読んでみた 第6回 ビッグ・トゥモロウ
今回読んでみたのは「ビッグ・トゥモロウ」。
20代30代のナウいヤングなビジネスマンをターゲットにした月刊誌である。
版元は青春出版社。
発行部数は15万部。
すでに年齢でこの雑誌のターゲットからしっかりはずれてるあたしですが、20代30代の頃ももちろん読んでませんでした。
耳鼻科の待合室でめくったことがあったような気がするが、病院での待ち時間なんて精神状態がふつうじゃないので、どんな雑誌を見てもアタマに入らないですね。
この雑誌、最近電車の中吊り広告をあまり見かけないが、以前はとにかく字数の多い広告で有名だった。
見出しというより要約をずらずらと並べた広告で、もう本文を読んだような錯覚を起こすような感じ。
戦略としてむしろ逆効果じゃないのかよ?と通学電車の中でいつも思っていました。
で、「有名なわりに読んでない」典型な雑誌だったので、今回ビッグなトゥモロウをゲットすべく定価で購入。
買ったのは8月号、550円。
今月の見出しはこんな感じ。
★ 総力特集
岐路に立ったときの決断思考から、ピンチのときの逆転思考まで人生が劇的に変わる「考える技術」
頭のいい人、悪い人の考え方。その意外な差とは?
すぐに正解が見えてくる「頭のいい人の考え方」全テクニック!
★ この“殺し文句”で相手はあなたの意のまま
他人をたったひと言で動かす魔法の言葉64
白潟敏朗、内藤誼人、高城幸司ら言葉のプロが明かす裏テクニック
★ 一攫千金の投資法から、確実に2倍の貯蓄法まで
小泉首相退任、アメリカ中間選挙…激動の世界経済を読んで安定して勝つ投資法
ボーナスを殖やすなら、ズバリ、ココに預けよう!
★ 信用度、小遣い…そして5年後の出世、疾病率にこれだけの違いが!
30代・独身者と既婚者の“意外な格差”研究
★ 都会のサラリーマンと地方のサラリーマン、本当に幸せなのはどっちだ?
サラリーマンの夢「もっとも給料が高くて休みが多い所」はズバリ…
だから見出しが長いよ・・・
月刊誌でありながら週刊誌のような妙に高いテンションを持つ、鼻息の荒い雑誌である。
この他、ボビー・バレンタインや石井琢朗のインタビュー、落合信彦・テリー伊藤・猪瀬直樹・井筒和幸といったややコワモテ系文化人の人生訓連載がある。
・・・・・読んでみた。
基本的なコンセプトは、「ビジネスや株式や起業やライフスタイルといったキーワードで、成功をめざす若者を応援するよマガジン」である。
文字どおりビッグなトゥモロウをつかむためのガイドラインが並んでいる。
インタビューや連載や成功者談話などは、思ったよりもまともでそれほど突飛な内容ではない。
他の雑誌でもこれくらいのことは書いてあってもおかしくなさそうだ。
テリー伊藤や井筒和幸は、結構ためになりそうなことを、それほど説教くさくない論調で展開している。
気になるのは編集記事である。
インタビューや連載や談話は、言ってみれば文化人や起業家たちの言葉であって、編集者が創造した文章ではない。
そうでない特集記事や編集記事は、編集部の力量がモロに現れる部分だが、ここはちょっと・・・という内容のものが多い。
例えば。
「他人をたったひと言で動かす魔法の言葉64」。
これがどうにも脱力な内容である。
だいたい「魔法」って言葉にもうそれほどチカラがないだろうに。
権威ある人をほめる時に使う言葉として「同じようなことをビル・ゲイツも言ってました」というセリフが紹介されている。
誰もが知っている成功者を引き合いに出すことで、気難しい権威者のココロをくすぐる作戦・・・だと思うんだけど、こんなんで喜ぶおっさんが本当にいるのか?
