聴いてみた 第68回 レインボー その5
ロニーとグラハム時代のアルバムはすでに制覇したレインボーですが、いよいよジョー・リン・ターナーの時代に突入です。
先日はパープルとしてのジョーのヘタリ声に愕然としましたが、あれは「なかったこと」にして何くわぬ顔でレインボーのジョーを聴くことにしました。
聴いたのはジョーが登場した最初のアルバム「Difficult To Cure」。
邦題は大ヒット曲と同じ「アイ・サレンダー」である。
このアルバムは前作「Down To Earth」でのアメリカ市場向け路線をさらに拡大したもので、非常にポップな仕上がりとなっているらしい。
悪く言えばミーハーな路線ということだが、まあミーハー路線が好きな自分としては全然心配していない。
果たしてあたしのミーハー路線好きも治療不可なのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. I Surrender
この曲はレインボーとして初めてリアルタイムで聴いたもので、思い入れがそれなりにある。
ジョーの哀れな声はロニーやグラハムとは全然違い、線も細くキャラとしても希薄なのだが、この声は嫌いではないのだ。
サウンドとしてもわかりやすくポップなアメリカン・ロックであるが、この路線も好きである。
2. Spotlight Kid
ここまでのレインボーによくある疾走系ロックなのだが、重厚感は全然ない。
とにかくジョーの声が軽いし、間奏のキーボードも当時の流行を意識してかテクノっぽいサウンドでどこかズレている印象。
でもこういうのが80年代なんだよなあ。
グラハムが歌っていたらかなり雰囲気は違っていたはずである。
3. No Release
少し辛口なメタルっぽいナンバー。
御大のギターソロもそれなりによいが、ジョーのシャウトがやっぱし軽く威厳も何もなし。
途中で楽器が静まり宴会調の手拍子にジョーがささやくような部分があるが、これも仕掛けとしてはその後のハードロックにはよくある展開。
この軽さがこの時期のレインボーの魅力でもあると勝手に思う。
実はこの曲、やっさんが歌うのをいやがったので、収録がこのアルバムになったそうだ。
4. Magic
初めて聴く曲だが、もうホントにふつうのアメリカのロックバンドのようだ。
リッチーもこの曲ではかなりおとなしい感じである。
5. Vielleicht Das Nachster Zeit
リッチーによるギターインスト。
聴いていて思い浮かんだのはライオットの「Rain」である。
6. Can't Happen Here
これも全米チャートにはよくありがちなスピード感に満ちたロック。
ロニーやグラハムだったら絶対にない「ワーオ!」とか「フー!」といったファルセットなかけ声?がジョーにはある。
なんとなくホワイトスネイクを思わせるサウンド。
あまり根拠はないが・・・
7. Freedom Fighter
曲の途中で聞こえるぴろぴろしたキーボードがポイント。
この曲もあまりリッチーのギターは目立っていない。
8. Midtown Tunnel Vision
再びメタル系の重い旋律。
少し粘りのあるサウンドに合わせ、ジョーがコブシをきかせたりしている。
こういう曲だとリッチーのギターもマッチするようだ。
9. Difficult To Cure(治療不可)
重厚なイントロから一転、ベートーベンの第九がリッチーによって奏でられる。
全編が第九ではなく、一部をアレンジしている状態。
後半はELPのようなキーボードのソロがあるが、再びリッチーが登場し第九をかき鳴らす。
ゲーム・サウンドを思わせるナイスな一曲だ。
あらためて思うが、このアルバムでレインボーはさらに変貌している。
ボーカルが違うのが決定的だが、サウンドそのものもより大衆的に変えてきているので、評価は分かれるところだろう。
少なくともロニー時代のレインボーとは大きく違う。
重厚感・様式美といった初期レインボーの鎧はほとんど取りはずしているが、セールスとしては成功してるので、事務所的にはやれやれ良かったということになるんだろうか。
好みから言うと全然OKなんだが、リッチーのギターに印象的なものがあまり残らないという点は惜しい気はする。
あと「虹をつかもう」調のバラードなんかが1曲あっても良かったかもしれない。
