読んでみた 第27回 アテス
さまよえる中年男性誌ハンターのSYUNJIといいます。
今日読んでみたのは雑誌「アテス」。
「生きることに意欲的な40代の男性へ発信する月刊雑誌」だそうだ。
版元は阪急コミュニケーションズ、12月号は680円。
判型はたぶんAB判、150ページ。
この雑誌はもともとはクリエイティブ志向な30代を対象にした雑誌「Pen」の増刊のような形で創刊されたものらしい。
創刊は2006年11月とあるので2周年ということになる。
が、存在は知っていたが開いたことは全くなかった。
「Pen」もほとんど読んだことはない。
歯槽膿漏の薬のような名前だが・・・(それは「アセス」。)
「アテス」の基本テーマは、「リノベーション」。
と言われても意味がわからないが、「リノベーション」て何?
ネットで調べたところによると、建築用語では「大規模な改修」という意味だそうです。
建て替えではなく、機能向上や価値を高めるための改修のことを「リノベーション」というらしい。
で、アテスによれば、時代を表す「キーパーソン」を採り上げ、さらに「グルメ」「健康」「スポーツ」「カルチャー」「マネー」「ファッション」などの付加価値の高い情報を紹介します、というのがこの雑誌のコンセプトのようだ。
それを「リノベーション」と呼ぶのはかえってわかりにくいのでは・・
生きることにも大して意欲的でないあたしですが、果たしてこの雑誌でリノベーションできるのでしょうか。
・・・・・読んでみた。
今月号の目次はこんな感じ。
ソフトバンクの正体。目次にやや「!」が多く、ちょいと鬱陶しい。
・通信から球団まで、グループの全貌を知る。
・ソフトバンクはなぜ勝ち残れるのか?
・巨大企業を支える、5人のキーマン
・あのお兄ちゃんと、汐留本社潜入ルポ!
・天才か?異端児か?孫正義の真実とは?
第2特集
ぐっすり眠ることが成功の秘訣。
睡眠改善プロジェクト
とじ込み付録
40歳から始めるゴルフ!
表現としてはちょっとノリが昭和で古くさい感じがする。
文字数は短くていいが、これで長かったら「ビッグ・トゥモロウ」である。
全ページの半分近くを特集の「ソフトバンクの正体。」が占める。
当然内容は孫正義社長に関する情報が大半である。
今は孫社長が時代を表すキーパーソンということだろう。
中身はソフトバンクの歴史から事業内容紹介、幹部が語る孫社長の人物像、CMでおなじみの「上戸彩のお兄ちゃん」による本社案内、など。
さすがに取材先であるソフトバンクについて批判めいたことは書けないようで、かなり持ち上げた表現が多い。
事業紹介のページなんかスタートから「ソフトバンクの快進撃が止まらない。」である。
今シーズンのホークスの成績に照らすとすんごい皮肉な書き方だと思うけど・・
自分は残念ながら携帯もソフトバンクではないし、ネットのプロバイダもYahoo!ではない。
この企業の展開するサービスを有料で利用したことがないので、感覚的に「快進撃」なのかどうかはわからない。
携帯の料金設定にかなりムリがあって実際にはそれほど安くなかったとか、Yahoo!BBのサービス開始当初は会社の体制が万全でなくサポートも不十分で評判がとても悪かったとか、そーいうマイナス評価なウワサ話は覚えているのだが、今はどうなんだろう?
