聴いてみた 第24回 キンクス
今年最初の聴いてみたシリーズはキンクス。
年末に中古CDショップで材料をいろいろあさったのですが、「聴いてない中で聴いてみたい」アルバムは案外見つからないものです。
というか、あっても高いんだよなぁ。
プログレはあまり安くないし、紙ジャケなんぞかえって高値がついていて手が出ません。
そんな中でようやく掘り起こしたキンクス。
友人のミュージシャンいしはらも薦めていた「ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ」があったので800円くらいで購入。
イギリスの田舎での人々の夢や挫折を表現した作品とのこと。
オリジナルは1968年の作品だが、CDでは28曲入りの豪華なリマスター盤もあるらしい。
今回購入したのは15曲入りのものである。
キンクスと言えば「You Really Got Me」のギャーギャーした妙なテンションと、レイのチャーミングな口元、ターザン山本のようなイメージしかないのだが、果たしてこの「村の緑を守る会」というアルバム、いったいどんなサウンドなのだろうか?
・・・・聴いてみた。
想像していたサウンドとはかなり違う。
もっと騒々しくて皮肉っぽい演奏をイメージしていたのだが、牧歌的でフォークロックのような音である。
ところどころビートルズを思わせるような音があったり、またディランのようだったり、マーク・ボランっぽい曲だったり。
ブルージーな曲あり、楽しそうな曲もあり、思ったよりもバラエティに富んだ感じだ。
ハードなロックナンバーやどっぷりのブルースはこのアルバムにはないようだ。
「Last Of The Steam-Powered Trains」は、リズムに蒸気機関車の汽笛をイメージさせる部分があったり(最初の「ポッポー♪」という部分です)、汽車が右から左に向かって走る様をステレオで表したりしている。
「Animal Farm」はまさにディランを思わせるフォーク調のきれいなサウンドだ。
「All Of My Friends Were There」はキーボードがプロコム・ハルムのようでなかなかよい。
「Sitting By The Riverside」はアコースティックなナンバー。
途中わざと不協和音を作っていく部分があったり、転調があったりで、短い中にも工夫がある。
感想。
どの曲にも一応コーラスがついているのだが、ハーモニーはどことなくズレていて、あまり「美しい」とは感じない。
逆にその分「自由」な雰囲気はある。
もうちょい騒々しいサウンドだと良かったのだろうが、このアルバムはフォークロック基調のコンセプトなのだろう。
ビートルズのような凝ったサウンドはないが、ところどころ聞こえるメロトロンのフカフカした音は味わい深いと思う。
しかしながら、やはり自分にキンクス修行が足りないせいか、いまひとつ感動がない。
レイ・デイビス、ものすごく歌がうまいというわけではないし、演奏も圧倒される壮大な厚みがあるわけでもない。
自分が音楽に何を求めているのか未だによくわからんのですが、「いやああ感動した。こりゃいいや(←死語)」という感情は残念ながら起こらなかった。
ネットでキンクスについて検索すると、当然ですが多くのファンの方がそれぞれ熱き想いを様々な切り口で語っておられます。
それを読んでいて思ったのですが、やはりキンクス、ある程度こなれた人が好む音楽のように感じます。
こっちがびっくりするくらいのたくさんの音楽を聴き、カネ・酒・賭場・オケラ・カチコミ・出入り・お姉ちゃんといった幾多の修羅場をくぐり抜けてきた男だけがキンクスについて語ることができるのではないだろうか。(ぷっきー・カナ・フレ各氏大きくうなずく)
ターザン山本などと言ってるウチはまだド素人なのである。
「オジキ、何聴いてるんスか?」
「ああ、キンクスだ。若い頃は夢中になったもんだ」
「さすがオジキ、渋いス。ところで来週の襲名披露ですが・・」
どうです、このセリフの違和感のなさ。
試しにセリフを少し変えてみましょう。
「オジキ、何聴いてるんスか?」
「ああ、レッド・ツェッペリンだ。若い頃は夢中になったもんだ」
ベタすぎ。かえってリアリティがありません。
アマチュアの小説家が書きそうなセリフ。
これはストーンズでもクリームでも同じでしょう。
パープルはもっとダメ。
「オジキ、何聴いてるんスか?」
「ああ、エア・サプライだ。若い頃は夢中になったもんだ」
こいつらいったい何の団体なんでしょうか。
ナックやローラーズだとかえってイイかもしれませんが。
・・・・失礼しました。
ともあれ、キンクス。
いい曲が多いとは思うのですが、ひねくれ者集団を期待して臨んだせいか、ほのぼのしたサウンドになんとなく肩すかしを食らったようです。
やはりもう少しハスに構えた感じのアルバムのほうが良かったかもしれません。
やたらたくさんアルバムを出してるキンクス、どこかにきっと自分のおポンチな感性にもヒットするものがあるようにも思いますんで、もう少し講義を受け続けたいと思います。
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