聴いてみた 第37回 グレイトフル・デッド
聴いてみたシリーズというのは本来「聴いてないシリーズ」に寄せられた様々なアドバイスをふまえて報告申し上げるシリーズのつもりである。
しかしながら中古屋や図書館でCDを物色していると、突然全く予定になかったものを手に取ってしまうことが時々ある。
というわけで今回聴いてみたのは、予定になかったグレイトフル・デッド。(なんだよそれ)
聴いてないシリーズでも採り上げていない、「全然知らないバンド」である。
ジェリー・ガルシアの名前を聞いたことがあるが、どんな人物なのかは知らない。
あと知っていることは「アオクソモクソア」という変わった名前のアルバムがあることくらいだ。
そんな予備知識ゼロのまま、渋谷のレコファンで突然購入。
ジャケットに惹かれたわけでもなく、全くの事故買いである。
買ったのはバンド名まんまの「グレイトフル・デッド」という、彼らのデビューアルバム。
値段は1100円くらい。もちろん紙ジャケではなく、輸入盤の中古である。
従って解説も何もない。
調べてから買ってもよかったんだが、買っちまったものはしょうがない。
なぜ買ったのか自分でもあまりよくわからないが、とりあえず聴いてみよう。
どんな音がするのだろうか。
・・・・・聴いてみた。
うーん・・・
サウンドの中心にあるのはギターとキーボードである。
どちらもかなり高めの音を出していて、たまに転調する曲もあるが、全体としてはそれほど多様な展開ではない。
ヴァニラ・ファッジのようなバズバズしたビブラートもない。
聴きやすいとも言えるが、なんとなく退屈な気もする。
このアルバムはほとんどがカバー曲らしいが、全般としてはブルースである。
どちらかというと楽しそうなサウンドではなく、やや辛口といった感じだ。
部分的には確かにクリームやヴァニラ・ファッジにも似ているところがある。
フォークやハードロックという趣ではないようだ。
なぜかエンディングが淡泊にフェードアウトする曲が多いなぁ・・と思ったらこのアルバム、録音にはたった3日しかかかっていないそうで、ファンの間でも「粗削り」との評価が多いようだ。
ボーカルはちょいと微妙。
ものすごい歌唱力・・というほどではないし、コーラスもどこかハーモニーがはずれたように聞こえる。
このあたりをサイケと呼ぶのかもしれないが、自分にとっては好みの声とは言い難い。
ラストの「Viola Lee Blues」は間奏が異様に長い。
やはりボーカルで聴かせる人たちではなく、互いの楽器演奏をぶつけ合っていくスタイルのような気がする。
感想。
ブルース基調のサウンド、サイケなボーカルとキーボード。
決して拒絶反応したわけではないが、いずれもやはり自分にとってはいまいち難しい。
やや冗漫な演奏はやはり少し退屈だ。
とりあえず3回聴いたが、他のアルバムも聴いてみようという意欲はまだわかない。
グレイトフル・デッドは、スタジオにこもってきっちり音を作るよりも、ライブでの即興演奏や臨場感を重視したバンドだそうだ。
アメリカでの年間公演収益ナンバーワンになったこともあるそうで、通算公演回数は2000回以上。
コンサートは1日2セットが通常という、演歌歌手のような営業ぶり。
しかも勝手に時間を倍くらいオーバーしたりすることも多かったらしい。
そんなダラダラしたライブでおもしろいんか?とも思ったが、それが良くて聴きに行く人に支えられていたってことなんでしょうね。
デッドヘッドと呼ばれる熱狂的なマニアもいるそうだ。
ということは、むしろライブ盤を聴かないと彼らの本当の魅力にふれることはできない、ということなんでしょうかね?