かなり昔だが、孫社長の演説を生で聞いたことがある。
そう、会社説明会です。
実はあたくし、学生の時にここの会社の説明会に行ったり面接を受けたりしたことがあるのです。
当時は会社の規模も事業内容も今とは全然違い、日本ソフトバンクという社名だった。
その頃普及し始めたBASICのパソコンソフトを、ソフト開発会社から集めてユーザーに紹介したり販売したり、という商売を展開するという説明だったと思う。
孫社長は当時から有名人で、自身の開発した電子辞典(シャープ製)で儲けたお金で起業した、ということも聞いた。
結局自分は内々定まではもらったのだが、志望としてはやはり出版社だったので、ソフトバンクには就職しなかった。
採用担当者から何度か電話がかかってきたのだが、「どこの会社にいくつもりなのか」とけっこうしつこく聞かれ、実はまだどこの出版社にも内定していなかったので、多少心が揺らいだことはあったが・・
で、あたしがソデにしたことで孫社長は一大決心の末に奮起し、今日の繁栄があるのでした。
いえ、それは妄想で、ソフトバンク繁栄とあたしとは全く無関係です。(当然)
あの時バンク(当時からケツ上げでこう呼んでいた)に入っていれば・・・とは、実は全然思っていないんですけど。
さて記事に戻るが、持ち上げ感はあるが書いてあることはそれなりにおもしろい。
「上戸彩のお兄ちゃん」役はダンテ・カーヴァーという人だが、別にソフトバンクの関係者ではなく役者だそうです。
で、このお兄ちゃんがバンク本社に出向いて中にある吉野家で牛丼食ったりラウンジでカクテル飲んだり・・というユルイ内容だけど、まあカタイ企業訪問ページになってないのはいいかもしれない。
2つめの特集は「ぐっすり眠ることが成功の秘訣。睡眠改善プロジェクト」。
ただしソフトバンク特集に比べてページ数もずっと少なく、盛りの薄い内容である。
他にゴルフのスイング指導や海外コースの紹介などがあるが、まあこれも埋め草的な印象が否めない。
その他連載ページが20ほど。
文章として悪くはないが、感覚的には共感するものも少なく、読み応えも今ひとつである。
体裁面はどのページも悪くない。
誤字はなかったし、レイアウトも自然だ。
ただターゲットを考えると、文字級数(大きさ)がちょっと小さい気もする。
これは自分の感覚だが、紙が他の雑誌に比べてほんの少しだけ厚い。
初めて手にする雑誌だったので、めくる時になぜか気になった。
680円は良心的な値段だが、そのわりにはいい紙を使っているように思う。
比較的薄い雑誌なので、広告ページも総量としては少ないほうだ。
ただ記事のような体裁で実は中身が広告、というハンパなページも少しある。
扱われているのがワインや高級腕時計なので、貧乏人としてはやや反感を覚えるページである。
感想。
全体としては悪くないのだが、やはり記憶や印象に残るようなページがない。
編集にアクがなくうまくまとまりすぎており、ツッコミどころもほとんどないのがかえって退屈だ。
生きることに意欲的な男性がターゲットらしいけど、言うほどガツガツもしてないし、ハナにつくような記事も思ったほど出てこない。
これまで読んでみた男性誌は、たいがいどこかハズしていて、楽しくはなかったけど記憶には残ったもんだが、「アテス」にはそれもない。
この印象の希薄さはなんだろう?
バックナンバーを見ると、過去には「タイガース」「トヨタ」「医療」「ジョンとヨーコ」などの特集が組まれたようだ。
これもそうハズした話ではなさそうだが、おそらくソツなく編集された記事になっていたと想像できる。
さて雑誌のサイトはどういうことになっているだろうか。
そう思って見てみたが、どうも様子が変だ。
「都合によりアテスオフィシャルサイトを終了させていただきました。」などと書いてある。
いやな予感がしたが、12月号奥付にやはり書いてあった。
「次号1月号をもって休刊させていただくことになりました。」
またかよ・・・
今回もまた無くなる雑誌を選んでしまったのだった。
こんなシリーズを続けているおかげで、日本の雑誌の状況がつぶさにわかるはめになってしまった。
あーあ・・・
発行部数がどれだけだったのか不明だが、やはり売れなかったようだ。
この内容だと生き残っていけないのが現実なのだろう。
編集のレベル自体は全く問題ないのが逆に残念だが。
というわけで、初めて読んでみたとたん休刊と知らされた「アテス」。
一流大学出身で期待も高かったけどとてもおとなしくて印象薄いままいつの間にかやめてしまっていた広報部の新入社員・・・という感じ。
履歴書の中身はとても華麗で字もきれいだったんだけど・・・なんてとこでしょうか。
