読んでみた 第19回 コミック・ガンボ
読んでみたシリーズとしては初めてですが、フリーペーパーを採り上げてみます。
ご存じの方も多いと思うが、コミック・ガンボ。
漫画週刊誌としてはおそらく初めてのフリーペーパーである。
創刊は今年の1月、価格は当然0円。
創刊当時は首都圏の主要ターミナル駅前での配布のみというスタイルをとっていた。
いつかもらいに行こう行こうと思いつつ、なかなかその機会もなく過ぎてしまったが、今日ようやく手にすることができた。
実はもらいに行ったわけではなく、電車の中で拾ったんですけど。
漫画雑誌そのものの売り上げ実績がどれも落ち込んでいるご時世に、あえてフリーで配布というスタイルで打って出たコミック・ガンボ。
一般読者としてより、業界の人間として非常に興味のある話である。
フリーペーパーということは、ふつうの漫画雑誌とは違って取次や書店への流通コストはかからない、ということになる。
通常の雑誌流通ルートで全国の隅々まで行き渡らせることができない代わりに、確実に需要のある大都市圏の駅前での配布を行うことで部数をさばくという方法をとっているわけだ。
理屈はともかく、漫画雑誌なんだから大事なのは中身であることは言うまでもない。
その中身、果たしてどんな漫画が載っているのだろうか。
・・・・・読んでみた。
今回読んでみたのはNo.40。
自分が知っている漫画家は江川達也とすがやみつるだけだった。
どの漫画も連載の途中を1回分見ただけなので、話のおもしろさがきちんとわかる状況ではないのだが・・
微妙な感覚ではあるが、思っていたほど品質は悪くはないと思う。
フリーペーパーなんであまり期待もしていなかったのだが、絵に関して言えば一定のレベルの作家は揃えてあるようだ。
漫画雑誌でもチカラのない雑誌になると、ガサツで粗悪な作品ばっかし、ということもよくある。
でも「こんなんで売れてんのかなぁ」と思うような雑誌が、毎週ちゃんと書店やコンビニに置いてあるから不思議だ。
しかしだ。
コミック・ガンボ、フリーペーパーだからこの水準でもまあいいかということになるだけで、純粋に漫画雑誌としてどうか?と問われれば、品質としてはやや厳しいところだと思う。
率直な感想として、残念だが続きを読みたいと思わせる漫画がない。
江川達也は漱石の「坊ちゃん」を連載しているのだが、今回読んだ範囲で言えば、全くダメだ。
つまらないというか、かなり痛い。
江川達也はクセのある作品が多いが、決して嫌いな作家ではない。
が、今回の作品(1話だけですけど)は自分にはおもしろいとは思えなかった。
すがやみつるはあの「ゲームセンターあらし」の成人版?の「サラリーマントレーダーあらし」という作品を連載している。
あらしが成長して証券マンになっている設定なのだが、ノリがやはり昭和テイストで少し痛い。
「ターゲットは30代40代の男性ビジネスマン」らしいが、この世代は生まれた時からすでに漫画雑誌が数多くあり、テレビアニメもやたら見て育ってきたはずだ。
漫画について最も目の肥えた世代に対し、この内容で読んでもらおう、読み続けてもらおう・・というのはかなり厳しい話じゃないだろうか。
たとえばこの内容で定価150円でもいいから書店においてみたら・・と考えればすぐわかる。
おそらく売り上げはヤングジャンプやモーニングには遠く及ばないはずである。
フリーだから読んでるヒトも多いだろうし、駅前で配布してもどんどん持っていってくれるのは、タダということを知っててもらうからだ。
版元側がこれを「多くの人に支持されている」と考えていたりしたら、ちょっとマズイかもしれない。
「タダなんだからそんなにチカラのある作家は集められない」というなら、出版した意味がない。
この内容で広告がいったいいつまで集められるのか、気になるところだ。
広告に法律事務所がいくつかあるのもなんとなく気になるけど。
全体を読んで感じるのだが、もう少しインパクトのある作品がほしいと思う。
漫画雑誌ではないが、その点同じフリーの「R25」は真剣に脅威だ。
明確に目的意識を持って「取りにいく」人がかなり多いところまで来てしまっているからだ。
内容は薄いが、次も読もうと思わせる作りになっていて、実際そのとおりだと思う。
コミック・ガンボを手にとってページをめくるとすぐにわかるのだが、紙がふつうの漫画週刊誌よりも薄い。
かといって感触が悪いわけではなく、むしろ表面はきめが細かく印刷もきれいだと思う。
少年誌などはかなり目の粗い紙を使っていて、インクの乗りも悪くて時間が経つと裏写りするようなこともあるのだが、それに比べるとコミック・ガンボはいい紙を使っていると思う。
実際の紙の種類は正確にはわからないので、ふつうの漫画雑誌とコストの面でどう違うのか、知りたいところだ。
コミック・ガンボはサイトでも漫画が読めるようになっている。
バックナンバーもあって「見逃しても大丈夫」ということだが、ノートパソコンで見ると若干判型が小さく、文字が読みづらいが、拡大も一応できるので、それほど問題ではない。
こうした試みはおもしろいし便利だ。
もちろんふつうの漫画雑誌はサイト上で作品を無料公開とはいかないだろうけど、雑誌のあり方を考える上で意味のある実験だと思う。
というわけで、コミック・ガンボ。
漫画週刊誌でフリーペーパーという新しい出版方法は、業界のしくみを考え直す形で一石を投じていると思う。
あとは漫画の品質をどう向上させて採算や利益を維持するかだ。
もちろんこんな形での出版で内容がむちゃくちゃおもしろかったら、既存の漫画週刊誌にとっては非常に脅威なんですけど。
自分としてはいろいろ考えさせられる雑誌なので、シンから楽しめなかったのかもしれません。
あと「コミック・ガンボ」という名前は、ちょっとセンスがいまいちではないかと思いました・・・
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