聴いてみた 第18回 ディープ・パープル
「聴いてない」のもじゅうぶん恥ずかしいが、「聴いてみた」ってのもさらに恥ずかしいディープ・パープル。
聴いてないことを白状してから1年以上立ちますが、先日ようやく聴く機会に恵まれました。
聴いたのは「Come Taste The Band」。
会場大ブーイング。
「えええ~?どうしてコレから聴くかなぁこいつ」
このBLOGをご覧いただいてるほとんどの方はそう思われたことでしょう。
しょーがないじゃない、これしか図書館になかったんだもん。
第4期唯一のスタジオアルバム、目玉はリッチーに代わって加入したトミー・ボーリンのギターワークと、カバのソウル路線ボーカルである。
頑固一徹・孤高の麺打ち職人リッチーに代わり、なぜかパスタ系のお店からやってきたトミー。
果たして荻窪の名店「深紫亭」で、トミーの麺は客を引きつけることができるでしょうか。
・・・・聴いてみた。
自分の知っているパープルの曲とは、全然違うサウンドだということだけはわかる。
カバのシャウトはやはりソウルフルだ。
「Burn」のボーカルとはまたひと味違う。
トミー・ボーリンのギターも少しカリカリした軽い感じだが、悪くはない。
「Comin' Home」は疾走感に満ちた軽快なロックナンバー。
「Gettin' Tighter」に至ってはギターサウンドが明らかにリッチーの音とは違い、アメリカン・ロックである。
メドレーやインストもあるが、全体の構成としてはそれほどの多面性はないように感じた。
全体を通して聴いた感想としては、「聴き慣れたアメリカっぽいロック」のようだ。
パープル史上初のアメリカ人メンバーであるトミー・ボーリンが吹き込んだ新しいサウンドは、当時は画期的だったかもしれないが、その後のアメリカ産業ロック界では多くのアーチスト達が採り入れてしまったものだ。
80年代産業ロックにまみれた自分にとっては、それほどの感動はない音になってしまっているのだろう。
「このアルバムはパープル名義で出すべきでなかった」とはジョン・ロードの後悔の弁だそうだが、それまでのパープルの様式美を好んできたファンにとっても、「なかったことにしたい」アルバムかもしれない。
ふつうのアメリカン・ロックバンドの作品として聴くなら、カバのボーカルは実に魅力的だし、なにより新加入のトミー・ボーリンの才能が随所に感じられるいいアルバムだと思う。
しかし。
パープルファンの間ではどうにも分が悪いトミー・ボーリン。
「パープルをダメにした男」という子牛の焼き印、じゃなかった烙印を押され、しかもすでに故人がゆえ、そんな評価も自力ではリカバリ不可能。
実際「ラストコンサート」というライブ盤では、ヘロイン中毒トミーのもんのすごくヘッタクソな演奏が聴けて、当時の全国のギター少年達に「オレのほうがうまい」と思わせた、という後世に残る迷盤となっているそうだが。(あー聴いてみたい・・)
トミーはパープル加入後のライブで、集まった多くのファンから「オマエ誰やコラ」「リッチー出さんかいワレ」等の罵声を浴びせられるというつらい目に合っている。
・・・この話を聞いて、かつて新日のリングにTPG総帥として登場したビートたけしが満場から帰れコールを浴びた、というあの事件を思い浮かべました。
すいません、全然関係ないですけど。
まあリッチーで売ってきたパープルであることに間違いはないし、ファンの心理も理解はできる。
でもそれを承知でトミーを加入させたんだとしたら、バンマスのジョンが責任を問われてもしかたがないような気もしますな。
でもさぁ、パープル全然聴いてなかったあたしが言うのもナンだけど、ジョン・ロードはこの「Come Taste The Band」ではいったい何をしてるの?
本人達もファンにとってもわかりきった話だろうが、パープルってのはジョンのキーボードとリッチーのギターのバトル、そこにギランやカバのボーカルがさらにケンカ売るような構成で売ってきたバンドなんでしょ?
このアルバムでジョンのキーボードがまともに聞こえるのは「You Keep On Moving」くらいだった。
「パープル名義で出すんじゃなかった」などと言うくらいなら、もう少し仕事したらよかったのに。
少なくともこのアルバムで、もうちょっとジョンが前に出ていたら、パープルの歴史もちょっとは違っていたのでは?と思いました。
多くのパープルファンが思うところだろうけど、トミー・ボーリン、やはりパープルに参加するのは早すぎたんじゃないだろうか。
結局パープルの人たちも、もう少し後にレインボーやホワイトスネイクでアメンリカンなロックを意識せざるを得なくなっていってるわけですよね。
むしろその時こそ、本場西海岸から来たトミーの出番だったのではないか?
