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聴いてみた 第62回 ローリング・ストーンズ その3

音楽にも映画にもうといSYUNJIです。
最近公開されたクリント・イーストウッド監督の映画「チェンジリング」。
もちろん観てません。
「チェンジリング」ってタイトルの映画、実は30年くらい前にもあったんです。
全然別の話だそうですけど・・・
で、30年前の「チェンジリング」、ラジオで毎晩宣伝してたんだけど夜中に聴くとすんげえ怖くって、「お父さん・・・うらめしい・・・」とか言うんですよ。
本編観てないのに宣伝だけですっかりビビリまくっていたのでした。

そんなビビリなあたしですが、しばらくほったらかしだったストーンズ能率学習塾。
聴いてないシリーズの中でも最大の課題であり、本来は最優先で学習すべき題材。
わかってはいるんですが、なかなか足が向かず、今日も黙って学習塾の前を通り過ぎ、時間をつぶして頃合いを見計らって家に帰る小ずるい小学生のような心境で日々を過ごしてきました。

なんだか極めて危険な兆候なので、あらためて心を入れ替えストーンズにトライしてみることにした。
で、選んだのがモンスリー師匠ご推薦の「Let It Bleed」である。

Let_it_bleed

バンドの歴史的にはターニングポイントに位置するもので、ブライアン・ジョーンズ在籍の最後のアルバムとのこと。
リリースは69年だが、この年にブライアンは亡くなっているので、遺作ということにもなる。
また一方でミック・テイラーが登場した最初のアルバムでもあるらしい。
さらにキースがリード・ボーカルを初めて担当した曲もあるそうだ。
いろいろな意味で変革しつつあった頃のストーンズが聴ける名盤、ということですね。

曲がり角に来ていたストーンズ、果たしてあたしも無事に角を曲がることができるのでしょうか。

・・・・・聴いてみた。

1. Gimme Shelter
イントロの旋律はどこか悲しげだが、このメロディはすばらしい。
本編はちょっと騒々しい感じのサウンド。
よく聴いていくといろいろな音がある。
女性コーラスがかなり幅をきかせており、途中でバックでなく前に出てきてソロのように歌っている。
この声はメリー・クレイトンという人のものだそうだ。
ドラムがかなり強く、ノリのいい曲である。

2. Love In Vain(むなしき愛)
一転アコースティックギターの調べにミックのブルース調バラード。
間奏のちりちりちりという音はライ・クーダーによるマンドリン。
どこかカントリーのようにも聞こえる。
この曲はオリジナルではなくカバーだそうだ。
実はフォリナーにも同名の曲があるが、全く別の曲である。

3. Country Honk
クルマのクラクションで始まる、今度こそカントリー風のサウンド。
アコースティックギターとバイオリンで構成されていて、サビもみんなでわいわい歌う、ライブ感たっぷりの曲である。
ストーンズはこんなこともやっていたのか・・・

4. Live With Me
イントロのベースが渋い。
高揚感にあふれたストーンズらしい音。
ピアノとサックスがサウンドの中心にあると思うが、どのパートも不思議とよく聞こえる。
聴く度に中心にある楽器が変わって聞こえるような感じだ。
ベース、ドラムとともに非常にタイトな進行。

5. Let It Bleed
アルバムのタイトル曲だが、ボーカルも含めどの楽器も全部打楽器である。
ピアノもギターも主張がとても強い。
後半チャーリーも負けじとシンバルを連打。
難しい構成ではないが、聴きどころは多いと思う。

6. Midnight Rambler
ぷわぷわのブルース・ハープ(でいいの?)で始まる、ちょっと下から歌いあげる怪しいナンバー。
中盤徐々に盛り上がり、ピッチもどんどん早くなる。
大きなサビもなくいったん静まり、終わりかな?と思ったところで元のスピードにて再開。
ドラムやギターによるばしっ!ばしっ!というアクセントがあり、ミックのボーカルがどんどんヤケクソになる。
最後は意外にあっさり終了。
少し置いて行かれた気分になる。

