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聴いてみた 第66回 ディープ・パープル その3

パープルのアルバムと言えば?」という設問に対し、シャレでもなければ回答としてはありえないのではないかと思われる、90年発表で第6期唯一の非常に微妙な「Slaves And Masters」。
おそらく往年のパープル・ファンの間ではほとんど評価されてなさそうなこのアルバム。
メンバーはいちおうバンマスのジョン・ロード、世界の御大リッチー・ブラックモア、お金大好きドラマーのイアン・ペイス、爺さんことロジャー・グローバー、そしてジョー・リン・ターナーである。

実はレインボー歴代ボーカルの中で一番好きなのはジョー・リン・ターナーだったりする。
そのジョーがイアン・ギランに代わってパープルのボーカルをつとめたのが「Slaves And Masters」だ。
このアルバムのことは発売当時から知っていたが、全然聴く気にならなかった。(ジョーのファンじゃないのかよ)

Slaves

ところがつい先日新宿のレコファンで780円で売られているのを発見。
これは聴かねばなるまい・・・
そう思って買ったらさらに200円引きでした・・・
果たしてあたしはジョー・リン・ターナー選挙事務所でダルマに目を入れるジョーにむかって万歳三唱できるのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. King of Dreams
パープルの楽曲としては思ったより地味なスタート。
ジョンのキーボードもリッチーのギターもさほど前に出て来ないので、「これはパープルの曲なんですよ」とコンパニオンのお姉さんに説明されても「え、そうなの?」という反応をしてしまいそうである。

2. Cut Runs Deep
サウンドとしてはレインボーよりもホワイトスネイク寄りな曲。
なんでかっつうとジョーのボーカルがちょっとカバを思わせるからだ。
あまり共通点がない二人だと思っていたが、この曲ではかなり近い雰囲気がある。
サビのところのタイトルコールのコーラスがちょっとおっさんくさいが、テンポはそれなりに良く、リッチーのギターもかなりの振り回しがある。
またギター中心のパートとキーボード中心のパートが民主的に分かれて構成されている。

3. Fire in the Basement
かなりノリの軽いアメリカンなナンバー。
この曲はキーボードのパートが強い。
ジョーってこんな歌い方もするのか・・・

4. Truth Hurts
どちらかというと地味めなリズム、控えめなサウンド。
ジョンのキーボードはこの曲ではほとんど聞こえない。

5. Breakfast in Bed
これはパープルらしさを全然感じない曲だ。
スピード感はあまりなく、80年代のアメリカン・ロックという感じ。
たとえばサバイバーとかフォリナーとかナイト・レンジャーあたりがやっても違和感はたぶんない。

6. Love Conquers All
これもあまりパープルっぽくない、悲しげなバラード。
ヨーロッパとかシンデレラとかモトリーとか、メタル系ハードロック・バンドが奏でるバラードの典型のような感じで、やはり予想どおりに進行する。
リズムは終始ゆっくりで、突然ハードに展開するようなこともなく静かに終了。

7. Fortuneteller
路線は前の曲の続きである。
これもそれほどの盛り上がりがなく、ある意味理性的なサウンドだ。
いちおう御大のギターソロも用意されてるんだが、もはやハジケたところはほとんどない。
この後のリッチーの身の振り方を思うと、そんな予兆も感じられるような(気のせい)曲。

8. Too Much Is Not Enough
ペイスの「こっこっこっ」というウッドブロックの音が軽い・・・
この曲もホワイトスネイク調である。
ジョーのシャウトがカバそっくりなのだ。

9. Wicked Ways
アップテンポで軽快なリズムだが、中盤御大のソロになるとスピードはぐっと落ちて初期のレインボーな雰囲気に。
中世とか中近東とか、そんなイメージを想起させるあのパターンです。
この曲もキーボードはあまり聞こえてこない。

さて聴き終わったのだが、個人的には不満の残るアルバムであった。
なぜか?
ジョー・リン・ターナーの声がダメなのである。
がっかり・・・
全然ツヤもハリもなく、レインボーの頃の哀れな声(ホメ言葉)ではなくなっているのだ。
カバを思わせるところもあちこちにあるのだが、これでは変声したカバよりも聴き応えがない・・・
あえて曲単位の感想部分には書かなかったんだが、正直1曲目から「ええ~?全然声出てないじゃん・・・」と思ってしまった。

パープルでもレインボーでもボーカル(だけじゃないけど・・)をとっかえひっかえだったリッチー御大だが、声の出てないジョーのボーカルで不満はなかったのか?
結局ジョーはこのアルバム1枚だけでパープルを去るのだが、理由は他のメンバーとの仲が悪くなったから、とのこと。
しかもリッチー自身はこのアルバムは意外に気に入ってるらしい・・・
ジミー・ペイジもロバート・プラントの変声をさほど気にもとめてなかったようだが、ギタリストってやっぱ自分のギターが一番重要で、ボーカルがどうであろうとあんまし気にしていないのだろうか・・・

さらに。
リッチーとジョンのバトルなメロディの応酬がない。
ジョン・ロードのキーボードもきれいすぎて物足りず、曲によっては出てこないのもある。
楽曲としては高いレベルにあることはわかるが、この感じであれば他のバンドでいくらでも聴けそうなのだ。
パープルならではというアタマに刻まれるような音がない。

