見ていない 第14回 いかすバンド天国
90年代に突然巻き起こったバンドブーム。
そのきっかけともなったのが「いかすバンド天国」、通称「イカ天」である。
正確には「平成名物TV」という番組の「三宅裕司のいかすバンド天国」というコーナーだそうだが、ほとんど見ていない。
「イカ天」は89年から90年にかけて2年弱の間放送されていた。
関東ではTBSで土曜深夜の放送だったが、他に見る番組がないような時にぼんやりと見たことがある程度で、コーナー全編を通して見たことは一度もなかった。
基本的に洋楽にしか興味がない自分にとって、日本のバンド(しかもアマチュア)を追うような行為は考えたこともなかったのである。
ところが当時自分の周りではこの番組に夢中になっていたヤツが多かった。
デビュー前の時点でバンドを知り、どこまで勝ち抜くかを見届けるのが楽しいらしい。
実際早くから目をつけたバンドがイカ天キング・グランドキングと進み、メジャーデビューしたりすると「育てた」ような気分になったそうだ。
このあたりが番組の人気の秘密でもあったのだろう。
見ていない自分でも、いくつかのバンドの名前は知っていたりするので、当時のヤングの音楽文化にかなり強い影響力を持っていた番組であったことだけはわかる。
カブキロックス、BEGIN、人間椅子、マルコシアス・バンプ、宮尾すすむと日本の社長・・・
歴代のキングの行く末はそれぞれだと思うが、その中で実際に彼らの音楽に少しだけふれたことがあるのが「たま」だ。
たまはイカ天出身の中でも最も出世したバンドだろう。
友人にも夢中になっていたヤツが多く、当時そいつらと軽井沢や伊豆あたりにクルマで出かけたことがあったが、車内でも延々たまのテープをかけていた。
自分の印象ではコミックバンドの一種だと思っていたが、詞にしても歌や音にしてもそのセンスがいまいちピンとこなかった。
「オゾンのダンス」「学校にまにあわない」「さよなら人類」といった、歌詞もコンセプトもバラバラで意味不明な曲をずうっと聞かされたが、残念ながら自分の好みではなかった。
その後も目的意識を持ってイカ天を見たことは一度もなく、知らない間に終了していた。
見る気があまり起きなかったもうひとつの理由に、三宅裕司があまり好きではないというのもあった。
今でもふつうにテレビで見られるタレントなのだが、言ってることにいまいち笑えないのである。
劇団の座長だということはわかるのだが、テレビ番組でもそのスタンスがあまり変わらず、笑いをとるのに徹しきれていないところがどうにも不満なのだ。
番組の中で歌っている姿はあまり覚えていないが、イカ天出身の中でもう一人印象に残っているのが池田貴族である。
「remote現象」というバンドのボーカルだった貴族は、その不敵な態度や言動がかえって反響を呼び、その後コアな霊感タレントとしてテレビに時々出ることになる。
深夜の超常現象やオカルト特番などで時折見ることがあったが、番組進行や共演者との対話なんか無視したような発言に、「ナマイキなヤツ」と思いながらもなんとなくひかれるものはあった気がする。
(ナマイキとか言ってますけど、実はあたしより年上です。)
しばらくして貴族は全く別の話題によって再びメディアへの露出が増えることになった。
ガンにかかっていたのである。
しかも相当進行が早く、余命宣告をされたことも公表していた。
大槻ケンヂの本に貴族の闘病の話が書いてあったが、ガンのステージが末期まで進んだことを大槻ケンヂやみうらじゅんに自慢したりしていたらしい。
しかし闘病を境に貴族のキャラクターは大きく変わっていく。
生まれたばかりの娘のために延命を決意して4度も手術を受け、生前葬と銘打ってコンサートを開き、娘に捧げる歌を歌い、多くの人の支持を集めていた。
そこにはナマイキな霊感タレントの貴族の姿はなく、実は人一倍純粋で、生きることに貪欲で誠実なミュージシャンであり父親でもある池田貴がいた。
このあたりはテレビでドキュメンタリー番組として放映されたので、ご存じの方も多いだろう。
残念ながら池田貴族は21世紀を待たずに亡くなった。
今でもネットのあちこちで彼の残した文章を見つけることができる。
自分は貴族の曲はほとんど知らないが、曲よりも本人の生き様が人々の記憶に残った珍しいミュージシャンだと思う。
というわけで、いかすバンド天国。
DVDなどが出ているのかどうかわからないが、イカ天はドラマと違ってリアルタイムで楽しむべき番組だったと思うので、仮に今映像があって見直したとしても、あまり意味はないかもしれない。
