その昔、雑誌は音楽を聴く上で非常に重要なメディアだった。
ミュージック・ライフで洋楽の基礎をお勉強し、FMステーションでエアチェック番組を追い、ロッキンオンで偏向した編集に舌打ちし、月刊炎でもめてるバンドの情報を得てほくそ笑む・・・
後半かなり気持ち悪いですけど、自分の場合は雑誌で情報を仕入れて満足してしまい、肝心の音楽を聴かずに過ごしてきたアーチストが山ほどあったという状態である。
だから聴いてないシリーズ100回以上もやってるんですけど。
時代はすっかり様変わりし、曲はネットで買い、デジタルオーディオで聴き、情報もネットで得るのがふつうの姿になっている。
こんな自分でさえ、音楽を聴くのはほとんどMP3プレイヤーになってしまった。
今のオーディオとミュージシャン情報を支えるメディアとしての雑誌ってのはあるんだろうか?
と思って探してみたら、見つかったのが「Digital Audio Fan」。
その名のとおりデジタルオーディオでの音楽鑑賞を前提に、ハード(デジタル・ギアと呼ぶらしい)、ソフト(アーチストやCDレビュー)を紹介する雑誌である。

版元は毎日コミュニケーションズ、判型はA4、月2回発行。
今回買った8号(2007.3.21号)は780円である。
創刊は2006年らしい。
買うまで存在すら全く知らなかった。
目次を見るとこんな内容である。
○特集 最新デジタルオーディオプレーヤ徹底調査
カタログ情報だけじゃ物足りない! +αを知って納得
○特集 最新音楽ケータイ最速詳細レポート
さらに高性能な音楽プレーヤを搭載した新機種を徹底解剖!
○特集 最新スピーカ・ヘッドフォン紹介
好きな音楽はやっぱりイイ音で聴きたい!
○SPECIAL
・これだけは聴いておきたいNapster(TM)とっておき楽曲リスト
・ドコモ×Napster(TM)で音楽ライフが何倍も楽しくなる
・タッチパネルを搭載したiPodケータイ「iPhone」最新情報
・ちょっと贅沢イヤフォンセレクション
・着うたフルで音楽をもっと楽しむ
・デジタルオーディオプレーヤで英語力をアップ!
○CATALOGUE
デジタルオーディオプレーヤ&音楽ケータイ現行機種カタログ
○DOWNLOAD
パソコン音楽配信サイトInfo. [NEW]
○ARTIST
・対談
岡林信康×サンボマスター
・Feature Artist
デヴィッド・ボウイ
・Interview
宇多田ヒカル/絢香×コブクロ/BEGIN/NONA REEVES
いきものがかり/ノラ・ジョーンズ
カイザー・チーフス/パオロ・ヌティーニ/ラリキン・ラヴ/The View
・CD REVIEW 1
GLAY、椎名林檎&斉藤ネコ、Chara、木村カエラ、CHAGE and ASKA、
Fairlife、甲斐よしひろ、鈴木雅之、ACIDMAN、スネオヘアー、
松任谷由実、PUFFY、スガ シカオ、ウルフルズ、細野晴臣 ほか
・CD REVIEW 2
ザ・フラテリス、エルヴィス・パーキンス、マニー・マーク
ロバート・ランドルフ&ザ・ファミリー・バンド
クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー、ケルティック・ウーマン
ケニー・ギャレット、ディオンヌ・ワーウィック ほか
・オンラインソフトで快適オーディオ生活
・日本音楽年代記(ジャパニーズ・ミュージック・クロニクル)
[林真理を中心として見た、70年代後半のポップ・シーン]
・Early Music Instrument [高橋理恵子]
構成はかつてのFM雑誌とあまり変わらないと思う。
まず巻頭に岡林信康とサンボマスターの対談&ライブレポートを持ってきている。
異色の組み合わせとも言えるが、個人的には我々の世代が置き去りにされたという感覚がある。
単にどっちも聴いてないだけですけど。
続いて特集としてのデジタルオーディオ製品の紹介。
オーディオ本体・オーディオ対応の携帯・スピーカーやヘッドホンがたくさん載っている。
ただし書いてあることは、どちらかというと一通りデジタルオーディオのなんたるかを理解した上での記述になっており、これから初めてデジタルオーディオを買うという人にとってはやや高度な内容かもしれない。
