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観てみた ポール・マッカートニー THE LOVE WE MAKE

めったに映画を観ないあたしですが、2年ぶりに映画館に行ってみました。
今回はポール・マッカートニーのドキュメンタリー映画「THE LOVE WE MAKE」です。
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロに心を痛めたポールが、多くのアーチストに呼びかけて「コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ」を開催。
このコンサート開催までの日々といくつかのインタビュー、そして当日のライブの様子を織り交ぜた映像で構成された映画です。

Paul

この映画公開を知ったのは新聞広告でした。
9.11の後、様々な音楽イベントがアメリカで開催されていたと思いますが、このコンサートのことは正直覚えていませんでした。
従って映像も音楽も全く鑑賞していません。
事件から10年が経過したこの時期になぜ日本で公開されたのかもわかりませんが、記録映画として観ておきたいと思ったので、仕事の帰りに映画館に立ち寄りました。

直前まで六本木で観るつもりでしたが、上映時刻がかなり遅いため、もう少し早い時間に上映する横浜で観ることにしました。
TOHOシネマズららぽーと横浜で映画を観るのは初めてです。
たまたまですがこの日が上映最終日でした。
上映は19時20分からの1回だけ。
平日夜だったせいか、客は20人もいなかったと思います。

以下、映画の内容にふれる記述となりますので、鑑賞前の方はご注意ください。

・・・・・観てみた。

監督はストーンズの「ギミー・シェルター」を撮ったアルバート・メイスルズ。
映像は主に5種類に分けられます。
1.コンサートに向けてのスタジオでの練習風景。
2.テレビやラジオ番組に出演してインタビューを受けるポール。
3.車の中でアルバートや運転手のジョージと会話し、時には街に繰り出してファンにサインするポール。
4.コンサート当日のバックステージの様子。
5.そしてステージ上の映像。
これらのパターンが小刻みに前後しながら登場しますが、1と3と4はモノクロ映像です。
画質も1から5まで含めてあまり良いとは言えず、特に3や4はピントが合わない部分もかなりあったりしますが、それゆえに臨場感はあります。

ドキュメンタリーなので妙な演出は全くありません。
また9.11そのもののニューヨーク市内の混乱の様子は、映像には一切登場しません。
この映画はあくまでポール・マッカートニーという音楽家のドキュメンタリーであり、政治や思想を強く反映した作品ではない、ということだと解釈しました。

そういう意味では初めから終わりまで映像は比較的平坦で、感動したり大笑いしたり、という場面も特になし。
でも車の中で運転手と会話したり、バックステージで様々なミュージシャンと楽しそうに会話するポールの映像は、やはり貴重なものだと思います。

スタジオで練習するサポートミュージシャンは全て若いアメリカ人なので、自分は名前も顔も知らない人でした。
またメディア側の人が数人登場しましたが、これまたダン・ラザー以外は全くわかりません。
登場人物についての字幕解説がないので、この人が誰でアメリカでどういう評判なのか、わからないまま映像を見ることになります。
名前を字幕で紹介するのはオジー・オズボーンやピート・タウンゼンド、ビリー・ジョエルなど有名なミュージシャンに限定しているようでした。
あたしのような万年初心者リスナーでも、オジーやピートの顔くらいはわかります。
むしろそんな有名人よりも、他の若いミュージシャンやメディア側の人たちについて、もう少し解説を入れてほしかったと思います。

会話から感じるポールの人柄は、パブリックなイメージそのものから全くはずれていませんでした。
深刻な事態に立ち向かう強い決意や姿勢はありますが、スタジオでも楽屋でも街中でも、とにかくポールはにこやかで楽しそうです。
冗談を言って周囲を笑わせ、自身もリラックスする、そういうシーンが何度も出てきます。
少し驚くのは、9.11直後のニューヨークでもわらわらと寄ってくるファンに気さくにサインをするポールの姿でした。
あの時期、誰もが次のテロ発生を恐れていたはずですが、超有名人であるポール自身はそれほど身の危険を感じてはいないように見えました。

思えばこの人は70年代からずうっとそうだったのではないかと思います。
ジョン・レノンのように反戦を訴えて過激な行動と言動によってFBIに監視されたり、アメリカ永住権をめぐって裁判で延々戦ったりといった展開もなく、ウィングスやソロでひたすら楽しい音楽を世界中に発信していたのでした。
テロに屈しないアメリカを支持する姿勢や考えは持っていますが、それを表現するのに音楽コンサートの枠からは決してはみ出そうとはしていない。
音楽の力を最も信じているミュージシャン、それがポール・マッカートニーであるということだと思います。

