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エアチェックの夜 11

第11回 スモール・タウン 2001.6.14


POPS39 1985.11.25

Boy In The Box/Corey Hart
Caught In The Rain/Quarterflash
The Way You Do~My Girl/Daryl Hall & John Oates
Life In One Day/Howard Jones
Soul Kiss/Olivia Newton-John
Never/Heart
Heaven Is One Step Away/Eric Clapton
Say You, Say Me/Lionel Richie
Get It On/The Power Station
Fame/Duran Duran
Tonight She Comes/The Cars
Rap Her Up/Elton John
Small Town/John Cougar Mellencamp
Stand By Me/Morris White


神奈川県相模原市に住んで30年以上になる。
生まれたのは北海道だが、母親が親元で自分を産んだだけで、住んだことはない。
生まれた当時の家は杉並にあった。
つまり他の土地で生まれ、親も相模原出身ではない。
相模原にはこういった住民が多いはずだ。
「三代前から相模原」といった人はごく少数だと思う。

ただ、物心ついた頃には、すでに現在の家に住んでいた。
幼稚園から高校まで、通った学校は全部市内にある。
そのため行動半径が狭く、自分の住む町は小さい町だと思っていた。
高校生になっても、家は高校から見て南にあるため、高校よりも北側にはあまり行く用事もなく、道も覚えなかった。
しかも高校は市のだいたい中心に位置すると思っていた。
今でも高校より北側の地理にはうとい。
メイプル・ホールにクルマで行っても迷うほどである。

大学に入り、初めて都内の学校に通うことになった。
全国各地に付属高校を持つマンモス大学のため、学生も各地からやってくる。
そいつらとつきあううち、地元を他の地域と比較して見ることが多くなった。
どうやら相模原は小さな町でもないようなのだ。

当時の市内の小中学校の特徴として、規模がでかいことがある。
小学校に入学した時、1年生は11クラスあった。
中学校は学年14クラス(約600人)だった。どちらも市立である。
しかもこんな学校が市内にはたくさんあった。
これが地方出身者から見るととんでもない話らしいのだ。

確かに中学校に通っていても「人数多いな」と思うことはあった。
同じ学年なのに知らないヤツの方が多い。
全校生徒が体育館に入りきらず、修学旅行も新幹線をほぼ貸し切りだった。
卒業式も馬鹿正直に全員に証書を渡すため、全員終わるのに1時間以上かかる。
自分は3年13組だったため、受け取る頃にはすっかりダレてしまい、感動も何もなかった。

小学生だった70年代、市内の人口は30万人と教わった。
現在は60万人を超えている。
1年で1万人が増えている。こんなケースは全国の自治体でもまれだ。

人口が多い割に、住民の土地に対する帰属意識は希薄だ。
地元出身でない親を持ち、それぞれの親の持つ土地の風土やしきたりをある程度引きずりはするが、地域全体で体現することもなく、家は寝に帰るだけの場所。
人口60万人は岡山や浜松といった地方都市と同じ規模だ。
しかし知名度は全くもって低い。
そして低いことに関して、住民の関心もない。
「相模原の名を全国区にしよう」運動なんて、誰かやっているのだろうか?

実は自分はこの土着性の希薄さが嫌いではない。
煩わしさがないからだ。
求心的な先人が開いた町でなし、戦後の文化の先駆けのごとく、都心に通うに便利だから集まっただけの土地なのだ。
名物や名所があるわけでもないし、地元出身の有名人も思いつかない。
(原辰徳は確か福岡の生まれだ。)

自分は相模大野にほど近い場所に住んでいるが、最近の駅周辺の変わり様はすさまじいものがある(らしい)。
「らしい」というのは、毎日見ているとあまり感じなくなるからである。
久しぶりに友人がこの土地をたずねる時など、あまりの変わり様に驚くようだ。

この町の変化のありように関して、一時問題となったことがある。
地元の人間なら覚えていると思うが、「相模大野駅前にウィンズが来る」という話だ。
駅前の再開発において、ウィンズを誘致しようという計画が持ち上がったのだ。
場外馬券売場を誘致することで、周辺地域からの集客効果を期待しての話ということだった。

