聴いてみた 第76回 プライマル・スクリーム
本日のお題はプライマル・スクリーム。
名前は知っていたがどんなバンドなのかは全然知らない。
「Rocks」という曲だけ聴いたことがあるが、聴いてないという自覚はけっこうあったので、今回「Give Out But Don't Give Up」というアルバムを聴いてみることにした。
もちろんアルバムを聴くのは初めてである。
吉祥寺で中古CDを物色中、パープルの「Burn」とともに購入したのだ。
といっても「今こそプライマルを聴く時が来た!」などといった電波な魂の煽動があったわけではなく、コンビニのレジでハーゲンダッツの期間限定桃バニラアイスのついでにガムを買ってしまった程度のノリしかなかったのだが。
まずはネットの森の中を森ガールのように朗らかに散策し、彼らの氏素性を把握する。
プライマル・スクリームは82年にイギリスの造船の街グラスゴーにて結成。
ボビー・ギレスピーとジム・ビーティーが中心メンバーだったが、ジムは87年に脱退。
またボビーは初期の頃はジーザス&メリー・チェインのドラマーとかけもちしていたこともあったらしい。
ロックを軸にブルース・サイケ・アシッド・テクノ・ハウスなど様々なジャンルを採り入れ、アルバムごとに音楽性もかなり違うようだ。
なおバンド名のプライマル・スクリームとは「原初の叫び」という意味で、抑圧から解放される過程で現れる幼児期の感情のことを指す。
プライマル・スクリーム療法という精神療法があり、ジョン・レノンが受けていたことでも知られる。
抑圧から解放される過程で現れる幼児期の感情って・・よくわからないけど「きぃー!」ってことでしょうか?(よけいわかんない)
「Give Out But Don't Give Up」発表時のメンバーは、ボビーの他、アンドリュー・イネス、ロバート・ヤング、マーティン・ダフィ、ヘンリー・オルセン、トビー・トマノフ。
このアルバムはアメリカ南部の音楽を強く意識した作品であり、ジャケットは南軍旗、サウンドもブルースやファンク中心で、レコーディングもアメリカ南部の都市メンフィスでも行うなど、あちこちにアメリカ南部へのあこがれがにじみ出ているとのこと。
ネットでは案外簡単にこうした情報を得ることができたが、そう言われてもどんな感じの音楽なのか全然想像できない。
頼りは唯一聴いている「Rocks」が(偶然だけど)収録されていることだけだ。
失われた90年代の音楽を求めてさまよったあげく、わずか1曲のみ聴いてることだけでたどり着いたプライマル・スクリーム。
全然読めない横文字メニューの中に、たったひとつだけやっと意味がわかる一語を見つけたような状態ですが、果たしてあたしは無事にプライマル・スクリームを注文することができるでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. Jailbird
構成は比較的まともなノリのいいスタート。
ボビー・ギレスピーのボーカルはどこか粗野で投げっぱなしジャーマンな歌い方。
初期のXTCを思わせるが、それほど聴きづらい感覚はない。
2. Rocks
前述のとおり、この曲だけ聴いたことがある。
これも縦ノリのわいわいソングだ。
けっこういろいろな楽器の音が聞こえる。
バックコーラスとの調和は音声としてはそんなに堅いものではないが、雰囲気は悪くない。
シングルでも発売され、全英7位だったらしい。
3. (I'm Gonna) Cry Myself Blind
静かなアコースティックで始まるバラード。
途中からコーラスもキーボードも参加しての壮大な展開となる。
4. Funky Jam
イントロは絶叫とパーカッション。
女性コーラスとの掛け合い、ホーンセクション、キーボードなどが若干騒々しい。
同じメロディとフレーズが繰り返され、ちょっと飽きが来る。
5. Big Jet Plane
ゆったりのバラードだが音がでかい。
ところどころR.E.M.に似た音がする。
間奏にはサックスも登場。
6. Free
