聴いてみた 第74回 レインボー その6
今日聴いてみたのは、レインボーの「Straight Between The Eyes」。
邦題のほうがたぶん有名で、「闇からの一撃」という1982年の作品である。
ジョー・リン・ターナー参加の2作目で、完全にアメリカ市場向けにシフトされたサブプライムでリーマン・ブラザーズなサウンドに仕上がっている。(全然意味不明)
吉祥寺の中古CD店で物色中、安かったので紙ジャケを買ってみました。
さて今回も張り切ってメンバー紹介をしよう。
世界の御大・孤高の麺打ち職人リッチー・ブラックモア、哀愁のボーカリストことジョー・リン・ターナー、爺さんことロジャー・グローバー、大顔面ドラマーのボブ・ロンディネリ、そして新加入キーボーディストのデビッド・ローゼンタール。
ここまで来るとレインボーの楽曲に対する不安は全くない。
序列はあるがどの時代の音も全て自分の好みに合っていることははっきりしており、なぜ発表当時にリアルタイムでアルバムを聴かなかったのか反省することしきりだ。
パープルのほうは未聴盤についてまだ若干の不安が残っているのだが・・
バンドは相変わらずリッチー社長とロジャー専務によって経営されていたようだが、ジョーの加入とともにアメリカでの評価が高まり、セールス的にもたぶん最も成功していた時期の作品である。
果たしてあたしは御大のギターで目の間に一撃をくらうことができるでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. Death Alley Driver
あまりちゃんと聴いたことはなかったが、ものすごいスピード感にあふれたヤケクソナンバーである。
リッチーのギターソロが2部構成っぽくなっていて、前半がカリカリした乾いた音で、後半は少しブルージーな重みを持たせている。
ジョーの声はこの頃が一番伸びがあるように聞こえる。
2. Stone Cold
実はレインボーの歴史の中でこの曲が一番好きである。(変?)
リアルタイムで聴いていたという理由も大きい。
ぶぶーんという重いベース音に暗いころがりドラムとキーボードがからまる不思議なイントロだ。
展開としては結構地味で、ジョーお得意の哀れでもの悲しいお助けボイスなのだが、それがもっとも顕著に現れているのがこの曲なのだ。
リッチーのギターも哀愁漂う暗い音色に満ちている。
エンディングあたりのジョーの「Ice Cold!」というかけ声が印象深い名曲。
3. Bring on the Night (Dream Chaser)
後期レインボーの典型的なアメリカ市場向けサウンド。
ここまでの3曲でジョーの意外な器用さが伝わってくる。
ライブでは観客によるサビの大合唱がお約束だそうだが、そうなるのもよくわかる。
4. Tite Squeeze
ミドルテンポでややどろんとした、フォリナーっぽいリズムと旋律。
間奏部分ではキーが少し低めに落とされ、怪しい雰囲気。
かっちりしたギターソロのパートはなく、リッチーはバックに徹している感じだ。
5. Tearin' Out My Heart
胃もたれ系バラード。
これは結構長いギターが聴ける。
ジョーが時々ボーカルにコブシを効かせるが、不要だと思う。
6. Power
これも後期のアメリカンなレインボーの典型。
このサウンドならやっさんが歌ってもヒットしたのではないかと思う。
ギターソロは主旋律とはちょっと感じが違うが、悪くはない。
7. Miss Mistreated
哀れ系サウンドだが「Stone Cold」ほどの深い悲しみ色はない。
これはしっかりリッチーのギター聴かせ所があるが、少し短いなぁ。
ばしばしドラムが意外に効いていて、タイトな極めができている。
8. Rock Fever
いまいちアカ抜けないタイトル。
サウンドもレインボーでなくても聴けるような音。
ジョーはこういう歌もうまいんだけど、これはやっさんのボーカルのほうがよかったかも。
9. Eyes of Fire
イントロはなんとなく中近東を思わせる不思議な旋律。
「バビロンの城門」に似ているが、音階だけだと、どこかツェッペリンの「カシミール」を連想するのだが・・
リッチーのギターがゆっくりと左右にふれ、乗り物酔いしそうな感覚。
後半の演奏が長く、終わりそうで終わらない状態を繰り返してエンディング。
全体を通した感想としては、特に不満はない。
それぞれの曲単位ではまあいい感じだし、「Stone Cold」のような秀逸曲もある。
Amazonのレビューなんかを見ると、意外に多くの人がこのアルバムを高く評価している。