音楽や映画は後追いでも楽しめることも多いが、テレビ番組(特にバラエティ)は、やはり進行形で楽しむものなんだということを、このシリーズを始めてみて痛感している次第です。
おそらく熱心に見ていた方も多いと思われますが、当時の思い出や応援していたバンドなど、コメントいただければ幸いです。
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コメント
おお、こんなの見た事ありません。相原勇が嫌いだったので。
たまは友人が大好きでよく聴かされました。今で言うところのサンボ・マスターですかね。(←全然よくわかっていない)
多くのバンドが出てきましたが、残っているのは誰なんだろう?それさえもわからないのに最初にコメントしてすいません。
投稿: ぷくちゃん | 2007.05.04 19:53
ぷく先輩、コメント感謝です。
>おお、こんなの見た事ありません。相原勇が嫌いだったので。
相原勇が出ていたのはご存じなんですね。
この人は今どうしているんでしょうか。
>たまは友人が大好きでよく聴かされました。
>今で言うところのサンボ・マスターですかね。(←全然よくわかっていない)
この発言からすると、先輩もたまは趣味ではない、ということですかね。
>多くのバンドが出てきましたが、残っているのは誰なんだろう?
自分が知っている範囲ではBEGINは残ってますね。
たまは解散してるようです。
投稿: SYUNJI | 2007.05.04 21:32
毎度お世話になります。
当時高校生で、まさにバンドをやっていた頃だったので、当事者意識もあって(笑)、一番人気があった頃は毎週欠かさず見てました。
バンドブーム真っ盛りでしたが、本当に音楽が好きで、イカ天ブームの前からバンドやってたヤツと、イカ天見て「なんか面白そうだ」とか「自分達でもできそうだ」とバンド結成したヤツとの間には、志に天と地ほどの差があった、と言っておきましょう。自分ですか?当然、前者です(汗)。
ウケ狙いの一発屋(乳首を青く塗ってるだけとか、海パン一丁で演奏したりとか)が多くて、くだらないバンドがほとんどでしたが、「アホだな~」とか言ってお笑い番組の感覚で見てました。
そんな中にも、たま~に上手いバンドとかカッコいいバンドが出てくることがあるので侮れませんでした。
「人間椅子」は一見お笑い風でしたが、江戸川乱歩とブラック・サバスを掛け合わせたコンセプト的には素晴らしいと思ってました。
あとは「マルコシアス・バンプ」は演奏の上手さにぶっ飛んで、翌週学校で話題になりました。特にベースのヤツ。
一番の衝撃は「ブランキー・ジェット・シティ」でした。まあイカ天に出なくても、いずれ台頭してきたでしょうけど。
投稿: カナ | 2007.05.05 01:09
カナさん、毎度です。
>当事者意識もあって(笑)、一番人気があった頃は毎週欠かさず見てました。
なるほど。
自分の周りでは実際にバンドをやっていてこの番組を熱心に見てたヤツはあまりいなかったと思います。
>「マルコシアス・バンプ」は演奏の上手さにぶっ飛んで、翌週学校で話題になりました。特にベースのヤツ。
今回記事を書くにあたってネットでイカ天をいろいろ調べましたが、やはりマルコシアス・バンプとたまの対決が一番盛り上がっていたようですね。
イカ天が放送されていた当時、自分はすでに学校を出て働いていました。
カナさんのようにもう少し若かったら、学校での話題についていくために見ていたかもしれない・・と思いました。
投稿: SYUNJI | 2007.05.05 09:53
SYUNJIさん、こんにちは。
ちょっと前に、知り合いから借りたビデオで「ブランキー・ジェット・シティ」と「マルコシアス・バンプ」の番組出演時の映像を観たばかりです。
この番組、バンドブームに便乗した番組という意識があったからか、ほとんど観ていません。(ひねくれ者)
年齢的なものもあり、私の周りはこの番組に対して冷めた見方をする人間が多かったような気がします。
売れてよく流れていた「たま」の音楽には全く馴染めませんでした。
>一番の衝撃は「ブランキー・ジェット・シティ」でした。まあイカ天に出なくても、いずれ台頭してきたでしょうけど。
と、カナさんが言われていますが、全く同感です。
人気を保ちつつ、けっこう長続きしたのもわかります。解散後も、メンバーそれぞれ活躍してますしね。
番組を観ていないと言いながら、なぜか当時から「ブランキー・ジェット・シティ」ファンの私です。〈矛盾?)
