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使っていた 第2回 ヘッドホンステレオ

懐かしきEMI(Eighty's Music Item:あたしの造語です)シリーズ、2回目はヘッドホンステレオ。
若い方々のために解説するが、約30年前にソニーから「ウォークマン」という名前でカセットテープを聴く超小型の機械が発売されたのどぇーす。(場内赤面)

当時カセットテープは基本的にラジカセやデッキ等の据え置き製品で聴くもので、小型で持ち運べる機種もあるにはあったが、それは大半がモノラルの語学勉強用だったりビジネス向け商品だったりで、いまいちアカ抜けなかった。
「カッパ・ブックス」という新書サイズの本があったが、それと同じサイズのテープレコーダーが70年代に商品化されたことがあった。
「カッパの本が驚いた!」というキャッチでテレビCMもやっていたが、ターゲットはやっぱりビジネスマンだったように思う。
カッパ・ブックス自体があんまし若者向けシリーズじゃなかったし。

これを突破して「部屋以外でもカセットテープが聴ける」商品を開発したのがソニーだ。
それが「ウォークマン」である。
インパクトは相当なもので、多くの若者が頭にオレンジ色のヘッドホンをかけて学校や電車や道ばたでユラユラグルグルするようになった。
商品名であるソニーのウォークマンがあっさりとして定着してしまったため、当時のナウいヤングの会話においてもヘッドホンステレオと呼ぶことのほうが圧倒的に少なかったはずである。
前置きが長くなったが、80年代の音楽シーンを語る上ではラテカセなんかよりもずうっと重要なアイテムだったのがヘッドホンステレオなのである。

あたしも80年代にはさほどナウくもない学生だったのだが、ヘッドホンステレオを手に入れたのはけっこう遅いほうだ。
高校生のうちは買うことができなかった。
単純にカネがなかったのだ。

最初に買ったのはAIWAの「カセットボーイ」という機種。
名前がなんとなくソニーのアレンジというかオマージュというかパクリというか、苦心した様子がうかがえる。
しかもあたしが買ったのは新品ではなく質流れっぽい中古である。

Aiwa1

Aiwa2

今持ってみると驚くほど重い。
録音機能もついているのでなおさらなんだが、これでも当時は画期的商品だと思ってズボンのベルトにくっつけて意味もなく電車の中で聴いたりしていた。
大学1年の夏休みに半月くらい北海道を旅行したことがあるが、その時もテープ15本とともにこの「カセットボーイ」を持っていったことをはっきり覚えている。
根室の安宿でカルチャー・クラブなんか聴いていたなぁ・・

残念ながらオートリバース機能はなかったので、B面(死語)を聴く時はフタを開けてテープをがちゃがちゃと裏返すというあまりイケてない動作を電車内でしなければならない。
(別に電車内に限らないけど)
なので46分テープはあまり外では聴かなかった。

本家の「ウォークマン」を買ったのは、それからさらに4年くらい後だ。
WM-55という当時の最新機種で、秋葉原で丸一日かけて安い店を探し、やっと25000円で買ったのだった。

Sony1

Sony2

色は黒。
今度はオートリバース機能付きだ。
重量は「カセットボーイ」よりもずっと軽い。
しかし電池の持ちがあまりよくなく、しかも電池が減ってくるとテープの回転にモロに影響が出てしまい、間延びした音を毎回悲しい思いで聴いていた。

さらに数年後、パナソニックの製品を買ってみた。
再び中古だが、今度はラジオ付きである。(まだ20代だったのにおっさんくさいチョイス・・)
すでに働いていて日々長時間の通勤なため、ラジオもあったほうが飽きないと考えたのだ。

Panasonic1

厚みはウォークマンの倍くらいあり、かなりゴツイ。
デザインもソニーほど洗練されておらず、テープが終わってPLAYボタンが切れる時、「ばちーん!」と驚くほど大きな音がした。
オートリバースではあったが、逆方向のアジマスがいまいちで、音質にかなり差があった。

