聴いてみた 第60回 レッド・ツェッペリン「フィジカル・グラフィティ」
定額給付金をもらったら聴いてないCDをオトナ買いしようと楽しみにしてるSYUNJIといいます。(場内静寂)
世に言う名盤の中にも2枚組というのはたくさんあるのだが、昔からけっこう2枚組は苦手だったりする。
答えは簡単で「長い」からだ。
オムニバスとかベスト盤とかライブ盤ならともかく、通常のスタジオ盤2枚組はたいがい1枚目終わりあたりで飽きてしまうのである。
しかし相手がツェッペリンであれば飽きたなどと言っていられない。
全盤制覇に向けて避けて通れない巨大なる2枚組山脈、ツェッペリン後期最長の飛び道具、肉体のエアロゾル・アート、名盤エグゾセミサイル、ひとり民族大移動、アックス・ボンバー三つ又の槍、ご存じ「フィジカル・グラフィティ」である。(全然説明になってない)
久しぶりに図書館で借りてみました。
全曲で85分の一大感動巨編だが、ネットでも評価はかなり高く、「いろいろな曲があり退屈しない」などと書いてある。
本当か?絶対だな?
まあ自分の場合、不安材料は確実にある。
繰り返しになるが、後期のロバート・プラントの声がどうもダメなのだ。
ただ曲によってはどうやら声がまともな頃の録音のものもあるらしいので、そこが逆に安心材料となるかもしれない。
長く果てしない(85分ですけど)名曲の大海原に漕ぎ出したあたしは、果たして無事に向こう岸にたどり着けるのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
1. Custard Pie
トップを飾るこの曲、サウンドはギラギラしていて申し分ない。
うまそうなタイトルだが、訳詞を見れば実はとてもエロで猥雑な内容。
中盤から聞こえるブルースハープのようなぷわぷわな音はペイジの趣味だろう。
この感じはカバペーにもあったし。
しかしやはりプラントはダメである。最初からこれはキツイ。あー・・・
2. The Rover(流浪の民)
この雰囲気はまさにツェッペリンの本領発揮というところである。
うねるギターが実にいい感じだ。
のちのフォリナーあたりはこのサウンドに影響を受けたと見た。
プラントの声がまだまともに聞こえるのだが、録音されたのが実は少し前だったんじゃないだろうか?
3. In My Time Of Dying(死にかけて)
題名どおり、ややもったりとした進行のぐったりソング。
と思ったら途中から急展開、ボンゾのどばどばドラムにペイジのれろれろギターが炸裂である。
ツェッペリンてのは実に怪しいサウンドが多いのだが、楽曲としては異常なくらいまとまっていて、これがものすごいホールド感なのだね。
前期にはこんな雰囲気がどのアルバムにも充満しとったよなぁ。(しみじみ)
こういう曲がたぶん最も自分の好みに合っている。
古いゴスペルのカバーだそうだが、相当アレンジしていて原曲とはかけ離れたものとなっているらしい。
4. Houses Of The Holy(聖なる館)
アルバム「聖なる館」にはなかった、曲としての「聖なる館」がここにある。
やや軽い調子の曲で、ペイジのギターが聴けると思ったら案外早くフェードアウト。
5. Trampled Under Foot
これもテンポは良いがなんとなく大衆的な感じの曲だ。
ドゥービー・ブラザーズの「Long Train Runnin'」に似ているというウワサだが、まあ聴きようによってはそんな気もする、という程度。
繰り返されるリズムは確かにあまりツェッペリンぽくないですけど。
6. Kashmir
大作「カシミール」。
この曲はペープラですでに聴いているが、やはりオリジナルのほうが重厚で壮大だ。
オリジナルと比べてみてペープラのほうがいいと思う曲はあまりない、というのが多くのリスナーの正直な感想じゃないだろうか。
「サンキュー」はペープラ版も味わいがあってよかったけどね。
歌詞も雄大で荘厳な情景が目の前に広がるような、神話風な内容である。
構成はそれほど複雑ではなく、同じリズムとサウンドが延々と流れる中、プラントもそれなりにがんばって歌ってはいる。