あと先輩をほめる時には「どこで髪切ってるんですか?」だそうです。
・・・これのどこが魔法の言葉なのかよくわかりませんが、「カッコイイですね。ボクもそこで切ってみたいので教えて下さい」と続けるんだそうだ。
・・・これもムリだと思うよ、たぶん。
「30代・独身者と既婚者の“意外な格差”研究 」。
独身か既婚かによって起こる様々な格差、例えば小遣いや持ち家率なんて現実的な面から、死亡率・自殺率といったハードな統計、また「癒やされたい率」なんて根拠が不明な数値までが紹介されている。
企画としてはまあおもしろいとは思うが、書いてあることはいまいち説得力もなく、目新しい理論でもない。
論調はなんとなく既婚者優勢のような感じだ。
そりゃ確かにそういう部分もあろうが、既婚か未婚かだけがそいつの人格を決める要素ではない。(と正論で反論)
あのね、常々思うんだけど、男の価値でどこかにラインがあると言うなら、それは「既恋愛か未恋愛か」である。
この場合成就したかどうかは問題じゃないのです。
未婚であっても自分で納得できる恋愛経験があれば、何ら恥じることもないんじゃないだろうか。
あとエキサイト日本法人社長の山村幸弘氏のインタビューがあるのだが、本文脇のアオリがどうにもなれなれしい。
読んでもらえばわかるのだが、本人のインタビュー口調は至極ふつうなのに、アオリの語尾が「決めてたんだ」とか「思おうよ」なんて語りかけ口調になっている。
なんか昔のJUNONの見出しっぽいのだ。
「ぼくが愛した女性について語ろうか」なんてヤツ。
覚えてる人いるかなぁ?
ウッチャンナンチャンもネタで使ってたことがあるのですが。
ウンナンの「雑誌たちの会話」ってコント、大好きだったなぁ。
で。
この本を読んで成功につなげた人がどれだけいるのかわからないけど、自分のような投げっぱなしジャーマンな人生を送ってる自堕落な人間からすると、どうもいまいち胡散臭いなぁ・・というのが正直な感想。
目次でも「注目!インタビュー」とか「快調!強力連載陣 」「好評連載 」なんて表現が使われてますが、このあたりいまひとつのめり込める感じがしない・・・
「快調!強力連載陣」かぁ・・・こういう表現でまだいける雑誌なんだよなぁ・・・
「ムダに元気のいい、それでいてどこか口調が古くさい昭和のサラリーマン」というイメージ。
元気がよくて何よりなのですが、屈折しているあたしには、あまり共感できるものがないというところ。
こういう雑誌を全部額面どおり受け取る純朴な若者もあまりいないと思うが、それでも創刊25年以上らしいし、部数を見てもかなり売れてるので、支持する人たちは多いってことでしょうね。
ネットでビッグ・トゥモロウを検索して目立ったのが、「このサイトがビッグ・トゥモロウに掲載されました」という報告。
株や起業などに関するサイトが多かったけど、この雑誌に載ることが結構なステイタスになっているらしい。
出版不況と言われて久しい業界ですが、BLOGやサイトが雑誌で紹介されることがまだまだ力を持ってるんだなぁと感じました。
確かにこんな自分でも、ネットで書いた文章がビッグ・トゥモロウに掲載されたら、きっと喜んで報告しちまうだろうけど。(軟弱)
というわけで、ハスに構えて読んでみたあたしは、当然ながらビッグなトゥモロウはゲットできませんでした。
申し訳ないけど、よほど楽しそうな特集でも組まれない限り、今後自分で買って読むことはないと思います。
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コメント
SYUNJIさん、こんばんは。何ともスバラシイ雑誌のエントリー、
ありがとうございます(^^;)。
>>それでも創刊25年以上らしいし、
>>発行部数は15万部。
こんな内容にしては妙に売れていると感じませんでしょうか?
一説によると、社員に読ませたり配布したりするために、会社で
購入するパターンも多いそうです。
実は私が学生時代にバイトしていたところ(家電量販店)でも
社員に配っていましたので、休憩室にころがっていました。
それを眺めていたのですが、SYUNJIさんがコメントされているように、
「胡散臭い」し、サラリーマンになるのが憂鬱になりました。
最後まで全部読んだことは一度もなく、ぱらりとめくっては「またか」
と思い、すぐにやめておりました。
それ以来全く目を通したことがありませんが、コメントを拝見するに
驚くほど内容に変化がありません。ちょいモテ編集長でも連れてきて
てこ入れしたらどうかと思うカビの生えた内容。私が就職してから
はや16年。世の中はがらりと変わったはずですが、この雑誌の中身は
同じ。いや、ひょっとするとサラリーマンの世界も変わっていないのでは
とこれまたいやになります。
この雑誌のコンセプトは「小金もうけ」と「誰も知らない、会社で
うまく立ち回る術」の伝授ではないかと思います。もちろん、こんな記事を
読んで成功するヤツは、せいぜい1万人に一人くらいです。
こんなことをこの雑誌の信奉者に言うと「いつもそうやって否定ばかり
しているから、おまえはいつまでたってもダメなんだ」と言われそう
で怖いですが。
あと、写真についているキャプションもいやです。妙に「おまえも乗り遅れる
ぞ」と焦らすような感じがあります。
もっといや、というか恥ずかしいのは、エッチな記事です。男性サラリーマン
に買わせるためには必要なのでしょうが、私が眺めていた頃は「女性を
よろ○ばせる秘密のテクニック」みたいな記事がありました。この発想自体、
「おまえは既に死んでいる」とケンシロウに言われそうです。今もこの手の
記事が掲載されているのでしょうか。
投稿: モンスリー | 2006.07.31 21:13
モンスリーさんのコメントの最後見て、読んで買いたくなったぷくちゃんです。へへへ(←よだれ)
さてこの雑誌、いけてないことでは最右翼。でも15万部も売れているんですか!