7. You Got The Silver
これがストーンズ初のキースのリード・ボーカル。
ミックよりもやや乾いた声で、見た目の雰囲気よりずっとキーが高い。
曲はアコースティックで始まるフォークっぽい感じだが、終盤はキースが熱くシャウトする。

8. Monkey Man
この曲が一番ギターがしっかりしている。
間奏のところでギターサウンドが掛け合いになるが、この雰囲気はすばらしい。
これまで聴いてきたストーンズのサウンドの中でも最も調和が感じられ、もう少し聴きたいと思わせるギターバトルである。
ボーカルは最後に絶叫になってしまいちょっと聴きづらいが、サルなんだからいいじゃん、ということでしょうか。

9. You Can't Always Get What You Want(無情の世界 )
ラストもアコギによるバラード。
イントロは賛美歌のようでもある。
中盤キーボードとドラムが合流し、一気にストーンズな世界に。
ただしこのドラムはチャーリーではないらしい。
女性バックコーラスがところどころ当てられているのだが、ストーンズのボーカルとコーラスってのはハーモニーはあまり重視してないように思う。
とにかくみんなでわあっと盛り上がるんだよ!という感じ。

いろいろな曲があるが、どっぷりブルースという感じではなかったのでかなり聴きやすい。
終始ワイルドでバイオレンスな押しの曲ばかりかと思っていたのだが、どちらかというと静かな立ち上がりの曲が多い。
冗長な曲がないのも聴きやすい理由のひとつだろう。
曲単位での盛り上がりがきっちり設定されており、それがまたとても自然である。

アルバムの構成も緻密に計算されており、ラストに「無情の世界」を持ってきて盛り上がって終わる、という仕掛けは真っ当ではあるが良いと思う。
個人的には「Gimme Shelter」「Live With Me」「無情の世界」が好みだ。

内容はこのとおり堅調なアルバムだが、そこはストーンズ。
周辺にも様々な話題や伝説を持っているようだ。
本国でのリリースは1969年12月5日だが、翌日の12月6日には、あの「オルタモントの悲劇」が起きている。
また「Let It Bleed」はビートルズの「Let It Be」のパロディだという伝説があるが、「Let It Be」発売は70年なので、この説は事実ではないようだ。
でもこの2大バンド、どこかでお互いの次のアルバム情報なんかをやりとりしていた、なんて話もありそうである。
ビートルズは実質この頃は崩壊寸前だったので、ジョンが「なあミック、やってらんねえよ。ポールのヤツ、『なすがままに』とか歌ってんだぜ!」なんて愚痴ってたりして・・・

そんなわけで、聴いてみました「Let It Bleed」。
全ての曲になじんだわけではありませんが、これは聴いて良かったです。
オリジナルのスタジオ盤としてはまだ2枚目なので、まだ道のりは果てしなく遠いのですが、また他のアルバムも聴いてみようと思います。

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コメント

こんにちは。
>また「Let It Bleed」はビートルズの「Let It Be」のパロディだという伝説があるが、「Let It Be」発売は70年なので、この説は事実ではないようだ。

当時、両バンドのメンバー間の仲が良くて、お互いのアルバム発売日が重ならないように調整してたりしたみたいですから、ビートルズのメンバーが投げ出していたアルバム「ゲット・バック」をフィル・スペクターが「レット・イット・ビー」としてまとめ直している早い段階からストーンズのメンバーはタイトルを知ってたみたいですよ。^^

投稿: hajime | 2009.02.28 22:22

hajimeさん、コメントありがとうございます。

>両バンドのメンバー間の仲が良くて、お互いのアルバム発売日が重ならないように調整してたりしたみたいですから

そのようですね。
ストーンズがビートルズのアルバムタイトルを知っていたとしても不思議ではなさそうですね。
まあ聴いてみた範囲では中身はパロディでもなさそうですけど・・

投稿: SYUNJI | 2009.03.01 10:27

こんにちは、JTです。

本作初めて聞いた時(1978年頃)、ダークな感じがして好きになれませんでした。Gimme ShelterとかMidnight Ramblerとか。前後でブライアン・ジョーンズの死とか、オルタモントの事件があってそれも頭にあった為かもしれません。今では好きなアルバムです。