今月末発売の号で最終だそうですので、最後を見届けてあげるのもいいかなと思っています。
でもたぶんそんなことは忘れてしまい、気づいた時には書店にも残っていないような結果になる可能性はとても高いです・・
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コメント
私の妻は病院に行ってみると、そこの先生が亡くなっていて閉院のところが多く、今回のSYUNJIさんの話を聞いて、疫病神ってやはりいるものだな、と感じています。(失礼にもほどがある)
近頃は忙しくてブログを更新することも他のブログへ訪問することさえあまり出来ていません。(その割にはいろいろな所へ出掛けていますが、基本としては仕事です。)
リアルな友人になった方も多いので、そろそろブログ閉鎖も考えています。あるリンク先からはこのリンク先との怒涛の面会攻撃(?)はブログ閉鎖の前兆ですか?と言われました。(←話がわかりやすいぷく)
>一流大学出身で期待も高かったけどとてもおとなしくて印象薄いままいつの間にかやめてしまっていた広報部の新入社員・・・という感じ。
えっ?なぜ私のことを知っているのですか?(うぬぼれ)
投稿: ぷくちゃん | 2008.11.03 16:19
ソフトバンクというよりは孫社長に対して、個人的にあまり良い印象を持っていないgetsmart0086です。
彼の会社に務める方と話をしていたときに、僕から「孫さんを突き動かすものは何なんでしょう?社会を良くしようと言う感じは一切見受けられませんけど」と言うと相手もしばらく考え込んだので、僕から「少年時代に持ったコンプレックスから、「いつか見返してやる」という気持ちだけではないのでしょうか」と言うと、その方は同意してくれました。僕にはあの人(および取り巻き)はビジネスをゲームとしてしか捉えていない感じを受け取っているので、一緒に仕事をしたいと思いませんし、そういう人が社会のインフラを担う仕事をしてはいけないと思っています。
さて、この雑誌全然知りませんでした。雑誌業界って厳しいですよね。「無料+広告」モデルの浸透により、有料の物がどんどん消えていく現状が悲しくてなりません。広告モデルは麻薬と一緒です。その時は良くても、社会という体をボロボロにしていきます。
投稿: getsmart0086 | 2008.11.03 20:08
ぷく先輩、先月横浜に来てたんですね。
疫病神のSYUNJIといいます。
図らずも休刊マニアとなりつつある我が身を呪う毎日です。
>リアルな友人になった方も多いので、そろそろブログ閉鎖も考えています。
うーん・・せめてウルトラシリーズだけは完結していただければ・・
まあBLOGは義務じゃないですしね。
あたしもたまにネットが面倒になったりすることがありますけど、気長に続けていければと思っています。
>えっ?なぜ私のことを知っているのですか?(うぬぼれ)
いえ、「おとなしくて印象薄い」って書いてありますから・・別の人の話ではないかと・・
getsmart0086さん、コメント感謝です。
>僕にはあの人(および取り巻き)はビジネスをゲームとしてしか捉えていない感じを受け取っているので、一緒に仕事をしたいと思いませんし、そういう人が社会のインフラを担う仕事をしてはいけないと思っています。
今回「正体」という文字に、もしかしてあの会社の暗部?を日刊ゲンダイのように暴く記事なのか?と期待したのですが、そういうことではありませんでした。
経営理念の一文には「人類と社会に貢献していくことを目指します」とあるそうですが・・
>その時は良くても、社会という体をボロボロにしていきます。
耳の痛い話です。
結局どの雑誌も程度の差はあれど収入の仕組みは同じようなものです。
社会の状況が変わってきているのに、未だに麻薬をやめられないのが出版社だということですね。
投稿: SYUNJI | 2008.11.03 21:46
> 歯槽膿漏の薬のような名前だが・・・(それは「アセス」。)
痛くなったらすぐ○○○ってありませんでしたっけ・・・(それは「セデス」)
阪急コミュニケーションって、私は“ヅカ”関連の会社のイメージしか持っていないんですが、いろんな雑誌を出しているみたいですね。Newsweek日本版を出している会社とは・・・意外です。その意外な会社が異端児(孫社長)を取り上げたら、いやがおうにも刺激的な記事を期待してしまいそうですが、そうではないみたいですね。
バンク・・・昔は流通業を名乗るヘンな出版社だったんだけど・・・いまは通信会社か?
