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聴いてみた 第70回 レッド・ツェッペリン「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」

池袋・秋葉原・中野を「東京の三大オタク聖地」と呼ぶそうだが、実は一度も行ったことがないのが中野だった。
別に池袋も秋葉原もオタク目的で行ってるわけではないのだが、中野は仕事でもプライベートでもこれまでの生涯で用事が全くなかった街である。
首都圏に長く住み、都内の学校や会社にも長いこと通っている人間としては、結構めずらしいパターンかもしれない。
聖地後楽園ホール・・じゃなかった中野ブロードウェイとはどんな場所なのか?
なぜか突然そんな思いに導かれ、今回初めて中野に足を踏み入れる決意をした。

さて中野。
そびえるサンプラザを横目に、駅北口より実直に聖地ブロードウェイを目指す。
初めて入った中野ブロードウェイは、大阪の梅田駅南側の雰囲気によく似ていた。
まんだらけもあったが、今日の目的はあくまで中古CDである。
レコミンツ」という中古CD店が目的地だ。
店はそれほど広くないが、洋楽は80年代以前と90年代以降でフロアが分かれており、これはかなりわかりやすい。

狙いはズバリ、ツェッペリンの「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」である。
何枚か在庫があったが、紙ジャケで汚れありの一番安い380円(!)を購入。
音が聴ければいいので、紙ジャケだろうが汚れだろうが全くこだわりはない。
実際どこが汚れなのか、買った後も未だにわからない。

Inthrough

これでツェッペリンのオリジナル盤の全盤制覇を達成できることになる。
CD購入も「III」「IV」「聖なる館」「プレゼンス」「CODA」に続く6枚目だ。
こんなに買いそろえることになるとは驚きである。
そもそもそんなにCDを持ってるほうじゃないんだが、同一アーチストで6枚も持つというのは自分にとっては最も多い枚数だ。
(変なライブ盤もいくつか持っているので、実際には8枚くらいある)

最初に「IV」を聴いたのが89年頃なので、ツェッペリンデビューはこの歳にしては大変遅いほうだ。
しかも結局全盤制覇に20年もかかってしまった・・
「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」、果たして有終の美を飾るにふさわしいアルバムなのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. In The Evening
長く静かなイントロのあとタイトル・コールで曲が始まる。
楽曲は比較的まともな構成。
プラントの声は残念ながらやはり後期の痛んだ後のものだが、力強さだけは復活している。
途中ペイジのギターががたがたとひっかかるような音を出している。

2. South Bound Suarez
楽しそうなリズムだがメロディはやはり怪しいZEPのものだ。
ペイジのギターはやや騒々しい感じがする。
この曲のプラントが一番声がダメ。

3. Fool In The Rain
ほのぼのオクラホマなフォークダンス調のリズム。
だが、間奏になると一転サンバに転調。
試みとしてはおもしろいが、各パートにいまいちまとまりを感じない。
サンバ展開も少しムリがあるように思うし、終盤のびりびりギターサウンドもツェッペリンならではの怪しい調和ではない。

4. Hot Dog
今度はスピード感のあるカントリー風ナンバー。
意外にこのサウンドにプラントのボーカルがマッチしていて、これも試みとしてはおもしろいんだが、ペイジのギターがリズムにどうもついていけてないように聞こえる。

5. Carouselambra
終始サウンドを支配し続けるのはキーボード(シンセサイザー?)。
「ぱーぱぱーぱぱーぱーぱぱーぱぱー」という今ひとつ安い音は、80年代のミーハーな洋楽の香りがする。
間奏でやっとペイジのギターが登場しテンポが下がっていく。
かつてのツェッペリンの得意な構成とは逆の展開である。
転調して再びリズミカルなシンセ音。
終盤はジェフ・ベックの曲のようにも聞こえる。

6. All My Love
悲しげなブルースだが、サウンド面ではキーボードとギターが対等に鳴っている。
いい曲ではあるが、プラントのボーカルに今ひとつチカラが足りず、惜しい気がする。

7. I'm Gonna Crawl
ラストは重いブルース。
ようやくペイジのギターが主導する曲が登場、という感じ。
プラントは思ったより声が出ていて力任せに絶叫するが、やはり前期のような鋭さはもうない。
やがて淡泊にエンディングを迎え、これでツェッペリンのオリジナル・アルバムは終了である、と思うとどこかわびしい気持ちになる。