先日のパープルの巻でも書いたが、ジョー・リン・ターナーという人はパープル・ファミリーの中でもやや印象が薄い。
(他の人たちが濃すぎるという話でもあるが)
雑誌やネットでもロニーやグラハムのようなエピソードはあまり語られていない。
ただ、実際ブラックモアズ・ナイト以降のリッチーと公に音楽活動をしたことがあるのはジョーだけらしいので、リッチーとの仲はいいのだろう。
リッチーにしてみれば、ジョーは使いやすい子分なのかもしれない。
ジャケットは手術着姿の医師団の写真。
手術着が緑色っぽいところがリアルで、メタルな雰囲気である。
このセンスも過去のレインボーにはなく、好みなわけでもないがアートとしては優れていると思う。
というか、レインボーのジャケットでセンスを感じるのはこのアルバムくらいだ。
調べたらヒプノシスがデザインを担当してるそうです。
というわけで、やっとジョー時代まで聴いてみたレインボー。
印象やパワーでは前の4作にはさすがに及ばないが、自分としてはこの路線でも問題はありませんでした。
ジョー時代のアルバムはあと2枚残っているので、これも早く聴いてみたいと思っています。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。
このアルバム、当時大半の収録曲をエアチェックとリクエストで揃えて、よく聴いていました。
レインボーのアルバムの中では、前作と共に思い出深い1枚です。
ただ、このアルバムを最後に、レインボーとも疎遠になっていったのですが・・・。
1、2、6、9は、今でもよく聴いています。特に「アイ・サレンダー」は何故か毎日1回、携帯プレーヤーから流れて来ます。(シャッフル演奏にしているのに・・・)
>このアルバムは前作「Down To Earth」でのアメリカ市場向け路線をさらに拡大したもので、非常にポップな仕上がりとなっているらしい。
確かに、そんな感じに仕上がっていますね。でも、それが聴きやすかったりもするので、私もあまり違和感なく聴けました。
でも初期のサウンドが好きなファンには、耐えられない軽さだったのでしょうね、きっと。
>リッチーのギターに印象的なものがあまり残らないという点は惜しい気はする。
それは、全く同感です。
ただ、ラストの「第9」のカヴァー?で、リッチーが思い切り弾いているのが最近になって楽しめるようになりました。
投稿: Junk | 2009.08.22 18:38
Junkさんコメント感謝です。
>このアルバム、当時大半の収録曲をエアチェックとリクエストで揃えて、よく聴いていました。
ええ~?
それはうらやましいなぁ・・
当時は結局「アイ・サレンダー」しかエアチェックできませんでした。
>でも初期のサウンドが好きなファンには、耐えられない軽さだったのでしょうね、きっと。
そう思いますね。
前作でかなり方向を変え、このアルバムで左折した感じです。
幸いあたしはここまではどのアルバムもおおむねOKですが。
>ただ、ラストの「第9」のカヴァー?で、リッチーが思い切り弾いているのが最近になって楽しめるようになりました。
この曲はいいですね。
ただボーカル入りの楽曲でもうちょい強烈なギターワークが聴けたら・・とも思いました。
投稿: SYUNJI | 2009.08.22 22:19
SYUNJIさん、こんばんは。
なんというタイミングか、水曜日に大腸の内視鏡検査を
受けます。ジャケットが生々しい感じがします(^^;)。
(ちなみに単なる検査ですので、ご心配なきよう)
さて、何度も書きましたがレインボーは一度も聞いたこと
がありませんので、ちょっとコメントが難しくなって
きました(^^;)。で、変則コメントなんですが、
ジャケットの医師団は、レインボーのメンバーでは
ないですよねえ? まかり間違っても、マエストロが
こんなコスプレをするとは到底思えません。
ひょっとして、当時こんなやりとりが・・・・
レコード会社の営業
「是非、みなさんで医師団に扮していただき、ついでに
ステージでもアンコールは同じ格好を。ミリオンセラー
間違いなし!」
マエストロ
「・・・・」
(横に控える弁護士に指図し、即刻契約解除を通告)
投稿: モンスリー | 2009.08.23 21:05
モンスリーさん、コメント感謝です。
>なんというタイミングか、水曜日に大腸の内視鏡検査を受けます。
ええ~?!ホントですか?
