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エアチェックの夜 6

第6回 アバ 2001.3.31

POPS14 1982.3.14

Waiting For A Girl Like You/Foreigner
Let's Go/Cars
One Of Us/Abba
Leather And Lace/Stievie Nicks
Comin' In And Out Of Your Life/Barbra Streisand
Keep On Loving You/REO Speedwagon
Scissors Cut/Art Garfunkel
I Can't Go For That/Daryl Hall & John Oates
Move On Me/Olivia Newton-John
Steal The Night/Stievie Woods
Little Tenderness/Sheena Easton
Love Is Alright Tonight/Rick Springfield
Los Angelenos/Billy Joel
Sweet Dreams/Air Supply
Tonight I'm Yours/Rod Stwert
Oh Pretty Woman/Van Halen
Don't Stop Believin'/Journey


若い頃の趣味や嗜好を振り返ると、驚くほど純粋だったり、恥ずかしくなるくらい悪趣味だったりすることは誰にでもあることだ。
音楽でも「昔聴いていた」ことを他人には少し言いにくい、そんな存在が誰にでもあるだろう。
それはある人にとってはベイシティ・ローラーズだったり、またレイフ・ギャレットだったり、エア・サプライだったりする。
その「恥ずかしい」存在が、最近思わぬところでトレンドになっていることを知った。
アバである。

先日まで放映していたドラマの主題歌として、アバの曲が使われた。
そのせいか、FMでも最近よくかかるようになった。
そして、昔のファンには懐かしく、若い世代には新鮮に受け止められ、ベスト盤が好評らしい。
アバくらいになると、ベスト盤もいろいろある。
驚いたことに、自分はそのいろいろあるベスト盤の収録曲のほとんどを知っている。
結構聴いていたのだ。

ビートルズで洋楽の入門を果たした自分が、次に選択したのがアバだった。
聴き始めたのは中学生の頃だが、当時はアバを聴いていることを自慢に思ったりしていた。
「まわりのガキどもはまだ歌謡曲などを聴いているのに比べ、オレ様はすでにアバ」といった、今考えると力いっぱい勘違いなのだが、そんな思いで聴いていた。

エアチェックしたテープの中で、最も古いのは実はビートルズではなくアバのものだ。
しかも音源はAMラジオである。
23年ほど前の音だが、ゆがんだりもせず、意外にノイズもなくまともに聞こえる。

82年頃まで、アバはリアルタイムだった。
しかし83年以降は流行の音楽シーン、つまりチャートに登場してこなくなった。
若者は流行に敏感であり、かつ流行を過ぎたものには冷たい。
自分も例外ではなかった。
もはや誰も聴かないアバなど、「聴いていた」ことすら恥ずかしく、「ダサイ」存在になっていった。本当は音として聴いていて飽きないのだが、友人から「お前まだアバなんて聴いてんの?」と言われることを恐れるようにすらなった。(少し大げさだが。)

その後アバのレコードを借りることもなく、テープは1本きりで増えることもなかった。
しかし決してテープを消したり、他の音を上書きするようなことはしなかった。
ファンと言うほど真面目ではないが、捨てることもしなかったのだ。

84年にクルマを買った。
友人の間では比較的クルマの購入は早い方だった。
中古車のわりには立派なデッキが付いており、自慢のエアチェックコレクションをかけて、用もないのに友人を乗せて横浜あたりを走ったりした。
ただ、やはりアバだけは他人に聴かせることもなかった。
おそらく同じ世代の当時の若者にとって、つまりアバとはそんな存在だったはずなのだ。

アバは元々はビョルンとベニーの男性デュオに、アグネタとフリーダの二人が加わって、それぞれ夫婦となったグループである。
結局は二組とも離婚してしまったが、オトコ所帯でもめたり解散したりといったロックバンドとは、いわば対局にあるようなグループだったと思う。
ハートやブロンディやプリテンダーズなど、女性がボーカルをとるバンドは当時他にもあったが、アバとは雰囲気は全く違う。
これらのバンドは、それぞれウィルソン姉妹やデボラ・ハリー、クリッシー・ハインドといった、強烈なキャラクターを持つ女性が男どもを従えて登場、という売り方だったのだ。
アバにはそんな雰囲気は全くなく、文字どおりファミリーなイメージだ。
まあ比較するのは無理があるかもしれない。

アバはたぶん「ロックバンド」ではないし、それよりアバを「バンド」とはあまり言わない。
親しみやすいメロディやコーラスは、正直今聴いても飽きない。
思いの外バラエティに富んでおり、ちゃんとロックナンバーもある。
例えて言うなら、アバとは「NHKでも放映できる」音楽なのだ。

ロックの魅力に離合集散がある、と前回書いたが、アバにそんなものを求めるヤツはいないだろう。
矛盾するようだが、アバはただ流行っていて楽しかったから聴いていたのだ。

アバが世界中で受けたのは、もちろん音や詩の良さ、コーラスや歌のうまさなどが理由だろう。
それとは別に、自分にとってはアバにはたぶん「安心」があったのだと思う。
「まわりのガキどもに差をつけた」つもりで、革新的に聴いていたはずのアバが、いつの間にか自分にとって「こころが安定する音楽」になっていた。
夫婦という「家族」の営む音楽に、おそらくは無意識のうちに、「他人」同士がもめあうロックバンドにはない「安定」を感じていたのだ。

「家族」は居心地のよい反面、気恥ずかしいものだ。
例えば他人に自分の親を紹介する時、なぜか恥ずかしさを覚えることがある。
「アバを聴いていた」ことの恥ずかしさとは、また別の感覚なのだが、通じるものがあると思うのは自分だけだろうか?

そして最近、またアバはトレンドである。
ただ、もうドラマは終わってしまったし、いつまでトレンドでいられるかはわからない。
若い世代にはすぐに忘れられてしまうかもしれない。

ちょうどドラマが放映されていた頃、CDショップで、数人の女子高生がアバのベスト盤を買っているのを見た。
もちろん彼女らと自分では、アバを聴く動機は全く別のはずだ。
でも若い世代がCDを買っているのを見た時、こちらも「安心」するのがアバなのだ。
数年前までは長いこと自分にとって「恥ずかしい」存在だったアバが、その時だけは少し「誇らしい」存在になっていた。


それでは今週最後の曲。
昔懐かしいあのアバのナンバーから、
「One Of Us」。


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