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聴いてみた 第64回 フランク・ザッパ その2

マイケル・ジャクソン死亡のニュースが世界中をかけめぐり、リンク先のみなさんも記事を書かれています。
でもあたしにはマイケル死亡についての記事は書けません・・・
あまり聴いてないし、語る資格もないですしね。
マイケル・ジャクソンを検索してなぜかあたしの記事にたどりついている方も増えているようですが、すいません、聴いてないのに・・・
テレビでは「スリラー」「ビリー・ジーン」「ビート・イット」などのプロモ・ビデオが繰り返し流れてますが、やはりあの頃のマイケルが一番輝いていたのではないかと思います。

そんな世界の情勢をよそに、今日も地味に聴いてみました。

浮き沈みの激しい音楽業界にあって、その生涯を閉じるまで疾走し続け、50枚以上のアルバムを残した怪人、フランク・ザッパ
前回は66年作品の通称「貞子」と呼ばれる「Hot Rats」を初めて聴いてみて、ジャズっぽいノリにやや戸惑いを覚えたあたし。
50枚以上もあるのにたった1枚だけでザッパは評価できまい・・・
小学生でもわかる当たり前の理屈に気づいたあたしは、再び三軒茶屋のCD店へ行ってみました。

多作と言われるザッパだが、中古CD市場ではそれほど派手に流通しているわけではなさそうで、店の棚スペースをどかんと占めていることもなく、数枚が置いてあった程度。
その数枚の在庫の中から「Apostrophe/Overnight Sensation」という長いタイトルのCD989円を選んでみた。

家に帰って調べてみたら、もともとは別のアルバムだったのをくっつけたお買い得ものだった。
2枚組ではなく、CDとしては1枚である。
ちなみに発表順序は「Overnight Sensation」が先らしい。
マザーズ名義の曲も収録されている。

ザッパ紹介サイトではどちらのアルバムも「ロックしていて初心者向き」などと書いてある。
「Hot Rats」はいいのか悪いのかすらよくわからなかったが、今回あたしはザッパの変態関節技にどこまで耐えられるのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

Zappa2_2

1. Don't Eat The Yellow Snow
2. Nanook Rubs It
3. St. Alphonzo's Pancake Breakfast
4. Father O'Blivion
5. Cosmik Debris
6. Excentrifugal Forz
7. Apostrophe(')
8. Uncle Remus
9. Stink Foot

まずは「Apostrophe」から。
1曲目の「Don't Eat The Yellow Snow」、LP時代の邦題は「恐怖の黄色い雪」だそうだが、「黄色い雪は犬のおしっこの跡だから食べるな」ということを歌っているらしい・・・
さすがはザッパ、こういうことをトップから歌うのは世界中でこの人だけかもしれないよなぁ。
まあふつう黄色くなってる雪は誰も食べないと思うが。
体験から来る警告だろうか・・・

あまり切れ目がなく次々に曲が続く。
聴いていて強く感じるのはライブ感である。
スタジオ盤なのにライブ感てのも変だが、テンポが早くいろいろな音がするので、ライブハウスでコミックバンドの即興を聴いているような感じがする。
ギターが時々うなるのだが、この音は思ったよりノイジーで辛口な印象だ。
変拍子・転調は当然のように展開し、曲の切れ目もわかりにくい。
はっきり言って前半はほとんどついていけず、なんじゃこりゃ・・?という状態。

後半は若干揺り戻しがあり、聴きやすくなってくる。
アルバムタイトル曲「Apostrophe」はジャック・ブルースやジム・ゴードンが参加しているそうだが、この曲が一番聴きやすい。
ボーカルはなくインストのようだが、クリームのように互いのパートがかなりイイ感じに衝突していて、それまでのがちゃがちゃしたノリとは少し違った曲だ。
正直、もう少しこの感じの曲が多ければ・・・と思う。
「Uncle Remus」も比較的正統なブルースナンバーだが、これも案外いい。
女性バックコーラスのわいわい感とザッパのムダに低ーい粘り声がけっこうマッチしている。
ちょっと短いけど。
最後は「Stink Foot」の辛いギターが流れて終わり。

Zappa1_2

1. Camarillo Brillo
2. I'm The Slime
3. Dirty Love
4. Fifty-Fifty
5. Zomby Woof
6. Dinah-Moe-Hum
7. Montana

続いて「Overnight Sensation」。
「Camarillo Brillo」はかなりふつうのロック。
少し歌がうまくなったマーク・ノップラーみたいなザッパ。
曲の途中からボーカルが突然センターから手前左右に広がるのですが、これはあたしのMP3プレイヤーだけでしょうか?