ただちょっと8分半は長いかなぁ・・・申し訳ないが中盤からやや飽きが来る。
7. In The Light
幻想的な調べがかなり長く続き、プラントの重なった声がアカペラのように響く。
ようやく他の楽器が登場するが、調子はかなりオカルトチックだ。
中盤ペイジとジョーンジーが少し変わった旋律を奏で、再びプラントの妙な声。
音の組み合わせを明るくないほうへ無理に持っていっている感じ。
ラストの「 Light,Light,Light,In The Light・・」というあたりは別の曲をくっつけたようにも聞こえる。
8. Bron-Yr-Aur
ペイジ先生のアコースティック教本のような曲。
これは素晴らしい。
エンディングのもあ~んとした音がいいですね。
9. Down By The Seaside
なんとなくはかなげだけどゆったりほのぼのな曲。
ツェッペリンにもこんな曲があるのか・・・と感心してのんびり聴いていたら、やっぱ途中で転調。
でもわりとすぐにほのぼの調に戻った。
10. Ten Years Gone
静かなギターで始まる不思議な曲。
ちょっとつかみどころがない感じだ。
中盤からはハードな展開だが、やはりプラントの声が痛い・・・
やはり後期のプラントにはどうしてもなじめないのだが、あらためてそれを認識させられる。
11. Night Flight(夜間飛行)
どこか軽くてアメリカンでポッピーなサウンド。
隠れた名曲との評価もあるらしいが、これはけっこうおもしろい。
ツェッペリンの多様性をよく表している。
ただしエンディングのあたりはちょっと・・・
12. The Wanton Song
辛口タイプのナンバーだが、ツェッペリンお得意の不協和音スレスレの怪しい音色だらけ。
ドラムの音が一番でかい。
時々サイレントなポイントでタメを作る技法がとられている。
ボーカルさえまともだったら、この曲を一番評価したいところだ。
13. Boogie With Stu
オールドなタイプのブギーなナンバー。
ピアノが中心で、ペイジのギターはマンドリンかバンジョーみたいな音がする。
というかギターじゃないのかな?とにかくぺこぺこと楽しい音だ。
プラントの声は他の曲に比べてマシなので、これもたぶん少し前の録音だと思う。
14. Black Country Woman(黒い田舎の女)
チューニング間違ってんじゃないのかと思うようなズレ気味のギター。(ウクレレか?)
「限りなき戦い」を素人が弾くとこんな調子かしら。
ドラムもなんかすごい乾いた音だし、プラントも楽器といまいち合ってないし、ヘンな曲だなぁ。
15. Sick Again
ドラムもペイジのリフもいい感じだし、相変わらず怪しい音ばかりだが楽曲としてはなかなか魅力的だ。
ただボーカルだけはもう勘弁してくれというレベル。
他に誰かいなかったのか?
どわー疲れた。
やっと聴き終わったぞ。
「長さを感じない」という評価も多いらしいけど、やっぱ長いス・・・
飽きた感覚は思ったほどでもなかったが。
全体の印象は前期の鉛のような重さがなく、やはりどこか軽い感じがする。
この後の「プレゼンス」ではまた鉛本来の重さが戻っているので、よけいにそう感じるのだろう。
各パート同士がケンカ寸前にぶつかり合って高い調和を生んでいるのが前期または「プレゼンス」のツェッペリンだと思うが、「フィジカル・グラフィティ」ではペイジにしろボンゾにしろ、そこまでの突出感がない。
自分の場合このアルバムは曲によって好みがかなりはっきりしそうだ。
通して数回聴いた範囲では「The Rover」「In My Time of Dying」「Bron-Yr-Aur」「Boogie with Stu」あたりが好きな部類に該当。
目玉は「Kashmir」だと思うが、好みかというと、それはやっぱり少し違う。
確かに音楽性は多様化しておりバラエティに富んでいるアルバムだと思うが、やや散漫な感じがしなくもない。
少し前に録音しておいた曲も入れてあり、それも含めて2枚組にした理由はよくわからないが、ふつうに1枚ずつ別に発売するか、もう少しセレクトして1枚にまとめるとかしたらよかったのではないか?
