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エアチェックの夜 9

第9回 チャリティー全盛のころ 2001.5.18


POPS32 1985.4.27

Say Say Say/Paul McCartney
Say It Isn't So/Daryl Hall & John Oates
Blue Jean/David Bowie
Borderline/Madonna
Do They Know It's Christmas Time/Band Aid
Wild Heart/Stevie Nicks
One More Night/Phil Collins
Possession Obsession/Daryl Hall & John Oates
Can't Fight This Feeling/REO Speedwagon
Only The Young/Journey
I Want To Know What Love Is/Foreigner
Just A Gigolo~I Ain't Got Nobody/David Lee Roth
Radio Ga Ga/Queen


1984年から85年にかけて、相次いでチャリティー目的のユニット結成やイベントが行われた。
きっかけは言わずと知れた「バンド・エイド」である。

ロックとチャリティーの相関については、特にバンド・エイド以降世界中で数え切れないくらいの論評があるだろう。
いくつか読んだことがあるが、おおむね以下のような内容であることが多い。
 ・本来反体制的なロックが、チャリティーを目的とする違和感
 ・内情はロック産業の宣伝目的であろう
 ・ぶっつけ本番なため、ビッグ・プロジェクトのわりに曲や音が悪い
 ・ダサイ
 ・でも感動した

言われてみるとだいたい自分も同様の感覚である。
ロックが好きなヤツはそもそもヒネてるので、「チャリティー」なんて聞くと、「けっ」とか言ってみたりするのである。
でもやっぱりイベントそのものは、めったに見られない夢の競演であり、感動しちゃったりするのだ。

今までチャリティーについてきちんと考えたことなどなかったが、当時の3つのイベントについて書いてみることにする。

イベント1:バンド・エイド

これを知ったのはNHKの特番だった。
夕方ころの放送で、何げなく見ていたらずいぶんと豪華な顔ぶれが出てくる。
「Do They Know It's Christmas Time?」のメイキング映像だった。
ボブ・ゲルドフが発起人というのも意外だったが、レコーディングの進行役としてミッジ・ユーロが仕切っているのが興味深かった。
日本じゃそんなに売れてないのに、やるじゃんミッジ。
オープニングの録音レベルが小さすぎるのが難点。

印象的だったのは、当時仲が悪いと言われていた、ボーイ・ジョージとサイモン・ル・ボンの共演である。
ボーイはマスコミによる過剰な不仲説をちゃんとわかっていて、録音の合間にカメラを意識しながらサイモンを呼びつけ、大げさに肩を組んで見せた。
「ヘイ、サイモン!不仲のウワサを解消するチャンスだぜ」
いいねえボーイ・ジョージ。
でも明らかにサイモンの方は「オカマに抱きつかれちゃって」困った顔してたなあ。

バンド・エイドのエライところは、クリスマスを歌ったことだ。
毎年世界中でクリスマスになるとこの曲がかかる。
チャリティーとしての効果はともかく、年に1回は思い出してもらえるのだ。
日本ではワム!やジョン・レノンの曲が、もう本当にしつこいほどラジオでもデパートでも流れるが。

イベント2:U.S.A. For Africa

これも日本テレビでメイキングを夜中に延々やっていた。
メンバーは確かにゴージャスだが、結局二番煎じという印象がぬぐえず。
音的にもバンド・エイドほどではなかったと思う。
クインシー・ジョーンズが仕切っていたが、学校の先生のようで「何だかなあ」という印象。

バンド・エイドもそうだが、こうした夢の共演は、実はアーチストの歌手としての力量の差がかなりわかってしまう。
普段好んで聴いていたビリー・ジョエルが、やっぱりレイ・チャールズのうまさに全然かなわない。
もっとも「ヘタ」「うまい」などで片づけられないのがロックの不思議なところだ。
声楽的に分析したら間違いなく「ヘタ」なボブ・ディランだが、登場した時の威圧感や存在感は、本当に他を圧倒するものがある。
まさに「タダものではない」。単に目つきが悪いだけかもしれないけど。

全般的に当時人気の白人アーチスト達が、黒人の歌のうまさに圧倒されていたように思う。
そんな中で、短いパートながらちゃんと自分の持ち味を発揮できていたのはスティーブ・ペリーだ。
この人、もっと評価されるべきなんじゃないだろうか?

