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エアチェックの夜 28

第28回 MD 2002.6.16


POPS123 1999.1.1

Bandstarter/Brainpool
A Thousand Times/Sophie Zelmani
Celia/Sopia Kallgren
Andas Fritt/Irma
Always You/Sophie Zelmani
Mindre Smakar Mar/Bo Kaspers Orkester
The Power Of Good-bye/Madonna
No Rain/Blind Melon
Come Back Darling/UB40
One Week/Barenaked Ladies
Another One Bites The Dust/WYCLEF JEAN
Because Of You/Dexy's Midnight Runners
Inside Out/Eve6
Fire Escape/Fastball
Lullaby/Shawn Mullins
Kiss The Rain/Billie Myers
Never Ever/All Saints


この曲目リストは、20年かけて作ってきた洋楽オムニバステープの最後のものである。
全123本で、総曲数は1500を超えている。
この後も作ることは可能だが、最後としたのには理由がある。
この年、MDデッキとMDウォークマンを購入したためである。

カセットテープの耐用年数はどれくらいか知らないが、物理的に切れれば寿命である。
123本の中で実際に切れたものはない。
これは繰り返し聴いてきたことが長持ちにつながったと思っている。
また保管にもそれなりに気を使っていたことも、長持ちの一因だろう。
ケースには必ず入れていたし、積み重ねておくようなこともしなかった。
車の中に置いたままということだけはしないようにしていた。

20年はとりあえず持ったが、この先はわからない。
まだ聴けるうちに別のメディアに移しておく必要があると考え、MDを買うことにした。

テープからMDに曲を落とす作業は、思いの外時間がかかった。
単純に計算しても123時間。
連続で行えば5日だが、現実にはそんなにヒマがあるわけでもない。
休日を利用しながら週に1~2本ずつ作っていったが、全部落とすのには2年以上かかった。
それでもその間もテープが切れるようなことはなく、MDに落とした現在もテープ自体は捨てずにとってある。

MDの、メディアとしてのテープに対する優位性はいろいろあるが、編集が可能なことが一番大きい。
テープに一発録りでエアチェックしていた頃は、とにかく編集できないことにいらだちを覚えたものだ。
数曲まとめて録音した場合、途中の曲は気に入らなくても消すこともできない。
MDならどんな曲順にも編集可能だし、気に入らない曲は簡単に消すことができる。
「こんな便利な道具が当時あったら・・」とMDに曲を落としながら何度も思った。

85年6月頃録ったテープ(34本目)には、誤って曲紹介のトークの一部まで録音してしまった箇所があった。
メン・アット・ワークの「Everything I Need」という曲だったのだが、「メン・アット・ワークで」という部分だけ誤ってポーズボタンを解除して録音されてしまい、その後このテープを聴く度にがっかりしたものだ。
MDは曲ごとの消去はもちろん、消去するポイントも0.1秒以下の単位で調整できる。
デッキによって機能は異なるのかもしれないが、買ったデッキではジョグダイヤルで調整が可能だ。
こうなるとメン・アット・ワークだろうが何だろうが、不要な曲やトークは完全に制圧できた。
15年経って「メン・アット・ワークで」をMD上で消すことができた時は、積年の悩みが解消できた感動で、デッキの表示が涙でかすんで見えなくなったものです。(大うそ)

ただ、全てのテープにおいてトークを徹底的に排除してきたわけではない。
この123本のオムニバス作成においては、トーク排除にこだわってきただけである。
ライブ番組や新譜特集などは、解説トークなども録音してあるものも多い。
深夜にタイマーで番組丸ごと録音したヤツはCMまで入っている。
これがたまに聴くと結構なつかしくていいんだよね。

いずれにせよ、皮肉なことにMDというエアチェックに最も適した道具を買った時には、エアチェック自体が自分的にも世間的にもすっかりすたれてしまっていたのだ。
ポーズボタンに神経を集中させたり、テープの残りを気にしながら必死に曲が途切れないよう神様に祈ったりといった苦難があったからこそ、20年も続いたのだろう。
「次のテープはもっと良くなる」ことをいつも期待しながら、いつの間にか100本を超えていたのだ。

元の音源はFMラジオを録音したテープなので、MDに落としても当然音質が悪いものもある。
同じ曲でCD音源がある場合は、CDからMDに録音しなおして差し替えたりもした。
ところが聴いてみるとどうもCD音源になじめない。
ノイズもふらつきもないし、これが本来の音のはずなのだが、耳がラジオとテープのアナログ音源に慣れてしまっているのか、違和感がありまくりなのだ。
MDを電車の中で聴くと、テープ音源の曲の方がCD音源の曲よりも聴きやすいのだ。
「良く聞こえる」「細かい楽器の音も聞き分けられる」気がするのである。
正直、聴力はあまりいい方ではない。
また電車の中は鑑賞するには最悪の環境だ。
(しかもMDウォークマンである)
比較自体にムリがあるのだろうが、この感覚は今でも変わっていない。

