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観てみた アンヴィル!

自分はめったに映画を観ないのですが、久しぶりに観たいと思った映画があったので、吉祥寺まで出かけました。
観たのは「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」。
メタルバンドのアンヴィルを追ったドキュメンタリー映画です。

Anvil

この映画のことはテレビCMで知ったのですが、バンドとしてのアンヴィルは全く知りませんでした。
メタル全般にうといので当然かもしれませんが、もしアンヴィルを知っていたら、映画の感想もかなり違っていたはずです。

アンヴィルはカナダ人のリップス(G・Vo)とロブ(D)が73年に結成したバンドで、82年に「メタル・オン・メタル」という曲がヒットし、メタリカやスレイヤーなどのメタル・バンドに大きな影響を与え、84年に日本で行われた「スーパーロック84」というメタル系イベントにも出演したそうです。
・・・すいません、全く知りませんでした。
なので「聴いてないシリーズ」でも当然採り上げてません。

さて吉祥寺。
バウスシアター」という映画館ですが、ここで映画を観るのは初めてです。
日曜日の初回上映を観たのですが、客の入りは100人以下でした。
年齢層としては30代から40代で、あまり若い人はいないようです。
こういう「洋楽」「メタル」といったテーマに反応するのは、やはり80年代に10代だった世代だよなぁと、元10代のおっさんは痛感。
ポスターには「マイケル・ムーアやダスティン・ホフマンが絶賛」などといったアオリが書いてあります。

以下、映画の内容にふれる記述がありますので、未鑑賞の方はご注意下さい。

・・・・・観てみた。

80年代の栄光の後、全く売れなくなってしまったアンヴィル。
映画はその売れない彼らの、音楽ではない仕事をしているところから始まります。

ボーカルのリップスはカナダで給食の配達の仕事をしながら、いつか再びスターになることを夢見て音楽活動も続けています。
ドラムのロブは建築現場などで働いています。
地元では根強いファンもいて、ライブでは客は少ないながら盛り上がったりもするのですが、過去の栄光とは比較にならないほどの売れなさぶり。

ある日、昔アンヴィルのファンだったという女性からのメールがきっかけで、彼女をマネージャーとしてなんとかヨーロッパにツアーに出ます。
しかしこのマネージャーはやはりド素人で、列車に乗り遅れたりギャラが支払われなかったりで、報われない日が続きます。

またあるロックフェスの会場で、かつて競演したマイケル・シェンカーやカーマイン・アピスを見つけ、親しげに話しかけるリップス。
しかしほとんど相手にされません。

それでもアンヴィルは活動を続け、売れていた時のプロデューサーであるクリスにデモテープを送ります。
ここから事態は少しずつ動き始め、クリスの提案で新しいアルバム制作が始まります。

アルバム制作にはカネがかかるため、工面に困ったリップス、地元のファンのつてで電話でのやや強引な商品売り込みの仕事などもしてみますが、実は生来の生真面目さが災いして全然うまくいきません。

リップスの姉が出資してくれることが決まり、アンヴィル13枚目(!)のアルバム制作にとりかかるのですが、リップスとロブが衝突したり、大手レコード会社からは発売を断られたり、まだまだ苦難は続きます。

そして2006年、日本でのロックフェス「ラウドパーク06」出演が決まります。
ステージにあがるまでの緊張と不安、それを見事に吹き飛ばす満員の幕張メッセ。
日本でのライブが成功し、リップスとロブが渋谷の街を見渡すシーンで映画は終わります。

強く感じたのは、リップスもロブも非常に実直だということです。
二人とも家族をとても大切にしていますし、まじめで誠実な人たちです。
メタルバンドのメンバーとしてはかえって弱点なんじゃないかとも思うのですが、彼らの表情や発言から、そんな人柄がにじみ出ていました。

実直な二人ですが、対照的でもあります。
リップスは直情型で感情をさらけだしまくり、50歳をすぎてなおロブと大ゲンカをし、その後泣いて謝るという、わりとわかりやすいタイプに見えます。
一方ロブは冷静沈着で、様々な苦難にも動じず、普段は絵を描くことが好きという物静かな性格。
彼らの際だった性格の違いも、またそれが故の固い絆も、見所のひとつです。