>ボビー・バレンタイン、石井琢朗、落合信彦、テリー伊藤、猪瀬直樹、井筒和幸
あああ!うきゃうきゃというメンバー!どうしてくれよう!「考える技術」、そんなものあったらとっくに私はビル・ゲイツだよ!昔「でる単」買ってやったのに!(←わずか1冊の貢献)
はあはあはあ、この手の雑誌がとても嫌いなんです。人に偉そうに言われるのは、自分が偉そうに言うのは好きですが。(←馬鹿)
確かこれ女性版もあったような気が・・・
ところでSYUNJIさん、どこで髪の毛切ったのですか?
投稿: ぷくちゃん | 2006.08.01 07:49
モンスリーさん、コメント感謝です。
>こんな内容にしては妙に売れていると感じませんでしょうか?
>一説によると、社員に読ませたり配布したりするために、会社で購入するパターンも多いそうです。
そうなんですか・・
そういう団体に支えられた発行部数(いわば組織票)ってあまりいい感じはしませんね。
発行部数は実売部数ではないので、実際ビッグ・トゥモロウがどれだけ売れてるのかわかりませんが。
>この雑誌のコンセプトは「小金もうけ」と「誰も知らない、会社で
>うまく立ち回る術」の伝授ではないかと思います。
この本を参考にして小銭をかせいだり会社でうまく立ち回るヤツを見てみたいですね。
「愛読書はビッグ・トゥモロウ」ってのも、あまりイケてない感じがしますが・・
男性向けの「女性陥落テクニック記事」は最近はなくなったみたいです。
ぷく先輩、コメント感謝です。
おや、その後ろに隠したコンビニ袋の中の雑誌はなんですか?
「Big」というタイトルが見えましたが・・
>あああ!うきゃうきゃというメンバー!
このあたり、編集部の人選はかなり慎重ですね。
(当然ですが)
出川哲朗とかテツ&トモとかつぶやきシローとかゴージャス松野なんかは決してこの雑誌では連載持てないでしょう。
>確かこれ女性版もあったような気が・・・
「SAY」ですね。
中身は知りませんが、これも昔から広告の見出しが長ったらしくて有名な雑誌です。
>ところでSYUNJIさん、どこで髪の毛切ったのですか?
ああ、これですか?
鶯谷のイレブンカットで・・
やっぱこのセリフ、ダメだよ先輩・・
投稿: SYUNJI | 2006.08.01 22:55
SYUNJIさん、ぷくちゃんさん、こんばんは。
>>確かこれ女性版もあったような気が・・・
>>「SAY」ですね。
おお、ありました! 確かそちらは本誌ほど当たらなかった
ようですが。
女性誌というのは、普通の雑誌でも男性の目からみると驚くほど
ラビリンスのようです。いつか「読んでみた」シリーズで何か
取り上げていただけることを期待しております(^^;)。
>>「女性陥落テクニック記事」は最近はなくなったみたいです。
そのコーナーを撤去しても売り上げが落ちないということで
しょうか。恐ろしや。
投稿: モンスリー | 2006.08.02 22:59
モンスリーさん、こんばんは。
「SAY」は今も現役の雑誌みたいですよ。
もうとっくに廃刊になったのかと(失礼)思っていたのですが・・
>女性誌というのは、普通の雑誌でも男性の目からみると驚くほどラビリンスのようです。
女性誌ねえ・・
やっぱそれなりにツッコミどころの多い雑誌がいいですよね。
「ニキータ」とかどうでしょうか、ぷく先輩?
投稿: SYUNJI | 2006.08.02 23:36