エアチェックの夜
この「エアチェックの夜」はもともと友人の音楽サイトに、自分から志願して2001年1月から1年半の間、28回にわたり掲載させてもらった文章です。
なんてださいタイトルなんでしょうか。
その友人と違って自分は楽器や歌をやらないのですが、昔から洋楽が好きで、またミーハーな割にひねた感覚でアプローチしていたので、それを表現したらおもしろいかなと思ったのがきっかけでした。
当時の文章は一部訂正しましたが、大半は当時の作成そのままです。
第1回 エアチェックの夜 2001.1.13
POPS1 1979.5
A Man I'll Never Be/Boston
September/Earth,Wind&Fire
Hold The Line/Toto
Blue Morning,Blue Day/Foreigner
Shake Is/Ian Matthews
Chiquitita/Abba
Tragedy/Bee Gees
Le Freak/Chic
Cafe/D.D.Sound
Hammer Horror/Kate Bush
Too Much Heaven/Bee Gees
Californiaman/Cheap Trick
Reds In My Bed/10cc
One Last Kiss/J.Geils Band
Silver Lining/Player
Cercami /I Pooh
1979年から、洋楽オムニバステープを作成すべく、エアチェックを始めた。
上記は、その1本目の収録曲である。
エアチェックというのは正しい英語なのかどうかは知らない。
主にFMラジオの放送をテープに録音することの意味で使っていた。
動機はありがちなものだった。
同級生に洋楽を聴いているヤツが出始め、たいがいそういうヤツはマセたガキだった。
また3才上の姉はすでに洋楽にはまっており、部屋にはロニー時代のレインボーやキッスのポスターが貼ってあった。(今思うとビジュアル的にはあまりいい趣味とは言えない)
そんな環境に影響され、ビートルズ・アバを経てオムニバスに突入した。
エアチェックを続けたのはカネがなかったからだ。
当時レコードはLP1枚2500円程度。これは現在のCD新譜相場より高い。
前年の78年、当時はやっていた「ラテカセ」を父親に買ってもらった。
ラジカセにモノクロのテレビがついた、アレである。
エアチェックに主に使っていたのは以下の番組である。
・サンスイ・ベストリクエスト FM東京
・リクエスト・コーナー NHK-FM
・マイサウンド・グラフィティ FM東京
・クロスオーバー・イレブン NHK-FM
テープ作成にあたって、自分なりに決めていたことがあった。
・60分テープを使う
・トークを入れない
「トークを入れない」ようにするには、かなり神経を使う。
MDと違い、アナログテープは編集が容易ではない。
ダブルデッキが登場するのは3年ほど先である。
従って必然的に、曲紹介に耳を集中させ、メモをとり、曲が始まる直前にポーズボタンを解除する。
失敗したこともあった。ラジオの前で一喜一憂していた。
あれから21年。気が付くとオムニバステープは100本を超えていた。
さすがに後半はFMからのエアチェックはしなくなり、代わってMTVからのダビングやCDからの録音をするようになった。
エアチェックという行為も言葉ももはや絶滅し、メディアはレコードからCD、そして最近はネット配信と変化している。
「洋楽」というカテゴリーや言葉自体、若いヒトには無意味になっている。
最近の洋楽が良くないと言うつもりはない。オアシスやサードアイ・ブラインドはいいバンドだ。
ただ、当時たくさんあったはずのFM雑誌も、今はほとんど廃刊となった。
ラテカセを買ってくれた父親ももうとっくにこの世にいない。
昔からずっと、「趣味は何?」と聞かれたとき「ロック」と答えてきた。
そして必ず意外な顔をされた。ロックが趣味であるように見えないらしい。
確かに真実とは言い難いかもしれない。
楽器も歌もやらないし、楽譜も読めない。
歌詞の意味もわからないし、ライブもめったに行かない。
それでもやはり、ロックが好きだ。趣味である。
こういうアプローチのしかたも、あっていいと勝手に思う。
根性のない自分は、幼いころから続けてきた稽古事やスポーツというものが何ひとつない。
しかし21年前のこのテープは、今でもデッキに入れるとそれなりの音を出してくれる。
これからも、このひん曲がった勝手な解釈でロックを趣味として続けるつもりだ。
原点は、ひざをかかえてラジオに集中する「エアチェックの夜」。
これこそまさに、ロジャー・テイラーの「Radio Ga Ga」の世界だ。
それでは今日の1曲目。
ボストンの「A Man I'll Never Be」。
| 固定リンク | 0
コメント