あの頃、ブランキーが地元のライブハウスに来たことがありました。
対バンの、地元で有名だったバンドが「作りもんのスター様のお出ましだぜ」「ここはイカ天じゃないぜ~」等など、めちゃくちゃ観客を煽って完全アウェー状態(大半が地元バンドのファン)だった中、ブランキーが登場。激しいブーイングの中演奏を始めたら、その凄さにブーイングがピタッと止まった・・・その光景が痛快でした。
懐かしい思い出です。
投稿: Junk | 2007.05.05 12:29
Junkさん、コメント感謝です。
>この番組、バンドブームに便乗した番組という意識があったからか、ほとんど観ていません。(ひねくれ者)
ありゃ、そうですか。
今のところですが、イカ天見ていた方が思ったより少ないこと、「たま」の人気も今ひとつなことに少し驚きです。
あと池田貴族に誰も反応してないのもなんとなく寂しい、、。
>激しいブーイングの中演奏を始めたら、その凄さにブーイングがピタッと止まった・・・その光景が痛快でした。
カッコイイ話だなぁ。
ブランキー・ジェット・シティは全く知らないのですが、椎名林檎がメンバーを題材に曲を作ったほどのファンだったそうですね。
このバンドは今はどうなっているんでしょうか?
投稿: SYUNJI | 2007.05.05 18:18
SYUNJIさん、ども。
中学時代はテレビアンテナ無し。
高校時代は衛星放送のみ。
よって地上波放送は全く見ることが出来なかった自分です。
ですので、この番組も見たことないです。
自分も、この番組での一番の出来物は、ブランキージェットシティーだと思いますね。
でも、アルバムをきっちり全部持って聞いている訳でもないのですが、、。
このバンドのメンバーもいろいろ活動しています。
浅井(ベンジー)がソロでツアーもしていますし、いろんなユニットを組んだりして名曲も沢山あります。
シャーベッツの中の一曲は自分にとっても忘れられない、、という思い出もあります。
何だか、、カナ・JUNK・だいまつのブランキー3連星ジェットストリームアタックがコメント欄で炸裂、、という感じですね。(チラッとガンダムネタ)
投稿: だいまつ | 2007.05.05 20:07
きぃー!やはり、Junk、だいまつ、カナは同世代!さあSYUNJIさん、輝ける40代グループへ!・・・・・はっ!確かJunkもどちらかと言えばぷく、SYUNJI世代だったのでは!ゆるせーん!ぷく、いきまーす!(←知らないのにガンダム用語使う)
ちなみに女性週刊誌をこよなく愛する私、池田貴族には詳しいです。「TVチャンピオン」の甘味大食い王にも池田貴族というのがいました・・・
投稿: ぷくちゃん | 2007.05.05 21:26
僕の住んでいる地方では当初放映がなかったので途中から見てました。「たま」あたりからブランキージェットシティーあたりまでは見てました。
TBさせていただいた記事に書いていますけど、グランドイカ天キングに輝いたバンドはどれも演奏の実力はありました。カナさんも書いてますが、イカ天キングにはなれなかったけど人間椅子もかなり良かったです。人間椅子は、イカ天がNORMA JEANというバンドのデビューさせるための出来レースをしてしまったために、残念ながら落選してしまいました。このエピソードは出張の時にたまたま放送を見たので覚えています。この事件の後、審査員の入れ替えがありました。
現在活動中のバンドとしては、BEGIN以外にLITTLE CREATURESという当時の高校生バンドがまだ現役で残ってます。その時の演奏はまだまだ修行中という感じでしたが、楽曲のセンスは光ってました。
皆さん好きなブランキージェットシティーですが、これはやはり別格でしたね。まー、ドラマーの中村達也はスターリン、スタークラブ、ラフィンノーズ(僕はどのバンドもほとんど聴いたこと無いですけど、イカ天での最初のバンド紹介時に言ってました)などで活躍していたプロのドラマーなので、他のバンドとは実力が違ったのは当然ですけど。
投稿: getsmart0086 | 2007.05.05 21:28
だいまつさん、コメント感謝です。
イカ天視聴率は依然低いみたいですが、ブランキー人気が驚くほど高いですね。
>浅井(ベンジー)がソロでツアーもしていますし、いろんなユニットを組んだりして名曲も沢山あります。
なるほど・・
イカ天出身バンドであっても、その実力も人気も様々だったようですね。
・・と思ったらぷく先輩、再びのコメント感謝です。
>きぃー!やはり、Junk、だいまつ、カナは同世代!
