聴いてみた 第86回 ベック その2
集英社から刊行された「燃えろ!新日本プロレス」をまじめに買いそろえようかと逡巡するSYUNJIといいます。
この企画、登場まで意外に時間がかかりましたね。
もっと早く出てきてもよさそうなテーマだと思いますが、やはり権利関係とかいろいろあったんでしょうか。
この手の出版物を「分冊百科」「パートワーク」といいますけど、どこの版元も息切れ気味で、盛りはとっくに過ぎてるのですが・・
そのうち「戦え!全日本プロレス」とか出るんでしょうかね。
「叫べ!国際プロレス」とか出たらシブイよなぁ。
そんな元昭和のプロレス少年のあたしが今日聴いてみたのは、スタン・ハンセンの息子ベック・ハンセン。(違います)
「ジェフじゃないほう芸人」ベックのデビューアルバム「Mellow Gold」。
前回「Guero」を聴いていて「Blackhole」が入っていなかったことに逆上し、「こんな会社やめてやる!」と叫んで雪の札幌をさまよう藤波のようにキレ気味に街を散策してユニオンでヤケクソ購入。(わかりにくい)
「Guero」は微妙だったので不安は募るが、「Blackなんとか」を間違えた自分が悪いので仕方がない。
ジャンルやカテゴリーといった概念を超えた新世代ミュージシャン、ベック衝撃のデビューアルバム。
なんといっても個人的には「Blackhole」路線に期待したいところだ。
果たして負け犬リスナーのあたしは今度こそベックの勝間和代になれるでしょうか。(意味不明)
・・・・・聴いてみた。
1. Loser
噂の名曲からスタート。
ヒップホップ調でそれほどインパクトはない。
「I'm a loser baby so why don't you kill me ?」という負け犬な歌詞が退廃的でかっこいいという話だが、訳詞を見ると言ってることはかなり散漫で中二っぽい感じがする。
一部スペイン語やドイツ語を使っている部分もあるようだ。
路線としてはグランジに近いんだろうか?
「あまりにも有名」「衝撃的なメジャーデビュー曲」といったアオリが先行して、冷静な判断がしづらいが、好みからはかなり遠い音。
2. Pay No Mind (Snoozer)
どこか童謡のようなメロディだが、歌声はやはり暗く抑揚のないまま進行。
3. Fuckin' With My Head (Mountain Dew Rock)
この曲はもう少しテンションが高い。
少しいじけたサウンドとシャウトはザ・フーを思わせる。
意外といい感じだ。
4. Whiskey Clone, Hotel City 1997
どろんとしたダレ気味のフォークソング。
ニルヴァーナにもこんな曲があったような気がする。
5. Soul Suckin' Jerk
リズムはけっこうはっきりしているが、歌は基本的にラップだしメロディはあってないような調子。
あちこちにぎゅ~とかびゅううう~とかノイズがあるし、終盤ボーカルがクチビルぶるぶるなアレンジですんごい遊んでいる印象。
6. Truckdrivin Neighbors Downstairs (Yellow Sweat)
冒頭に争い合う男の叫び声が入っているが、演技ではなく実際に争っている場面を偶然録音したものだそうだ。
この曲もボーカルが低ーい声でコーラスが乾いた裏声という、マジメとも思えない造り。
このノリには少し飽きてきた。
でもギターだけはアコースティックの音を大事にしている。
7. Sweet Sunshine
この曲もガヤ系ラップ。
何もかもがゆがんでる。
途中に音を左右に振り回すアレンジがあるが、これはツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」とほぼ同じ。(サンプリングか?)
構成もサウンドもどことなくツェッペリン。
もう少しマジメにやろうよ、ベック・・
8. Beercan
これもヒップホップ系。
夜のナビオ阪急横とか大黒PAにいる兄ちゃんたち(そんなのもういないか?)が好きそうな音楽だ。
だんだんわかってきたが、この人はリズムとギターサウンドはわりと基本に忠実だ。
ボーカルやメロディが少しヒネているんだね。
9. Steal My Body Home
シタールを使ったインドっぽい音に、ベックの抑揚の少ないのたりボーカルがゆっくり続く。
ありきたりな感想になるが、これはビートルズだ。
あちこちにビートルズの曲を思わせる旋律が聞こえる。
終盤で突然アマチュアっぽいコンコンチキな音も加わるが、思いの外静かにフェードアウト。
10. Nitemare Hippy Girl
これもやや退廃的なフォークソングだ。
アルバム全体の中では明るいほうだけど、聴いていてもそれほど楽しくはない。
11. Mutherfuker
イントロは歪んだゲームサウンド。
ここにカート・コバーンのような荒れたボーカル、すさんだ歌詞。
やりたい放題で、ちょっとついていけない。
12. Blackhole
ラストは自分が初めて出会ったベックの名曲。
じょわーんというギターにシンプルな旋律で低く同じ言葉を2度ずつ繰り返しながら歌うベック。
歌詞も他の退廃的な曲とは違い、意味はよくわからないが叙情的な印象だ。
こういう音楽がやれるなら、もう少しこの路線で伸ばしてほしいもんだ。
というか、アルバム全体の雰囲気からすると、なぜこんな曲が収録されているのか不思議。
最後に「Analog Odyssey」というノイズなトラックが入っている。
耳障りだし、少し長い。
仕掛けとしてはビートルズの「Sgt.Pepper's」に通じるものがある。
なのでやってることは案外古いと思う。
アルバムの評価は「Guero」よりも厳しいものとなる。
ヒップホップやラップの色合いが強いし、明るい曲もあまりない。
思ったよりアコースティックギターが好きなようで、そのサウンドは悪くはないが、メロディとしては親しみのわくものとも違う。
聴き慣れていないせいもあるが、やはり雑然とした音にはどうもなじめそうにない。
歌う内容も全く明るくないし、屈折した心の内を皮肉や揶揄に込めて叫んでいるといった感じだ。
しかし。
繰り返すが、「Blackhole」だけは別だ。
この曲だけが自分の好みに非常にマッチしている。
何度も繰り返し聴きたくなる曲だ。
90年代以降のアーチストの曲で、こういった状態になることはかなりめずらしい。
ベックを絶賛するサイトやBLOGは多いけど、「Blackhole」を評価している人は思ったほどいないようだ。
それもなんか不思議な話だが・・・みんなこういうの好きじゃないの?
この先もしベックの他のアルバムを聴く機会があるなら、「Blackhole」と同じ路線の曲だけをつまんで聴くことになりそうである。
というわけで、「Mellow Gold」を聴いてみましたが、「Blackhole」以外はついていけない結果となりました。
他の曲とのあまりの差のありようにとまどいを覚えます。
ベックにこういう「Blackhole」のような音楽性だけを求めるのは間違っているということなんですかね?
3枚目にチャレンジする気力はもうほとんどありませんけど、どこかに「Blackhole」っぽい曲が残っているのであれば、それだけ聴かせてもらおうかと思います。
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