これほど無意味な仮定もないとは思うけど、もしトミーがもうちょっと後でホワイトスネイクに加入していたら、結構すごいことになっていたんじゃないかなぁ。
ちなみにグレン・ヒューズは、トミーに対する世間の低ーい評価をなんとかしようと、トミーの残した優れた音源を発表する活動を続けているそうだ。
やはりパープル、こうした人間模様をふまえて鑑賞すると、がぜんおもしろくなってきます。
今回非常に微妙なアルバムから聴いてしまったが、やはりこのバンドはきちんと初期から順に追いかけて聴いていくのがいいのかもしれない。
これで「パープルを聴いた」ことにしようとは全く思っておりませんので、引き続き勉強したいと思います。
・・・それと、トミー・ボーリンのソロアルバムのジャケットに「富墓林」て書かせたのは誰?
| 固定リンク | 0
コメント
昨日からコメントしたかったのですが、最初にコメントするのは不愉快な気持ちにさせて申し訳ないと遠慮していたぷくちゃんです。
またウルトラ者のトラックバックもブログの雰囲気を壊すので遠慮していたぷくちゃんです。
それにしても本当に何というアルバムから聞いたのでしょうか?それでも、これだけの記事が書けるということは、SYUNJIさんの基礎音楽情報量が多いということではないでしょうか?
>グレン・ヒューズは、トミーに対する世間の低ーい評価をなんとかしようと、トミーの残した優れた音源を発表する活動を続けているそうだ。
いい人。グレン・ヒューズ。私の周りの婦女子はトミー・ボーリンの方がリッチーの300倍カッコがいい、とのたまわっていましたが。
>ジョン・ロードはこの「Come Taste The Band」ではいったい何をしてるの?
「アンドロイド0指令」でのアンヌの様な仕事ぶりのジョン・ロード。
私は余りギターに詳しくないので、ギターの音よりヴォーカルの違いにビックリさせられたアルバムです。よりカバ、ソウルフルに変身!これはボーリンが触発しているのでしょうか?
投稿: ぷくちゃん | 2005.10.09 08:27
先輩、トラックバックありがとうございま・・・あっ、まだもらってねえよ!
今更何を躊躇されているのでしょうか、このBLOG、「最近のトラックバック」をご覧あれ。
「ウルトラSYUNJI」4連発です。
こんなBLOGは世界中でここだけです。(当然)
「ディープ・パープルとビラ星人、名前が似ているので・・・」というセリフ?を待っていたのに。
>それにしても本当に何というアルバムから聞いたのでしょうか?
すいません、ウチの近所の図書館、パープルの在庫ホントにないんですよ。
どうも職員はツェッペリンびいきのようです。(ウソ)
>私の周りの婦女子はトミー・ボーリンの方がリッチーの300倍カッコがいい、とのたまわっていましたが。
見た目はどう考えてもその通りです。(断言)
そう考えると惜しいヒトを亡くしましたね。
トミーがこのままホワイトスネイクに加入していれば、彼らのアイドル化も一層進んだのでは・・・
>「アンドロイド0指令」でのアンヌの様な仕事ぶりのジョン・ロード。
こんな例え、わかんないっつうの。(笑)
あとでモンスリー坊が来ますけん、解説してもらうけぇ。(なぜ広島弁?)
>よりカバ、ソウルフルに変身!これはボーリンが触発しているのでしょうか?
たぶんカバはもともとこういう歌い方がしたかったんじゃないですかね。
リッチーに遠慮していた分、一気に転換したのではないかと。
投稿: SYUNJI | 2005.10.09 09:12
ディープパープルは聴いてないですね。
すすんでは…
でも聴こえてきたですよね…
名前の方があとだったかもしれません。
けどアルバムを聴くまでには至らなかったですね。
ビジュアル的にダメかも…(そっちばっか)
あ、でもクイーンのおフレはビジュアルはダメだけど、
すごく好きだったです。うーん…謎
投稿: モリ男 | 2005.10.09 10:04
SYUNJIさん、こんばんは。
私の同僚に、ギラン後のパープルを信奉する者がおりまして、
フェイバリットは「Come Taste The Band」なんだそうです。
特に、カバーデイルのソウルフルなボーカルがたまらんのだ
そうです。同僚の話を聞いていましたので、SYUNJIさんの
選択もあながち間違いとは思えないのです。
私自身は、パープルは「Deepest Purple」なるベスト盤を聞きましたが、
この時期の曲は収録されていないようでした。
また、トミー・ボーリンは、私が聞いているジェイムス・ギャングなる
アメリカンハードのバンドに在籍していたようですが、これも、この
人の時期は聞いたことがありません。
>>「聴き慣れたアメリカっぽいロック」のようだ
なるほど~。これを拝見しますと、なんだか私向きのパープルのように
思えてきます。ブラックモア期は、英国様式美ハードがちょいと苦手
なんですよ。アメリカナイズされているならチャンスかも・・・・
あと、西海岸は、ウェストコーストという伝統もありますが、アメリカン
ハードの本場でもあるのですよねえ。バン・ヘイレンとか。
>>「オマエ誰やコラ」「リッチー出さんかいワレ」等の罵声を
前にも書いたことで恐縮ですが、90年代にブラックモアが来日直前に
脱退してしまい、それでも公演を中止することができず、会場の直前まで
「本日はリッチーはでませ~ん」と係りの人が声をからしていたのは、
こういう過去の経験もあったからなんでしょうねえ。
>>(あー聴いてみたい・・)
核爆! こう思うようになったらよろしくない症状です(^^;)。私も何度となく
怖いもの聞きたさや、「隠れた名盤」を拾ってみました。たいてい後悔です(自虐)。
投稿: モンスリー | 2005.10.09 20:56
SYUNJIさん、ぷくちゃんさん、こんばんは。
坊スリーです。
コメントを分けました。
>>「アンドロイド0指令」でのアンヌの様な仕事ぶりのジョン・ロード。
>>こんな例え、わかんないっつうの。(笑)
ただ今再生しました・・・・ワハハ、そういうことでしたか!