夜通し行われた録音で、アーチスト達も疲れていたようだ。
そんな中で、「なあんだ、まだ朝の5時だよ!」などとオヤジな発言をしていたのは、ポール・サイモン。
違った意味で、おもしろかった。
この人、団体行動の中ではけっこう浮いちゃってるんじゃないか?

「We Are The World」は確かに音楽界に波紋を呼んだ。
しかし必ずしも賞賛の声ばかりではなく、厳しい意見もあったようだ。
参加しなかったロバート・パーマーが、ブルース・スプリングスティーンの歌い方に息子が驚いた話を引き合いに出して批判したことや、ダリル・ホールが雑誌でマイケル・ジャクソンの曲は良くなかったと発言したことに、またしてもわくわくしてしまった。

イベント3:ライブ・エイド

上記2つのライブ版ということで、日本ではフジテレビが夜から翌日昼まで「断片的に」放映。
ライブなので確かにいろいろアクシデントがあったようだ。
全編通しで見たわけではないが、記憶に残る映像はいくつかあった。

比較的早めの時間だったと思うが、ジョーン・バエズが「We Are The World」を独唱。
この人が歌うとけっこういい曲に聞こえるから不思議。
少し寝て、夜中に起きて見たらスティングとフィル・コリンズだった。
かなりエコーの強い音だったが、二人はライブでも落ち着いており、まともに聞けた。

翌朝起きて見ると、ペイジ&プラント。
ドラムをフィル・コリンズが叩いていた。
番組の紹介によれば、イギリスのライブを終えて、飛行機でアメリカのライブに駆けつけたとのこと。
やはり洋楽はスケールが違う。
音的にはいまいちなペープラだったが、当時はツェッペリン再結成ということで、不覚にも?感動してしまった。

日本からは矢沢永吉と小田和正が参加ということだったが、二人はライブに参加したわけではない。
ビデオ映像を流しただけで、これで参加と言えるのか?と、洋楽ファンの視聴者全員が思ったはず。
またスタジオでゲストとして登場した小田和正のテンションがあまりに低く、司会の逸見政孝も困っている様子だった。
誰だこんなヤツを呼んだのは!


*****

さて、各イベントのチャリティーとしての効果はどれくらいだったのだろうか。
自分が書いたような、音楽的感想文は世界中にいくらでもあり、誰でも書ける。
別にチャリティーでなくても、好きな音楽なら誰でも語れるからだ。
チャリティーとしての効果(実績)に対する批評なんか、インターネットで探しても全然見つからない。
あるのは動機に対しての批判めいた論調の雑文ばかりだ。

結局どれだけの募金が集まり、実際にそれでどれだけの救援物資や活動が行われたのか、誰も知ろうとしていないのだ。
選挙で投票した候補者の、議員としての活動をきちんと追っている有権者が、日本にはあまりいないのと似ている。
「リサイクル」と称して自治会で廃品を集め、業者に引き取ってもらい「いいことした後は気持ちがいいわねぇ」などと言って打ち上げをしているおばさんと変わらない。
廃棄処分の実態までちゃんと確認したことはあるのか?
その業者が不法投棄していたらどうする!
・・なんて考えたら、気安くリサイクルなんてとてもできやしないが。

誰だって人の役に立ちたい。
自分の出したオカネが、困っている人の助けになると思えば、「いいことをした」という感慨があって当然である。
しかし本当にそれがいいことにつながっていったかどうか、確認するところまでが、「募金する側」の責任ではないだろうか。
(上記3つのイベントに関して、1円のオカネも出していない自分に、そんなこと言う資格がないのは承知の上だが。)

昔、「欽ちゃんの通りゃんせ基金」に募金したことがある。
これは目的と結果がわかりやすいからだ。
自分たちの募金で作られた音の出る信号機が、街で自分の目で確認できる。
比較するのも何だが、同じくラジオ番組でやっていた、谷村新司の「ハンド・イン・ハンド」とかいう基金は、全く目的がわからず興味もわかなかった。

きっとバンド・エイドもライブ・エイドも、その後の総括発表はしたのだろう。
「これだけの募金が集まりました。」
「これだけの人たちを救うことができました。」
これを知ろうとしないリスナーにも問題があるし、主催者側ももっと知らせる手段を考える必要があると思う。