これが市議会でも賛否両論となり、結局は撤回(凍結?)されたらしい。
この時もっとも引っかかったのが、誘致に反対する側の意見だった。
曰く、
「場外馬券売場ができると、子供の教育上よろしくない」
「ゴミが散らかって町が汚くなる」
というものだ。
正論のようだが、根元にすさまじい差別意識があることは容易に想像がついた。
「教育上よろしくない」のは子供をダシにした建前である。
本音は「馬券を買いにくるヤツらは汚らしいからイヤ」なのだ。
「町が汚くなるからイヤ」ではなく、「買いにくるヤツが汚いからイヤ」なのである。

自分は公営ギャンブルはほとんどやらないが、川口オートと平和島競艇には行ったことがある。
正直、オートも競艇もとても楽しいものだ。
出入りしているおっさんたちは、確かに身なりも美しくないし、明らかに持ち崩した状態の人も多い。
バクチが好きでない人にとっては耐え難い光景かもしれない。
バクチで家庭が崩壊したり、不幸になった人間は数知れないことも事実だ。

ただしウィンズ誘致反対に、子供の教育問題を持ち込むのはフェアではない。
教育を理由にあらゆるものを遠ざけようとする姿勢はやめるべきだ。
子供にバクチをさせたくないなら、親がそう教育すべきである。
バクチやオケラもまた世の中の一部なのだ。
きれいなものだけが人生ではない。
ましてや、馬券を買いに来る人間を軽蔑しつつ、それを教育問題にすり替えて抗議するなど、偽善というものである。(こっちの方が教育上問題なのでは?)

この問題が起きた時、帰属意識の低い自分にも、危機感はあった。
「本当にウィンズが来たら汚くなるな」と思ったことも確かだが、危機感を覚えたのはそれについてではない。
半ばヒステリックに「教育上の理由」を掲げて反対する人たちの考えに、危険なものを感じたのだ。

反対派の機関紙のようなものに、推進派の土地所有者の談話が掲載された。
「自分の土地に何を建てようと勝手である」
これに対して反対派の意見はこうだった。
「周囲の意見も聞かず、勝手にウィンズを建てようとする態度は問題。町はみんなのもの」
これには全く共感できなかった。

個人的にはウィンズ誘致は反対だが、反対派の意見には同意できなかったのだ。
「町はみんなのもの」とは、勘違いもいいところである。
ウィンズ自体は(納得はしないが)違法ではない。
所有者が自分の土地に何を建てようが勝手なのだ。
その土地に対して、固定資産税を1円も払っていない人間が「勝手に」言える話ではない。

顛末の詳細は知らないが、とりあえずいったん誘致は撤回されたようである。
この先いつまで相模原に住むのかわからない。
相変わらず帰属意識は希薄なままだ。


ジョン・クーガー・メレンキャンプの「Small Town」は、故郷の小さな町を歌ったものだ。

「小さな町に生まれ/小さな町に住んでいる/
 たぶん小さな町で死ぬだろう/
 小さな町の学校に通い/小さな町の教会で教えを受けた/
 L.A.で可愛い娘と結婚して/小さな町に連れてきた/
 今じゃ彼女も俺と同じに「小さな町」してる/
 俺のベッドは小さな町にある/それで十分だ/」

自分にとっては、小さな町だったはずの相模原。
地域性に乏しい、まるで「つきあいの苦手な自分」のような町。
この町の学校に通い、父はこの町で亡くなった。
しかしこの町は、夢には出てこない。
いつかこの土地を遠く離れ、夢に見るようなことになるのだろうか。

全くの余談だが、先日近所の家が火事になった。
けが人はなく、半焼程度で済んだが、一時は騒然となった。
出火当時、家の人は不在で、消防の人に「この家は何人家族ですか?」と聞かれ、自分は答えられなかった。
30年以上住んでいてこのザマである。
マスコミでもよく言われることだが、地域住民同士のつながりが弱くなり、地域性が空洞化しているといった話の典型ということだ。
やはりあまりよろしいことではないようだ。


今日紹介の曲には、実は別バージョンがあります。
スタンダードは軽快なリズムのロックナンバー。
もうひとつスローなアコースティックバージョンがあり、このアコバージョンがお勧めです。
ジョン・クーガー・メレンキャンプで、「Small Town」。


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