「I'm The Slime」はザッパが歌わずに語り尽くす妙な曲。
そのわりにバックコーラスがちゃんとあったりエンディングでギターソロがあったり・・・
再び難易度が高まる展開。

「Fifty-Fifty」は間奏を聴くための曲だと思う。
なんつうかロジャー・ダルトリーイエスの曲をパープルの人たちの演奏に乗せて大幅にアレンジしてるような・・・
ボーカルははっきり言ってムダに叫ぶだけであまり好みではないが、どこかパープルを思わせるようなキーボードとバイオリンとギターの競演は見事である。

他の曲でもひっかき系ギターを中心にライブ感が充満した変拍子やら転調やらが次々に登場する。
このひっかきギターも悪くはないのだが、他の楽器やボーカルとのマッチングはいまひとつピンと来ない・・・

おろおろしているうちに全曲終了。
アルバム2枚分で60分くらいなので、もともと短いアルバム同士がくっついたようだ。

感想。
うーん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(24秒沈黙)
・・・・やはりザッパ、あたしにはやや難しいです。
すいません、タメたわりにシケた感想ですけど。
いい曲や聴きやすい箇所も確かにあるが、全体としては正直戸惑うところが多い。
どちらかと言えば「Overnight Sensation」のほうがシンプルでわかりやすいサウンドが多いが、好みに合うかと言われると微妙だ。

それぞれのパートの水準は非常に高いことはわかるのだが、楽曲としての調和とか一体感はなかなかつかみにくい。
しっとりとしたバラードやフォーク調の曲もないし、ボーカルやコーラスを重ねて厚くするような演出もあまりない。
そもそもそういうものをザッパに求めること自体が決定的に間違いだとは思うが・・・
登場人物がやたら多く挿話も多く時系列がしょっちゅう逆転するSF映画を途中から見ているような感じ。
自分の中での難易度はイエスに相当近い。
これはきっと変拍子や転調が多いからだろう。

そんなわけで、あまり深く考えず無謀にも再びトライしてしまったザッパ。
フリークライミングで登ったはいいけど思ったよりも壁は高く、3mのところで手がかりもなく乳酸もたまって動けなくなって途方に暮れてる中年・・・というところでしょうか。
まだザッパの良さ楽しさがわかるところまで全然たどりついてませんが、たどりつく予感すらしないような心境です。

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コメント

毎度お世話になります。
この3日ぐらいマイケルしか聴いてないカナと申します。

>「Apostrophe/Overnight Sensation」

これはお買い得なCDを見つけられましたね。989円なら絶対買いですよ。とりあえずその2枚より聴き易いザッパのアルバムはもうないので、そのCDを聴き倒してみて下さい。

>そもそもそういうものをザッパに求めること自体が決定的に間違いだとは思うが・・・

確かに。難易度を楽しむというところがありますので。「これでもか、これでもか」と攻めてくるドSなザッパに対して「いや~ん、もっとやって」と言えるMな感覚がないと楽しめないかも知れません。

投稿: カナ | 2009.06.29 04:08

カナさん毎度です。

>これはお買い得なCDを見つけられましたね。989円なら絶対買いですよ。

買った後アルバム2枚分とわかって「きゃっほう!(←ぷく調)」と思ったんですけど、いやーさすがにそう甘くはなかったです。

>とりあえずその2枚より聴き易いザッパのアルバムはもうないので、そのCDを聴き倒してみて下さい。

うーん・・これより聴きやすいアルバムはない・・そうですか・・

>Mな感覚がないと楽しめないかも知れません。

さすがカナさん、これは名解説ですねぇ・・
しかし音楽聴くのにあまりそういう方面は意識したことはないんですけど・・

投稿: SYUNJI | 2009.06.29 23:53

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