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読んでみた 第24回 プログレッシブ・ロック入門

BLOGを始めて4年半になりますが、もしBLOGをやっていなかったらおそらくなかっただろう出来事がいくつもあります。
多くの方にご指導いただいたこともそうですし、そのうち4人の方とは実際にお会いできました。
またじゃじゃ麺富士宮焼きそばにも出会い、ユリイカに掲載され、ポリス再結成コンサートにも行くこともできました。

そして。
もしBLOGをやっていなかったら、おそらくプログレというジャンルには一生アプローチしないまま死んでいたと思います。
それくらい自分にとっては距離を置いた音楽だったわけです。(そんなの他に山ほどあるけど)
そんなあたしが、最近すっかりナイスなチョイスで有名なM市立図書館でまたも借りてみたのが、「プログレッシブ・ロック入門」。
まさに自分のような万年素人にとって指南書となる本ではないでしょうか。

Nyumon

「プログレッシブ・ロック入門」、編者はロック・クラシック研究会、版元は河出書房新社
定価1,785円、A5判で 208頁。
シリーズとしては「ロック・クラシック入門」てのもあるらしい。

5大バンドを中心としたアーチストの歴史や名盤紹介、業界ではプログレ者として有名な大槻ケンヂや高嶋政宏のインタビューなど、タイトルのとおり全編プログレ紹介の入門書である。
目次はこんな感じ。

1 プログレッシブ・ロックってなに?
 岩本晃市郎インタビュー―プログレッシブ・ロックとはなにか?
 対談・ROLLY VS 難波弘之―プログレッシブ・ロックを語る ほか
2 プログレ5大バンドを制覇せよ
 ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー ほか
3 プログレッシブ・ロックの系譜を知る
 プログレッシブ・ロック盛衰記
 プログレッシブ・ロックをさらに楽しむために―5大バンド以外のプログレ・バンド&代表作40 ほか
4 プログレッシブ・ロックの楽しみ方
 大槻ケンヂ・インタビュー―僕がプログレを聴くのは、音楽の趣味趣向がメインストリームにない自分を確認したいから
 スターレス高嶋(高嶋政宏)インタビュー―プログレッシブ・ロックは僕にとって音楽の本流 ほか

構成としては堅調にプログレ入門を説いた状態である。
本書の使い方としては、一通りの知識を学んだ後、あちこちに掲載される各アルバムのレビューで興味がわいたものから聴いてみればいいはずだ。

自分の好きな情報として「ファミリー・ツリー」がある。
プログレ好きな人にとっては鉄板なものだが、5大バンド全てのツリーが掲載されているのはとても良い。
ただひとつ欲を言えば、ツリーは全て70年代で終わっているので、できれば80年代以降も追ってほしかった。
このあたり「プログレと言えば70年代まで」という編集側の堅いポリシーのようなものを感じます。
あ、それはプログレ者の間ではやはり常識でしょうかね。
80年代のイエスやエイジアなんかは「プログレのアーチストがたわむれにやってみた実験ポップスに過ぎないのさ」みたいなもんでしょうか。(ややヒネています)

大槻ケンヂのエッセイ本はかなり読んでいるが、この人の着眼点と表現力は非凡なものがあるといつも思う。
この本ではインタビューなのだが、プログレ・アーチストのファッションセンスを嗤うくだりは文字通り爆笑である。
「プログレのアーチストって、もうちょっと考えようよってかっこうで来日する」
「クリス・スクワイアがカリブの海賊みたいなかっこうで来日したけど、太っていたのでスタン・ハンセンみたいだった」
など、さすがオーケンならではの表現で笑わせてくれる。
まあ来日時のカッコウが変なのはプログレに限らないとも思いますけど。

高島政宏がプログレ者なのはかすかに知っていた程度だったが、インタビュー記事を読むと半端でないことがわかる。
実際バンド組んでクリムゾンをコピーしたりもやるそうなので、ただの「プログレ好き俳優さん」では収まらないようだ。
変拍子が当然のプログレを好んで聴いてきたので、ミュージカルを演じる時も、他の役者が変拍子に苦労する中、全く違和感なくこなせたそうである。
人生、何が役に立つかわからないもんですね。

他はよくあるレコード・レビューのページ。
当然聴いてないものばかりなので、この情報を頼りに聴いてみる、という便利な本である。
なおボストンやジャーニーやスティクスやELOをプログレに含めるといった大胆な編集方針は、さすがに採用していないようだ。

しかし。
読んでいてふと思ったのだが、この本、果たして本当に入門書として使われることが多いのだろうか?
実際にはすでにかなりの量のプログレを聴いてる人が「ふふーん」とか言いながら自分の知識のスキマをパテやバースコークで埋めるような感覚で読んでみる、といったケースが多いんじゃないだろうか?
そもそもプログレ、「興味はあるけど聴いてない」という自分みたいなド素人はあんましいないわけで、世の中の人は「興味はあって充分聴いてる人」「興味もなく聴いてもいない人」に大別されると思う。
とするとこの本を手にする人の多くは、実は「すでに充分聴いてる人」なのではないか?