(ぷく先輩とアタマ寄せ合いながら)若ぇよなぁ、あいつら。
坊やだからさ。(←知らないのにガンダム用語使う)
>「TVチャンピオン」の甘味大食い王にも池田貴族というのがいました・・・
それは池田貴公子。(いちおう誠実に突っ込んでみる)
ホントに貴族と区別がつかない人もいるみたいですけど・・
getsmart0086さん、コメント&TB感謝です。
>ドラマーの中村達也はスターリン、スタークラブ、ラフィンノーズ
どのバンドも名前がかすかにわかる程度ですが、いずれにしてもブランキーはプロ経験のあるメンバーがいて実力は別格だったんですね。
みなさんから名前があがるのも当然ということでしょうか。
TBのエントリ拝見しましたが、実際に出場していた方からコメントが来てましたね。スゴイですね・・
投稿: SYUNJI | 2007.05.05 22:00
こんにちは。
『はねトび』の「短縮鉄道」のコーナー(略語の正式名称を答えるコーナーです)で「バンプ」と出た瞬間「マルコシアス・バンプ!!」と思ってしまったYAGI節です。
ちょっと出遅れてしまいましたが、『イカ天』見てましたっ!!
最初は、
「邦楽興味ないし、先物買いとかアマチュアにも興味ない」なんて思っていたのに、いつの間にかハマってました。
特にマルコシアス・バンプは大好きでメジャー・デビュー前のCD買っちゃいました。
アマチュア・バンドのCDがその辺で簡単に買えたなんて、なんだかウソみたい。
なぜかマルコシアス・バンプの4週目の映像だけが残っていたので、昨夜見返しました。懐かしかった~。
当時の知り合いでベースをやっていた人が「ベースって目立たないからなぁ」と言った時に、「えっ、でもマルコシアス・バンプはベースが目立ちまくりじゃん」と言ったら、「あれは今日本で一番カッコいいベースを弾くって言われてる位だし例外だよ」と言われてなんだか嬉しかったのをおぼえてます。
ブランキーには私もホントにホントに衝撃を受けました。
フジ・ロック・フェスティバルで見られて嬉しかった。
嬉しかったといえば、VodafoneのCMで使われた浅井さんのソロ「Rebel Rebel」はボウイの完コピで、「ボウイの事好きだったのかぁ」と嬉しかったです(^^;)。
投稿: YAGI節 | 2007.05.06 22:10
YAGI節さん、コメント感謝です。
たぶんイカ天はご覧になってるんじゃないかと思っていました。
>特にマルコシアス・バンプは大好きでメジャー・デビュー前のCD買っちゃいました。
>アマチュア・バンドのCDがその辺で簡単に買えたなんて、なんだかウソみたい。
「その辺で買った」ってのはふつうのCD店で購入、ということでしょうか?
マルコシアス・バンプにはそれだけ注目が集まっていたんですかね。
今インディーズのCD置いている店は結構ありますけど、当時のイカ天の影響力はやはり大きかったんでしょうね。
>ブランキーには私もホントにホントに衝撃を受けました。
>フジ・ロック・フェスティバルで見られて嬉しかった。
フジロックにも出ていたんですか。
やはり別格ですね。
・・・ここまでブランキーにはほとんどの方がコメントしていただいてますが、池田貴族には誰も反応しない・・
来たと思ったら池田貴公子だし・・
投稿: SYUNJI | 2007.05.06 23:28