聴いてない 第127回 スペシャルズ
あたしが本格的に洋楽エアチェックを始めたのは79年なのですが、やはりその黎明期に聴いた曲やアーチストは、非常に克明に記憶に残るものです。
その後やたら聴くことになるボストンやフォリナー、一方その後全然聴くこともなかったイアン・マシューズやドナ・サマーやD.D.サウンドやSOSバンドなど、当時はとにかくやみくもに録音し、毎晩サルのように聴いていました。
今でもテープに録った曲順まで覚えていたりします。
そんな79年の末に録音したのがスペシャルズの「ギャングスター」。
もうおわかりかと思いますが、その後全然聴いてません。
もう1曲「ラット・レース」を録音しているので、聴いてない度は3。
スペシャルズの場合、2曲しか聴いてないにも関わらずイメージは意外と鮮明である。
なぜか?
そう、それは彼らが音楽だけでなく「2トーン」というファッションを伴って登場したからだ。
スペシャルズは黒人白人混成であり、これを表す2トーンのジャケットデザインや衣装なども含めて人気が出たバンドである。
リーダーはジェリー・ダマーズという黒人だそうだが、その昔プロモ・ビデオに映っていた歯の抜けたおっさんがたぶんジェリーだろう。
ボーカルは白人のテリー・ホールで、どこかオールドな雰囲気のヘアスタイルだった記憶がある。
スペシャルズとしてのアルバムは2枚しかなく、バンドは解散分裂し、90年代に一瞬復活したらしいが、かつての盛り上がりを再現することはできなかったようだ。
スペシャルズの音楽はスカと呼ばれる「引き」のリズムにパンクの要素を取り入れたもので、ルーツはジャマイカのレゲエにある。
彼らが登場したのはイギリスのコヴェントリーという工業都市で、多くのジャマイカ系移民によって工場が稼働していたという土地らしい。
実際には「ジャマイカ移民が多かったのでレゲエやスカが流行ったのです」という単純な話ではないとは思う。
パンクもレゲエも日本人には音楽のジャンルのひとつとしての捉え方がふつうだと思うが、現実には不況や差別という苦境逆境から生まれた社会的な胎動なのだ。
ロックも基本的には同じ源流によるもののはずだが、このあたりの感覚はぬるい日本で暮らしているとなかなか理解しづらい。
というかあたしはレゲエとスカの違いもはっきりとはわかっていませんが・・
レゲエやスカといったジャンルにも縁遠い自分だが、聴いているスペシャルズの2曲はけっこうカッコイイと思う。
今聴いても思ったより古くさくないし、2トーンのセンスも悪くないと感じている。
2曲どちらにも感じるのは実はテクノである。
スカ・ビートが当然ベースにあるのだが、キーボードの音が意外に印象的で、当時流行のテクノっぽいサウンドも採り入れられている曲だなぁと勝手に思っていた。
「ラット・レース」はデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「ボーン・イン・ダウン」という曲にもサンプリングされていた。
イントロはラジオをチューニングしている設定なのだが、パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」などとともに「ラット・レース」がラジオからノイズ混じりで流れ、突然スイッチを切って「ボーン・イン・ダウン」の歌が始まる・・という、文字にするとなんだかすごくわかりにくいんだけど、そういうアレンジに使われたのだった。
日本ではほぼ同時期に流行っていたのがマッドネスだ。
マッドネスは2トーンを全面に押し出したバンドではないが、曲調はやはりスカであり、スペシャルズと同じ2トーンレーベルに所属し、メンバー同士の仲もよかったらしい。
マッドネスはホンダ・シティのCMにも登場したので、日本ではマッドネスのほうが知名度が上だったかもしれない。
ちなみにマッドネスは全然聴いていない。
2トーンはスペシャルズだけが流行らせたものではないと思うが、この頃のファッションには確かに影響が大きかった。
当時自分はまだ高校生だったが、普段学校では比較的清楚な雰囲気の女の先輩たちが、合宿ではそろって2トーンのミニなんかをはいてきて、「すごい流行だ・・」と感じたものである。
先輩たちがスペシャルズを聴いていたかどうかは不明だが。
そんなわけで、かなりコアな位置づけのスペシャルズ。
スペシャルズそのものだけでなく当時の2トーン・ムーブメントにどのように反応していたのか、みなさまの若かりし頃の思い出を語っていただければと思います。
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コメント
スペシャルズ、懐かしいっすね。私も「聴いてない度」は同じ、3ですが。
> この頃のファッションには確かに影響が大きかった。
私もファッションの影響は感じますね。この頃はパンクがモッズ化し、ファッションとしては「モッズ」と「ツートーン」が結びつき、日本ではこれに「テクノ」のセンスが加わった。初期のチェッカーズ辺りのファッションがまさにそれだったような気がします。
> 日本ではマッドネスのほうが知名度が上だったかもしれない。
でしょうね。最初のインパクトは、デビューアルバムのジャケットのセンスの良さもあいまってスペシャルズかもしれないけど、CMや「Our House」のヒットが大きかった。
投稿: ルドルフ | 2008.11.22 11:22
スペシャルズ、好きでした。同様にマッドネスも。
スペシャルズでいうと、「Gangstar」と「little bitch」、マッドネスでは「One Step Beyond」がマイフェイバリット(何で英語やねん)です。
ホンダ・シティで有名になった「In The City」は、日本でだけヒットしたことを後になって知りました。
投稿: getsmart0086 | 2008.11.22 15:16
ルドルフさん、コメント感謝です。
>初期のチェッカーズ辺りのファッションがまさにそれだったような気がします。
これは鋭い分析ですね。
スペシャルズを採り上げてチェッカーズがコメントで来るとは思いませんでしたが、そう言われると確かにそうでしたね。
チェッカーズ、元メンバー同士の確執は未だに続いてるみたいですけど・・(そういうことにしか興味がない)
マッドネスは90年代に再結成し、今も継続中だそうですが・・
getsmart0086さん、コメント感謝です。
>ホンダ・シティで有名になった「In The City」は、日本でだけヒットしたことを後になって知りました。
え、そうなんですか?