なのでプログレ好きな人からすれば、この本の内容はおそらく「やや物足りない」になると思われる。
入門書なので当然だが、それほど深い内容にまで踏み込んでおらず、検定で言えば3級程度なのだろう。
インタビューはおもしろいけど、レコードのレビューなどは「ああ違うんだよなぁ」「わかっとらんな」など解釈が割れたりするんじゃないだろうか?

そんなわけで読んでみました「プログレッシブ・ロック入門」。
自分のような初心者には当然入門書として実に有益な書籍なので、これを機にあらためてプログレの再受講と参りたいところですが、この本については個人的にはむしろプログレに詳しい方の評価を聞いてみたい気がします。
もし読んだ方がおられましたら、感想などお寄せいただければありがたいです。

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コメント

二度目の更新停止のお知らせにびっくりしたとともに、勝手にブログ密葬を行っていたぷくちゃんといいます。

お帰りなさいまし。

>プログレ好きな人にとっては鉄板なものだが、5大バンド全てのツリーが掲載されているのはとても良い。

あれって雑誌などでは結構読みにくい書体(というか手書き風なもの)でのっているケース多くありませんか?私は自分でゴシックで打ち直しています。(嘘)

プログレのグループって割と対等な立場のメンバーが多く存在するので、すぐにもめて分裂するのはSYUNJIさん好みでしょうね。(きめつけ)

投稿: ぷくちゃん | 2008.06.22 20:18

度重なる更新停止にも関わらず復旧後即座にコメントを寄せる先輩に「ぼくの大切なともだち」という映画を思い浮かべるSYUNJIといいます。(←観ていない)

>あれって雑誌などでは結構読みにくい書体(というか手書き風なもの)でのっているケース多くありませんか?

そうですね、この本の場合ツリーレイアウトはうずまき型で、個人的にはかなり見づらかったんですけど。

>すぐにもめて分裂するのはSYUNJIさん好みでしょうね。(きめつけ)

いえ、正解です。
あたくし的には離合集散が派手なイエスがいいですね。
ジェネシスは異動が少なくて物足りない・・

投稿: SYUNJI | 2008.06.22 22:39

お帰りなせ~♪

> 実際にはすでにかなりの量のプログレを聴いてる人が「ふふーん」とか言いながら自分の知識のスキマをパテやバースコークで埋めるような感覚で読んでみる、といったケースが多いんじゃないだろうか?
> とするとこの本を手にする人の多くは、実は「すでに充分聴いてる人」なのではないか?

・・・でしょうね。私自身、この本を読んだわけじゃないけど、そんな気がします。オーケンの記事のタイトル

「僕がプログレを聴くのは、音楽の趣味趣向がメインストリームにない自分を確認したいから」
が示唆的です。結局はこういう人たちが陰で読み(あるいは一瞥し)、ニヤリとする本なのでしょう。
しっかし、SYUNJIさんがオーケンの本を読んでいるとは・・・意外です。


ポケットプログレッシブ・・・(ちょっと欲しいかも)

投稿: ルドルフ | 2008.06.23 07:39

更新停止のお知らせに、、思わず「どこか旅行かな?」と思っただいまつです。

しかも、岩手は地震だったので東北地方ではないな、、と思っておりました。
今度は、東北地方にぜひお越しくださいませ、、。
そして、盛岡あたりで麺メニュー三昧の日々を送って欲しいですね、、。

それにしても、岩手は寒い!
最高気温15°です。

さて、プログレ。
自分もなかなか進んでいないな、、、。

投稿: だいまつ | 2008.06.24 19:50

ルドルフさん、コメント感謝です。

>結局はこういう人たちが陰で読み(あるいは一瞥し)、ニヤリとする本なのでしょう。

でしょうねぇ。
そもそもプログレに興味がないヒトは、この本を手にすることもあまりないと思いますし。
ぷく先輩もページのあちこちできっとニヤリとしているのでしょう・・

>しっかし、SYUNJIさんがオーケンの本を読んでいるとは・・・意外です。

ええ~?そうスか?
オーケンのエッセイはたぶんほとんど読んでますよ。
ロックと格闘技をあれほどセンスのある文章で語れる人はそういないです。

だいまつ親分、こんばんは。
地震、大丈夫でした?
あたしは今回は旅行ではなく、先週はちょっとめまいがひどくて・・なんとか復活しました。

>今度は、東北地方にぜひお越しくださいませ、、。
>そして、盛岡あたりで麺メニュー三昧の日々を送って欲しいですね、、。

いやー去年東北に行ったのですが、盛岡を素通りしてしまったことを今でも後悔しています。
いつかきっと盛岡で本場のじゃじゃ麺を・・

投稿: SYUNJI | 2008.06.24 23:52

高嶋さんが、かなりのプログレ者だというのは、2年くらい前(?)テレビで見て知りました。私にはちんぷんかんぷんでしたが、話すときの嬉しそうな表情がとっても子どもみたいでかわいかったです。
syunjiさんのブログのことが、ユリイカに掲載されていたんですか!すごいですね~