> 今月末発売の号で最終だそうですので、
あらら・・・
さすが疫病神(苦笑)
投稿: ルドルフ | 2008.11.04 09:54
同じ出版社のPenは、良く行く喫茶店で置いているので良く読んでいる、、、だいまつです。
ただ、いい記事がある一方。
単なる広告がひたすら載っているという見方が出来る雑誌とも、、。
そんな感じでしょうか、、アテス。
この記事の内容だと、、ソフトバンクから広告料みたいなのをかなり頂いて作った号、、なんでは?と自分はかんじてしまうでしょうね、、。
ソフトバンク、、。
いつも、ダメか?と思うと、なんらかの「手」や巡り合わせで、しぶとく生き残っている会社、、という気がしています。
iphone、、auだったら良かったのに。と思いますが、未だにauを使ったことが無い自分。
ドコモよりは良いか、、。
でも、これでソフトバンクも携帯事業。
伸びる要因が一つ増えましたね、、。
それにしても純増で未だにトップと言うのが信じられない、、。
ほんとうにソフトバンク。しぶとい。
あれだけ借金あるのに、、、。
投稿: だいまつ | 2008.11.04 20:13
SYUNJIさん、こんばんは。
阪急沿線住民ですが、今のいままでこんな雑誌が
出ていたとは知りませんでした。
>>時代を表す「キーパーソン」を採り上げ、さらに「グルメ」「健康」「スポーツ」
>>「カルチャー」「マネー」「ファッション」などの付加価値の高い情報を
うーむ、「何でもあり」という感じがしないでもありません。
レココレ誌が、ビートルズと60年代とブルースばかり持ち上げつつ、
たまにAC/DCを第1特集に持ってくる以上に「総合雑誌」感を
感じます。
さらに、
>>ソフトバンクの正体。
こんな見出しを付けられますと、ダークな噂を期待してしまうの
ですが、阪急自体がSB携帯の販売代理店を経営したり(多分)、
電鉄の優良広告主でありますから、悪口など書けるわけも
ありません。残念です。
>>「ジョンとヨーコ」
何となく、日経「大人のロック」より退屈な特集だったような
気がしてなりません。
というわけで、今回も読まずして、SYUNJIさんの記事だけで
十分楽しむことができました。感謝です(^^;)。
投稿: モンスリー | 2008.11.04 22:32
盟友ルドルフさん、コメント感謝なり。
>阪急コミュニケーションって、私は“ヅカ”関連の会社のイメージしか持っていないんですが、いろんな雑誌を出しているみたいですね。
そうなんですよ。
宝塚関連の雑誌だけでなく「FIGARO」なども出していますね。(読んでないけど)
>バンク・・・昔は流通業を名乗るヘンな出版社だったんだけど・・・いまは通信会社か?
さすがルドフィー、まさにそんな感じですよね。
バンクって確かに昔はソフト流通業だったよなぁ。
その後で「Oh!FM」とか「Oh!PC」とか、BASICの雑誌作ってたんだっけ・・懐かしい・・
だいまつ親分、コメント感謝です。
以前「Pen」をよく読んでるってコメントいただきましたね。
>この記事の内容だと、、ソフトバンクから広告料みたいなのをかなり頂いて作った号、、なんでは?
あたしも同じことを感じました。
読んでてなおさらそう思いましたね。
全然悪いこと書いてないんだもん。
>いつも、ダメか?と思うと、なんらかの「手」や巡り合わせで、しぶとく生き残っている会社、、という気がしています。
そうですねぇ・・
詳しくはわからないですが、一時期携帯でもかなりDocomoとauに離されたりしてたような気がしましたが、今は純増快進撃らしい・・
あたしは今までTUKAとauしか使ってませんが・・
モンスリーさん、こんばんは。
>阪急沿線住民ですが、今のいままでこんな雑誌が出ていたとは知りませんでした。
阪急系の版元ですが、この雑誌は全国区のようです。
>阪急自体がSB携帯の販売代理店を経営したり(多分)、電鉄の優良広告主でありますから、悪口など書けるわけもありません。
あーそういうことですか・・
なるほど。
まあ報道雑誌じゃないですから、企業の闇を暴くような記事は初めから期待できないとは思いましたが・・
>というわけで、今回も読まずして、SYUNJIさんの記事だけで十分楽しむことができました。感謝です(^^;)。
そんなんで感謝されても・・
いえ、ぜひお近くの書店でお求めを・・(今さら)
なんだかますます疫病神っぽくなってきたなぁ・・
投稿: SYUNJI | 2008.11.04 23:05