つまり、
>>ジョン・ロードはこの「Come Taste The Band」ではいったい何をしてるの?
ということでした。ジャケットに名前がクレジットされているだけ、
てな感じです。(^^;)
投稿: モンスリー | 2005.10.09 21:00
はい、ほとんど出ていないということです。全く出演していない回も一度あって、彼女の自叙伝によると大酒のみで不摂生な彼女が干された結果らしいです。
当然、真のウルトラ者のブログからの情報パクリです。
投稿: 抹殺ぷくちゃん | 2005.10.09 23:36
モリ男さん、コメント感謝です。
パープル聴いてなかったのね。
>ビジュアル的にダメかも…
そういう意味ではトミー・ボーリンはファミリーの中でも数少ないイケメン(などという言い方は当時なかったでしょうが)ですよね。
東海地区では「リッチーより300倍カッコイイ」という定説もあるようで。
モンスリーさん、こんばんは。
>同僚の話を聞いていましたので、SYUNJIさんの選択もあながち間違いとは思えないのです。
いや、図書館にコレしかなかっただけで・・(笑)
ただ借りた後でこのエントリを書くにあたり、axis_009さんのBLOGなどを参考にいろいろ調べたら、案外このアルバムの評価は高いですね。
>「本日はリッチーはでませ~ん」と係りの人が声をからしていた
そんなことがあったんですか。
アルバムや雑誌で楽しむならともかく、ライブ見に来たのに「リッチーは出ません」はないだろうなぁ。
昔エイジアの日本公演でもジョン・ウェットンの脱退をグレッグ・レイクの代打でしのいだ、という話を聞きましたが、評判悪かったみたいですね。
例えばSMAPのキムタクの代打で速水もこみち君が登場してもやっぱキムタクファンには評判悪いんだろうなぁ。(←なんか言ってることがぷく先輩に似てきたなぁオレ・・・)
アンドロイド0指令、残念ながらストーリーは全然覚えてないなぁ・・なんか深夜のデパートの売場の場面てなかったでしたっけ?
投稿: SYUNJI | 2005.10.10 21:37
SYUNJIさん、こんばんは。
リッチーブッチの来日公演ですが、ブッチが決まってすぐに払い戻し
が始まりました。このとき、東京では武道館公演だったのですが、
最寄り駅から武道館まで数メートルごとに係員がいて「リッチーは
いません」とやっていたそうです。
実は私も同僚に誘われてチケットを購入していたのですが、払い戻し
しました。後で聞くところではジョー・サトリアーニなるすごいテク
のギタリストが参加したそうです。パープルの間奏の長い曲では、
リッチーとロードのバトルになる場面があるそうですが、このときは、
ロードが、サトリアーニについていくのが必死だったとか。
見ておけば良かったと後悔しています。
>>ジョン・ウェットンの脱退をグレッグ・レイクの代打でしのいだ
MTVが武道館からアメリカへ全米生中継する予定があり、公演を
キャンセルできなかったのだそうです。レイクは2週間で曲を覚えた
とか。
この時の公演は、東京地区でも放送されたりVHSが発売されたりした
そうです。私は数年前に出た準公式盤で聞きました。が、VHSを
音源としているため、はっきりいって音質悪いです。演奏は、
音質の悪さが影響しているので何ともいえませんが、ファンの方には
大変失礼になって申し訳ないですが、期待していたようなスペイシー
な広がりや奥深さがなく、残念でした。「精彩を欠いたような」
感じなのです。あのメンバーならもっとうまいはずですが、
やはり急ごしらえではどうにもならないのでしょう。
投稿: モンスリー | 2005.10.11 22:39
モンスリーさん、こんばんは。
>最寄り駅から武道館まで数メートルごとに係員がいて「リッチーはいません」とやっていたそうです。
大変な仕事だなぁ・・暴れたファンはいなかったのでしょうか。
トミー・ボーリンですが、観客のあまりの罵声に、リッチーの電話番号を書いた紙をステージから客席にばらまいた、という話もあったようですが・・
世界中に迷惑かけるこらえ性のないリッチー。
>後で聞くところではジョー・サトリアーニなるすごいテクのギタリストが参加したそうです。