Panasonic2

ラジオのほうは朝のJ-WAVEでジョン・カビラの番組なんかをよく聴いていた。
そのうちだんだんとラジオしか聴かなくなり、そう考えたらもっと小型のラジオは別に持っていたので、何もこんなゴツイ機械を毎日持ち歩く必要もない。
さらにカセットテープの音をMDに移し替えることも始めたので、テープ自体を外に持ち出すこともしなくなった。
というわけでこの製品をもって自分の(カセットテープを聴くための)ヘッドホンステレオの歴史は完了したのである。

ヘッドホンステレオは若者に大人気だったので、各メーカーも次々と新商品の開発を行っていた。
特に小型化・軽量化で各社が苛烈な競争を繰り広げたが、常にリードしていたのはやはりソニーだったように思う。
カセットテープのケースと同サイズの商品が出た時は驚愕したものだ。
厳密に言うとカセットテープを入れた時には本体がスライドしてケースサイズよりは大きくなるんだけど、ソニーは「カセットケースと同サイズ」である点を強調して宣伝していた。

その後東芝が「ウォーキー」という名でテープのケースよりも小さい本体の商品を出してきたことがあった。
本体内にテープを格納して音を聴くのが最低限の条件だったのだが、東芝はテープの一部が本体の外に出ている状態で音を聴かせることを許す商品を開発したのだ。
さすがに小型化とはいえテープの一部がムキ身で本体の外に出ているのはどこか不安な感覚があり、この商品はそんな「やりすぎ感」のためかさほどヒットはしなかったと思う。

ということで、懐かしくそして切ないヘッドホンステレオ。
歴代のヘッドホンステレオを全て捨てずに持っている自分も果てしなく貧乏性だが、いちおうどれも電池を入れると動くようだ。
あらためて日本の製品の優秀さに感動しますね。
i-Pod全盛の現在、電車の中でこんな機械でカセットテープをヘッドホン(色はオレンジ)をつけて聴いているおっさんがいたら、かなり注目されるような気がするなぁ。
今でも使っている人はいらっしゃるんでしょうか?
みなさまの使用履歴をお知らせいただければ幸いです。

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コメント

あけましておめでとうございます、JTです。
今年もよろしくお願い致します。

SYUNJIさん、物もちがいいですね、びっくりです!
しかも全て完動するとは!!素晴らしい。

AIWAの「カセットボーイ」、大学のサークルの先輩が持ってました。バンドの練習を録音していました。その音質はかなり厳しいものがありましたがそれなりに重宝していました。

さて私の使用履歴はSONYの二代目「ウォークマン」からスタートします。初代と比べるとかなり小さいサイズで発売された時はびっくりしました。付属品に単一電池用のバッテリーパックが付いていてかなり不格好ですが、電池が長持ちするので本体の単三電池よりもそちらを愛用していました。

その後、リバース機能付きウォークマンやレコーディングウォークマンなどオールSONY製で4台程購入しました。

それらは最初に購入した二代目以外は最終的には動かなくなりました。最近のメモリー携帯オーディオプレーヤーと比べると機械部分が多く、持ち運ぶとどうしても故障しがちでした。

結局、全て破棄しました。
カセットテープもラジオだけで放送されたライブ音源を録音したもの以外は破棄してしまいました。

使用履歴はこんな感じです。

投稿: JT | 2010.01.04 22:48

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

カセットボーイとウォークマン、無茶苦茶キレイですね。新品みたい~!!

ちなみに私のヘッドホンステレオデビューはシャープ機でした。
ラジオのみならずテレビ音声も入り、録音も出来、グライコも付いているという当時としては画期的な夢のような機種でしたが、3日で壊れ、修理後も調子が悪く、良い思い出が全くありません。
「目の付け所はシャープなんだけど、技術が追いついていないのでは?」という偏見を持つようになってしまいました。

その後ウォークマン派になりました。頑丈でした。落として欠けてもちゃんと音が鳴りました。

なんか、ウォークマンへの信頼がその後のAV機器選びに多大な影響を及ぼしているような気がします。
VAIO使いの私ですが、あのヘッドホンステレオが壊れなかったら、今頃私はメビウスやAQUOSを使っていたのかも……。