憂いに満ちたサックスとピアノが、どこかワム!の「哀愁のメキシコ」を思わせる。
この曲はボーカルのほとんどを女性が歌っている。
サウンドにそれほど変化や転調がなく、これも徐々に飽きてくる・・と思い始めたところで突然終わる。
7. Call On Me
ドラムがセンター、リードが右、リズムが左という案外オールドな音構成だが、左のリズムギターは途中で突然キレ気味に鳴る。
エンディングのドラムのばたつき感が意外にいい。
8. Struttin'
イントロはビートルズの「オクトパス・ガーデン」のような音だが、本編は全然ほのぼのではなく、テクノ風インストで様々な電子系のノイズっぽいサウンドが続く。
9. Sad And Blue
ちょっとカントリーっぽいギターのけだるいブルースなナンバー。
ブルースハープ?のぶかぶかな音に女性コーラス。
あまり盛り上がりもなく静かにエンディング。
10. Give Out But Don't Give Up
アルバムタイトルにもなっている曲だが、ここまで聴いてきた中で一番ヘンな曲だ。
子供向け洋モノ妖怪アニメのテーマソングのような感じ。
かなりいろいろな音がするが、テープを逆回転させていると思われる、切り刻まれた音が時々差し込まれる。
11. I'll Be There for You
美しいスローバラードだが、6分を超える長さのわりに旋律は思ったより単調でこれも飽きが来る。
間奏のギターやピアノ、味わい深いコーラスなど、いろいろしていただいているのはわかるんだが、あまり普段食べないようなつまみが次々に出てくる居酒屋のような・・
12. Everybody Needs Somebody
ラストも同じ感じのスローバラード。
正直続けて聴くとどこが違うのかあまりよくわからないが、この曲のほうがサウンドはシンプルだ。
エンディングに向けての盛り上がりも正統派だが、終わり方はかなり淡泊である。
終わった。けっこう長い。
的はずれな意見かもしれないが、一通り聴いて感じた点を一言。
これ、ストーンズに似てないか?
ストーンズもほとんど聴いてない自分が言うのもナンだが、サウンドやリズムのあちこちにストーンズを思わせるものが出てくるのだ。
ボーカルはミック・ジャガーほど印象的なものではないが、コーラスの当て方やノリの雰囲気はよく似ていると思う。
この時代の英国バンドであれば当然とも言えるだろうが、おそらくストーンズに強く影響を受けたのではないかと思うのだが、どうだろうか?
プライマル・スクリームは初期の頃はふつうのギターポップバンドだったらしい。
ただしその後の活動での音楽性は非常に多彩で、ブルース・テクノ・ハウス・サザンロックなど、その時点で考えられる新しい要素を次々に導入して成功につなげてきたという。
これだけ様々なジャンルを採り入れていくと、つかみどこころがないという気もするが、柔軟な姿勢が長く売れ続けた要因でもあるのだろう。
感想。
全く合わないわけではないが、好みという範疇にはどうやら入らないようだ。
悪くない曲ばかりだが、他のアルバムを聴いてみようという気にさせるものはなく、案外インパクトはなかった、というのが正直なところである。
プログレやパンクのような聴きづらさはなかったが、「いいなこれ!」と思う曲もなかったのは残念である。
何の気なしに入ってみた画廊で、店の人が絵についてひとつひとつ説明してくれるんだけど自分のイメージとどれも全て微妙にずれていて「そうかなぁ・・」などとつい口にしてしまい、店内の空気が極端に気まずくなった昼下がり・・のような心境。
というわけで、全く予備知識もないまま唐突に聴いてしまったプライマル・スクリーム。
どうやら自分の好みではなかったようですが、もう二度と聴けない・・というほど拒絶感があったわけでもありません。
どちらかというとバラードよりもノリのいいロックに期待したい感じなので、もう少しハードなサウンドのアルバムがあれば試してみたいと思いました。
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