読んでみた 第15回 暴れん坊本屋さん
本も雑誌も読まない出版社勤務の三流サラリーマン、それがあたし。
いばれる話じゃないんだが、最近はとうとう漫画も読まなくなってしまった。
少し前までは「島耕作」くらいは追っかけてたんですけど・・
そんな状態のあたしですが、今日ご紹介するのは漫画。
「暴れん坊本屋さん」。
「暴本(あばほん)」とも言うそうですが、ただの漫画ではありません。
作者は漫画家でありながら書店の店員でもあり、書店のしくみや書店で起こる様々なできごとを、かなり演出過剰気味につづるエッセイ漫画です。
全3巻で版元は新書館。
判型はA5、少し大きめの青年誌単行本サイズ。
この漫画、人気があることは業界紙で知ってはいたのですが、全然読んだことがなく、今回3巻を一気に読んでみました。
さて舞台はチェーン店と思われる郊外の書店なのですが、これが臨場感あふれまくり。
あたしは版元の人間ですが、若い頃は研修などであちこちの書店へ営業に出向いたこともあり、書店のしくみや店内の雰囲気など一応は知っています。
そういう立場の人間からすると、この漫画、大変おもしろいです。
まあ「内輪ウケ」「楽屋オチ」と言われても仕方ないかもしれませんけど、いやあホントにおもしろいんです。
ある版元の営業マンに強引に注文を入れられ、書店員である作者が苦しそうについ番線を押してしまうところとか、取次からの山のような配本が台車に乗ってやってくるときの「キュラ・・キュラ・・」という車輪の音とか、お客の注文に対してなかなか思い通りに入荷されない話とか、よくわかるんですよ。
この描写は確かに書店の人じゃないとできません。
「スリップ」「9面平積み」「シュリンク」「パターン配本」など、業界用語を楽しく解説してくれてるので、業界の人でなくてもふつうに漫画として楽しめます。
作者の久世番子氏は本来は思春期の少年少女を描く作品が多いそうですが、いわゆる腐女子が支持するところの「BL系」(ボーイズ・ラブという)にも詳しいようで、この「暴れん坊本屋さん」にも時々唐突にそっち系のコマが登場したりします。
「暴れん坊本屋さん」はギャグ漫画ですが、元々の画力がしっかりした作家さんなので、絵については安心して見ていられます。
絵がヘタな漫画って、やっぱ読むと疲れるし。
作品中の番子さん自身はふつうの人間の姿ではなく、ペンギンというかオバQというか、首がどこなのかわからないワンボックス体型で、頭には毛が1本しかなく、服も着ていないような状態。
また新書館の編集担当者もよく登場してるのですが、この人は顔面に大きく「担」と書いてあるキャラクター。
せっかくの画力がありながら、この設定はもったいない気がしました。
他の店員はみんなふつうの人間の姿だし、番子本人だけがオバQなのはちょっと違和感。
漫画家の自画像って、照れもあるんだろうか、結構適当な描かれ方が多いけど、もう少し人間ぽく描いてもよかったんじゃないかと思いました。
まあ読んでるうちにすぐ慣れましたが。
そんなわけで「暴れん坊本屋さん」。
久しぶりにおもしろい漫画に出会いました。
作者は最近とうとう書店をやめて漫画家に専念することになったそうですが、3巻だけでなくもっと続けてほしいと思う作品です。
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コメント
SYUNJIさん、こんにちは。
「暴本」は図書館で1巻を借りて、あまりの面白さに結局1~3巻買っちゃいました。
ご存知かもしれませんが、番子さんは、最近は「Beth」という雑誌で本人の漫画歴をたどるエッセイ漫画を描いています。これも面白いです。
http://bethnet.jp/pc/4koma/index.html
ここでも四コマ漫画を描いています。
投稿: JT | 2007.06.23 18:13
速攻、、カナさんからコメント来そうな、、記事ですね。
カナさんも大絶賛でお薦めのまんがですからね。
しかし、、この頃、、まんがを全く読まなくなってしまった私。