投稿: YAGI節 | 2010.01.05 18:42

SYUNJIさん、お邪魔します。

音楽好きにはたまらないアイテムだったSONY「ウォークマン」は、音楽しか趣味がないような私には、通勤や散歩時には欠かせない物で、形式は覚えていませんが、約10年間で合計3台使用していました。
最後のヤツは、つい数年前まで現役でカセットテープを聴くために使用していました。
他のメーカーの類似商品よりも、明らかに音が良かった・・・そんな記憶が残っています。

CD時代になり、持ち運び出来るポータブルCDプレーヤー?のおかげでカセットの「ウォークマン」とは別れることになったわけですが、携帯音楽プレーヤーの登場で、また「ウォークマン」シリーズに戻って来た私です。

懐かしいです。

投稿: Junk | 2010.01.05 18:48

SYUNJIさん、こんばんは。
EMIは東芝が株を売り払ってしまいましたが、
まだ東芝傘下のときは、紙ジャケは高い、CCCDを
平気で売る暴挙、ということで勝手に「暴芝」と
呼んでいました。

さて、ヘッドホンステレオですが、まず驚いた
のが、こちらに掲載されている画像がよく残って
いたなあということです。私は家電量販店でアルバイト
をしており、ヘッドホンステレオの進化を目の当たりに
しました。小型化競争が主でしたが、小型化に逆行
する恐竜的進化を遂げたものもありました。

私の場合、父がウォークマン出始めの頃に録音タイプ
を購入してそれを使わせてもらっていました。その後、
バイト先で画期的な「ガム型乾電池」を搭載した
オートリバースタイプを購入、これを長く使いました。
昔の製品は頑丈だったのか、思いもよらず長持ちし、
多分8年くらいは使ったと思います。

>>根室の安宿でカルチャー・クラブなんか聴いていたなぁ・・

おお、根暗の友よ! 私も同じで、北海道一人旅のときは
ウォークマンがお伴でした。もっていったカセットは、
ベリンダ・カーライル、ドゥービー、ドン・ヘンリー、
ボストン、オフコースなどなどでした。

投稿: モンスリー | 2010.01.05 21:22

JTさん、明けましておめでとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。

>リバース機能付きウォークマンやレコーディングウォークマンなどオールSONY製で4台程購入しました。

やはりSONY製をお使いでしたか。いいなぁ。
あたしもレコーディングウォークマンが欲しかったんですが、中古でも値がはる商品だったんで買えずじまいでした・・

>最近のメモリー携帯オーディオプレーヤーと比べると機械部分が多く、持ち運ぶとどうしても故障しがちでした。

確かに持ち運ぶとどうしても落とす・ぶつけるなどのリスクは高くなりますね。
先日電車の中でipodを落として足で踏んでしまって涙目になってる若者がいました・・

YAGI節さん、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

>カセットボーイとウォークマン、無茶苦茶キレイですね。新品みたい~!!

実物はさすがに新品とまではいきませんが・・
まあ状態はいいほうだと思います。

>ちなみに私のヘッドホンステレオデビューはシャープ機でした。

シャープ製って、確か名前は「Mr.Joycasse」でしょうか?
「テレビ音声も入り、録音も出来、グライコも付いている」ってのはスゴイ機能ですね!

>なんか、ウォークマンへの信頼がその後のAV機器選びに多大な影響を及ぼしているような気がします。

あーわかる気がします。
SONY製を好んで使っていた人は多かったと思いますね。
自分はSONY製品は全然買えませんでしたが、常にどこかであこがれの感情を持っていたことは確かです。
ちなみにシャープの液晶が好きだったので、メビウスは3台くらい使いました。