うーん・・・
これだけのメンバーなのに、これだけ?という感じである。
個人的にはパープル・ファミリーとしてのベストメンバーに近いんだが、聴いた後の達成感充足感がいまいちだ。
期待しすぎということもあるんだろうけど・・・
じゃあもしボーカルがカバだったら?ロニーだったら?やっさんだったら?などと考えたが、やっぱ「あー・・なんでジョーの声が出てないんだ?」と思ってしまう。

このアルバムについて語るサイトやBLOGをいくつか見たが、「レインボーが好きな人にはおすすめ」と書いてある。
あたしはロニーもやっさんもジョーも好きなのだが、このアルバムはどのレインボーとも違うと思う。
ジョーの声のヘタリについて採り上げている人はあまりいないようだ。
うーん・・・みなさん気にならないんスかね?

そもそもパープル・ファミリーは音よりも人、という愚かな捉え方をしてるあたしですが、ジョー・リン・ターナーという人については、純粋にミュージシャンとして評価しておるつもりでした。
というか、ジョーについてはあんましエピソード知らないんだよなぁ。
あのリッチー御大の教典にも、ジョー・リン・ターナーの話は全然出てこない。
「クソ野郎」「死ね」とののしり合ってリッチーともみあって床に倒れたり、ファッションセンスが気に入らないという理由でリッチーにギターでアタマをかち割られたり・・・といった香ばしく楽しいお話が、ジョーに関しては全く語られていないのである。
何かご存じの方おられますかね?
いずれにしても「I Surrender」「Stone Cold」などレインボーの曲は大好きだし、自分としてはこれらはロニーややっさんには歌ってほしくない曲なのだ。
で、そのままジョーの歌声がパープルでも聞ける・・という期待に満ちていたんだが、結果はとても残念なものになってしまった。

ということで、「Slaves And Masters」。
残念ながら期待が大きかった分、難しい結末となってしまいました。
素人のくせにマニアックなものをあさったりするからでしょうかね。
やはりパープルは70年代の名盤をしっかり聴いたほうがいいのかもしれません。
つーかふつうはそうだよなぁ。
次回こそは「Machinehead」「In Rock」「Burn」といった紫の王道を素直に学習したいと思います。

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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
何度か書きましたが、会社の同僚に誘われてこの時期の
パープルを大阪城ホールで見ました。曲は、全く覚えて
いませんが、バーン、ハイウェイ、スモークだけは
覚えています。

さて、レコード・コレクターズ誌では、私の知る限り
過去2回特集を組んでいます。一度目は93年、二度目は
2004年です。
最初の特集では、「再結成後の佳作」と評されています。
ですが、二度目の特集では、

>>結局ジョーはこのアルバム1枚だけでパープルを去るのだが、
>>理由は他のメンバーとの仲が悪くなったから、とのこと。

何でも、「レインボー化」をおそれて、ターナーを意見を
次々と却下していったそうです。
さらに、

>>リッチーとジョンのバトルなメロディの応酬がない。

このアルバムにおけるペイスとロードのプレイはいい加減と
こき下ろしています。
なんせ聞いたことがないので何ともいえないのですが・・・・

>>たとえばサバイバーとかフォリナーとか
>>ナイト・レンジャーあたりがやっても

何とも鋭い。04年特集によると、ギランの後任を選ぶ
際にはサバイバーのボーカルも招いていたそうです。

投稿: モンスリー | 2009.08.02 21:39

モンスリーさん、コメント感謝です。
またこんなの聴いてしまいました。

>最初の特集では、「再結成後の佳作」と評されています。

まあメンツからして傑作ができて当然なはずなんですが・・

>何でも、「レインボー化」をおそれて、ターナーを意見を次々と却下していったそうです。

やはり元祖パープルのプライドはかなり高かったようですね。

>このアルバムにおけるペイスとロードのプレイはいい加減とこき下ろしています。

うーん・・まあそう評価されてもしゃーないかなぁ・・という感じですな。
ペイスはともかく、ジョン・ロードはあまり活躍してないです。

>04年特集によると、ギランの後任を選ぶ際にはサバイバーのボーカルも招いていたそうです。

ええ~?そうなんですか?
当時のジミ・ジェイミソンがちゃんと声が出ていたかどうかは知りませんが、もしかしたらジョーよりも良かったかも・・
でももしジミ・ジェイミソンが歌ってたら、パープルも相当雰囲気変わってただろうと思いますが・・

投稿: SYUNJI | 2009.08.03 23:51

いや~、
こんなアルバムがあったとは!・・・orz

これだけ酷評だと、かえって聴きたくなるかも。

投稿: ルドルフ | 2009.08.04 06:22

ルドルフさん、こんばんは。
さすがのルドフィーもこのアルバムは未聴でしたか。
酷評っつーかあたしとしてはジョー・リン・ターナーに期待してたんで、よりがっかり感がでかくなってしまたんだと思います。
ペイスが好きな人にはどう聞こえるんだろう・・

投稿: SYUNJI | 2009.08.05 23:55

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