どうしたものなのか?、、、
ネットのせいですけど。
子供のころから、本屋が一番好きなスポットでしたので、このマンガは読んでみたいですね。
後、本屋の従業員が書いた面白そうな本屋の実状をかいた本がこの前、見かけたんだよな、、、。
やっぱり本を買うのはネットではなくて、本屋です。
どうしても、ネットでは買えない私。
古いタイプの人間ですよ。つくづく、、。
投稿: だいまつ | 2007.06.23 23:46
毎度お世話になります。
カナ・・・・じゃなくって穴金です。
TBさせていただきましたが、「暴れん坊本屋さん」は個人的に縁の深いマンガです(笑)。番子さんも、昔、働いているとことを見たことあります(多分)。
マンガが売れたので今はもうバイトはしてないと思いますけどね。こちらも書店の現場を離れてしまったので・・・。
あ、3巻買ってませんでした(汗)。
投稿: 穴金 | 2007.06.24 06:48
みなさまコメントありがとうございます。
この漫画が話題になってからけっこう時間が経っているようで、このあたりのあたしのズレっぷりにみなさんあきれて反応もないのではないかと危惧していました・・
JTさん、情報ありがとうございます。
この雑誌も全く知りませんでした。
この四コマも雑誌編集部の内情がわかっておもしろいですね。
ちなみにあたしはその昔講談社の入社試験で落ちた経験があります。(←聞いてねえよ)
だいまつ親分、コメント感謝です。
速攻、穴金さんからもコメントいただきました、、、。
>やっぱり本を買うのはネットではなくて、本屋です。
自分もそうですね。
あまり本を買うほうではありませんが、商売柄、書店には足を運ぶことも多いです。
やはり自分の目で確かめて買いたいですし、棚を作った書店員の熱意が伝わる書店はすごいと思います。
ネットは確かに便利ですが、ほしい本を探す時はできるだけ書店で探すようにしています。
穴金さん、毎度です。
TBありがとうございます。
番子さんから色紙をもらってたんですか!すごいですね。
しかも穴金さんのお店の近くだったとは・・
確かにご本人はもう書店では働いていないそうですが。
番子さんが「漫画家」として都内の書店でサイン会をした時、サインをもらう人の行列に、つい書店員として「レジに並ぶお客さんを急いでさばく」ように反応してしまう、という話には大笑いしてしまいました。
ムリな話かもしれませんが、この人にはやはり書店の仕事も続けてほしいですね。
投稿: SYUNJI | 2007.06.24 11:23
こんにちは。一時、店舗設計の仕事をやっていた時に書店ばかり注文が来て、気が狂いそうになったぷくちゃんといいます。
もう書店によって棚のピッチが違うし、こちらは弱者なので言いなりだし大変でした。書店に行って什器を見るたびにあの日の悪夢がよみがえります。
上京しても品川のインターシティにある○○書店や、浜松町の駅の構内にある○○書店には決して近づきません。最も一番近づかないのは郡山の巨大な書店です。(←リアルすぎる2週間泊まりこみの最悪の想い出が・・・)
この漫画、絵が嫌いなので見ていません。でも皆さんご推薦、今度チェックしてみます。
投稿: ぷくちゃん | 2007.06.27 06:59
ぷく先輩、コメント感謝です。
書店の棚まで作っていたとは・・・マルチタレントぷく・・・
確かに書店ごとに棚のサイズは全然違いますね。
というか版元がでたらめな判型ばっか出版するから?
まあそんな経験をお持ちの先輩でしたら、この漫画もきっと楽しめますよ。
ちなみに版元が用意する、金属製の四面四段の縦長でくるくる回る、絵本とか入れる「回転ケース」ってのもあります。
(文具店ではんこ入れて売ってるくるくるケースと原理は同じ)
場所をとらずたくさん本が入り、店内を自由に移動できて良いのですが、だいたい子供がおもしろがってブン回すんで、遠心力で本が飛び出てしまうというお約束な光景が展開されます。
投稿: SYUNJI | 2007.06.29 23:37