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読んでみた 第35回 ハルク・ホーガン わが人生の転落

今回読んでみたのはあのハルク・ホーガンが書いた自伝の翻訳本である。
タイトルは「わが人生の転落」。
原題は「My Life Out Side The Ring」。
生い立ちからミュージシャンを経てレスラー入門、リング上で絶頂を極めるまでの経緯、映画スターとも競演した華麗な経歴と、離婚騒動・息子の交通事故などの私生活でのダメージ部分を描いた内容である。

Hogan

版元は双葉社、2000円。
共著者マーク・ダゴスティーノ、訳者は森本恵介。
336ページで厚さ3cmの大作だが、4時間くらいで読み終えた。

ハルク・ホーガンが書いた本は実はその昔読んだことがある。
1983年頃の本で、確かタイトルは「プロレス仁義なき大戦争」だった。
すでにブッチャーが書いたとされる本「プロレスを10倍楽しく見る方法」が続編も合わせてけっこう売れたこともあり、当時のホーガン人気にも乗っかってゴーストが書いたものと思われる。
当時はレスラーだけでなく村松友視や栃内良といった作家によって確立された「プロレス本」というジャンル全体に活気があり、よき時代であった。

さて「わが人生の転落」の内容だが、多くの日本人プロレスファンにとっても、あまり知られていないことが多いと思う。
ホーガンがあまり新日本に参加しなくなって以降の話は、相当詳しく追っかけていた人でなければ知り得ない情報だろう。

アメリカでのプロレスに関する話は、日本で人気があったホーガンの姿とは少し違った印象を受ける。
実際たまに本国でのホーガンの試合の映像を見たことがあったが、日本では明らかにファイトスタイルを変えていたことがはっきりとわかる。
これはホーガンに限った話ではなく、ブッチャーもドリーもブロディも、日本に来たら日本人が喜びそうなスタイルに変えていたのだ。

多少残念なのは日本でのプロレス生活のエピソードがほとんどないことだ。
新日本や猪木の名前もほとんど出てこない。
ただ日本で人気があったことを誇りに思っているといったくだりがあるので、ホーガンは日本での活動は気に入っていたようだ。

映画「ロッキー」に出演した時のエピソードは、名作漫画「プロレススーパースター列伝」に掲載されていた話とそれほど違わない。
あの漫画は梶原センセイの演出が多分に散りばめられており、冷めた読者からは「ウソが多い」なんて評価をされていたものだ。
シルベスター・スタローンから「自分を力いっぱい叩いてみてくれ」と頼まれ、75%くらいの加減で背中にハンマーパンチを落としたら、スタローンはそのまま崩れ落ちた。
しかし鼻血を出しながらも立ち上がり、「合格だ」と告げるスタローンのプロ根性に敬服した、と書いてある。
描写は若干違うが、このやりとりは「プロレススーパースター列伝」のとおりである。

本の後半はほとんどがホーガンの私生活のゴタゴタを綴ったものになっている。
読み進むのがつらくなるほどキツイ話だ。
離婚の話なので奥さん側の言い分も聞かないとフェアな判断はできないと思うが、ホーガンの主張どおりの女性だとすると、こういう人と暮らすのは非常に厳しいよなぁ・・・という感想になる。
アルコール依存の傾向もあるようで、息子より若い恋人を作ったりして、ホーガン自身かなり追いつめられていたらしい。
また息子の交通事故は最近(2007年)起きた話で、書かれている限りでは同乗者である息子の友人ジョンは大ケガから再起もしていないようだ。
しかもジョンの父親というのがあまりいい筋の人ではないようで、ホーガンから多額の賠償金をせしめようと息子の生命維持装置をはずしそうとしたりしたらしい。
(後にこの父親は知人を使って妻を殺そうとした容疑で逮捕された、と書いてある)
日本でもこうした苦労を抱える人はいるかもしれないが、やはり出てくる話は病んだアメリカの象徴のような「闇」の部分である。
この二重苦により一時は自殺まで考えたホーガンだが、あるスピリチュアルな本とその著者に出会い、今では精神的に復活途上にあるところと記されている。

ホーガンはブロディほどではないが、自分にとっては好きなレスラーの一人だ。
新日本の放送はあまり見なかったのだが、ホーガン人気が高まるに連れて見るようになっていったという感じだ。
IWGP決勝戦で猪木をKOしたあの試合もテレビで見ており、ホーガンの動きや猪木の倒れる姿、古館の絶叫などは今でも脳内再生がけっこう可能なくらい記憶に残っている。