この内容であれば1枚ずつのリリースでもそれなりにインパクトのあるアルバムはできたんじゃないでしょうか。
ジャケットについては、パープルとは比較にならないほどアートなセンスを駆使しているのがツェッペリンだ。
このアルバムは、LPでは建物の窓のところが打ち抜いてある厚紙と、人の姿が写っている内袋を組み合わせたジャケットだったそうだ。
内袋をスライドさせると窓の中の絵も変わる・・という、小学館の学習雑誌の付録のようなしかけがあったとのこと。
CDではただの絵になってるので、こうした立体的な楽しみ方はなくなっている。
そういうわけで、なんとか聴き終えました大作「フィジカル・グラフィティ」。
やや疲れましたが、それなりに良かったとは思います。
最後に残った「イン・スルー・ジ・アウト・ドア」、いつになるかわかりませんが全盤制覇目指して聴いてみることにします。
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コメント
ども、SYUNJIさん。
自分の場合、若いころは金がなくて音楽ばっかり聞いていたので、2枚組みは全く苦になりませんでした。
しかし、今の30代になってからは2枚組はキツいですね、、。自分だけではないですから、、。
でも2枚組には名作が多いと感じています。
それにしても、レッドツェッペリン。
自分は本当に少ししか聞いてないな、、。
投稿: だいまつ | 2009.02.07 16:16
SYUNJIさん、こんばんは。
ツェッペリンのアルバムの中でも『フィジカル・グラフィティ』は、バラエティに富んでいて、けっこう好きなアルバムでして、1枚目はほぼ文句なし!なのですが、どうも2枚目冒頭の「In The Light」で眠くなりテンションが落ちてしまい、やっと「Night Flight」でテンションが戻って最後まで盛り上がるJunkです。
私は、ペイジ&ボンゾ=ツェッペリンと思っている人間なので、元々ロバート・プラントのボーカルは好みではないため、このアルバムでも別に気になりません。
個人的には「In My Time Of Dying」がたまらないですね。10分を楽に超える長尺ナンバーですが、全く飽きさせません。
SYUNJIさんの感想のように、ペイジ&ボンゾのプレイにゾクゾクしてしまいます。
投稿: Junk | 2009.02.07 18:39
だいまつ親分、コメント感謝です。
>自分の場合、若いころは金がなくて音楽ばっかり聞いていたので、2枚組みは全く苦になりませんでした。
カネがなかったのは自分も同じですが、2枚組だと貸しレコード屋でも料金が2倍なのがイヤでしたね。(つくづく貧乏)
飽きずに聴いていたのはビートルズのホワイト・アルバムと、クイーンの「ライブ・キラーズ」くらいでした。
「ザ・ウォール」も「ザ・リバー」もちょっと長かったし・・
>しかし、今の30代になってからは2枚組はキツいですね、、。自分だけではないですから、、。
まあ若い頃のように一人になれる時間がなかなかないですからね。
あたしは通勤時間が異様に長いので、その通勤往路で1枚目、復路で2枚目を鑑賞ということをやっています。
Junkさんこんばんは。
>私は、ペイジ&ボンゾ=ツェッペリンと思っている人間なので、元々ロバート・プラントのボーカルは好みではないため、このアルバムでも別に気になりません。
そうスか・・
ツェッペリンを採り上げる度に全国から多くのコメントをいただくのですが、自分ほどプラントの声で判定してしまう人はあまりいないみたいですね。
「Sick Again」もサウンドはいいんですけど、ボーカルが・・・
>個人的には「In My Time Of Dying」がたまらないですね。10分を楽に超える長尺ナンバーですが、全く飽きさせません。
そう、よく考えたらこの曲は「Kashmir」よりも長いんですよね。
最初のどよよんとしたところから突然転調するあたりがいいですね。
やはり好きなサウンドは長く感じないようです。
投稿: SYUNJI | 2009.02.07 21:47
SYUNJIさん、こんばんは。
私の好きな「聖なる館」と「プレゼンス」の間に
ある、微妙な位置づけのアルバムがこれです。
それで聞き直してからコメントしようと思ったのですが、
MDの調子が悪く録音できませんでしたので、記憶で
コメントさせていただきます。
>>こういう曲がたぶん最も自分の好みに合っている。
おお、この「死にかけて」がお気に入りとなりますと、
ZEPマイスターです(なんだそりゃ)。ZEP本人も
気に入っているようで、ライブでもよく演奏している
ようですし。いかがでしょう、次回は「幻惑されて」の
ライブバージョン25分に挑戦されては(^^;)。
>>4. Houses Of The Holy(聖なる館)
私もこの曲は好きです。異色というか、本人たちの
ルーツが出ているのでしょうか?