「プレゼンス」で原点回帰を果たした彼らだが、このアルバムでは再び拡張散漫路線に戻っている。
サンバやカントリーなど、いろいろやりたかったのはわかるが、自分がこのバンドに求めていた路線やサウンドとはやはり違う。
あちこちに聞こえるシンセやキーボード音は思ったほど悪くはない。
が、楽曲としての一体感はそれほど強くはないように思う。

聴いてみて「けっ、なんじゃこの曲は」というのがないのはさすがツェッペリンだとは思う。
ただしはっきりと「これは好きな曲」という指定もできない。
「聖なる館」もそうだが、プラントの声がダメな分、自分の評価は厳しくならざるを得ないのだ。

評判どおりジョン・ポール・ジョーンズ大活躍のアルバムだが、背景としてはペイジとボンゾがクスリでよれよれ・プラントも前の年に子供を亡くして若干ひきこもりという、三人とも本来のチカラを全然出せない状態だったため、ジョーンジーが主導せざるを得なかった、ということのようだ。
「Hot Dog」のペイジのギターはファンからも評判が悪いらしいが、確かに商用としてはギリギリな音もあるような感じだ。
違う意味で聴いていて緊張するし、「この音ってもしかして、やっちまった?」というクールポコ状態にさせられる部分が確かにある。
本人たちももちろんこれでスタジオ盤は最後、と知っていて作っていたわけではないので、「まあ次がんばろうか」くらいに考えていたんだろうか?
アルバム制作において、時間もお金も「プレゼンス」よりもかかってはいるらしいが・・

ジャケットは場末の酒場にバーテンや刑事や娼婦が登場する、映画のシーンを切り取ったような光景である。
同じ場所と人物を、方向を変えて撮影した6パターンが存在し、LPの時代では茶色い外袋のため、買って開けるまでどのパターンのジャケットなのかはわからないという工夫がされていたようだ。
彼らのジャケットの中では好きなほうである。

そんなわけで、「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」。
全盤制覇という意味ではそれなりに感慨もありますが、アルバムそのものは自分にとっては少し微妙なところです。
この後は解散後の彼らの足跡をたどってみようかなどと身の丈に合わないことをうすらぼんやりと考えたりしています。

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コメント

中野で大学時代に怪しげな宗教に勧誘されたことがぷくちゃんと言います。

さてこのアルバム、実は大好きだったりします。

>終始サウンドを支配し続けるのはキーボード(シンセサイザー?)。

恥ずかしながら、この曲と「カシミール」が私のZEPのベストだったりします。これも予約して買いました。ああ、もう数年経てば映画は1000円でいつでも観れます・・・・(涙)

投稿: ぷくちゃん | 2009.10.04 19:30

ぷく先輩、コメント感謝です・・が、ちょっとイントロで不思議な表現になってますが・・

>さてこのアルバム、実は大好きだったりします。

あ、そうなんですか?
「フィジカル・グラフィティ」はお気に入りとうかがってましたが・・
あたしは思ったよりはよかったですが、他のアルバムに比べるとやはり今ひとつ・・という感覚でした。

>恥ずかしながら、この曲と「カシミール」が私のZEPのベストだったりします。

なるほど・・
ツェッペリンの切り口は人それぞれですが、やはりあたしはプラントの声がまともであることが絶対条件のようです。

>ああ、もう数年経てば映画は1000円でいつでも観れます・・・・(涙)

そうスか・・
先輩の2年後にあたしも1000円のはずですから、その時は沼津で先輩の鑑賞にお供いたします。

投稿: SYUNJI | 2009.10.04 21:43

聖地・中野になんの断りもなく、誘いもなく、無断で足を踏み入れられたことに、怒り心頭のルドルフです。きぃー!!

・・・というのは半分冗談で、(←半分ホントかよ)
レコミンツ懐かしいです。この地はほかに、DUやレア、亀吉もありますからね~。音楽ファンにとっても楽しいところです。
ところで、「イン・スルー・ジ・アウトドア」は、Zepではじめて聴いたアルバムかもしれません。むかーしむかし、塾の先輩が発売と同時に持ってきましてねぇ。たしか、ジャケットが茶色の紙袋に包まれていたと記憶しています。
が、聞いた感じは私もピンとは来ませんでしたねぇ。たぶん、SYUNJIさんのいうところの「拡張散漫路線」に近い感覚だったかも。とくにA面がダメっす。

