dream After Dream」も実は聴いていないので、次に聴くのはこの中から選ぶつもりです。

前者2つは持ってますから、なんなら焼いときますけど。「中華街満ぷくツアー」はよ。

投稿: ルドルフ | 2012.04.08 07:33

おやルドフィー、意外な記事にコメントいただいて恐縮です。

>同意。これはライブ映像なんかを観ても明らか。声量はあるし、歌も上手い。てか、スタジオ録音と変わらないクオリティ。

おお!今までそこまで同意してくれた方はいなかったスよ!
ありがとう、心の友よ!(ジャイアン?)

>「中華街満ぷくツアー」はよ。

あの方は最近肝臓がフル回転してるようですが、かまわず中華街に呼び出しましょう。

投稿: SYUNJI | 2012.04.08 23:08

SYUNJIさん、こんばんは。
80年代産業ロックの雄、ジャーニーですが、
スティーブ・ペリー加入前は全く知りません。
逆に脱退後も全く知りません。

そもそも、ジャーニーのオリジナルアルバムは
1枚も聞いたことがありません。FMで録音した
ライブ、10年ほど前?に出たペリー在籍時の
公式ライブ盤、そしてベスト盤だけです。
そのベスト盤ですが、おそらくペリー加入前の曲は
収録されていないと思います。

で、たまたま数年前のレコード・コレクターズ誌の
アメリカン・ハードロック特集を見ておりましたら、
このアルバムが取り上げられておりました。
「ショーンとリズム隊が繰り広げるインスト曲がよい」
(大意)と書いてありますが・・・・

>>クリムゾンやイエスのような難解で理工系なプログレではないが、
>>後の産業ロック炸裂なジャーニーとも違う、全く別のサウンド


うーん、ハードルは限りなく高そうですね。
ペリー在籍時のアルバムから勉強することにします(^^;)。

投稿: モンスリー | 2012.04.10 21:13

モンスリーさん、こちらにもコメント感謝です。

>スティーブ・ペリー加入前は全く知りません。
>逆に脱退後も全く知りません。

あたしも長いこと同じ状態でした。
脱退後はむしろスティーブ・ペリーのシングルを少し聴いたりしました。

>「ショーンとリズム隊が繰り広げるインスト曲がよい」
>(大意)と書いてありますが・・・・

レベルは確かに高い技巧派な音がします。
あまり明るくないのが自分にはやや不満でしたね。
モンスリーさんの好みにはむしろ合うんじゃないかと勝手に思いましたが・・

投稿: SYUNJI | 2012.04.10 22:41

ご無沙汰しております。ゲッツです。

子供のスポーツ少年団が終わったので、少しブログも書いてみようかと思い、最近少し記事を書いてみたりしております。

さて、ジャーニーですが、初めて聴いたのは「Any Way You Want It(邦題「お気に召すまま)」でした。それ以前の曲は一曲も聴いたことが無く、雑誌でジャーニーがプログレやってた、というような記事は読んだことはあるのですが、まったくもって想像できません。

彼らのイメージは、スティーヴ・ペリーのハイトーンヴォーカルと、ニール・ショーンの高速ギターの特徴をうまく活かした健康的ロックバンドという感じです。

「みみずく」は的確な表現ですね。笑ってしまいました。

投稿: getsmart0086 | 2012.05.01 22:09

ゲッツさん、コメントありがとうございます。
BLOG再開おめでとうございます。

>さて、ジャーニーですが、初めて聴いたのは「Any Way You Want It(邦題「お気に召すまま)」でした。

あ、自分も同じですね。
その後FMなどでもう少しさかのぼって聴いていました。

>雑誌でジャーニーがプログレやってた、というような記事は読んだことはあるのですが、まったくもって想像できません。

そうなんですよね。
雑誌に「ハードプログレ」などと書いてあるのを見て、他のバンドと間違えてんじゃないのかと思ったくらいです。
実際聴いてみると80年代の健康的ロックバンドとは全然違う音でした・・

投稿: SYUNJI | 2012.05.03 09:14

SYUNJIさん、こんばんは。
私もこのアルバムを聞くことができました!

ウィキペディアをちょっと検索しますと、プログレ風
とありますが、そんな感じはしませんでした=B級
プログレに見られます、A級プログレの物まねや
無理に難解にしたり、などはなかったと思います。
逆に、とても泥臭い感じがしました。70年代のアメリカン
ロック風です。リフで強引に迫ったすなど、強引に
こじつけますとグランド・ファンク・レイルロード
のような感じです。スティーブ・ペリー在籍時
のように洗練されてもいません(産業ロックがAOR
並に洗練されていたかどうかは別のお話になりますが)。

しかし今聞くならこの1st、かなりよいと思います。
アメリカンロック魂を感じます! ジャーニー=産業
ロックというステレオタイプな見方を取り去ってくれ
ます。個人的にはやはり3曲目のインストナンバー、
ギターとキーボードのバトルにメンバーの意地を
感じました。

投稿: モンスリー | 2012.12.02 17:42

モンスリーさん、コメント感謝です。

>B級プログレに見られます、A級プログレの物まねや無理に難解にしたり、などはなかったと思います。

そもそもプログレ自体あまりよくわかってませんが、まあ記事に書いたとおりクリムゾンやイエスのような難解さは確かにそれほどなかったですね。
文系プログレというか・・(かえってわからない)

>しかし今聞くならこの1st、かなりよいと思います。
>アメリカンロック魂を感じます!
>ジャーニー=産業ロックというステレオタイプな見方を取り去ってくれます。

なるほど・・・愛のある見方だなぁ。
あたしゃ産業ロックなジャーニーがとても好きなので、彼らの原点を知ることができたのは良かったんですけど、このファーストは好みとはかなり違ってましたね。

投稿: SYUNJI | 2012.12.02 21:56

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