聴いてみた 第47回 ザ・フー その3
思い出したように深夜に音楽の話題をふってみた偽装音楽ブロガーのSYUNJIです。
前回の「Who's Next」からだいぶ間があいてしまいましたが、モンスリー師匠のおすすめによりザ・フーのお勉強に久々に取り組むことにしました。(行き当たりばったり)
今回聴いてみたのは「ロックオペラ・トミー」。
ピート・タウンゼンドの構想による現代オペラ映画のサントラ盤で、アナログでは2枚組の大作である。
ただし評価については様々なようで、ザ・フーの最高傑作と呼ばれる一方で、退屈・意味不明といった厳しい意見もあり、いろいろな意味で問題作と言える。
なお映画のほうは、V.J.若によると著名なミュージシャンが続々登場する「コスプレ映画」だそうですけど・・・
すでに「My Generation」「Who's Next」でかなりザ・フー用の土台は自分の中にできていると思っているので、それほど不安はない。
特に「Who's Next」はここまで重ねてきた「聴いてみたシリーズ」の中でもトップクラスの内容だと感じているのだ。
いくらピートが腕を回そうがロジャー・ダルトリーが暴れようがキース・ムーンがマウントからタコ殴りをカマそうが、たぶん大丈夫だろう。
ところでドリー・ファンク・ジュニア、67歳で今月引退試合したんだそうです。
まだ引退してなかったのね。
ちなみにドリー、ポール・マッカートニーやジミ・ヘンドリックスと同い年とのことです。
ドリーとはとりあえず何の関係もないザ・フー。
果たしてザ・フー最大の問題作はあたしにどんな関節技をふっかけてくるのでしょうか。
・・・・・聴いてみた。
サウンドの路線は「Who's Next」のそれを継承してきていると思う。
どの曲も音がきれいだ。
ロジャー・ダルトリーという人は、声はそんなに美しいとは思わないが、静かなバラードから派手なシャウトまで器用にこなせるシンガーだと感じる。
いろいろな曲があるが、思ったより似た調子の音が多い。
コーラスを当てた曲がわりと多いが、よく聴くとハーモニーとしてはどれも微妙だ。
ビートルズやビーチ・ボーイズのような精緻なコーラスではなく、ところどころ誰か一人ちょっとだけはずれていたり。
「Christmas」という曲はそのズレをあえて試しているようなところがあり、ふつう「あああああー」となるところを「あっあっあっあっあ」とか「あわあわあわあわあわ」とか妙なハーモニーにしている。
ちょっと変な感じだが、これはこれで味わい深いものがある。
「ピンボールの魔術師」はエルトン・ジョンでしか聴いたことがなかったが、ザ・フー版はちょっと趣が違う。
エルトンのほうがハデに歌っており、はじけた感じなので、むしろザ・フーのほうはややおとなしい印象を受ける。
エンディングがやけに淡泊で短い気がしますが・・・
短いけれどシャープな曲がけっこう多い。
映画を見ていないのでよくわからないが、場面が変わるごとに効果的に使われていたんだろうか。
「Tommy Can You Hear Me?」「Smash The Mirror」「Sensation」あたりの流れはなかなか楽しい。
本領発揮といったところだろうか。
相変わらず印象的なのはドラムだ。
キース・ムーンのドラムにもだいぶ慣れてきたが、このドラムの音は響きとしては絶妙なレベルにあると思う。
実際の生音がいいのかアレンジしてるのか不明なんだけど、「メチャクチャ音デカイ」「すごく強い」「ものすごくハデ」というようには聞こえない。
深みも重さも実はそんなにない音なんだが、楽曲全体を支えるにこれほど存在感のあるドラムもないと思う。
素人なんで全然うまく表現できないのですが、なんつうか合掌造りの日本家屋の中の太い梁のような、ツヤはないけど安心感があるような、そんな質感をおぼえます。
個人的に「てんてん」「こんこん」というような乾いた固いドラム音は好きではないのだが、キースのドラムはそういう音からは対極にあるように思うのだ。
感想。
それぞれの曲の水準が相変わらず高いので、聴いていて退屈とか苦痛とかはあまり感じない。
特に楽器はどのパートもレベルが高い。
このへんがザ・フーのウリであることもだんだんわかってきました。
たださすがに20曲を超えるとちょっと冗漫なところはあるかなぁと思う。
全曲通しで聴かず、アナログでの1枚目と2枚目に分けて、それぞれをゆっくり聴いてもいいのかもしれない。