このヒト、スティーヴ・ヴァイの師匠ですよね。
リッチーの代役が務まる人も世界中にそういないと思います。
急造エイジアですが、当時の大ヒットであった「Don't Cry」をやらなかったので、不満のたまるステージだったと雑誌に書いてありました。
やはりアルバム作るとこまでやったんだったら、同じメンツでライブまでは仲良くしていないとダメですね。
投稿: SYUNJI | 2005.10.11 23:35
SYUNJIさん、こんばんは。
>>世界中に迷惑かけるこらえ性のないリッチー
「マエストロ」をちゃかしたマンガで、演奏の途中でステージから
いきなり去ってしまう、というのを見ましたが、これって
逸話なのか、実話なのか、未だによくわかりません。
しかし、今のようにロックが巨大ビジネス化し、ミュージシャンが
契約でがっちりしばられている現状では、絶対に無理な行い
ですね。
ある意味では、ロックもクオリティが上がったといえるのかも
しれません。
>>このヒト、スティーヴ・ヴァイの師匠ですよね
ヴァイもイングウェイも聞いたことないんです(^^;;)。
投稿: モンスリー | 2005.10.13 22:46
SYUNJIさん、こんにちは。あの時のダフ屋は私ですよ。(嘘)
私のところにも、オアシスのボーカルがステージから降りて逃亡した。(しかも同じ九州でそれも2度も!)という情報を教えてもらいました。払い戻しありなんでしょうか?
投稿: 抹殺ぷくちゃん | 2005.10.14 05:52
モンスリーさん、ぷく先輩、こんばんは。
>ある意味では、ロックもクオリティが上がったといえるのかもしれません。
まあ確かにそうかもしれませんな。
ファンとしては安心な反面、ロックンローラーがそんな守りに入っていいのか?という無責任なアオリもしてみたい気はしますが・・
礼儀正しいアクセル・ローズもつまんないしなぁ。
そういう意味では、先輩の言う九州でのリアム・ギャラガーの行動は、ロックの伝統を守る古式ゆかしいものなのかもしれません。(他人事)
ちなみにあたしもヴァイもインギーも聴いてませんよ。
ヴァイのギターはデイヴ・リー・ロスのソロで聴いただけ、インギーなんか「世界で最も過大評価されてるギタリストはジミー・ペイジだ」というあんまりな発言のヒト、ということしか知りません・・
投稿: SYUNJI | 2005.10.15 21:54
こんばんは。コメント&TBありがとうございました。ことらからもTBさせていただきました。
ブログ拝見いたしましたが色々と聴いてなくて凄いっすね(失礼)。それにしてもパープルを聴こうと思って「カム・テイスト~」を聴くってのは素晴らしい。僕もこのアルバムや、富墓林のソロは大好きです。
また、お邪魔させていただきますので、今後とも宜しくお願いいたします。
投稿: shintan | 2008.01.14 22:03
shintanさん、こちらにもコメントありがとうございます。
>ブログ拝見いたしましたが色々と聴いてなくて凄いっすね(失礼)。
はい、お褒めのお言葉光栄です。(←アホ)
こんなアホウな企画を延々4年もやってしまいました。
しかも未だに「聴いてみた」のほうがなかなか進みませんが・・
>それにしてもパープルを聴こうと思って「カム・テイスト~」を聴くってのは素晴らしい。
いえ、コレしか図書館になかったもんで・・すいません。
こちらこそこれからもよろしくお願いします。
投稿: SYUNJI | 2008.01.14 22:18
あんた 凄いよ 聴いてなくても当時の俺の気持ちを代弁してるよ。これなら俺でもパープルに入れる(笑)って思ったもん。
投稿: キミタン | 2010.09.20 12:48
キミタンさん、初めまして。
こんなポンコツBLOGの昔の記事にコメントありがとうございます。
>これなら俺でもパープルに入れる(笑)って思ったもん。
ははは!やはりそうでしたか。
そう思わせてしまうトミー・ボーリンも気の毒ですけど、こういうパープルに関する伝説はやはりおもしろいですね。
投稿: SYUNJI | 2010.09.20 21:25