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エアチェックの夜 27

第27回 オアシス 2002.3.25


POPS119 1998.1.3

Open Arms/Mariah Carey
Tell Me/Boston
Love Is Strange/Everything But The Girl
Higher Power/Boston
All About Soul/Billy Joel
Love Is A Wonderful Thing/Faitima Rainey
Semi-Charmed Life/Third Eye Blind
I'll Be Missing You/Puff Daddy
To Make You Feel My Love/Billy Joel
Somewhere In The World/Swing Out Sister
Falling In Love/Aerosmith
MMM Bop/Hanson
Bitch/Meredith Brooks
Young Boy/Paul McCartney
Stand By Me/Oasis


90年代になってから、エアチェックもしなくなり、チャートにもついていけなくなった。
つまり新しく「仕込んだ」アーチストというのがほとんどない。
(ちなみに2000年以降その傾向はさらに強まり、先日のグラミー賞受賞者はアリシア・キーズというニュースを聞いて「誰だそれ?」と思ったりしている。)
そんな90年代以降で、その音やグループの動向に興味をひかれる、唯一と言っていいバンドがある。
オアシスである。

はじめて彼らの曲を聴いたのは96年頃だった。
すでにバンドとしての地位を確立しつつあった時期で、曲を聴く前から存在だけは知っていた。
本国イギリスでは国民的人気を得ており、日本でもNIFTYの洋楽フォーラムでは盛んに話題になっていたし、「世界一ふてぶてしいバンド」などといったキャッチで雑誌などで語られていたこともあった。

イギリス(日本でも?)のマスコミはオアシスとそのライバルとしてブラーをとりあげ、「対決」模様を面白おかしく書き立てたようだ。
このあたりは80年代のデュラン・デュランとカルチャー・クラブの対決図式と同じである。
ただ実際にオアシスのリアム・ギャラガーは、ブラーのボーカリストを「一番嫌いなヤツ」と発言するなど、あながちマスコミの脚色だけでもないらしい。

デビューしてしばらくは、ドラッグ・暴力・ライブの中止・解散危機など、メンバーの行動が問題となったこともあったようだ。
まあどこのバンドでもよく聞く話だが、実際今でも解散のウワサは絶えない。
当たり前の話だが、世界に通用するアーチストというのは、たとえドラッグや暴力といった問題行動があっても、根底に音楽に対する誠実さが備わっていることが条件だ。
そうでなければ、楽器や歌の練習をしたり、予定どおりスタジオに集まったりというビジネスの基本を遂行できない。
単なるクスリ好きではダメなのである。
最後に必ず音楽の世界に帰ってくる誠実さが、世界を感動させるアーチストになれる最低の条件だからだ。
エリック・クラプトンはその典型である。

そういう意味ではオアシスも、多くの先輩同様、問題行動はあれど音楽に対しては誠実なヤツらであると言える。
むしろ彼らの問題行動なんか、まだカワイイ方なんだろう。

また常についてまわる解散説の原因には、ノエルとリアムの兄弟に喧嘩が絶えないということがあるらしい。
バンドのメンバーの一部に兄弟がいる例はそれほど珍しくない。
ヴァン・ヘイレン、スティクス、トト、ハートなどがそうだ。
これらのバンドにも解散危機はあった。
ただし兄弟そのものが分裂してバンドは解散、という例はあまり聞かない。
喧嘩をしてもそこは兄弟であり、もし解散しても兄弟であることからは一生逃れられないからだろうか。
多くのファンはそこをわかっているから、絶えない解散危機説にもあまり動じないのかもしれない。
実際ギャラガー兄弟以外のメンバーはかなり入れ替わっている。
兄弟さえいればオアシスはなんとかなるだろうと、ファンはわりと安心して見ているのだろう。

「Roll With It」が最初に聴いた曲である。
MTVを録画したものをカセットテープにダビングしたので、映像も同時に見ることができた。
印象としては、ウワサに聞くほど「ふてぶてしい」という趣ではなく、「普通のあんちゃん」バンドという感じだった。
その後、彼らの根底にあるのはビートルズであり、しかもそれを公言してはばからないことを知った。

70年代以降で、ビートルズの影響を受けていないアーチストはいないだろう。
しかし「ビートルズになりたい」とまで言い、歌詞にビートルズの曲名を使い、音のサンプリングも堂々とやってのけるバンドはオアシスくらいだ。
もちろんラトルズなどのコミック的パクリバンドとは全く違う。
この明らかにビートルズを意識したサウンドが、多くの人を引き付ける魅力のひとつだとよく言われる。
聴いていてどこか安心するような音なのだろう。

それでいて、手を後ろで組んで猫背で歌うリアムの独特なスタイルや、厚みのあるサウンド、単純な歌詞など、意外と個性的な部分も多い。
どれもオアシスの魅力ではある。
それ以外に興味を覚えるのは、彼らの保守的な姿勢である。
簡単に言えば、「破天荒に見えて結構まじめでいいヤツら」といったところだろうか。

3年ほど前、日本のテレビ取材に応じたノエル(たぶん)を見たことがある。
インタビュー嫌いでならした彼だと思っていたので、意外だった。
ビートルズに似ていること、マスコミ嫌いなことなど、けっこうズケズケとした内容をインタビュアーに質問されていた。
ノエルはそんなぶしつけとも思える質問に対し「マスコミに事実でないことを伝えられるのは不本意だ」のような答えをしていた。
至極まともな回答である。
日本語訳のスーパーはその時、ですます調のかたい語調だった。
ロックミュージシャンのインタビューがですます調というのも妙だが、ノエルの神妙な顔つきには、むしろ違和感のない訳のような気がした。

2年前のアルバムのタイトルは「Standing On The Shoulder Of Giants」という。
元々はあの万有引力の法則のニュートンの言葉で、「科学の進歩は偉大なる先人の功績に支えられてこそ成し得ることができる」という意味だそうだ。
オアシスがなぜこんなタイトルをつけたのか、真意のほどはわからない。
まともに受け取れば、「ビートルズらの先人の功績あってのオアシスです」といった謙虚な意味にとれる。
逆にそれは彼ら一流の皮肉で、「昔のスターなど何とも思っちゃいないぜ」なんて考えているのかもしれない。
いずれにしても、とにかく彼らはロックミュージシャンにしては見た目も地味であり、行動や言動のはしっこに木訥で誠実なところが見えたりすることがある。
「カリスマ」という言葉がすっかり陳腐化した昨今だが、オアシスはカリスマではないと思う。
絶大な人気、ドラッグ、暴力、解散危機というロックの必修科目をちゃんとこなしながら、どことなくあか抜けない雰囲気なのである。
たぶんいいヤツらなんだよ、きっと。会ったことないけど。

めったに新譜を買わない自分だが、「Be Here Now」「Standing On The Shoulder Of Giants」は発売直後に買ってしまった。
ミーハーと言われればそれまでだが、やはり気になるバンドなのだ。
ただやはりメンバーの名前を全部おぼえたりはなかなかできない。
もしオアシスが80年代に登場していたら、かなり深い情報まで追っかけていたことだろう。

ビートルズにあこがれて影響を受けたアーチストは、数限りなく存在します。
ただこのバンドは単にパクリをやっているのではなく、自分たちの個性に昇華しながらビートルズを吸収しており、その人気を不動のものにしています。
これって、できそうでなかなかできないことなんじゃないでしょうか?
オアシスで、「Stand By Me」。


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