あ、もっと言えばライブ自体を体験しないと・・ということなんだろうけど、すでにジェリー・ガルシアは故人でバンドは解散してるんで、それはムリな話であるわけで。(しかも日本公演は一度もないまま解散だそうです)
まだアルバム1枚しか聴いてないんで結論を出すには早いんだけど、おそらくライブ盤を聴いたり映像を見たりしても、この難しい感覚はあまり変わらないように思う。
彼らのライブはなぜか撮影も録音も自由なんだそうだ。
ある程度の規制はあったらしいが、撮影録音原則OKってのはあまり聞いたことがない。
ファンにとってはありがたい話であり、今でもネットでライブ映像や音源がファンの間を行き来しているとのこと。
でもそんなんじゃレコード業界からは嫌われそうな気がするが。
さてグレイトフル・デッドというバンド名、「感謝すべき死」「感謝する死者」という意味で輪廻転生を表しているらしい。
「グレイトフル」と「デッド」、感謝と死者という、なんだか相当縁遠い言葉をくっつけたところは、アイアン・バタフライとかレッド・ツェッペリンにも共通するものがあるんじゃないだろうかと思いましたが、どうなんでしょう?
ちなみにいつも混同してしまうのがグランドファンク・レイルロードだ。
「グ」で始まり「ド」で終わるトコしか共通してないんだけど、どっちも全く聴いてないんで、正直どっちでもいいから聴いてみよう・・と思っただけである。
それぞれのファンの方からすればあきれてモノも言えない有様だと思いますが。
というわけでノーガードで突発的に聴いてみましたグレイトフル・デッド。
あっさり腕をとられて負けた曙のような結果になってしまいました。
やはりド素人にはこういう音楽は難しいよなぁ・・・という、世間の厳しさを痛感した次第です。
次回はグランドファンク・レイルロードを聴いてみようかと思います。
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コメント
初のコメントなしにならないために、ブログ同期が救いに来ました。
だけどスイマセン、グレイトフル・デッド、一度も聴いたこと亡いです。ラジオでも聴いたことがありません。
彼らについて知っていることは、
・グレイトフル・デッドにはヘルス・エンジェルスのファンが多く、ジェリー・ガルシアの葬儀の時に、ハーレーに乗った彼らが大量に押し寄せ追悼した。
・60年代末期、ローリングストーンズのコンサートの警備にあたったヘルス・エンジェルスが刺殺事件を起こしてしまったのだが、警備に彼らを使うように勧めたのがジェリー・ガルシアだった
など、バンド活動ではなくヘルス・エンジェルスの附帯情報しか知りません。
僕には全然馴染みがないバンドですが、日本にどれくらいのファンがいるんでしょうね。
それにしてもSYUNJIさん、彼らの音楽によく手を出そうと思いましたね。向学心が素晴らしい。
投稿: getsmart0086 | 2007.02.04 20:17
SYUNJIさん、こんばんは。
デッド。アメリカと日本で人気の差が一番激しいのが
このバンドかもしれません。なんせ、未だに8枚組ボックス
セットがでる、蔵出し音源公式ライブ盤が大量に出る、しかし
国内盤は全く出ない。こうしたCDの発売状況からして、
推して知るべし、です。
私はデッドの名盤として名高い「Live/Dead」を友人に聞かせて
いただき、自分のHPに感想をのせました。その経験から・・・・
>>やや冗漫な演奏はやはり少し退屈だ。
ファンの方には大変申し訳ないですが、同感です。
>>グレイトフル・デッドというバンド名
こういうバンド名から我々日本人が想像するサウンド、ライブが
異常に評価の高いバンドということで想像するサウンドから、
ことごとくかけ離れたサウンドですね。
これを「ジャムバンド」というそうで、この手のバンドの神様的
扱いだそうです。日本においてもしかり、だそうです。
さらに、こういうサウンドを聴いておりますと我々日本人はどう
してもドラッグ=トリップと結びつけてしまいます。確かにそういう
点があるそうなのですが、あちらアメリカではデッドのファンは
2世代にわたり、ファミリー(親子)でライブに出かけていくそう
です。ある意味で、大変健康的な楽しみ方です。
基本はブルース。(ファンの方には失礼になりますが)冗長な
演奏もこれまたブルースの変形といえます。日本人がデッドを
楽しむ場合、ここにポイントがありそうです。
投稿: モンスリー | 2007.02.04 20:42
getsmart0086さん、ご支援ありがとうございます。
最近そちらに全然うかがわずすいません・・
先週実はぷくちゃんと会ったのですが、彼が低い声で「getsmart0086さんの知識と文章はスゴイと思う・・」とうなったので「同感だ。それに彼は俺様とココログ同期なんだよ」と自慢してやりました。(15%くらい誇張ですが大筋事実)
さてグレイトフル・デッド。
こんな自分でも名前は知ってるくらいですからスゴイ人たちなんでしょうけど、自分のまわりでも聴いていたヤツはいなかったように思います。
自分もラジオでも聴いた記憶がありません。
>ローリングストーンズのコンサートの警備にあたったヘルス・エンジェルスが刺殺事件を起こしてしまったのだが
「オルタモントの悲劇」ですね。
この事件は一応知ってはいますが、ジェリー・ガルシアとヘルス・エンジェルスの関係は初めて知りました。
モンスリーさん、コメント感謝です。
>アメリカと日本で人気の差が一番激しいのがこのバンドかもしれません。
うーん・・じゃあミート・ローフみたいなもんですね。(←全然違う?)