チャリティー一般を非難するつもりはない。
胡散臭い面があるのも承知の上だが、「困っている人たちがいる。」この前提がある限り、しないよりはした方がいいに決まっている。
そういう意味では、これからのチャリティーは、必ず目的に向かっての進捗と、達成報告を求められるものであってほしい。
インターネットを使えば簡単なことだ。すでに実践している人たちもいると思う。

もう一つ言いたいことがある。
チャリティーに参加(募金)しないことを、悪と決めつけることだけはやめた方がいい。
これは「動物が嫌い」「子供が嫌い」を「悪」と決めつけることと同じだ。
「動物好き」「子供好き」「募金好き」(っているのか?)は、それにこしたことはないが、人間の義務ではない。
好きな人から見れば、信じられないことなのかもしれないが、それぞれの事情なのだ。
募金は募るカネであって、税金ではない。
支払う義務なんか、誰にもないはずだ。
「みんなが募金しているのに」と、募金しないヤツを非難するのは非常に危険なことなのだ。

最後に、一連のイベントの中で最もわかりやすかったものについて書く。

Sun City/Artist United Against Apartheid(1985)

チャリティーと言えるかどうかわからないが、ロックだけでなく、ジャズやサルサなど、様々な分野からの参加により作られた、アパルトヘイトに反対する目的のユニットである。
結果論だが、この曲の発表の5年後、アパルトヘイトは廃止された。
もちろん音楽のチカラだけで、アパルトヘイトが廃止されたわけではない。
しかし世界中でこの主張に賛成した人間のチカラは、確実に南アの政治を動かしたのだ。
音としては好きな曲でもないが、結果が出せたことは評価されるべきだと思う。

*****

さて、この曲によって本当に救われた人はどれくらいいるのでしょうか?
ご存じの方はご一報下さい。
バンド・エイドで、「Do They Know It's Christmas Time?」


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コメント

SYUNJIさん、こんばんは。
一連のチャリティーソング、その出来は私の中ではこんな感じ
でした。
Do They Know It's Christmas Time?>Sun City
>(かなり落ちて)We Are The World

>>ゲストとして登場した小田和正のテンションがあまりに低く
私はオフコースのファンですが、このときばかりは「帰れ!」と
思いました。当時の小田は明らかにテレビの出演の仕方を理解
していませんでした。

本題のロックとチャリティーの関係ですが、難しいですね。何が
正しくて何がそうでないのか。全米テロのときも話題になり
ましたが、明確な指針もでませんし、私自身も積極的に参加
したことがないとうのが正直なところです。
「Live Aid」については、その是非はともかくとして(本当は
そうではいけないのでしょうけど)同世代洋楽ファンの共通体験として
存在してほしいと思いました。80年代以降の洋楽ファンは、
それ以前のファンのような強烈な共通体験がないような気後れ
を感じていたのです。

ボブ・ゲルドフは、確か集まった金額を公表していたような記憶
があります。新聞で見たような・・・・。それで、献金先を訪ねた
ようですが、献金先できちんと使われておらず、激怒したとか。

では、「Do They Know It's Christmas Time?」の大まかなソロの
順番です。
1. ポール・ヤング
2. ボーイ・ジョージ(カルチャー・クラブ)
3. ジョージ・マイケル(ワム!)
4. サイモン・ル・ボン(デュラン・デュラン)
5. スティング
6. トニー・ハードリィ(スパンダー・バレイ)
7. ボーノ(U2)
8. ポール・ウェラー(スタイル・カウンシル)
(以下はソロなし?)
フィル・コリンズ(ジェネシス)
アンディー・テイラー(デュラン・デュラン)
ステイタス・クォー
ジョディ・ワトリー
ボブ・ゲルドフ(ブームタウン・ラッツ)
クール&ザ・ギャング
ジョン・モス(カルチャー・クラブ)
ニック・ローズ(デュラン・デュラン)
ゲイリー・ケンプ
ジョン・テイラー(デュラン・デュラン)
グレン・グレゴリー
ミッジ・ユーロ(ウルトラヴォックス)
バナナラマ

投稿: モンスリー | 2004.06.06 22:50

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