>>大作「カシミール」。
やっぱりこの曲につきますよね。あの旋律はペイジ
ならでは。私も名曲だと思います。惜しむらくは、
ZEPは長い曲に名曲が多く(天国への階段、
レインソング、アキレス他)、ややもすると
埋もれてしまいがちなのがもったいないです。
>>ドゥービー・ブラザーズの「Long Train Runnin'」に
>>似ているというウワサだが、
ZEPがドゥービーをパクった、となりますと、大変名誉な
ことですが(^^;)、
残念ながら真相は、どちらの曲もジェイムス・ブラウンの
曲に影響を受けているそうです(^^;)。
投稿: モンスリー | 2009.02.11 17:28
モンスリーさん、コメント感謝です。
やっとこのアルバムを聴いてみました。
残りあと1枚です。
あーそうそう、せっかくZEPの記事書いたのに、ヤツがまだコメントしに来てないんですよ。(誰?←バレバレ)
>おお、この「死にかけて」がお気に入りとなりますと、ZEPマイスターです(なんだそりゃ)。
いやームリムリ、あたしがマイスターなんぞ名乗ろうもんなら、東海地区から石が飛んで来ますよ。
まあ全編ではなく途中のペイジとボンゾの掛け合いのあたりが好きですけど。
>ややもすると埋もれてしまいがちなのがもったいないです。
そうかもしれませんね。
あたしも「カシミール」がこんなに評価の高い名作だとは知りませんでしたし。
昨日ペープラを久しぶりに聴いたのですが、「カシミール」は思ったよりオリジナルに忠実なサウンドでした。
でもペープラを最初に聴いた時も「カシミール」はあまり印象に残らなかったんですが・・
>残念ながら真相は、どちらの曲もジェイムス・ブラウンの曲に影響を受けているそうです(^^;)。
あ、そうなんですか。
そういやペイジって人は、「わかる人にしかわからない」ような微妙な○クリができる天才、という話を聞いたことがあります・・日本語ヘンですけど。
投稿: SYUNJI | 2009.02.11 18:39
SYUNJIさん、こんばんは。
前回も書きましたが、XTCはほとんど
聞いたことがありませんので、再度こちらへ
コメントを(^^;)。
>>ペイジって人は、「わかる人にしかわからない」ような
>>微妙な○クリができる天才、
冗談抜きで天才ですよね。レッド・ツェッペリンも、
クリームと第1期ジェフ・ベック・グループを参考に
しているという噂も聞いたことがあります。
ZEPの1stには「You Shook Me」という曲が収録されて
いますが、友人によると、第1期JBGのアイデアを
上手に利用しているとか。
いずれにしても、ペイジの「よい音楽をどんどんとり
こみましょう」という柔軟な姿勢が、トップバンドに
君臨した理由かもしれません。
投稿: モンスリー | 2009.02.14 21:53
モンスリーさん、コメント感謝です。
>レッド・ツェッペリンも、クリームと第1期ジェフ・ベック・グループを参考にしているという噂も聞いたことがあります。
やはりペイジって人は商才に長けてますね。
「よい音楽をどんどんとりこみましょう」ってのも、周りからは妬まれそうですけど。
法廷での争いになったりしたことはないんですかね?
しかしペイジさん、クラプトンとベックには注目していても、リッチーのことはやっぱり全く眼中になかったんだろうなぁ・・
投稿: SYUNJI | 2009.02.14 22:48
こんにちは。ようやく登場です。
さて2枚組。買う前は結構聴く気満々で買うのですが、そのボリュームにちょっと最後まで緊張感を維持できないことが多いです。
今ではCDのフォーマットも相まって、全部で2時間を超えるものもあるとか・・・
このアルバムも聴きごたえ十分!と叫びたいのですが、それでも1stや「プレゼンス」の方がずっと聴きやすいし、何度も聴いてしまいます。
追記:そろそろお会いしましょう。もちろんヤツも誘ってですよ・・・・
投稿: ぷくちゃん | 2009.03.04 18:38
ぷく先輩、コメントありがとうございました。(直立不動←うさんくさい)
>このアルバムも聴きごたえ十分!と叫びたいのですが、それでも1stや「プレゼンス」の方がずっと聴きやすいし、何度も聴いてしまいます。
記事を書いた時はまだ全部聴くと疲れる感覚でしたが、あれから週に1回くらい聴いており、最近はかなり慣れてきました。
「プレゼンス」のほうがいいのは確かですが、やはり自分にとってのZEPは前期ですね。
>追記:そろそろお会いしましょう。もちろんヤツも誘ってですよ・・・・
では今度こそ中華街に行きましょう!
富士霊園でお花見ってのもいいかも・・
投稿: SYUNJI | 2009.03.05 22:26