また今回は中に綴じ込み別冊のような感じで「ipod fan」というipod限定の特集ページがある。
これもすでにipodを持っている人向けの内容のようだ。
自分がMP3プレイヤーを買ったのは2年前だが、当時はすでにipod全盛であり、日本の大手オーディオメーカーは、ソフト側の権利関係などの理由もあってか、ほとんどと言っていいほど製品を出していなかった。
しかしこの雑誌を見ると状況がかなり変わってきているのがわかる。
クリエイティブ、アイリバーといった先駆のブランドも健在だが、ソニー、ケンウッド、シャープ、パナソニック、東芝などもふつうにラインナップを揃えている。
こんな商品は大手メーカーの技術をもってすれば開発などたやすいはずだ。
また商品デザインもやはり大手のものはオシャレである。
こうした商品と並んでページをさいて紹介されているのが携帯(電話)だ。
今時携帯を電話機能だけの利用で使う人もあまりいないと思うが、どのメーカーでもキャリアでも、音楽を聴く機能も当たり前についているものがたくさん売られている。
たった2年でこの変わりようは驚くばかりだ。(じじい)
後半は主にアーチスト情報のページである。
インタビューもCDレビューも思ったよりたくさんのアーチストを採り上げている。
が、インタビューは文章としては短めで、相当編集してあると思われる。
そのアーチストのファンであれば物足りない量だ。
宇多田ヒカルのインタビューも1ページしかない。
インタビューとCDレビューは2部構成だが、1が邦楽(死語?)、2が洋楽である。
もう業界ではこんな区分はなくなったのかと思ってたけど、まあ自分のように洋楽しか聴かない偏屈な読者でも読みやすいように配慮しているのだろう。
ただ残念なことに洋楽CDページで紹介されているアーチストは、今回はほとんど知らなかった。
聴いてないシリーズなどと言って古いものばかり漁っている中年にとっては、さすがにこのテの雑誌の情報は少し若すぎるかもしれない。
連載ものの中に「オンラインソフトで快適オーディオ生活」というコーナーがある。
デジ夫・デジ子という登場人物が対話形式でオンラインソフトを紹介するページなのだが、こんなのはすでに使い古された手法でしかない。
企画構成が編集によるものかライターのしわざかは不明だが、いずれにしろ書いた本人はあまり若くないと思われる。
デジ夫はPCに強くややオタクが入ったクド目の年いったオトコ、デジ子は若くてクール・・という設定なんだが、構成やセリフ回しはかなりスベリ気味でイタイので、なんだかそっちが気になって記事内容に集中できなかった。
21世紀のデジタルオーディオ情報誌なのに、こういう編集をしていてはダメである。
パソコン音楽配信サイトを案内するページはなかなか充実している。
MP3プレイヤーは持っているが、実は未だにネットで曲を買ったことはない。
買った曲がつまんなかったとしても、CDと違って売り飛ばせないし・・・というセコイ考えがあるからなのだが。
でも「この1曲だけ買いたい」という場合はいいかもしれないので、この記事を参考に考えてみようかと思う。
総ページ数は160くらいだが、全ページオールカラーでコート紙を使用していて、ページ数のわりに厚み重みがある。
コストを重視しすぎてあまり薄い紙を使うと、雑誌としては貧相になってしまうので、このあたりの紙質はベストな選択だろう。
持ち歩きやページめくりに特に不都合はない。
そんなわけで、「Digital Audio Fan」。
久しぶりに音楽雑誌なんて買ってみました。
全体的にはけっこう純粋でやや堅いイメージ。
内容はさすがに音楽的ヒッキーな中年には通じにくいものばかりでしたが、意外に雑誌の作り自体は80年代のFM雑誌とそれほど変わらない印象を受けました。
ひとつだけ予想できること。
それは、この雑誌の寿命もそう長くはないということでしょう。
もちろんそれはこの雑誌の構成や編集のせいではなく、今のデジタルオーディオというアイテム自体が、いったいいつまで持つのかがわからないからだ。
おそらく今以上のスピードで変革は進行するだろうし、それに合わせてこの手の雑誌も変わっていくだろう。
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