>この声はメリー・クレイトン

この人、リトル・フィートのサム・クレイトン(パーカッション)のお姉さんですね。

>ただしこのドラムはチャーリーではないらしい

それは知りませんでした。ネットで検索したら、プロデューサーのジミー・ミラーが叩いているようですね。

次の「ストーンズ:聴いてみたシリーズ」楽しみにしています。


投稿: JT | 2009.03.01 17:57

毎度お世話になります。
ストーンズとなるとコワモテの論客が多いのでコメント1つ書くのも緊張します(笑)。

>ジョンが「なあミック、やってらんねえよ。ポールのヤツ、『なすがままに』とか歌ってんだぜ!」なんて愚痴ってたりして・・・

ありそうな話です(笑)。
キースのヴォーカル曲、思ったよりキーが高いっていうのはわたしも同感です。線も細くて。薬物治療のために全身の血を入れ替えてからはこの頃のきれい?な声が出なくなって、今のガラガラ声になったそうです。

あと、意外とカントリー色強いんですよね、このアルバム。カントリーと聞くと引く人多いのに、ストーンズファンはみんなこのアルバム大好きって言うから不思議だなあと常日頃から思ってます。

投稿: カナ | 2009.03.01 18:13

SYUNJIさん、こんばんは。
今年は映画をすでに一本観ました。「20世紀少年 
第2章」です。来来週あたり、ドラえもんを観に
いきます(ひとりで)。

さて、私もろくにストーンズを聞いていないクチ
ですが、いくつか聞いた名盤の中では、やはり一番
好きな作品です。どの曲がどう、というのはない
のですが(というか思い出せないというのが正直
なところ)、

>>いろいろな曲があるが、どっぷりブルースという感じで
>>はなかったのでかなり聴きやすい。

まさにその通りだと思います。ストーンズの広い音楽性が
一般音楽ファンにもしっかりと伝わってくる、そんな
アルバムだと思います。

私の一番好きな曲は「モンキーマン」です。サイケな
イントロから熱くうねるロックへと変貌していく様子は、
ぞくぞくいたします。

>>6. Midnight Rambler
>>最後は意外にあっさり終了。

どうも本人たちは気に入っているのか、ライブではよく
演奏されるようですね。さらに、即興パートが入るため
演奏時間は長尺になるそうです。ですので演奏する割には
「長くなるので困る」と本人たちはいっているそうです。

投稿: モンスリー | 2009.03.01 20:30

JTさん、コメント感謝です。

>ダークな感じがして好きになれませんでした。Gimme ShelterとかMidnight Ramblerとか。

確かに楽しく明るいという曲ではないですね。
でも聴いていて退屈とか合わないという感覚はなかったです。

>この人、リトル・フィートのサム・クレイトン(パーカッション)のお姉さんですね。

しまった・・リトル・フィートも聴いてません・・
次の「聴いてみた ストーンズ」もいつになるかわかりませんが、次回もよろしくお願いします。

カナさん毎度です。

>ストーンズとなるとコワモテの論客が多いのでコメント1つ書くのも緊張します(笑)。

特に東海地方在住の出会い系論客ブロガーはコワイですよね。
あの方もこのアルバムだけはお持ちだそうですが・・

>薬物治療のために全身の血を入れ替えてからはこの頃のきれい?な声が出なくなって、今のガラガラ声になったそうです。

それもまたスゴイ話ですね。
でも今は顔のイメージと声が合っていると思いますが・・
ミックが意外に声が変わらないのもスゴイですけど。

>あと、意外とカントリー色強いんですよね、このアルバム。

確かにそうですね。
まあもちろんストーンズ流のカントリーであり、魅力のひとつにちゃんとなっていると感じます。

モンスリーさん、この度はお世話になりました。

>今年は映画をすでに一本観ました。

そうスか・・
やっぱチェンジリング見にいくかな・・
昔のCMの恐怖がアタマから離れないんですけど・・

>ストーンズの広い音楽性が一般音楽ファンにもしっかりと伝わってくる、そんなアルバムだと思います。

いやー良かったです。
これでまた苦手な音だったりしたら、たぶんそこでストーンズも終了となっていたかもしれません。(今回が終了とならない保証もないけど)

>私の一番好きな曲は「モンキーマン」です。

ボーカルはまだなじめませんけど、楽曲としてはいい感じですね。

>どうも本人たちは気に入っているのか、ライブではよく演奏されるようですね。

「Midnight Rambler」は盛り上がるには適している曲だと思います。
アルバムではエンディングが淡泊ですが、本人たちは「そのままじゃおもしろくない」と思って即興を混ぜているのかな?