投稿: はまっこ | 2008.06.27 13:16

はまっこさんコメント感謝です。

>話すときの嬉しそうな表情がとっても子どもみたいでかわいかったです。

この本にもインタビューを受ける彼の表情が写真でわかるのですが、確かに非常にうれしそうです。

>syunjiさんのブログのことが、ユリイカに掲載されていたんですか!すごいですね~

いえ、たった1度の掲載で、それもほんの数行なのですが、いまだに過去の栄光にすがる小市民です・・

投稿: SYUNJI | 2008.06.28 18:27

SYUNJIさん、こんばんは。
大変ご無沙汰いたしました。改めて、よろしく
お願いいたします。

さてこの本ですが、私は昨年購入しました(笑)。
残念ながら今手元にありません。といいますのも、
会社の組合の福利厚生で図書の貸し出しを担当しており、そこに
寄贈してしまったのです。当然、借りる人はだれもいません。

>>大槻ケンヂのエッセイ本はかなり読んでいるが

実はこの本は大槻氏の箇所がもっとも読みたかったために
わざわざ購入しました。予想通り、爆笑モノでした。ああ、
会社の連中にこのおもしろさをわかってもらいたい、ひいて
はプログレにひたって、日々の憂うつ感を耽美な感じに変換
してもらいたいと思ったのですが、誰も(以下、略)。

>>とするとこの本を手にする人の多くは、
>>実は「すでに充分聴いてる人」なのではないか?

全くその通りです。私自身、プログレ本はレココレの記事を含めて
何冊か持っておりますが、念のため購入してどんなことが書いて
あるか確認しないと気が済まないのです。で、王道の評論が掲載
されていることを確認して「うむ」とうなずくワケです。
あとはまあ、キンクリの大量にあるCDで「宮殿」や「レッド」
以外に何がセレクトされているか、5大バンド以外にどのバンドを
紹介しているかをチェック、です。

投稿: モンスリー | 2008.08.15 18:16

モンスリーさん、お待ちしておりました。

>会社の組合の福利厚生で図書の貸し出しを担当しており、そこに寄贈してしまったのです。

シブイ会社の図書ですね。
もしかしてリッチー本とかあるんでしょうか?

>私自身、プログレ本はレココレの記事を含めて
何冊か持っておりますが、念のため購入してどんなことが書いてあるか確認しないと気が済まないのです。

やはりそうですか。
なんか版元の戦略のような気がしますが・・
純粋にプログレ入門書として読んでみた人はたぶんほとんどいないんじゃないかなぁ。
ちなみに今週は通勤BGMにクリムゾンを3枚ほど聴いていました。
「太陽と戦慄」にようやく慣れてきたような気がしているところです。
「気に入った」「はまった」というレベルには程遠いですが・・

投稿: SYUNJI | 2008.08.15 23:45

SYUNJIさん、こんにちは。
>>もしかしてリッチー本とかあるんでしょうか?

これを寄贈しましたが、言うまでもなく誰も借りません。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4827550042.html

これはもう少ししたら寄贈します。人気作家ですので
借りてくれるかもしれません。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4575235911.html

>>純粋にプログレ入門書として読んでみた人は
>>たぶんほとんどいないんじゃないかなぁ。

おっしゃる通りです。毎年毎年、様々なロックの「初心者向け
入門書」が発売されますが、ロック人口が増えたり、若い人の
間でロック、特に入門書で解説される60~70年代のクラシックロックが
大流行になったというのは寡聞にして知りません。
パフュームを聞くいたいけな男子高校生が、わざわざ大手書店の
ロック本コーナーへ足を向けてプログレ入門を手に取り、
「次はエマーソン・レイク・&パーマーの恐怖の頭脳改革を
聞かなければ」とか「フィル・コリンズはポップでプログレ
じゃないから、ジェネシスを聞こう」というふうにはなりません。
ついでに「CSN&Yって、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング
の略だぜ」って覚えて悦に浸る中学生も、この先出てこないでしょう。

ああ悲しいかな、ロック入門本。
しかし、ロックのいいところは、大御所がほとんど生存しており
しかも現役ばりばりのところだと思います。来年は必ず何度目かの
ロックの夜明けがやってくると信じております。(^^;)。

投稿: モンスリー | 2008.08.16 15:44

モンスリーさん、こんばんは。

>これを寄贈しましたが、言うまでもなく誰も借りません。

こういう本があるなんて、いい会社だなぁ。
あたしなら仕事そっちのけで読みふけりそうです。

>「次はエマーソン・レイク・&パーマーの恐怖の頭脳改革を聞かなければ」とか

高校生がこういう展開ってのは難しいでしょうねぇ。
親の影響で聴き始める子もいるかもしれませんが・・

>来年は必ず何度目かのロックの夜明けがやってくると信じております。(^^;)。

そうですね。
きっと若い女性がロックに詳しい我々中年のもとに殺到する時が来るはずです・・(きもい)

投稿: SYUNJI | 2008.08.16 21:10

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