それは知りませんでした。
今ネットで調べたら、作曲は日本の井上大輔という人のようですね。
You TubeにシティのCM映像もありました。
http://jp.youtube.com/watch?v=8yrbDh9yN3k
いやー懐かしいですね。
シティも初代はインパクトのあるデザインだったなぁ・・
投稿: SYUNJI | 2008.11.22 23:02
こんにちは。今回数多くのブロガーさんにお会いして、写真を撮っておいて良かったと感じるぷくちゃんといいます。
今、コメント打っていてもルドフィー、SYUNJI両名の顔が浮かびません・・・・(老化?)
さてスペシャルズ。この時代の曲はポリスも含めて、すべて「パンク」で語られていた、というのがその当時の記憶です。
その「パンク」と呼ばれていたアーチストの中にはピストルズも当然いれば、こういうスペシャルズみたいのもいて、音楽の幅が広く「パンク」が音楽のジャンルではなく、アーチストの姿勢だったことに気がつかされます。
既存の大スターに「NO」を突きつけていても売れてしまえば自分が批判される立場に陥る、まさしくマッチポンプのようなジャンル。
ですからスペシャルズを聴きなおすより、武藤敬司のDVDでも観ていた方が素晴らしいと思います。(←少しまともなことを書こうとしたら、オチが思いつかなくてでたらめを書き残して去る・・・)
投稿: ぷくちゃん | 2008.11.23 08:36
出会い系ブロガーぷく先輩、コメント感謝です。
>今、コメント打っていてもルドフィー、SYUNJI両名の顔が浮かびません・・・・(老化?)
次回三軒茶屋で先輩に会ってもまた走って逃げられそうな気がしてなりません。
>音楽の幅が広く「パンク」が音楽のジャンルではなく、アーチストの姿勢だったことに気がつかされます。
先輩、パンク系に興味なさそうなのにコメントが深いですね。
あたしも当時子供だったもんで、クラッシュもPILもジャムも区別があまりつきませんでした・・
ポリスだけは「ヤツラだけは違う・・」と感じていましたが。(知ったかぶり)
>ですからスペシャルズを聴きなおすより、武藤敬司のDVDでも観ていた方が素晴らしいと思います。
なんだかそんな気がしてきました。(受け身)
このご意見はだいまつ親分からも支持されそうな気がします・・
投稿: SYUNJI | 2008.11.23 22:46
SYUNJIさん、こんばんは。
スペシャルズ、名前すら知りません。かろうじて、
マッドネスは「シティ」だけCMソングで覚えましたが。
>>レゲエとスカの違いもはっきりとはわかっていませんが・・
私もさっぱりわかりません。
エリック・クラプトン「I Shot The Sheriff」
はレゲエで、
スタイル・カウンシル「Internationalists」
はスカ、というのは乏しい知識で何となくわかります。
>>当時流行のテクノっぽいサウンドも
この頃のテクノというとクラフトワークでしょうか。
といっても、こちらもさっぱりわかりませんが。
>>普段学校では比較的清楚な雰囲気の女の先輩たちが、
>>合宿ではそろって2トーンのミニなんかをはいてきて
スペシャルズは聞かずじまいでも、こちらには一度お目に
かかりたいと思う40歳既婚中年男でした(笑)。
投稿: モンスリー | 2008.11.24 21:50
モンスリーさん、コメント感謝です。
>スペシャルズ、名前すら知りません。
ええ~??
モンスリーさんでもそんなことがあるんですね。
まあ実質活動期間は短かったようですし、80年当時だとモンスリーさんは小学生くらいですかね。
ムリもないかもしれませんね。
>この頃のテクノというとクラフトワークでしょうか。
いや、わかりません。(じゃテクノとか言うなよ)
クラフトワーク、全く聴いてませんし・・
当時はMやバグルスやELOがテクノの代表のように思っていましたが・・
>こちらには一度お目にかかりたいと思う40歳既婚中年男でした(笑)。
そっちに反応ですか、なんか芸風がぷく先輩に似てきましたね。(笑)
当時その先輩に「ツートーンですか?」と聞いたら、「そう、今流行ってんのよ」と言われたことを覚えています。
投稿: SYUNJI | 2008.11.24 22:31