映画の見方としては決定的に間違っているとは思いますが、一番感じたのは「フィクション感」でした。
ドキュメンタリーなのですが、リップスもロブも、その他の人たちも、役者が演じてるんじゃないかと思うような場面ばかりです。
まあ欧米人の会話は日本人よりもハデですし、なによりアンヴィルの二人はロック・ミュージシャンです。
ミュージシャンは一般人よりは多少演出がかった態度や発言が多いのでしょうけど、「これホントに台本もなく普段からこんなダイナミックな会話をしてるのか?」と思いました。

このフィクション感は初めから終わりまで変わりませんでしたが、理由のひとつにカメラワークがあることに気づきました。
とにかく映像が安定していて、ドキュメンタリーならではの見づらさというか、フレームの揺れとかブレとかピンぼけとか画面の暗さや汚れなどがあまりありません。
むしろそうした映像の「難」な部分こそが、臨場感に満ちたドキュメンタリー映画そのものなのですが、この映画はそれがないのです。
映画に関してはド素人なのでよくわかっていませんが、撮影技術が高いということなのでしょうか。
観ているうちについドキュメンタリーであることを忘れそうになります。

逆説的ですが、自分はフィクションよりもドキュメンタリーを圧倒的に好むタイプです。
小説は全く読みませんし、ルポルタージュやエッセイばかり読んでいます。
そういう意味では、役者ではないアンヴィルが、台本のない人生を驚くほど情熱的に演じている、このフィクション感に満ちたドキュメンタリーこそが、自分にとって理想のドキュメンタリー映画であると言えるでしょう。

監督はその昔アンヴィルのファンでローディ見習いだったサーシャ・ガバシという人ですが、スピルバーグ映画の脚本家だそうです。
2年に渡って彼らを追い続けた映像ですが、もちろん撮り始めの頃は20年以上売れてないままのアンヴィルだったわけで、ラストでのアンヴィルのライブ成功をわかっていて撮っていたはずもない。
スクリーンからはそうしたガバシ監督の「執念」も伝わってきます。
ガバシ監督もまた間違いなく「夢を諦めきれなかった男たち」の一人です。

リップスの発言は苦労を重ねただけあって重みのある言葉が多いのですが、終盤の言葉が印象に残りました。
「音楽は永遠に残るものだ。借金もそうかもしれないが・・」

アンヴィルの13枚目のアルバム、日本ではソニー・ミュージックよりCDが発売中だそうです。
劇中の彼らの曲そのものは自分の好みからはかなり遠い音でしたが、少しだけ聴いてみたくなりました。

映画を見終わって外に出た時、次の上映を待つ人がすでに50人くらいいました。
その光景を目にした瞬間、なぜかうれしくなったのが自分でも不思議でした。

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コメント

ボン・ジョヴィがニューアルバムのプロモーションで来日した時に木村拓哉さんと共演していたので、こぼれ話でも聞きたいと思い、木村さんのFMを聴いてみたのですが、そこでアンヴィルを超絶賛していて驚きました。今頃女の子が映画館に殺到しているのではないかと思いましたが、そうでもないのかな。

私も観たいんですが、目星を付けた劇場では時間帯が悪く、迷ってました。
でも、見終わった後、好みとは遠い音にもかかわらず聴いてみたくなっちゃうなんて、かなり魅力的な映画だったという事ですか?
う~、やっぱりちょっと無理してでも行ってみようかな。

投稿: YAGI節 | 2009.11.14 23:34

Pさんの遺志を受け継ぎ、映画ブログを開始するSYUNJIさんの姿勢に涙するルドルフです。

アンヴィル・・・名前だけは聞いたことがあるかも。てか、ヘヴィメタの世界って、Aはじまりのバンドが多いんですよね~。アルカトラズとかアンスラックスとか・・・正直どんな音かわかりませぬ。

この映画は・・・あまり見たくないかも(爆)

でも、この映画がチョイとでも流行ると、似たようなやつが次々に作られるかも、って気がします。だって、世の中にはちょっと前までのアンヴィルみたいな(食えない)アーティストがごろごろいるでしょうから