レコファンにも結構な数のCDが並んでましたから、それなりに市場に出回ってはいるんでしょうけど。
比較は無意味ですけど、ブームタウン・ラッツよりも探すのは簡単でした。
>あちらアメリカではデッドのファンは2世代にわたり、ファミリー(親子)でライブに出かけていくそうです。
そのようですね。
親子二代のデッドヘッドも珍しくないそうですね。
まあ我が国でも親子でジャニーズを応援する母娘というのもたくさんいるそうだし・・(関係ないか)
一応買って記事書くまで3回聴いたんですけど、正直なところ記憶にあまり残る音にならなかったです。
「得意な音ではないけど印象や記憶に残りやすい」サウンドとしてはクリムゾンやELPなんかがあるんですが、デッドは「不得意ともいえないけど記憶にも残りにくい」サウンドということになるのかなぁ。
実はブラインド・フェイスも後者だったんですけど・・
投稿: SYUNJI | 2007.02.04 22:24
SYUNJIさん、コンバンハ。うわははは、グレイトフル・デッドですか!
こんなビッグ・ネームの話題に私ごときがコメントしてよいのかと
ためらいつつ、ヒトゴトと思えずコメントします。なぜならデッドについて
「予備知識ゼロ」、私もそうだったからです…05年の初頭まではっ!!
(←鼻息荒すぎ…) 私の場合『FESTIVAL EXPRESS』という映画で
デッドの映像見てから、えらいハマッちゃいました。そこからの
1~2カ月でデッドのDVDとCD、10枚ぐらい一気に買ったかなあ…。
なので、SYUNJIさんちの近くのレンタルショップにこの映画の
DVDでも置いてあればなーと思いますが、ないっすよねそんなモン…。
それまでは、私も「グレイトフル・デッド」と聞いて思い浮かぶのは
「骸骨」「薔薇」「暴走族」…ものすごい悪らつな人間がチェーンソーでも
振り回してそうなイメージしかなくて、おっかなくて近寄れるかよと
思ってたんですが、ふたを開けてみたらメンバーはじつに温和そうな人
ばっかで拍子抜けでした。イメージってのはコワイですねー。
というわけでSYUNJIさん、デッドは映像見るとハマるかも!