ポールに会いに来た時のオジーの若干緊張した面持ちや、コンサート前の打ち合わせ時にピートに向かって「クスリのやりすぎじゃないの?」などとイノセントにカマすポール、苦笑するしかないピート、こんなところはとてもおもしろい映像です。
コンサートで初めて新曲を披露するため、エリック・クラプトンとギターソロについて打ち合わせをするポール。
本番を前に高いテンションのポールに、クラプトンが終始落ち着いて「はいはい」と実直に返事をしているのがなんだか笑えます。
この二人の上下関係はよくわかりませんが、先輩ポールの命令をマジメに受け止める後輩クラプトン、といった感じ。

他にもハリソン・フォードやレオナルド・ディカプリオ、ビル・クリントンなど意外な顔ぶれがポールの楽屋を訪ねてきます。
どれも短いシーンですが、それぞれの特徴が映像から伝わってきます。
ハリソン・フォードは低い声で落ち着いた会話をポールと交わします。(でもジョークはお互い混ぜる)
クリントンは政治家らしくよくしゃべりますが、どこかあまり人の話を聞いていないような印象でした。

コンサートの映像は権利関係もあるのでしょうか、フルコーラスの場面はありませんでした。
どのミュージシャンもちょうどいいところで場面が楽屋で待機するポールなど別のシーンに切り替わってしまいます。
これはポールが歌う「I'm Down」「Let It Be」「Freedom」も同じでした。

そんな中で自分が最も感動したのは、ザ・フーの映像でした。
「Won't Get Fooled Again」を力強く歌うロジャー、風車奏法で観客を熱狂させるピート、ドラムはリンゴの息子のザック。
他にもデビッド・ボウイやミックとキース、エルトン・ジョン、ビリー・ジョエルやジェームス・テイラーなどが歌うシーンもありましたが、ザ・フーのステージ映像が際立って良かったと思います。

ポールがライブの大トリを新曲「Freedom」でシメてステージを後にし、別の日に消防署員に敬意を表するシーンで映画は終わります。
各シーンをフラッシュバックさせたりストップモーションで紹介したりといったベタな演出もなく、静かにエンディング。
なんだか終始NHKスペシャルっぽい雰囲気ですが、そういう映画です。

このコンサートでの各アーチストの選曲が、当時のアメリカ・ニューヨークを勇気づけるにふさわしいものだったかどうかは、正直よくわかりません。
あれから10年が経過し、音楽の力はニューヨークやアメリカに果たして幸福をもたらしたのか?と問われると、報道で見る限りはそうでもないように思えます。
映画の中で1つだけ気になったのが、ミュージシャンではない警察関係者?のような人が、ステージでビンラディンを名指しで非難し、観客がそれに呼応するシーン。
ポール・マッカートニーという不世出の楽天家ミュージシャンが起こした音楽イベントのドキュメンタリー映画において、この場面だけはカットしたほうが良かったのではないかと感じました。

エンドロールを見ながら、ふだんは考えないようなことを少し考えさせられました。
ジョン・レノンの映画を見終わった時も感じたことですが、世界中の誰もが望むはずの平和は、ジョンやポールのようなスーパースターをもってしても簡単には実現できないほど難しいものになっていると思います。
それは現代に生きる我々世界人類全員の責任でもあり、ポール自身もそれはわかっているはずです。
「それでも僕は歌うよ。だってミュージシャンだからね」とポールに言われたような気がしました。

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コメント

SYUNJIさん、お邪魔します。

観に行かれましたか。羨ましい。

>ミュージシャンではない警察関係者?のような人が、ステージでビンラディンを名指しで非難し、観客がそれに呼応するシーン。

う~ん、やはりそのようなシーンありましたか・・・。でも、政治・思想を前面に出したドキュメンタリーじゃないとわかり安心しました。
新曲「フリーダム」で歌われるメッセージが、どうにも馴染めないので、この時期のポールの姿勢にはどうも共感出来ないのですが。

何はともあれ、DVDで観たいと思います。
色んなミュージシャンの姿が見られるのが楽しみです。

投稿: まったり男 | 2011.12.18 12:17

まったりさん、こんばんは。

>観に行かれましたか。羨ましい。

すみません、ごらんになる前にこんな記事にしてしまいまして・・
でもDVDでコレクションとして持っておくのがよい作品だと思いました。
何度も見直して、もう少し出演者を丁寧に追っていけたらおもしろいでしょうね。

>でも、政治・思想を前面に出したドキュメンタリーじゃないとわかり安心しました。

そうですね、少なくとも自分が感じた範囲では、純粋な音楽ドキュメンタリーでした。
「Freedom」はポールにしてはメッセージ色の強い歌だったかもしれないですね。

投稿: SYUNJI | 2011.12.18 21:30

こんばんは、JTです。

DVDで出ることは知っていたのですが、映画館で上映されることはまったりさんのブログを見るまで知りませんでした。知っていれば見に行ったのですが。

まったりさんも言われていますが、(当時の)新曲「フリーダム」には私も違和感覚えました。「自由に生きる権利の為に戦う」って、それがアメリカ側の言い分?