投稿: ルドルフ | 2009.11.15 06:57

YAGI節さん、コメント感謝です。
世間ではマイケルのドキュメンタリーのほうが圧倒的に話題になってますが、あたしはこっちにしか興味がわきませんでした・・

>今頃女の子が映画館に殺到しているのではないかと思いましたが、そうでもないのかな。

吉祥寺では殺到ではなかったですね。
女性の割合は3割くらいでしょうか。

>私も観たいんですが、目星を付けた劇場では時間帯が悪く、迷ってました。

自分も横浜か川崎か六本木かいろいろ迷いましたが、日中に観られる吉祥寺にしました。
映画にはスラッシュやメタリカ・アンスラックスのメンバーなどもインタビューで登場してますので、YAGI節さんならきっと楽しめると思います。

ルドルフさん、コメント感謝です。
P先輩のようにトラックバックが殺到してないところがあたしのBLOGのイケてない部分です。
(本当は全部イケてない)

>アンヴィル・・・名前だけは聞いたことがあるかも。

そうですか・・
まあ「アンヴィルの曲がいいのでどんどん聴いてね的プロモ映画」ではないので、全く知らないあたしでも楽しめました。
フルコーラスで流れた曲はありません。

>似たようなやつが次々に作られるかも、って気がします。

同感です。
でもラストが成功してる映像でないと成立しないでしょうね。
あとあまりにもセールスのニオイがする映画だと共感を呼ばないんで、そのあたりは難しいでしょうね。

投稿: SYUNJI | 2009.11.15 09:58

SYUNJIさん、こんにちは。

ちょっと前にラジオを聴いていたら、聞いていた地元番組のDJがえらくこの映画を押すのです。
また他の番組でもDJ(もちろん別人です)が推薦していました。
それで、このバンド&映画の内容を知って興味が出た私です。でも、観に行かないだろうな・・・人混み、インフルエンザ怖いし。(臆病者)

ちなみに、アンヴィルというバンド、全く知りませんでした。
ラジオで曲が流れて初めて聴きましたが、私の耳には普通のヘヴィメタのサウンドでした。(ファンの方すいません)

投稿: Junk | 2009.11.15 12:03

Junkさん、こちらにもコメント感謝です。

>ちょっと前にラジオを聴いていたら、聞いていた地元番組のDJがえらくこの映画を押すのです。

なるほど・・多少宣伝という意味もあるかもしれませんね。
ただ、映画はメタルに興味がない方でも楽しめますよ。
あたしもおすすめします。

>ラジオで曲が流れて初めて聴きましたが、私の耳には普通のヘヴィメタのサウンドでした。

同感です。
ただ80年代当時他のバンドからは「衝撃的だった」「負けたくない」などと思われていたようです。
もう少し彼らのサウンドを映画の中でも紹介してくれてもよかったかなと思いました。

投稿: SYUNJI | 2009.11.15 17:37

SYUNJIさん、こんばんは。
アンヴィル、全く知りません。

>>「スーパーロック84」

これは当時のミュージック・ライフ誌でも取り上げ
られていましたので、うっすらと覚えております。
確か、マイケル・シェンカーやボンジョビが出演
していたと思いますが・・・・。

>>日曜日の初回上映を観たのですが、客の入りは100人以下でした。

私は毎年ドラえもんを観に行っていますが、地方劇場の平日
最終回、観客は私を含めて数名です。こんなんでドラえもんが
存続するのか、非常に心配です。

投稿: モンスリー | 2009.11.15 17:58

モンスリーさん、こんばんは。

>確か、マイケル・シェンカーやボンジョビが出演していたと思いますが・・・・。

そのようです。
出演順にアンヴィル、ボン・ジョビ、MSG、スコーピオンズ、ホワイトスネイクが参加した西武球場でのライブです。
調べたらこの時MSGのボーカルはレイ・ケネディでした・・

>私は毎年ドラえもんを観に行っていますが、地方劇場の平日最終回、観客は私を含めて数名です。

うーん・・少子化や不況などいろいろ理由はありそうですが、映画館でドラえもんを観る、ということがイベントとして成立しづらくなっているんでしょうね。
テレビやDVDの普及もあるでしょうし・・