しかし、印象に残るようなアルバムかというと、これもやや違う。
多くのヒトがそう感じているように、このあたりでレインボーは「それなりに聴かせるアメリカのバンド」っぽくなっているのだ。
吠え系のロニーや金属系のやっさんといった濃すぎるボーカリストはもうおらず、ふつうに歌える哀愁系のジョーがいる。
ジョー・リン・ターナーは好きなボーカリストの一人だが、力量においてロニーややっさんより上だと評価している人は、レインボーのファンでもそう多くはないだろう。
ここから先はやはり好みの問題になる。
サウンドは高い水準にあることははっきりしているが、楽曲自体はレインボーでなくても聴けそうなものもある。
リッチーのギターにしても、思わずフレーズを脳内再生してしまう曲はあまりない。
こういう点が特にロニー時代・やっさん時代のファンにとって不満であろうことは想像に難くない。
続いてジャケット。
目の間からギターネックが突き出ている絵なのだが、これも微妙だ。
この顔はリッチーなのかよくわからないけど、どこかいまいちあか抜けないメタルバンドのようなデザインだ。
上にある「RAINBOW」というロゴにも全然ヒネリがないし。
いかんなあリッチー。
もう少しジャケットにも凝ったほうがいいのでは・・(←偉そう)
前作のほうがまだアートとしては優れていたと思う。
ここから本題。(じゃあ今までは何?)
レインボーは同じメンバーでのアルバム連作が一度もないという一期一会バンドである。
まあこんなことはパープル・ファミリーや他のハードロックにおいてもふつうの話かもしれないが、レインボーと言えばどうしても御大リッチーや三頭体制や歴代ボーカルばかりに光が当たってしまい、他のパートをこなしたメンバーにはほとんどふれてこなかった。
他の人はよく知らないというのが実状なんだが、これでは真のパープル・ファミリー(のモメ事)マニアとは言えまい。
ということでこれまでの慢心を反省し、他のメンバーにも注目してみました。
今回このアルバムを聴くにあたり、ネットでレインボーをいろいろ調べたところ、ドラマーのボブ・ロンディネリは、鍵盤の予備校生ドン・エイリーに相当嫌われていたらしいという情報を私はつかんだのである。(いばってどうする)
「ドンの脱退はボブが原因」というのが、ファンの間では定説になっているらしい。
ボブはこの後サバスにも参加するが、やっぱりトニー・アイオミからクビを切られている・・
実はボブ・ロンディネリのこともあまりよく知らなかったのだが、ジョン・ボーナムの影響を強く受けているそうで、リッチーも「ボブはボンゾのようなドラマー」といった評価発言を残しており、実際ボンゾのように手でドラムを叩いたりしていたこともあるそうだ。
レインボーというただでさえ心休まるヒマのないバンドにおいて、コージー・パウエルの後任という大役をこなすのは相当なプレッシャーだったに違いない。
2009年には「Over The Rainbow」という同窓会ユニットに、ジョーやトニー・カレイとともに参加して日本でも公演を行っている。
ちなみにこの人、「顔がでかい」という評価も多い。
態度がでかいのではなく、物理的に頭部が大きいということだが、「Stone Cold」のシングルジャケットを見ると確かにでかい。
というかおそらく頭蓋骨自体がでかい上に髪型がアフロなので、ロジャー爺さんの3倍くらいの大きさに見える。
今風に言うと響の「みつこ」のような感じでしょうか。(違うと思う)
鍵盤の新入生デビッド・ローゼンタールはクラシックを学んだ経験があり、リッチーの受けもよく、この後レインボーが存続していればバンドでの存在感も増していたはず、という評価が多いようだ。
レインボーの後はスティーヴ・ヴァイやインギーやシンディ・ローパーとの活動記録があり、90年代以降はビリー・ジョエルのアルバムやライブ参加が多い。
ビリー&エルトンのツアーにも毎回参加しており、二人のピアノマンから信頼されるプレイヤーであることがわかる。
デビッドさんの公式サイトを見ると、オバマ大統領の抱擁を受ける写真なんかも載っている。
こうしてあらためてメンバーに注目してみると、やはりレインボーというのは超エリート集団バンドなんだと思う。
ということで「闇からの一撃」。
不満はそれほどありませんが、インパクトもそれほどではなかったというのが正直な感想です。
ただここまで聴いてきて駄作アルバムがないレインボー、さすがというほかありません。
残る2枚の鑑賞を急ぎたいと思います。
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