そんなわけで、聴いてみました「ロックオペラ・トミー」。
今回もザ・フーの水準の高さにうなりました。(ダサイ感想だなぁ・・)
三流なあたしが言うべき話じゃないと思いますが、ここまでレベルの高いバンドが、なぜ日本ではそれほど売れなかったのか、今さらながら不思議な気がします。
荒れるライブが有名な彼らですが、何もムリに暴れて話題を作らずとも、高い技量と楽曲の美しさで全く問題なくビジネスになってたんじゃないでしょうか。
次は「四重人格」にトライしようと思います。
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コメント
>ちなみにドリー、ポール・マッカートニーやジミ・ヘンドリックスと同い年とのことです。
フーよりもこちらの方に反応してしまったカナと申します。お世話さまです。
ドリーとポール、実は密かに顔が似ているの思っていました(激爆)。同い年だったとは・・・。
あっ、フーでした。わたしは実は「トミー」そんなに好きではなくて(再爆)曲単位で好きなのはありますがアルバム通じて聴くことはめったにありません。長いし。
フーはアルバムではファーストとか「ライブ・アット・リーズ」など勢いのあるものが好きです。あとは「フーズ・ネクスト」ぐらいまでで。シングル・ベストが一番凄いと思います(笑)。
投稿: カナ | 2008.03.16 02:49
カナさん毎度です。
真っ先にドリーに反応ありがとうございます。
当BLOGのコンプライアンス遵守に感謝です。
しかしあたしもドリーがまだ引退していなかったことのほうが驚きでした。
引退試合にはテリーは登場しなかったようですが。
>ドリーとポール、実は密かに顔が似ているの思っていました(激爆)。
そう言われれば確かに・・・
ちなみにあたしはドリーとロブ・ハルフォードが似てると言ってルドルフ編集長に絶賛されたことがあります。
さてザ・フーですが・・
>アルバム通じて聴くことはめったにありません。長いし。
「トミー」は確かにちょっと長いですね。
これまで聴いた中では「Who's Next」が一番いいと思っています。
投稿: SYUNJI | 2008.03.16 10:16
トミーとマツでトミーがトミ子に変身するのが好きだったぷくちゃんといいます。(嘘)
さて、フーの「トミー」ですか。フーの中ではそれほど好きではないアルバムです。一曲一曲はいい曲が多いのですが、無理やりコンセプトアルバムにしようとしたからかな?
「四重人格」の方がこなれていて素晴らしいアルバムだと思いますよ。
>V.J.若によると著名なミュージシャンが続々登場する「コスプレ映画」だそうですけど・・・
元気でやっているのかなあ・・・
投稿: ぷくちゃん | 2008.03.16 12:39
SYUNJIさん、こんにちは。
気に入っていただいたようで安心しました。
>>楽曲全体を支えるにこれほど存在感のあるドラムもないと思う
ですよね。当時のタウンゼントがいかにムーンを信頼し、楽曲の
中心に据えていたかがよくわかるアルバムです。
また、この作品ではインスト曲の魅力も存分に発揮しています。
「オーバーチュア」でのアルバムが始まるぞというわくわく感、
「スパークス」と「アンダーチュア」での、まるでロックの
巨人が地響きを立ててやってくるような迫力。これらはフーの
新境地ですし、この後の「四重人格」へと引き継がれていきます。
>>「Christmas」という曲はそのズレをあえて試しているような
「フィドル・アバウト」もヘンテコリンな感じですが、アルバム
全体として浮いていないのが、タウンゼントの手腕の確かさですね。
>>さすがに20曲を超えるとちょっと冗漫なところはあるかなぁ
そうなんです。CDで通して聞くと疲れます。内容について
もタウンゼント以外は「よくわからない」とはっきり言って
いますし。
ですが、ここらへんの問題は「四重人格」ですべて解決されます。
「トミー」が気に入られたのなら、「四重人格」は絶対におすす
めできます。私も最近よく聞いています。
投稿: モンスリー | 2008.03.16 17:10
ぷく先輩、トミマツ拾っていただいて感謝です。
この番組見てませんでしたけど。
でもドリーを拾ってくれなかったのは不満です。
>一曲一曲はいい曲が多いのですが、無理やりコンセプトアルバムにしようとしたからかな?