(全然ハマらないかも!)…なんの参考にもなりはしませんが、
私が最初に映画でデッドを見た運命的な日(←大ゲサ)の記事など
TBさせていただきまーす。
投稿: moonlightdrive | 2007.02.05 00:33
オジキ
DEADですか…
僕はヘッズでもなんでもないですが、「デッド=生き方」
であって、アルバム単位でなんやかんや考えちゃいけないバンドだと思います。
ま、音的には冗長、サイケ、カントリーなんすけど、あの浮遊感に馴染むと、これはこれで、中毒性のあるものかと。
無理してそこから何かを求めなくても良いかと。
投稿: V.J. | 2007.02.05 00:55
moonlightdrive姉さん、熱いコメント感謝です。
いやーいつも意外な記事(天文ガイドとか・・)に非常に熱く反応していただいて恐縮です。
さてTBの記事拝見しました。
姉さんの記事に登場するアーチストは半分くらいしかわかりませんけど、自分が思っている以上にデッドってのはスゴイグループなんですねえ・・(あー素人な感想)
>1~2カ月でデッドのDVDとCD、10枚ぐらい一気に買ったかなあ…。
これもまたすごいハマりようですね。
自分も聴くまではなんとなく荒っぽいサウンドを想像していたのですが、聴いてみるとそうではないですね。
姉さんのテンションに押されて2枚目聴いてみようかと少しココロが揺れています。(相変わらず姉の意見には弱い)
V.J.若、コメント感謝です。
>「デッド=生き方」であって、アルバム単位でなんやかんや考えちゃいけないバンドだと思います。
難しいな・・
となれば、もう少しデッドの歴史を学ばねばならんですな。
>あの浮遊感に馴染むと、これはこれで、中毒性のあるものかと。
初めて聴いたばかりなんでまだ馴染むところまで全然来てませんが、やっぱもう少し聴いたほうがいいんでしょうね。
もうちょい楽しそうなサウンドが聴けるアルバムなんかがあるといいかなと思ったりしてるのですが。
投稿: SYUNJI | 2007.02.05 21:51
SYUNJIさん、こんばんは。
>>じゃあミート・ローフみたいなもんですね
ミート・ローフですか、モトリー・クルー並に名前しか知らない
バンドです(^^;)。
>>レコファンにも結構な数のCDが並んでましたから、
>>それなりに市場に出回ってはいるんでしょうけど。
前回コメントにあげました、国内盤はでないボックスセットや公式
発掘ライブ盤がリリースされますと、レコード・コレクターズ誌で
特集が組まれたりしますから、ここ日本でもコアなファンがいるの
ですね。
ちなみに、代表作は紙ジャケにもなったはずです。
>>一応買って記事書くまで3回聴いたんですけど、
聞き続けるのが難しいサウンドってありますよね。こればっかりは
評価その他では納得できるものではなく、「好み」や「今まで
聞いてきた経験」がものを言うのでしょう。音楽の難しい一面だと
思いました。
ジャズの評論本を読むと「わかるまで聞き続けましょう」と書いて
あることがありますが、これが一番難しい。
投稿: モンスリー | 2007.02.06 22:55
モンスリーさん、コメント感謝です。(←管理人きどり攻撃!)
デッド。同級生に言わせると「クスリ」をやらないとわからないバンドらしいですぜ、、、ダンナ。(←密売人攻撃!)
そんな状態で聴くとボディブローのように効いてくるらしいです。我が家にも一枚あったような・・・あっ亀が家から出ているやつだ。これジャケ買いしたのですが、多分最後まで聴いていません。高校生の時になけなしの金で買ったのに。アナログ、高く売れるのだろうか?
投稿: ぷくちゃん | 2007.02.07 07:21
モンスリーさん、コメント感謝です。
>ミート・ローフですか、モトリー・クルー並に名前しか知らないバンドです(^^;)。
自分もはじめはバンドだと思ってたんですけど、ミート・ローフはピン芸人です。
「日本では全くと言っていいほど人気がない」という形容がついてまわる人ですけど・・
>レコード・コレクターズ誌で特集が組まれたりしますから、ここ日本でもコアなファンがいるのですね。
特集ですか・・
徐々にデッドの偉大さがわかってきたような気がします。
と言ってもまだそれほど次を聴く意欲はないんですけど。
>ジャズの評論本を読むと「わかるまで聞き続けましょう」と書いてあることがあります
こんなのはヤだなぁ。(笑)
評者の好みを押しつけられてるようで、ヒネた自分は受け入れられそうもないですね。
ぷく先輩、コメント感謝です。
>デッド。同級生に言わせると「クスリ」をやらないとわからないバンドらしいですぜ、、、ダンナ。
ええっ!そうなんですか?
急に興味がわいてきました。(中毒?)
しかし若いミソラで(死語)そんなクスリっぽい音楽に手を出す高校生ぷっきー・・・
現在の先輩の片鱗がかいまみえるエピソードですね。(偉そうな結論づけ)
コアなマニアがいるのであれば、アナログもけっこういいお値段がつくのではないかと思いますが。
投稿: SYUNJI | 2007.02.07 23:28