投稿: ルドルフ | 2009.10.05 09:25

SYUNJIさん、こんばんは。
中野デビューされましたか! 実は私もレコミンツ
で全く同じ紙ジャケを買いました。ただ私の場合、
「外袋」がないのが気になり、その後の再発紙ジャケを
わざわざ買い直しました(^^;)

さて、私も久しぶりにこのアルバムを聞きました。
・・・・決して悪いできではありません。バラエティに
富んでいる点は大作「フィジカル・グラフィティ」
に通じますし、最近ペイジとプラントが集った際に
演奏するオールドナンバーを彷彿させるものも
あります。むしろ往年のZEP調である「 In The Evening」
が物足りなくすら思えてきます。

が、
>>「まあ次がんばろうか」くらいに考えていたんだろうか?

私もそんな気がします。
といいますか、これをフツーのロックバンドが製作したら
「これはすごい!」ということになるのでしょうが、
良くも悪くも「Led Zeppelin」、しかもその「最後の
アルバム」だと思うと、やはり聴き手も「冗談だろ」
と思ってしまうのではないでしょうか。
良くも悪くもZEPというのは恐ろしいバンドだった
と思える一枚です。

投稿: モンスリー | 2009.10.06 21:10

ルドルフさん、コメント感謝です。

>聖地・中野になんの断りもなく、誘いもなく、無断で足を踏み入れられたことに、怒り心頭のルドルフです。きぃー!!

いやー中野行きは平日に休んで急に決めたもんで・・
しかしさすが聖地と呼ばれるだけのことはありますね。

>たしか、ジャケットが茶色の紙袋に包まれていたと記憶しています。

紙ジャケも当時のLP風と聞いてますので、そのとおりでしょう。
あたしの買ったCDのジャケットは記事中の写真のバージョンでした。

>が、聞いた感じは私もピンとは来ませんでしたねぇ。

そうですねぇ・・
やはり前期のような野蛮で力強いツェッペリンではありませんし。
なんとなくぼんやりした感じのあるアルバムですね。

モンスリーさん、こんばんは。
中野のレコミンツをご存じでしたか。
さすが東西の聖地をまたにかける師匠・・

>これをフツーのロックバンドが製作したら
>「これはすごい!」ということになるのでしょうが、
>良くも悪くも「Led Zeppelin」、しかもその「最後の
>アルバム」だと思うと、やはり聴き手も「冗談だろ」
>と思ってしまうのではないでしょうか。

同感ですね。
ここまでアルバム単位でどれも高い評価を得ているバンドもあまりないと思いますが、それがゆえに標準レベルであっても「イマイチ」などと言われてしまうんでしょうね。
全盤聴いてみてあらためてそう思います。

投稿: SYUNJI | 2009.10.07 23:46

SYUNJIさん、遅くなりましたが、お邪魔します。

当時、このアルバムの③をラジオで聴いたのがZEPとの出会いでして、すぐさまアルバムを購入した、私にとってZEPにハマるきっかけとなった記念すべき?1枚です。
なので、出来不出来は置いといて、思い入れが強いアルバムです。
③は、今でもひっきりなしに聴いています。(携帯音楽プレーヤーから、やたらと流れるだけですが・・)

J・P・ジョーンズを中心に作ったから、という悪評も聞こえますが、やはりどこか中途半端な雰囲気漂うアルバムなのは確かですね。
でも終わりの2曲を聴くと「あぁ、ZEPだ」と妙にホッとする自分がいます。

この次のアルバムがどんなものになったか?聴いてみたかったとつくづく思います。

投稿: Junk | 2009.10.11 14:58

Junkさん、コメント感謝です。
みなさん意外にこのアルバムに思い入れがあるようですね。
世代的にこのアルバムあたりからリアルタイムだった方が多いということでしょうか。

>J・P・ジョーンズを中心に作ったから、という悪評も聞こえますが、やはりどこか中途半端な雰囲気漂うアルバムなのは確かですね。

同感です。
さすがに他のアルバムに比べて方向性が散漫なのは多くの方に共通した評価だと思います。

>この次のアルバムがどんなものになったか?聴いてみたかったとつくづく思います。

そうですねぇ・・
ボンゾが存命だったらおそらく次のアルバムはあったでしょうね。
でもたぶんプラントの声はそのままだったんだろうなぁ・・

投稿: SYUNJI | 2009.10.12 09:50

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