かつての盟友が作った「イマジン」とか歌って欲しかったです。別のチャリティー番組ではニール・ヤングが歌ってましたが。

投稿: JT | 2011.12.19 00:40

JTさん、こんばんは。

>まったりさんも言われていますが、(当時の)新曲「フリーダム」には私も違和感覚えました。
>「自由に生きる権利の為に戦う」って、それがアメリカ側の言い分?

当時のコンサート会場では多くのニューヨーク市民に支持されていたようですが、後世に残る名曲となりえたかどうかは微妙ですよね。
「イマジン」のほうが純粋に人間愛を歌っていると思います。
確かに「イマジン」をポールが歌ったら、もっと歴史的なライブになったでしょうね。

投稿: SYUNJI | 2011.12.19 21:08

SYUNJIさん、こんばんは。
私もいくつかチャリティーコンサートが開かれていたのは知っていましたが、
マッカートニー主催のものがあったのは今回初めて知りました。

さて、SYUNJIさんの解説はプロ並みで、すっかり映画を観た感じです。
ありがとうございます。

>>音楽の力ニューヨークやアメリカに果たして幸福をもたらしたのか?

もっとも重要なこの点についてですが、

>>音楽コンサートの枠からは決してはみ出そうとはしていない。
>>音楽の力を最も信じているミュージシャン

これに尽きると思います。
思えば、批判も多かったライブエイド。残念ながら、音楽やロックで戦争が
止んだことはありません。しかし、それでもミュージシャンは歌い続け、
私たちファンは、(意識はしませんが)ロックを聴き続けます。いつか、
その思いが一つになるのではと信じて。無意識下で「可能性にかける」
といってもいいかもしれません。
ちなみにライブエイドにはポール・マッカートニーも出演していましたね。

投稿: モンスリー | 2011.12.19 21:51

モンスリーさん、コメント感謝です。

>さて、SYUNJIさんの解説はプロ並みで、すっかり映画を観た感じです。

いやいや、こんな駄文では映画の良さの半分もつたわりませんね。
ぜひDVDでご覧いただければと思います。

>いつか、その思いが一つになるのではと信じて。無意識下で「可能性にかける」といってもいいかもしれません。

そうでしょうねぇ・・
音楽の力だけでは平和を維持するのも難しいでしょうけど、音楽のない世界では生きていけないでしょうね。
多くの人の心を一度に動かすことができるミュージシャンの機動力のようなものに、ファンは様々な思いを期待するのかもしれませんね。

>ちなみにライブエイドにはポール・マッカートニーも出演していましたね。

日本のテレビ放送で映ってましたっけ?
あまりマジメに観てなかったんで記憶にはないんですが・・
記憶にあるのは相変わらず小田和正・・

投稿: SYUNJI | 2011.12.20 23:12

映画を観る気は無かったのですが、なぜか
「内容にふれる記述となりますので、鑑賞前の方はご注意ください」という注意事項には素直に従ってしまい、こちらの記事、最後まで読んでませんでした。
なので、ボウイやボン・ジョヴィが出る事を知らなかった~っ!!
危うく見逃すところでした。
今後はぜひボウイの記載は目立つ所にお願いします(笑)。

>クラプトンが終始落ち着いて「はいはい」と実直に返事をしているのが
>なんだか笑えます。

きゃはは!! ホント、そうでしたね。
ビンラディンのくだりも同感です……。
そして「フリーダム」には違和感が……。

投稿: YAGI節 | 2011.12.27 23:19

YAGI節さん、こんばんは。
YAGI節さんも映画観られたんですね。

>今後はぜひボウイの記載は目立つ所にお願いします(笑)。

ボウイはステージ映像のみの登場でしたね。
自前の曲かと思いきや、サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」を歌ったのは意外でした。

クラプトンはジョージ・ハリスンとの友情は有名ですが、ポールとの関係はあまり伝えられていないように思います。
短いシーンでしたがあの映像を見て、クラプトンにとってポールという人は「ジョージよりも緊張する」相手なのではないかと勝手に思いました。

投稿: SYUNJI | 2011.12.28 23:08

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