大変そうですね・・
>ジャケットの医師団は、レインボーのメンバーではないですよねえ?
正直これはわかりません。
なにしろ目しか見えませんし、裏ジャケットには女性もいますんで、たぶんメンバーではないと思いますが。
まあヒプノシスのデザインですから・・(関係ないか?)
>マエストロ
> 「・・・・」
> (横に控える弁護士に指図し、即刻契約解除を通告)
ありえそうな話だなぁ・・
去っていくレコード会社営業マンが、ドアを開けたら上から小麦粉が降ってくるとか・・
投稿: SYUNJI | 2009.08.23 22:27
毎週末の更新を楽しみにしています! コメントは初めてです。
あのジャケットは、Black SabbathがNever Say Dieというアルバムを出したときに没になったデザインで、後にどういう経緯か、レインボーが採用した、と聞いたことがあります。
投稿: ajina | 2009.08.25 02:07
ajinaさん、初めまして。
コメントありがとうございます。
>あのジャケットは、Black SabbathがNever Say Dieというアルバムを出したときに没になったデザインで、後にどういう経緯か、レインボーが採用した、と聞いたことがあります。
えー本当ですか?
そんなことがあったんですね。
それまでのジャケットとは明らかに雰囲気が違うとは感じていましたが・・
サバスの「Never Say Die」のジャケットも見てみましたが、パイロット?の写真ですね。
顔が覆われているところはレインボーのジャケットと通じるものがあるように思いました。
投稿: SYUNJI | 2009.08.26 09:24
>えー本当ですか?
僕は何かの本で読んだのですが、調べてみたら英語版wikiにも載ってました。
http://en.wikipedia.org/wiki/Difficult_to_Cure
(3つめのパラグラフ)
Difficult to cureというタイトルにピッタリの絵柄ですが、Never say die「死ぬなんて言うな!」にも適しているような・・・いないような?
投稿: ajina | 2009.08.26 12:54
ajinaさん、情報ありがとうございました。
やはり元はサバス用だったんですか・・
確かにどちらのタイトルにも合ってますね。
どういう経緯でこのジャケットがレインボー用になったのかわかりませんが、バンド間でもめたりしなかったんですかね?
ロニーがサバスに加入するのは「Never Say Die」の後のようですが・・
調べたらドン・エイリーはこの両方のアルバムに参加していました。
投稿: SYUNJI | 2009.08.26 21:10
先日、東京立川の昭和記念公園内にあるレインボープールに子供を連れて行ったルドルフと申します。(←だからなんだよ)
このアルバムは初期7枚のうちで、7番目に好きなアルバムです(これ、ギャグでも皮肉でもないですよ)。もともとはグラハムがヴォーカルであることを想定して曲作りがなされた、という話をどこかで聞いたことがあります。これが本当なら、ダウン・トゥ・アースの親米路線(?)をより推し進めたということになりますね。
御大のギターが目立たない、という指摘はそのとおりだと思います。ただ、これでヴォーカルがグラハムだったら、このアルバムの軽い印象はガラリと変わると思います。JLTも悪くないですけどね。
JLTの十八番曲だけど、グラハムのI SurrenderやSpotlight Kidも聴いてみたいぞ。
投稿: ルドルフ | 2009.08.28 07:01
ルドルフさんこんばんは。
実はレインボーマンも見ていなかったSYUNJIといます。
>これでヴォーカルがグラハムだったら、このアルバムの軽い印象はガラリと変わると思います。
まあその通りですね。
ロニーだったらもっと違っていたと思います。
やっさんが歌ってもヒットはしたと思いますが・・
「I Surrender」は歌詞の内容とジョーの哀れな声がマッチしてるところがいいですけどね。
投稿: SYUNJI | 2009.08.30 20:45