情けない話ですが、映画館で映画を観るという行為に慣れていないので、見終わった後は頭痛がひどかったです。

投稿: SYUNJI | 2009.11.15 23:00

ブログをココログで復活させようと考えたら、IDを忘れてしまい、放置プレイになってしまったぷくちゃんといいます。カナさんと今週土曜日に会います。ああ、ゲッツともいつか会いたい。(←だらだら長い)

さてこの映画、話題になっていました。もちろん私のような地方在住のものにとっては、ハードルが高いのですが、このような記事を書いてくれて、非常に助かります。私のあとを継いで、映画ブロガーになってくれるのですね・・・・・

投稿: ぷくちゃん | 2009.11.16 10:27

毎回「eclipse的な独り言」のブックマークをクリックしては落胆するSYUNJIといいます。
おまけにカナさんと会うだと?
きぃー!!そうですか・・また世界の山ちゃん?
ではカナさんに伝言お願いします。
・・年賀状本のスキマに、5冊に1冊くらいでいいんでウチの本もまぜて平台に並べておいて下さい・・(←自分で言えよ)

さて映画のほうですが、静岡は年明け公開のようですね。
ぜひご覧下さい。そしてBLOGも復活!!
先輩のマネしていろいろ書いてみましたが、どなたからもTB来ません・・
たまに来たと思ったらエロトラだし・・
映画BLOGはあたしにはムリですね・・

投稿: SYUNJI | 2009.11.16 22:41

今日も東京出張のゲッツです。日帰りですけど。

Pさんからのラブコールに応えたいのですが、静岡に行くのはなかなか難しいです。やはり、東京に泊まる時にお互い都合が合わないと実現しそうにないです。その時には、SYUNJIさん媒酌人をお願いしますね。

さて、この映画、全然知りませんでしたが、この記事を読んで是非見てみたいと思いました。ドキュメンタリーとフィクションの違いはありますが、以前お勧めしたミッキー・ローク主演の「レスラー」と同じにおいを感じました。衰退している業界で夢を見ている男たちの映画という点で同じですからね。

でもって、劇場情報をチェックすると、高松での予定はないじゃあ~りませんか。大阪出張も多いので、大阪で見ようかな。

Pさんの意思を引き継いで、映画ブロガーとして紙面を飾るべくがんばってください。

投稿: getsmart0086 | 2009.11.17 18:46

ゲッツさん、こんばんは。
また東京出張ですか、お忙しそうですね。

>やはり、東京に泊まる時にお互い都合が合わないと実現しそうにないです。

そうですね、ゲッツさんに合わせますので、ぜひご連絡を。
先輩は銀座が好きみたいですから・・

>この映画、全然知りませんでしたが、この記事を読んで是非見てみたいと思いました。

あーそれはよかった、こんな駄文でも伝わるならうれしいです。ぜひご覧下さい。
岡山や松山でも上映するようですね。

>Pさんの意思を引き継いで、映画ブロガーとして紙面を飾るべくがんばってください。

あの方のような資金も根性もないあたしには映画BLOGはムリだなぁ・・
当面は麺類BLOGで行きます・・

投稿: SYUNJI | 2009.11.18 23:26

トラックバックがうまくいかないのでコメントにて失礼。

本当によくできた映画でした。自分の文中でも言いましたが、映画に取り上げられるロックミュージシャンなんて数少ないので、こうやって取り上げられた彼らは「成功」したように思えます。

投稿: ぷくちゃん | 2010.01.11 17:02

ぷく先輩、コメント感謝です。(チャット状態)
おすすめした映画が気に入ってもらえて、しかもBLOG再開!!
今年はいい年になりそうです。

>映画に取り上げられるロックミュージシャンなんて数少ないので、こうやって取り上げられた彼らは「成功」したように思えます。

これがふつうに売れてるミュージシャンだと単なるドキュメンタリーですが、全然売れてない彼らを2年も追った監督やスタッフの執念がすごいですよね。
彼らの音楽も少し聴いてみたくなりました。

投稿: SYUNJI | 2010.01.11 17:10

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