Junkさん、コメント感謝です。

>約10年間で合計3台使用していました。

3台ともSONY製ということでしょうか?
やはり人気あったんだなぁ。

>最後のヤツは、つい数年前まで現役でカセットテープを聴くために使用していました。

なるほど・・
さすがに今カセットテープを電車の中で聴いてる人はもう見かけませんね。

>CD時代になり、持ち運び出来るポータブルCDプレーヤー

これ、最初の頃の機種を持っています。
SONY製の「ディスクマン」という名前ですが、10年くらい前まで使っていました。

モンスリーさん、コメント感謝です。

>バイト先で画期的な「ガム型乾電池」を搭載したオートリバースタイプを購入、これを長く使いました。

あ、ガム型電池は今もポータブルMDプレイヤーで使用しています。
ただこのガム型電池、最近は量販店でもほとんど売ってませんね。

>昔の製品は頑丈だったのか、思いもよらず長持ちし、多分8年くらいは使ったと思います。

それはスゴイですね。
今のデジタルオーディオプレイヤーはそこまで持つのだろうか・・
充電池とHDDが8年も持つとも思えないけど・・

>もっていったカセットは、ベリンダ・カーライル、ドゥービー、ドン・ヘンリー、ボストン、オフコースなどなどでした。

渋いラインナップですね。
なぜオフコースを混ぜる?(笑)
北海道って旅行すると移動時間が長いから、カセットがないと退屈なんですよね。
雄大な景色とともに聴くと、ボーイ・ジョージの声も叙情的に聞こえたもんです。(錯覚?)

投稿: SYUNJI | 2010.01.05 23:49

ども、SYUNJIさん。

自分は高校生のころ、修学旅行に行くときにウォークマンを買いました。高かったなー。当時2万円。
でも何ヶ月か使った後に、学校で盗まれました、、。

本当に残念で、、。
で、高校を卒業して、ポータブルCDを買ったんですが、それほど使わなかったですね、、。通勤時間が短いというのが多分理由でしたし、ステレオで聞くというのが何よりも楽しみでした。

今でもソニーのことが嫌いにならないのは、やはりウォークマンの存在が大きいと思います。
子供のころ、欲しいものの筆頭でしたね。
今の子供たちはipod、、かな?DSとかPSPの方がメインかな?
音楽産業が売上が立たなくなってきたのは、昔ほど音楽の需要が若年層で希薄になってきたようなそんな気がします、、。

ちなみに今日は、メモリー型のデジタル音楽プレーヤーを聞きながら結構な距離を歩いて買い物に出かけました。やはり退屈しないし、カサばらないしで、技術の進歩というのはいいものだと実感しますね。

投稿: だいまつ | 2010.01.08 19:33

自分もAIWAが最初どぇーす
後にウォークマンを手に入れたところもいっしょだぜべいびー

・・・

それにしてもSYUNJIさん物持ちがいいですねぇ。自分は古いものをドンドン捨てていくほうなので、愛用していた古い電化製品などほとんど残っていないもの。

ところでいまでもiPod使ってないの?

投稿: ルドルフ | 2010.01.09 07:11

だいまつさん、コメント感謝です。

>でも何ヶ月か使った後に、学校で盗まれました、、。

えええ~?!
それはひどい話ですね・・2万円もしたのに・・

>音楽産業が売上が立たなくなってきたのは、昔ほど音楽の需要が若年層で希薄になってきたようなそんな気がします、、。

そうですねぇ・・
音楽も出版もそうなんですが、若者にどうすれば買ってもらえるのかが課題ですね。
そうこうしているうちに小子化でますますパイは小さくなってるし・・

>やはり退屈しないし、カサばらないしで、技術の進歩というのはいいものだと実感しますね。

同感です。
今のMP3プレーヤーはCD100枚分が入っていますが、やはり便利ですね。

ルドルフさん、コメント感謝です。

>自分もAIWAが最初どぇーす

最近あたしのBLOGはかなり「ひょうきん族」に回帰してる気がします。
たわむれに「どぇーす」をGoogleで検索したら(すんなよ)、結構堂々と使ってる人がいた・・

>ところでいまでもiPod使ってないの?

使ってません・・
Mac挫折ユーザー兼反アップル連合神奈川支部長代理補佐なので・・(どうでもいい)
正月にたまたま銀座のアップルストアに行ったんですが、iPod製品に驚くほど無感動だった自分がいました・・

投稿: SYUNJI | 2010.01.09 10:22

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