ザ・フーに少し慣れたせいもあるかもしれませんが、自分の印象ではやはり「Who's Next」よりもインパクトは弱かったです。
>「四重人格」の方がこなれていて素晴らしいアルバムだと思いますよ。
わかりました。
中華街では報告できるように善処します。(官僚答弁)
V.J.若、元気でやってんですかね・・?
モンスリー師匠、コメント感謝です。
今回もいろいろお世話になりました。
>当時のタウンゼントがいかにムーンを信頼し、楽曲の中心に据えていたかがよくわかるアルバムです。
徐々にわかってきたんですけど、ザ・フーってメンバーの結束はけっこうカタイんですね。
ただ自分としては、ドラムの印象はこれまで聴いた3枚ともそれほど変わらないです。
(ドラムを聞き分けられるほど感覚が鋭くない・・)
スタジオだとこれだけしっかりしているのに、どうしてライブで荒れる必要があったんだろう・・?
>CDで通して聞くと疲れます。
確かにそうですね。
あたしは通勤時間が異様に長いので、行き帰りで2度聴きましたが、さすがに疲れました。
「四重人格」、期待して聴いてみようと思います。
投稿: SYUNJI | 2008.03.16 23:21
SYUNJIさん、こんばんは。
>>自分の印象ではやはり「Who's Next」よりも
>>インパクトは弱かったです。
いやいや~あると思いますよ。熱心なフーファンの方には
怒られるかもしれませんが、「トミー」>「ネクスト」>
「四重人格」とどんどんレベルが上がっていくような気が
するのです。ちなみに私が気に入って聞いていった順は、
「ジェネレイション」→「リーズ」→「トミー」→
「ネクスト」→「四重人格」でした。「四重」はいきなり
聞くとさっぱりわかりませんでしたが、上記順番にきき
進むと「これは最高傑作かも!」と思うようになりました。
>>ザ・フーってメンバーの結束はけっこうカタイんですね。
ムーンがドラッグでまともに演奏できなくなったり、亡くなったり
したときはタウンゼンドは相当ショックだったようですね。
ただし、たくましくバンドを続け、現在も現役。ZEPの
よう潔くやめるのも、しぶとくがんばるのも、両方とも
ロックですね。
投稿: モンスリー | 2008.03.17 22:34
モンスリーさん、再びコメント感謝です。
>「ジェネレイション」→「リーズ」→「トミー」→「ネクスト」→「四重人格」でした。
これは年代順になってますよね。
あたしは「トミー」より「ネクスト」を先に聴いてしまいましたが。
「四重人格」はある程度彼らの音に慣れてから聴いたほうがいいということですかね。
>ムーンがドラッグでまともに演奏できなくなったり、亡くなったりしたときはタウンゼンドは相当ショックだったようですね。
キースが亡くなってもバンドは解散しなかったんですね。
ツェッペリンとはその点が違うのか・・
まあ最近ツェッペリンも違う意味でしぶとく稼いでいると言えますが・・
そういや先日ペイジが来日した時、テレビのインタビューで「日本のどの都市が好きか?」という質問にベタに「京都」と答えていました。
「広島」と答えてくれたらナイスだったのに。
投稿: SYUNJI | 2008.03.17 23:19
トミーとマツでトミーがトミコとマツに怒られて変身するのが大好きだった、、だいまつです。(ホント)
しかも、あだ名は自分「マツ」だったし、、。
自分はフーは四重人格をいきなり聞いて、それが大好きで、その後トミーを聞いて挫折し、その後発展しなかったという経歴を持っています。
しかし、その後タウンゼンドのアイロンマンは気に入って良く聞いてました。
ネクストは聞いていないので、これは聞かないと、、といつも思ってはいるのですが、、。
投稿: だいまつ | 2008.03.19 20:26
だいまつ親分もトミマツですか・・
せっかくぷく先輩とだいまつ親分のためにドリーのネタを仕込んだのに・・
「トミー」の評価はやや微妙ですかね。
「四重人格」のほうが評判いいみたいですね。
そういやこの「トミー」のジャケットはなんの絵なんでしょうか?
>ネクストは聞いていないので、これは聞かないと、、といつも思ってはいるのですが、、。
これはあたしからもおすすめします。(←素人のくせに・・)
投稿: SYUNJI | 2008.03.20 20:39