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エアチェックの夜 10

第10回 父より子へ 2001.5.31


POPS33 1985.6.7

My Father's Chair/Rick Springfield
Bad For You/Rod Stewart
Say Your Wrong/Julina Lennon
We Are The World/U.S.A. For Africa
If Only For The Moment Girl/Steve Perry
Trapped/Bruce Springsteen
Tears Are Not Enough/Northen Lights
4 The Tears In Your Eyes/Prince
Good For Nothing/Chicago
Total Control/Tina Turner
Trouble In Paradise/Huey Lewis & The News
Summer,Highland Falls/Billy Joel
Funky Town/Lips Inc.
Metropolis/Freddie Mercury
Children Anthem/Toto
Georgy Porgy/Toto
God Save The Queen/Queen


若者による殺人事件が起こるたび、当然だがマスコミも世間も大騒ぎである。
その都度教育関係者や心理学者、評論家などが様々な意見を述べ、かえって事態がよくわからなくなったりしている。
結局殺人を犯した若者の心理なんか、そいつ以外わかるはずもない。
「少年の両親は近所でも評判の教育熱心な父親とPTA役員の母親で・・」
「少年は過去に非行歴もなく、成績も中くらいのごく普通の生徒で・・」
という事件が多い(ように思える)から、余計に混乱する。

少年犯罪の中で、特に刃物による殺人は世間に与える衝撃も大きい。
神戸の事件や佐賀バスジャック事件などがそうだ。
殺人をとやかく言う以前に、犯人について言えることがひとつだけある。
彼らは刃物を作る職人の心がわかっていないのだ。

刃物は何のためにあるのだろうか。
この問いに正確に答えられるオトナがどれだけいるだろう。
正解は「心を切るためにある」。
クイズのようだが、こういうことだ。
「モノを切る」のは手段であって目的ではない。
そのモノを切る行為の延長上に、人の心を感動させる結果があるはずなのだ。

優れた料理人による包丁さばきや出来た料理は、食べる客の心を切るがごとく感動させる。
普通の主婦だって包丁(料理)で夫や子供を感動させることができる。
医者のメスは病気を治し、患者とその家族を感動させるはずだ。
大工のノコギリだって、床屋のはさみだって、みんな同じである。
刃物に限らず、道具というのはそういうものだ。
ここが「人を傷つける目的で作られる拳銃」とは決定的に違う。

以前テレビでカスタムナイフの職人の話を聞いたことがある。
彼はジャックナイフ型という、刃を折りたたんで鞘にしまうナイフを作っている。
刃を折りたたむ際、当然「カチッ」と音がする。
その音が気に入らないと、絶対に商品にはしないのだそうだ。
そこまで刃物職人というのはこだわって作っているのである。

そこまでこだわって作られたナイフだと知っていたら、「衝動的に」人を刺したりはできない。
職人の心を思ったら、絶対にできないはずなのだ。
ナイフや刃物で殺人を犯した少年どもには、このことを彼らの父親が絶対教えていないはずだ。
殺人以前に、ここが一番問題だと、自分は思っている。

自分は実は小学生のころから今でもナイフを持ち歩いている。
父親がスイスでみやげに買ってきたアーミーナイフである。
最近は日本でも簡単に手に入る、「十徳ナイフ」などと呼ばれるヤツだ。
今だったら小学生にアーミーナイフ持たせる親なんかいないだろう。
自分でもよく犯罪に使わなかったもんだと、今でも思う。

父親は特にナイフの意味など教えてくれたりはしなかった。
ではどうして自分はナイフで人を傷つけたりしなかったのだろうか。
その勇気?がなかったとも思うが、それだけではない。
父親が自分を「男として」信頼している、と感じていたからだと思う。
もちろん父親がそこまで決意して自分にナイフを渡したのか、今となってはわからない。
しかし父親が息子に刃物をあずけるということに、それだけの意味があってもいいと思う。

刃物にもいろいろあり、実際に犯罪に使われた刃物は、外国の工場で大量生産されたものかもしれない。
また特にナイフが武器として存在してきた事実は否定しない。
それでも、世の父親は息子にナイフの目的を教えるべきだと思う。
ひとつは人の心を切るためにある。
そしてもうひとつは、「最終手段としての武器」であること。
主体的に人を傷つける必要は決してないが、自分と愛する女の身の危険を感じたら、「最終手段として」使うのだ。

父がいなければ母でも周囲の男でもいいから、オトナが伝えるべきだ。
刃物を使って犯罪を犯すことが、どれほど刃物職人の心を踏みにじることなのか、そして己の「男を下げる」ことなのか、伝える必要があると思う。
大げさな言い方だが、刃物は男の魂なのだ。
めったなことで振り回してはならない、大切なものである。

話は音楽に飛ぶが、洋楽には父と息子の情愛を歌ったものが、邦楽に比べて多い気がする。
ジョン・レノンは「Beautiful Boy」で息子をテーマに歌い、最近ではエリック・クラプトンが「My Father's Eyes」で父親への情愛を歌っている。

リック・スプリングフィールドの「My Father's Chair」も同じように父親への情愛を歌った曲である。
アルバム「TAO」のラストに納められた曲だが、あまり知られておらず、隠れた名曲と言えよう。
チャートに登場しなくなって久しいリックだが、この頃は日本でも人気があり、ヒット曲もたくさんあった。

ところがつい最近、そのリックが妻への暴力をはたらいたかどで逮捕されたらしい。
確か新聞の小さな記事だったような気がするが、真相は定かではない。
インターネットで探してみたが、そんな記事は見つからなかった。
名曲にからめて「父より子へ」語りつがれるべき掟のようなものを書きつづったつもりだったが、そんなニュースでなんだかややケチがついた感じである。
もし事実だとしたら非常に皮肉な話になってしまう。

ただし事実がどうあれ、歌に罪はない。
紹介するのに躊躇はしないつもりである。

今夜の「隠れた名曲」を紹介します。
リック・スプリングフィールドで、「My Father's Chair」。


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コメント

この曲はいいですよね。20年弱前の学生時代に聴いて、感銘を覚えた記憶があります。
最近、リック・スプリングフィールドのベスト盤を購入して、懐かしく聴いています。
こんな時代ですが、このアルバムを聞いて、妥協というものを知らないでいた、若かりし自分を思いだします。

投稿: リック・オケイセック | 2004.03.18 14:25

リック様、はじめまして。
こんな昔の文章にコメントいただいて恐縮です。

偶然ですが自分もリック・スプリングフィールドのベストを買ったばかりです。
「My Father's Chair」は入っていませんでしたけど。

ところでお名前から察するにカーズのファンでいらっしゃるでしょうか?
自分はオケイセクよりベン・オールが好きでしたので、彼の死のニュースはかなりショックでした。

またお立ち寄り下さいまし。

投稿: SYUNJI | 2004.03.19 00:23

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