そんなパワフルかつクールなホーガンが、実はその後の人生でここまで苦悩し追いつめられていたとは全く知らなかった。
かつての多くの人気外人レスラーは、当たり前だが日本ではほぼ全員が「過去の人」だ。
ブルーザー・ブロディ、アンドレ・ザ・ジャイアント、ディック・マードック、アドリアン・アドニス、スティーブ・ウィリアムス、テリー・ゴディ・・・彼らは過去どころかこの世にもいない。
当時と同じようなウェーブは二度とないことを、この本を読み進めるだけでも痛感させられるような気がした。

ホーガンの苦悩と、アメリカの持つ闇の話にかなり気が重くなるが、最後に書かれている、ホーガンが再起に向けて希望を捨てていないことが救いである。
楽しい昭和のプロレスの思い出を持つ日本の人々にとっては意外な内容ではありますが、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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コメント

ハルク・ホーガン、懐かしいですねぇー
懐かしがっている時点でたしかに過去のレスラーだとゆう認識が私の中にあります

記事でも同様に小学生、中学生の時はゴールデンタイムでのプロレス中継(新日本)やってて次の日の学校では
プロレスの話題で持ちきりでしたね
それで一番印象に残っているのはIWGP決勝での
ホーガンのアックス・ボンバーで猪木失神・・・
木村健吾が無理やり猪木をリングに戻そうとする姿が
痛々しかったです・・・

その後は対外国人レスラーよりも
日本人対日本人のマッチメークが多くなったような・・

初めて知ったのですが殺人医師スティーブ・ウイリアムスは死んだんですね、知りませんでした

この記事で確信しましたよ、SYUNJIさんは
間違いなく私と同年齢、もしくは1~2歳前後の同世代の方だと思います・・・(違っていたら非礼をお許しくださいませ)


投稿: ボレロ | 2010.11.20 22:48

ボレロさん、コメント感謝です。

>それで一番印象に残っているのはIWGP決勝での
>ホーガンのアックス・ボンバーで猪木失神・・・

やはりそうですか。
あの試合は今思うと猪木失神のストーリーまではホーガンに伝わってなかったのではないでしょうかね?
自分は馬場派でしたが、猪木のエンターテイナーとしての才覚はすごかったんだなと思います。

>木村健吾が無理やり猪木をリングに戻そうとする姿が
>痛々しかったです・・・

古舘が「猪木は自分でリングに戻ったようにも見えたんですが・・」と実況してましたが、これも当時ファンから「見え透いている」と厳しい評価をされていました・・
いろいろな意味ですごい試合だったと思います。

>初めて知ったのですが殺人医師スティーブ・ウイリアムスは死んだんですね、知りませんでした

昨年末だそうです。
今年は山本小鉄やジョー樋口も亡くなりましたね・・

>間違いなく私と同年齢、もしくは1~2歳前後の同世代の方だと思います・・・

たぶんあたしのほうが少し年上ですね。
70・80年代洋楽とか昭和プロレスなんかを記事にしてるんで、同じ世代の方が見てくれるのだと思います。

投稿: SYUNJI | 2010.11.21 09:57

ども、SYUNJIさん。

自分は、ハルク・ホーガン。
スタン・ハンセンの後で出てきて、アックスボンバーを見て、、もろ必殺技マネジャン、、と思ってみていました。

ただ、強いのは解っているので、イチバーン!のアピールも好きではありました。

でも米に行った後はさすがに試合も見られないし、それほど追っかけるということもなく、今日に至るといった感じですかね。

全く関係ないですが、星野勘太郎も亡くなったニュースが昨日から、、。
どんどん、昭和プロレスが消えていって行きますね、、。

投稿: だいまつ | 2010.11.28 16:17

だいまつさん、こんばんは。

>スタン・ハンセンの後で出てきて、アックスボンバーを見て、、もろ必殺技マネジャン、、と思ってみていました。

まあそうですね。
「プロレススーパースター列伝」では角度の違いなどをホーガンが工夫したような話になってましたが、見てる側としては同じような技でしたね。

>でも米に行った後はさすがに試合も見られないし、それほど追っかけるということもなく、今日に至るといった感じですかね。

おそらく昭和プロレスファンの多くは同じ状態ではないかと思います。
この本を読まなければおそらくその後のホーガンを知ることもなかったと思いました。

>全く関係ないですが、星野勘太郎も亡くなったニュースが昨日から、、。

今朝の新聞で知りました。
ヤマハブラザーズは揃って故人となってしまいましたね・・

投稿: SYUNJI | 2010.11.28 18:10

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