同世代であれば、メディアの変遷に驚いているのは異論のないところだろう。
再生メディアではCDがあっという間にアナログディスクを追い越していった。
しかしそれ以上に驚くのは、カセットテープの息の長さではないだろうか?
一般家庭でのオープンリールテープデッキの使用は、70年代後半にはほとんどなくなっていたと思う。
つまり25年以上にわたり録音メディアとして使用されてきているのだ。
その昔「Lカセット」という、カセットより少し大きめのメディアが登場した
ことがあった。
オープンリールとカセットの両方の良い点を備えたメディアとして話題になったが、全く普及しなかった。
他にも高級オーディオ用メディアでDCC・DATなどがあったが、結局一般向けには普及していない。

あとどこかのテープメーカーが発売した、カセットテープのハブの部分だけのヤツ。
カセットの枠の中から、テープをハブごと取り出して差し替えて聴くという、結構大胆なしくみである。
(確か商品名はコロカセだったと思う)
この説明だとわかりにくいが、まあ小さなオープンリールテープのような感じだった。
「場所をとらない」ってふれこみで発売されたのだが、かえってあまりにも小さくて扱いにくく、全然売れなかったようでした。

いずれにせよ、そういった他のメディアの台頭を許さず、究極の汎用磁気テー
プメディアとして、(弱っては来たけど)カセットテープは今も生き続けているのだ。
これってすごくないスか?

それでもMDは便利な機械だ。
今はもうFMラジオから音楽を録音するヤツなんかいないだろうけど、そのうちラジオからMDへのエアチェックをしてみようかと思っている。

最後のテープは、エアチェック(ビデオ音源)とCDから録音した曲がほぼ半分ずつである。
もはやアーチストについての情報もほとんどなく、曲への思い入れも希薄だ。
それでも最後のエアチェックとして、無理矢理紹介してみようと思う。

紹介するのはショーン・マリンズ。
日本でもそれほどなじみのあるアーチストではないだろう。
アトランタ出身で長くインディーズで活躍してきたらしい。
98年、「Lullaby」という曲が全米で大ヒットし、一躍有名になった。
それ以外に何の情報もないのだが、ビデオクリップからテープに音を落としたので、映像は比較的記憶に残っている。
車のライトが行き交う夜の道路のそばで、アロハシャツにギター姿のショーンがスローで歌う。
歌もサビ以外はほとんど低い語りで音程はない。
ビデオクリップにしては照明も不充分だし、これといった演出もなく、ただ演奏するショーン。
夜の暗さがそう思わせるのかもしれないが、何と言うか哀愁に満ちた映像なのだ。
「全てがきっとうまくいく・・」といった意味の歌詞なのだが、「本当かよ?」とつっこみたくなるような、不思議な映像である。
それでも曲は悪くなく、印象に残る、繰り返し聴きたくなる1曲である。

日本で今このクリップを目にすることは少し難しいかもしれません。
機会があればぜひ聴いてみて下さい。
ショーン・マリンズで、「Lullaby」。

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コメント

オールド・アナログ・ハイファイ派です。私は最近エアチェックを再開しました。昨年末にNHKFMでバイロイト音楽祭のライブが連夜9時から1時頃まで放送されましたが、食事時刻の遅い生活では聴くのが難しかったのがきっかけです。最初はハードディスクに入れましたがランタイムエラーで失敗し、今では無難なMDにしています。

投稿: evergrn | 2004.01.21 12:53

コメントありがとうございます。
MDもロングモードであれば、かなり長時間の録音が可能ですね。
そういう自分はロングモード対応が開発される以前の機種を使ってますけど。
それにしても全く違う分野の方から、こんな下品な文章にコメントを寄せていただけるとは思ってませんでした。
恐縮です。

投稿: SYUNJI | 2004.01.21 23:52

 コメントありがとうございます。私がMDに落とそうとしたのに比べたら、すっごいボリュームですね。しかも、エアチェック中心だと。私の場合アルバムが多いので、そのまんま流しっぱなしでダビングですが。今、悩んでいるのは、ダビングしたMDをさらにグループや曲ごとに分けるかどうかです。
 

投稿: ブルネル | 2004.01.24 10:52

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