投稿: SYUNJI | 2009.03.01 23:10

SYUNJIさん、おばんでした。

XTCは強力に勧めておきながら、ストーンズはさっぱりの富美男です。

何せ、ライブは4回も行っているのに、Forty Licksというベストと、Tattoo You、Undercover 、A Bigger Bangしか聴いていないというていたらく。

でも皆さんのお話やSYUNJIさんのコメントを見ても「Let It Bleed」はなかなか良さげな感じですね。

若いころはミックのくちびるとかブライアン・ジョーンズのとっくりセーターとかが妙に嫌いで敬遠してたんだけど、年齢とともにその良さがわかってきた気がします。近いうちに聴いてみようと思います。

投稿: 富美男 | 2009.03.02 00:46

こんにちは。東海の出会い系ブロガーです。

私は今ではストーンズ、結構の枚数持っています。もちろん紙ジャケですが。(←自慢&馬鹿)

やはりこの時期のストーンズのクオリティの高さは圧倒的で、いま聞いても古さを感じさせません。ZEPでさえ時にアナクロなものを感じているのに・・・

「無常の世界」は私のストーンズのベストの一曲です。

投稿: ぷくちゃん | 2009.03.02 06:28

SYUNJIさん、こんにちは。

ストーンズ・・・全アルバム聴いているわけじゃないですが、聴いているアルバムの中では、最も好きなアルバムです。聴く機会が一番多いのではないかと。(多分)

10代の頃、国営放送で観た「Gimme Shelter」の映像が強烈でした。それ以来、この曲から離れられません。
「Midnight Rambler」も好きです。
このアルバムを聴くと安心します。(意味不明)

投稿: Junk | 2009.03.02 09:00

富美男さん、おばんです。(宮田輝←古すぎ)

>何せ、ライブは4回も行っているのに、Forty Licksというベストと、Tattoo You、Undercover 、A Bigger Bangしか聴いていないというていたらく。

これは意外ですね。
アルバムはいずれも80年代以降のものですね。
「Let It Bleed」、個人的には「Tattoo You」よりは良かったです。

>若いころはミックのくちびるとかブライアン・ジョーンズのとっくりセーターとかが妙に嫌いで敬遠してたんだけど

はははは!
ミックのくちびるって「ラバー・リップ」ってあだ名?もあるようですけど、それをビートルズがひねって「ラバー・ソウル」というアルバムタイトルにした、という話を聞いたことがあります。

ぷく先輩、ご無沙汰しています。
ZEPへのコメント本当にありがとう。(包囲網)

>私は今ではストーンズ、結構の枚数持っています。もちろん紙ジャケですが。(←自慢&馬鹿)

先輩の進化のスピードに驚愕するあたしです。
i-Tunesに入れて売ったのを、紙ジャケで買いなおした、ということでしょうか・・?

>「無常の世界」は私のストーンズのベストの一曲です。

なるほど。
この曲も盛り上がるにはいいですよね。
ところでV.J.、元気にしてるんでしょうか・・

Junkさん、コメント感謝です。

>全アルバム聴いているわけじゃないですが、聴いているアルバムの中では、最も好きなアルバムです。

みなさんの評価が高いですね。
でもわかるような気がします。

>10代の頃、国営放送で観た「Gimme Shelter」の映像が強烈でした。それ以来、この曲から離れられません。

「Gimme Shelter」は自分もいいと思います。
イントロの物憂げな雰囲気から、各パートの力強い盛り上がりまで、さすがストーンズだと思いました。

投稿: SYUNJI | 2009.03.02 22:46

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受信: 2009.03.01 18:16

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